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仕事と健康,運動

職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、という話

人は承認を求める生き物で、他者との良好な関係性がないと、心身を適切な状態に保てないものです。
今回紹介する研究によると、職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、ということが示されています。
どれだけ社会に溶け込んでいるか?が健康リスクに影響を与えるというのです。

職場の状況と健康がどのように関係をするのかが調査された研究

次の記事では、職場の状況と健康がどのように関係をしているのか、を調査した研究が紹介されています。

https://www.apa.org/news/press/releases/2011/05/co-workers

研究では、成人820人を対象都市、1988年から20年間に渡る追跡調査が行われました。

被験者は、金融、保険、公共事業、製造業など、幅広い業界に従事している人たちが対象であり、平均労働時間は8.8時間/日、3分の1が女性で、80%が既婚者で子供がおり、45%が12年以上の正規教育を受けていた人たちでした。

研究では、生活習慣のアンケート、身体測定や血液検査等による健康診断、そして職場の状況についてのアンケートが実施されました。
職場の状況についてのアンケートは、仕事で要求されていること、職場でのコントロールの状況、上司や同僚によるサポートの状況についてが聞かれています。

ここ言う“コントロール”とは、主体性を発揮でき自分のスキルをどのように使うのが最善かを決める機会があった、与えられた仕事をどのように達成するか、仕事の中で何をすべきかを自由に決定できた、という状態について、コントロールがある、としています。

20年間の追跡調査中、53名の被験者が死亡しました。

職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる

上述の調査の結果、職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、ということが示されました。

職場で、同僚から適切なサポートを受けられる状態にある人は、そうでない人と比較して健康リスクが有意に低かったのです。
この結果は、38歳か43歳までの年齢層で顕著に見られたということです。

ここで言う“適切なサポート”とは、同僚が問題解決に役立ち友好的である状態、のことを示しています。

一方、上司からのサポートについては、健康リスクに影響を与えませんでした。
上から、ではなくて、横のつながりが大切だ、ということなのでしょう。

なお、別の研究によると、男性においては地位や権力が高いと感じていると同様の健康リスクの低減効果があることがわかっています。
逆に女性の場合は、地位や権力、といったパラメータは健康リスクにマイナスの影響があることも示されています。

成功するチームは、メンバー同士が協調しており、またEQが高い

別の研究では、ある種の課題をうまく遂行できるチームは、別の課題についても同じようにうまく遂行できる傾向があること、そのチームの特性として集団的知性(EQ)が高いという特徴があることが示されています。

ここで面白いのが、メンバーにIQが高い人が入っているチームが必ずしも適切に機能するとは限らない、という点です。

高いEQがメンバーの状況を適切に把握し、サポートをする協調関係のベースになることは容易に想像がつきます。
上述の研究とも関連付けられ、適切なサポートがある状況では仕事のストレスが減り、間接的に健康にプラスの影響を与えるのでしょう。

そして、このようなチームを意図的に組成する上において重要な要素として、「行動規範」が存在します。

この成功する「行動規範」としては2つのものがあげられています。

1つ目が「会話のターンテイキング分布の均等性」、つまり、良いチームは、メンバーがほぼ同じ割合で発言していること。
2つ目が「チームの平均的な社会的感受性が高い」こと。

会社や上司は、これらのことを意識すると、チームのパフォーマンスをあげて、またメンバーのウェルネスを向上させることができるはずです。

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生産性・業務効率化

仕事中、適度にネットサーフィンをする方が生産性を高く保てる、という話

仕事中にネットサーフィンをするのは“サボり”であるとみられるのが一般的です。
しかしながら、人の集中力には限界があり、業務時間中全てを集中して仕事をするのは不可能です。
ある研究によると、適度にネットサーフィンをする方が生産性が高い、という結果が示されました。

適度にサボることが生産性に与える影響を調べる実験

次の記事で、適度にサボることが生産性に与える影響について調べた実験が紹介されています。

https://www.wsj.com/articles/SB10001424053111904070604576518261775512294

研究では96人の学生を被験者に、休憩グループ、ネットサーフィングループ、対照グループに分けて簡単な課題を行わせる実験を行いました。

課題は20分間、サンプルテキストの中にある「e」の文字をできるだけ多く強調表示にするというものです。

20分の課題後、10分間、別のアクションが差し込まれます。
休憩グループはネットサーフィン以外の好きなことを、ネットサーフィングループはネットサーフィンを、対照グループは別の簡単な課題を行ってもらい時間を過ごしてもらいました。

その後、再度10分間、文字を強調表示するタスクを再開してもらいます。

ネットサーフィンを行うと生産性が高くなる

上述の実験の結果、他の2つのグループより、ネットサーフィングループの方が、タスクの生産性が有意に高く、精神的な疲労感や退屈感も少ない、ということが示されました。

つまり、ネットサーフィンは、何かしら個人的な別のことをして休憩時間を過ごしたり、全く休まずに働き続けるより、高いリフレッシュ効果がある、ということです。

適度にサボることを推奨した方が良い

別の様々な研究において、これまで行っていたこととは別の何かを行うと生産性が回復する、という結果が支持されています。

上述の研究は、これらの事実を支持するものと言えるでしょう。

とりあえず言えることは、仕事中にネットサーフィンを行うことは必ずしも悪いことではない、ということです。

むしろ本業に差し支えなければ、推奨する位の方がパフォーマンスを高く保つ可能性があります。

日本人は真面目が過ぎるきらいがありますので、適度にサボる、ということを覚えると良いでしょう。

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生産性・業務効率化

人はストレスにさらされるとポジティブな面を見ようとし意思決定を間違える

人間という生き物は、普段は太古の時代からの生存本能としてネガティブな面を見ようとする傾向があります。
しかし、いざ現実にストレスにさらされるとポジティブな面を見ようとする傾向があります。
そしてその結果として、意思決定を間違える、ということが指摘されています。

睡眠不足について同様の指摘がされていましたが、ストレス環境でも意思決定を間違える、という事象が発生するようです。

人はストレスにさらされるとポジティブな面を見ようとする

次の記事で紹介されている研究では、ストレスと意思決定の関係について実験が行われています。

https://www.sciencedaily.com/releases/2012/02/120228114308.htm

なんでも、氷水に手を数分間つけた被験者は、ポジティブな情報に注意を払い、ネガティブな情報を無視しようとする傾向があることが発見されたとのこと。
これは他にも、いきなりスピーチをするように指示した場合等においても再現がされています。

つまり、人はストレスにさらされるとポジティブな面を見ようとする傾向があるのです。

この結果は意外性があります。

というのも、人間という生き物は、普段は太古の時代からの生存本能としてネガティブな面を見ようとする傾向があるからです。
そこから考えると、ストレスにさらされたら「うまくいかないのでは」とネガティブ面により注目してもおかしくなさそうです。
しかし、実際には逆なのです。

ポジティブな面を見ようとした結果として意思決定を間違える

上述の事実はあることを示唆しています。

ストレスを感じている時、難しい決断を迫られている時、検討中の選択肢のポジティブ面にフォーカスし、ネガティブ面を軽視する可能性がある。
つまりは、意思決定を間違える可能性がある、ということです。

この傾向は女性より男性の方が強い

そして、これらの傾向は女性より男性の方が強い、ということが示されています。

男性がストレスにさらされると、リスクを取ることに積極的になり、一方女性がストレスにさらされた場合、リスクに対して保守的になります。

一般的に言われている、困難な状況下において、男性は闘争心や逃避行動をとる傾向があるのに対して、女性の場合は人間関係を改善しようとする行動をとる傾向がある、という他の研究とも整合が取れる話です。

確かに、太古の時代、狩りをしている男性がいざ猛獣と遭遇したとして、「やばい、食べられる。」とネガティブに考えて及び腰になるより、「よっしゃ、食っちゃる!」とポジティブに考えて積極的に戦闘に出たり、安全に狩りをするために適切な逃避行動をとる方が、狩りの成功確率や生存確率が高くなることが想像できます。

結論として言えることは、現代社会においてはネガティブ面もポジティブ面も適切に同程度のバランスを取ってフォーカスした方が良いだろう、ということです。
安全な世においては、冷静に情報を精査する方が、物事の成功確率は高まるはずです。

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生産性・業務効率化

思いついたアイデアは移動をすると何故すぐに忘れてしまうのか?という話

何かアイデアを思いついて、そのアイデアを書き留めよう、実行しようとして部屋を移動します。
すると何故か、さっき思いついたばかりのアイデアを忘れてしまう。
そんな経験をしたことがある人も多いでしょう。
何故、このような現象が起きるのでしょうか?

バーチャルリアリティーにおける記憶保持の実験

記憶というものは、本の中の情報のように、連続した章やエピソードとして、脳に記録されます。

そのため、今現在のエピソード記憶は、過去のエピソード記憶よりも記憶が保持されやすく、また思い出しやすくなるのです。

この点について、リンク先の記事でいくつかの実験が紹介されています。

最初に紹介された実験では、部屋を移動するたびに新しい記憶のエピソードがつくられ、その結果として、前にいた場所での記憶を思い出すことが難しくなる、ということについて研究が行われています。

実験はバーチャルリアリティー空間で行われました。

数十人の被験者を対象に、モニターに表示されたバーチャルリアリティー空間の中を移動してもらいました。
VR空間には大小55の部屋があり、小さな部屋にはテーブルが1つ、大きな部屋には両端に計2つずつのテーブルが置かれています。

実験では、テーブルに置かれている物を拾い、部屋の中や次の部屋に移動しながらテーブルに置かれていた物と交換していく、というアクションが繰り返されました。

テストでは、新しい部屋に入るタイミング、もしくは大きな部屋を横切るタイミング(次のテーブルに移動するタイミング)で行われ、画面上に表示された物の名前を見て、それが今持っている物なのか、それとも今置いた物なのか、思い出してもらいます。

その結果、同じ部屋の中を移動するよりも、次の部屋に移動した場合の方が記憶力が低下することがわかりました。

つまり、次の部屋に移動したタイミングで、新しいエピソード記憶により上書きされていく、ということです。

リアル空間における記憶保持の実験

それではリアル空間ではどうでしょうか?

2つ目の実験では、現実の空間に、複数の部屋とテーブル、様々な物を設置し、VR空間と同様の環境が作られました。

そして、物を持って移動、交換しまた移動、というアクションが繰り返されました。
自分が今現在持っている物は箱の中に隠れており見えない状況です。

そしてVR空間と同様に、時折、持っている物や直近置いた物について、記憶のテストがされました。

その結果、部屋の中を移動するよりも、別の部屋に移動する時の方が記憶力が低下する、という事象が再現されました。

アイデアを思い付いたらすぐにメモを取ろう

なお、前の部屋に戻った際の記憶についてもテストされ、同様に記憶力の低下が起きることが示されています。
これは、前の部屋に戻った時に過去のエピソード記憶を想起するのではなく、部屋を移動するたびに、例えそれが前にいた部屋であっても新しいエピソード記憶が作られていく、ということを意味します。

人の記憶力というものは非常にあやしいものということがよくわかる研究です。

結論として言えることは、アイデアを思い付いたらすぐにメモを取ろう、という所でしょうか。

なお、長時間労働を行うと記憶力が低下する、という研究もあります。
これは睡眠により記憶の定着が行われない状態が続くとエピソード記憶がたまりすぎて脳が混乱するからかもしれません。

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仕事と健康,運動

運動はエネルギー感、クリエイティビティ、生産性を向上させるという話

運動を行うことによる健康へのポジティブな影響は広く知られています。
また、運動は認知症の改善等、それ以外の様々な事柄にポジティブな影響を与えます。
今回は、運動がエネルギー感(活力)、クリエイティビティ(創造性)、生産性を向上させるという研究を紹介します。

運動がエネルギー感を向上させるという研究

まずは運動がエネルギー感を向上させるという研究です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18277063/

従前から何かしらの疾患を抱えていたり、原因は不明なれど疲労症候群として診断の基準にあてはまっている人たちを対象とした運動実験により、疲労感が改善することは知られていました。

この論文では、診断基準には達していないけれども原因不明な疲労感を訴える人たちを対象とした運動実験です。

実験では座り仕事の多い若年層36名の被験者を対象に、6週間の運動実験を実施し、エネルギー感(活力)と疲労感の気分について自己申告によるスコアが取得されました。
実験では中強度の運動群、低強度の運動群、運動を行わない対象群に分けられました。
6週間の間、週3回、合計18回運動を行うためのトレーニングルームを訪れてもらい、有酸素トレーニングを実施されました。

結果、運動トレーニングの結果は、エネルギー感が中強度でも低強度でも向上していたことがわかりました。
また、エネルギー感と疲労感は、それぞれ独立して変化することもわかりました。

運動がクリエイティビティを向上させるという研究

次はクリエイティビティ(創造性)に運動が与える影響の研究です。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1332529/

こちらの実験では63名の被験者を対象に、運動(エアロビクス)を実施する群と、ビデオ鑑賞(ニュートラル群)を行う群に分けて、クリエイティビティを測るテストが実施されました。
(クリエイティビティを測るテストでは、トーランステスト、というものが実施された。)

結果、運動後にはポジティブな気分が大きく有意に増加し、一方対照群ではポジティブな気分が有意に減少したことが示されました。
クリエイティビティについては、いずれの条件でも向上したとのことで、運動により気分とクリエイティビティがそれぞれお独立して改善されることがわかりました。

いずれにせよ、運動によりクリエイティビティ(創造性)が向上するのです。

運動が生産性を向上させるという研究

最後は生産性の向上の研究です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21785369/

177人の被験者を対象に、週の労働時間を2.5時間短縮し運動を行う群、同様の短縮条件で運動を行わない群、何も介入しない対照群の3つのグループに分けて、実験が行われました。
生産性については自己申告により測定されました。

その結果、週の労働時間を2.5時間短縮し運動を行った群について、自己評価生産性が向上、つまりは仕事量の増加、仕事のしやすさの向上が行われ、また病気欠勤の減少が確認されました。

つまり、労働時間を短くし運動を行う時間を確保することにより、より高いレベルの生産性を得られる、ということです。


結論として、運動はエネルギー感、クリエイティビティ、生産性を向上させるのです。

仕事をよりエネルギッシュに効率的にこなしたい、仕事関係なく日々を楽しみたい、という人にとって、運動を行わない理由は無いでしょう。

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ビジネスと心理学

人間の脳はネガティブな情報に反応しやすいバイアスが存在しているという話

人間の脳はネガティブな情報に反応しやすい構造になっています。
つまりは「ネガティブ・バイアス」が存在しているのです。
この理由は生物の歴史が関わっており、生存のための能力が背景にあります。
ネガティブな情報に強く反応することにより、危険から回避するよう、遺伝子に刻まれているのです。

人間の脳はネガティブな情報に反応しやすい

なぜ人間の脳はネガティブな情報に反応しやすいのか?

この問いに対して次の記事が解説をしています。

https://www.psychologytoday.com/intl/articles/200306/our-brains-negative-bias

人々は例えば政治的なキャンペーンにおいて、肯定的なものより、否定的なものに反応しがちです。

ネガティブな情報に反応しやすい理由は、この構造と同じだ、としています。

人には「ネガティブ・バイアス」が存在しており、脳は不快な情報に敏感に反応するよう、できているとのことです。

この点については多くの研究がされており、記事では、被験者に感情に影響を与える写真を見せて、その後の脳の電気的活動の動きを観察する、という実験が紹介されていました。

米オハイオ州立大学で行われた実験ではポジティブな感情を与える写真、ネガティブな感情を与える写真、ニュートラルな感情を与える写真を被験者に見せて、その後の脳の電気的活動が記録されました。

ポジティブな感情を与える写真とは、フェラーリやピザの写真。
ネガティブな感情を与える写真とは、切り刻まれた人の顔や死んだ動物の写真。
ニュートラルな感情を与える写真とは、皿やドライヤーの写真、等です。

その結果、脳はネガティブな刺激に対して強く反応していることが示されました。

つまり、良いニュースより、悪いニュースに人の脳は反応しやすいのです。

ネガティブな情報に反応しやすい理由は生存のため

では、なぜ、そのような反応が起きるのでしょうか?

理由は、生物の歴史が背景にあります。

人類は生存のために危険から身を守らなければなりません。
そしてそのためには危険から回避するのが一番効率的です。

人の脳がネガティブな情報に反応しやすいのは、この点が関係しています。
ネガティブな情報に反応しやすいように進化した方が、危険を回避し、生存する確率が高まっていくのです。

つまり、ネガティブな情報に反応しやすい、というのは人にとって必要なことだったのです。

良好な人間関係のためにはポジティブな情報が必要

人類の生存のためにネガティブな情報に反応しやすいことが必要だった、のはそうだとして、現代社会においては弊害があります。

目に見えてクリティカルな危険は昔に比べてはるかに減っていることは説明は不要でしょう。

さらに、ネガティブな刺激が多いと、メンタルに悪影響が出ることも容易に想像がつくはずです。

しかし、人の脳はネガティブな情報に反応しやすいように出来ています。

多くの研究が、良好な人間関係のためにはポジティブな刺激が必要である、としています。

そして、そのための比率は5:1(ポジティブ:ネガティブ)とのことです。

例えば、良好な結婚生活を送っている夫婦のポジティブ:ネガティブ比率は概ね5:1でバランスが取れている、とされています。

人には「ネガティブ・バイアス」がセットされている、ということを自覚し、意図的にポジティブな刺激を相互に与えられるように努めると、周囲の人たちと良好な人間関係を維持できるでしょう。

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生産性・業務効率化

頻繁なメールチェックをやめるとストレスが軽減するという研究

メールやSlackのようなチャット・ツールが当たり前になり、頻繁にデジタル・コミュニケーションのためのツールを確認する習慣がついている人は多いでしょう。
しかしながら多くの研究がマルチタスクの弊害を否定しています。
実際に、頻繁なメールチェックをやめるとストレスが研究するようです。

メールチェックの「断食」の実験

ドナルドブレンスクール(カリフォルニア大学アーバイン校)の研究チームは、メールチェックの「断食」を行うと、ストレスが減り、集中力が高まることを示しました。

https://news.uci.edu/2012/05/07/email-vacations-decrease-stress-increase-concentration/

研究チームは、被験者に心拍数モニターを装着してもらい、仕事中のウィンドウを切り替える頻度をソフトウェアセンサーにより検出を行いました。

メールチェックを頻繁に行う人はストレスが多い

その結果、メールチェックを頻繁に行う人は、画面を切り替える頻度が2倍になっており、心拍数も「厳戒態勢」で安定化してしまっていることがわかりました。
(電子メールを使用するグループは平均37回/時間の画面切り替え、一方で使用しないグループは平均18回/時間の画面切り替えだった。)

一方、メールチェックの5日間の「断食」を行った人は、自然な心拍数を維持していたことが示されました。

つまり、電子メールを生活から排除するとマルチタスクが減り、ストレスが減少するのです。
(心拍数が「厳戒態勢」で安定化してしまっている人は、ストレスに関連するホルモンであるコルチゾールの分泌が多いことがわかっている。)

現実社会のデトックスは悪影響が多いですが、デジタル・デトックスに関しては、高い検討の価値があるかもしれません。

この研究は、マルチタスクの主な要因が電子メールにある、という過去の研究をベースにしたものです。

マルチタスクは感情をネガティブにさせる

この種の研究は多く、別の研究ではマルチタスクは感情をネガティブにさせることを示しています。

この研究では、メールチェックへの返信を期限付きで行うタスクを2つのグループにわけた被験者に課しています。

一つ目のグループは、メールの受信は一括でありマルチタスク性が緩い条件で、もう一つのグループは、メールの受信が断続的であり、強制的にマルチタスク性が高まる条件です。

いずれも期限付きの条件ですが、マルチタスク性が高い条件では、人の感情をよりネガティブにさせることが示されました。


現代社会はデジタル・コミュニケーションが容易な環境にあります。
しかし、それは自然と高いストレスを誘発するものです。

意図してデジタル・コミュニケーションの環境から離れる、という取り組みは(それが許されるのであれば)心身の健康に有用と考えられます。

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生産性・業務効率化

新しい習慣を身につける最も確実な方法は何か?それは「習慣の〇〇〇〇」

運動習慣を身につける、健康的な食事をとる、新しいスキルを習得するなど、「新しい習慣」を身につけることは多くの人が取り組みますが、現実は残酷で、多くの挫折を人は経験します。
ある研究チームは、新しい習慣を身につける最も確実な方法を探りました。
そして、非常にシンプルなたった1つの方法が判明しました。

新しい習慣を身につけるのは非常に難しい

何かしら新し習慣を高速で身につけるための方法論は、ノウハウとして確立がされています。

しかし、この方法でも確実とは言えません。

世の中には多くの習慣化のための方法論が存在しますが、ある調査では新年の抱負を1年続けた人はわずか8%で、1ヶ月を乗り切った人さえ半数にも満たないそうです。

こちらで紹介されている調査では、新しい習慣を身につけるための確実な方法が探られました。

https://www.fastcompany.com/90446008/we-studied-the-best-way-to-actually-make-a-new-habit-stick

調査では、ボランティア500人が参加し、新しい習慣を身につけるための様々な方法論23種類を選んで提示し、実行してもらいました。
例えば「自分へのご褒美を用意する」「毎日決まった時間に実行する」などです。

そして、1ヶ月間、3回の調査を行い、習慣がどれだけ維持されているか、が調査されました。

最終的に5つの調査を行い、1,256件の追跡調査が分析され、習慣化のための方法としてある1つのテクニックが他の22種類のテクニックをはるかに上回ることがわかりました。

最も確実な方法だったのは「習慣の振り返り」

その新しい習慣を身につける最も確実な方法とは「習慣の振り返り」です。

「習慣の振り返り」は次の3ステップで実行します。

  1. 自分自身の長期的な行動を変えたり、新しい習慣を身につけたりすることに成功した過去の状況や方法を振り返る
  2. その成功した過去の状況や方法について、そこから学んだことや、変化を起こすために使った戦術など、新しい習慣に適用できることを書き出す
  3. これらの教訓を新しい習慣に適用するための簡単な計画を作成する

この方法は、2番目に効率が良かった方法より、140%も習慣化の効率が高かったそうです。
また、この方法をとったボランティアの満足度は、他の方法をとったボランティアよりも習慣化に向けた日々の進捗に高い満足度を示していたこともわかりました。

この方法が習慣化のために効率的な理由は、個々人の経歴や経験にカスタマイズされるため、と推測されています。

なお、23種類のテクニックは、自分自身で任意に選択しても習慣化には影響を与えず、ランダムにテクニックを割り当てられたボランティアと同等の効果であったこともわかっています。

モチベーションも重要

習慣化のためにはモチベーションも重要です。

自己申告された習慣化に取り組むモチベーションのポイントがあがると、有意に習慣化されていくこともわかっています。

このモチベーションには2種類あり、①純粋に何かをしたいという欲求、と②長所と短所を慎重に検討した上で、何かを追求する価値があると信じられる分析的な欲求、です。

新しい習慣を身につけつためには、この2種類のモチベーション両方があることが良い、としています。

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生産性・業務効率化

人は問題解決を行うときに「足し算」の発想に陥りがちで「引き算」という戦略を見落としがち

人間は何かしらの問題を解決する時に、既存の何かを「引き算」するのではなく、新しい何かを「足し算」しがちです。
ソフトウェア開発等においても、既存の機能を削除するのではなく、新しい機能を追加し続ける傾向があります。
そして、これがクリエイティビティを抑圧している可能性があります。

問題解決における「引き算」の発想についての研究

こちらの記事において、問題解決戦略における「引き算」の発想について、人々が見落としがちである、として考察が行われています。

https://www.scientificamerican.com/article/our-brain-typically-overlooks-this-brilliant-problem-solving-strategy/

記事の例では自転車が挙げられています。

自転車の乗り方を覚えるために、昔は補助輪や三輪車を使うのが一般的でしたが、近年ではペダルのな自転車であるバランスバイクを用いて、自転車に乗るためのバランス感覚を身につけることが増えています。

バランスバイクの利点を考えると、早々に従来の方法に取って代わって良いように思いますが、非常に長い時間を要しました。
他にも、「引き算」で解決していたはずの問題が多く存在している、と指摘されています。

研究者たちは「人は問題に直面したとき、既存の要素を取り除くよりも、新しい要素を加えた解決策を選ぶ傾向がある、心理学的な説明があるのではないか?」と考えました。

問題解決の発想が「足し算」に偏ることの確認

研究者たちはまず、このバイアスが存在するかどうかを確認するために、対照群を設けない観察研究を実施しました。

1つ目は、91人のボランティアに色のついた箱を追加、もしくは削除することで形を対称にするように求めました。
その結果、「引き算」の戦略により問題を解決した人はわずか18人(約20%)しかいませんでした。

また、ある大学における651件の提案の中で、既存のルールや慣行、プログラムの廃止を伴うものは、わずか約11%しか存在しませんでした。

また、エッセイや旅程を修正する課題においても、同様の結果が見られたそうです。

いずれの場合においても、大多数の人が「引き算/削除」ではなく「足し算/追加」を選択しています。

人々はなぜ「引き算」ではなく「足し算」の発想に頼るのか?

それではなぜ、人々は「引き算」ではなく「足し算」の発想に頼りがちになるのでしょうか?

この点を調べるために行われた実験では、「引き算」の発想は「足し算」の発想より、脳のリソースを要するからではないか、としています(発想のための努力がより必要)。

実験は複数のものが行われていますが、ある実験では、レゴ・ブロックで作られた不安定な屋根を安定させるために、ブロックを追加、もしくは削除するよう求められました。
このブロックは、10セントで1つ追加、削除を無料で行うことができます。

実験では、「追加するブロックは1個10セントだが、取り除くブロックは無料だ」と伝えられたグループと、「追加するブロックは1個10セントだ」とだけ伝えられたグループに分けられましたが、手掛かりを与えられたグループは、与えられていないグループよりも多く「引き算/削除」の発想を用いました。

他にも、左右対称のブロックを作る課題では、練習の回数が増えると「引き算/削除」の発想が増えること、他のタスクも同時にこなさなければならない場合には「引き算/削除」の発想が減ることがわかりました。

仕事をする上で「引き算」の発想ができているか?

従来も、起業や組織が単純化より、複雑化を選択する傾向があることが知られていました。

上述の実験を考慮すると、「足し算」より「引き算」の発想で問題解決を図っていた方が良かった事例が世の中には多いのではないかと推測されます。

研究者は、新しく何かを行う方が評価されやすいことや、すでに時間やお金、労力を費やしてしまったものに投資を続けるサンクコストのバイアスに陥っている可能性を指摘しています。

リソースが限られている現代だからこそ、改めて「引き算」の発想で問題を捉えてみるのは良いかもしれません。

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マーケティング

【マーケティング考】ワインの価格は高いほど味が良く感じるという研究

ワインの価格が実際の価格よりも4倍高いと、そのワインを美味しいと感じるようになるそうです。
約140人を対象とした、ワインの価格のラベルを変えてのテイスティング実験により、安いワインは高い値段がつくと美味しく感じられること、高いワインについては影響がないこと、「味の強さ」についても価格は影響しないことが示されました。

ワイン会社は、このことをよく知っているようで、ワイン市場で儲けるために、この心理的傾向を利用しているそうです。

価格を操作してのテイスティング実験

スイスのバーゼル大学の研究チームは次のような調査を行いました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0950329321000501

140人のボランティアを対象に、少数グループでのテイスティング実験が実施されました。

使用されたワインは次の3つです。

  • 廉価版のワインA(モンテプルチャーノ・ダブルッツォ):小売価格は1本10スイスフラン(約8ポンド)
  • ワインB(2013 Tenuta Argentiera Villa Donoratico Bolgheri):中程度の品質で、小売価格は32スイスフラン(約25ポンド)
  • ワインC(トスカーナIGT、2013年、Saffredi、Fattoria Le Pupille):傑出していると評価されており、1本65スイスフラン(約50ポンド)

実験では10mlのワインが入った6つのグラスが用意されました。

3つのグラスにはワインA,B,Cが価格のラベルがない状態で入っており、残りの3つのグラスにはワインA,B,Cが本来の価格か、もしくは異なる価格のラベル(価格が操作されたラベル)が貼られていました。

参加者はほぼ均等に条件を変えたグループに振り分けられ、値札と味の評価(「心地よさ」と「味の強さ)を6段階で評価)を行ってもらいました。

参加者はいずれもワインの専門家ではない一般の人です。

ワインの価格は高いほど味が良く感じる

調査の結果、いくつかの興味深い事実が得られました。

まず、「心地よさ」ですが、価格のラベルが貼られていない場合、心地よさの評価に差が出ませんでした。
価格を知らない状態でワインを飲むと心地よさの違いは感じられない、つまり価格が品質の認識に影響を与えることが示唆されました。

そして、安いワイン(ワインA)については、実際の価格よりも4倍の価格のラベルが貼ってあったとき、心地よさが20%も向上しました。

一方、高額なワイン(ワインC)の価格を下げても心地よさには変化がありませんでした。
優れたワインの味を価格により悪くすることはできない、という示唆です。

「味の強さ」については、実際の価格と一致しており、異なる価格のラベルが貼ってあったとしても影響を受けませんでした。
ワインの濃さを価格でごまかすことはできない、という示唆です。

なお、「味の強さ」と感じる美味しさ(心地よさ)は必ずしも一致せず、濃厚が故に好まれない場合もあります。

感じ方は文脈に左右される

この調査は、期待が現実に合うように事実が曲げられる、ということを示しています。

実際、この種の話は各所で聞かれており、例えばマクドナルドのコーヒーと、スターバックスのコーヒー、どちらが美味しいと感じるか?や、ゴディバのチョコレートと森永製菓のチョコレート、どちらが美味しいと感じるか?、ストラディバリウスと練習用の安いヴァイオリン、どちらの方が音が良いか?、性別をブラインドした時の技能テスト付き採用試験での結果は変わるか?というような調査が行われています。

ブラインドテストを行うと、マクドナルドのコーヒーや森永製菓のチョコレートの方が美味しいと感じる人が多いようですし、名器と言われるヴァイオリンよりも練習用の安いヴァイオリンの方が音が良いと感じる人が多いようですし、性別をブラインドすると女性の採用比率が向上するようです。

これは良い悪いの話ではなく、人の感じ方というものは文脈に左右されてしまう、という事実を示しています。

日常生活で困ることはあまりないでしょうが、ビジネスでの意思決定が求められる場面においては、客観的に判断できるよう情報を整える必要があるでしょう。

ビジネスに役立つ「バイアス」については、こちらも参照ください。

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