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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】1,000円カットが普及した今、理容師で儲けられるか?

1,000円カットが普及し、どこでも気軽に髪を整えられるようになりました。
ユーザーの一人としては、非常にありがたい話です。
しかし、本当に儲かる商売なのか?、彼ら彼女らの生活は大丈夫なのか?を、片隅で心配します。
そこで今回は、理容師のお給料はどこまで上げられるのか?を考えていきます。

お題:理容師になったとして、どこまでお給料をもらえるのか試算する

条件は次の通りです。

  • 1,000円カット業態
  • カット時間は10分
  • 都心駅近立地
  • 10坪以内の小規模店舗
  • 3席稼働
  • 営業時間は10時~20時
  • とりあえず年末年始以外は無休前提

それでは、考えてみて下さい。

試算

これまで、居酒屋やコーヒー店を例に、事業計画を作ってみました。
今回も、事業計画ベースで考えてみます。

居酒屋とコーヒー店の例は次の記事を参照ください。

売上高の検証

売上高は如何に回転させるか?がポイントです。

営業日数、営業時間、席数、店舗稼働率、そして客単価のパラメータを設定すれば数字を作れます。
稼働率は75%位としました。
朝一や昼間、夕方は混みあって順番待ちの一方、それ以外の時間帯は空いている場合が多いので、1日全体としてはこれ位かな、という設定です。

フェルミ推定では、あっているかあっていないかは、さして問題ではなく、まずは前提を置いて考える方が重要なので、これで良いのです。

数字をあてはめて考えると、次のようになります。

人件費の検証

人件費は、想定される稼働状況から、必要な人数を逆算することで計算できます。

カット時間を10分とし、それを売上高検証から算出できる店舗総稼働時間を導き出し、そこから人の稼働率をあてはめて必要な人数を出していきます。

朝礼や資料作成などの雑務があるでしょうから、カットにあてられる時間としては稼働率90%。
その90%の内、実際にお客様が来店しカットする実稼働率は75%と起きました。

そして、人件費です。
人件費はざっくり1人あたり300,000円とします。
会社を経営していると、従業員の年金や保険料などを一部負担しなければならず、加えて諸々の管理費もかかるので、+15%を加算して考えます。
トータル、人件費は1人あたり345,000円/月となります。

人を雇うって、額面以上のお金がかかるんですよ。

これらのパラメータをあてはめて見ると、次のようになります。

賃借料、その他費用の検証

賃借料、つまり家賃ですね。
駅近のどこかのテナント立地を想定すると、30,000円/坪位かな、と思います。
10坪とすると、ざっくり300,000円/月ですね。

その他費用は考えるとキリがないので、その他費用比率を10%、本部費比率を15%とします。
チェーン展開していると、本部費がかかるんですよ。
会社を大きくしていくための必要経費ですね。

損益計算書

最後に、上記全ての情報を統合して損益計算書を作ってみます。

営業利益率が14%超と、大きい印象がありますが、効率的運営を考えると、これ位は目指したいものではあります。
賃借料やその他費用がもうちょっと大きい気はしますが、全体感としては、まあこんなもんなのかな、という印象ですね。

実際の数値感

実際の数字を見ようとQBハウスのIR資料を漁っていましたが、パッとはそれっぽい資料が出てきませんでした。

リサーチ会社が出している資料があったので、そちらを参考にします。

みていると、パラメータとしては下記のような比率になるようです。

  • 人件費率:53.0%
  • 賃借料:13.6%
  • その他費用率:10.8%
  • 本部比率:約14.6%

本部比率だけ「約」なのは、記載がなく、一方全体の営業利益率が約8%だったので、そこから逆算をしました。

こうしてみると、概ね一致していますが、賃借料は乖離があるようです。
日本不動産研究所が出している賃料指標をみると、都心立地でも坪単価30,000円位だったので、試算ベースでは大外れでは無かったようですが、少なくともQBハウスはもっと坪単価の高い好立地を使っているのか、それとも想定よりも面積が広い店舗にしているか、なのでしょう。

結論

さて、ここまで見てわかる通り、一月当たりの営業利益は50万円ちょっとです。
ここまで到達したとしても、実際には株主への配当や新規店舗への投資などにお金を回すのが企業経営です。
一人が望める給料向上額は、精々2万円~3万円程度でしょう。

上記の試算ですと、年収は360万円ほどで仮に望めたとしても、精々が400万円ほどです。
別資料の理容師の平均年収が300万円ほどなので、これでも優れている試算になります。

結論、好きでなければやり続けられる仕事ではない、と考えられます。
(現役の理容師の方々、好きでやっている方々を貶めようという意図は一切無いので留意ください。)

仮にやるとしたら、自分自身がオーナーとなって、店舗収益の配分をとるか(自分が株主となるわけなので)、複数店舗経営するか、になるでしょう。

別の観点で考えた時に、客単価をあげる、という選択肢も考えられます。
実際、QBハウスは1,000カットでは既に無くなっていますね。
その場合でも精々が1割2割の上昇幅なので、インパクトは小さいです。
理容師業界全体で、もっと客単価をあげても、自分で髪を切り出す人がではじめるので(アタッチメント付きのバリカンだと、髪型にこだわらなければ簡単に切れる)、限界があります。

やはり、しっかり儲けようと思うならば、自分自身が経営者になる、という選択肢しか無いのでしょう。

(参考)試算資料

試算に使用した資料はこちらになります。
ご興味のある方は、DLしてお使いください。

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生産性・業務効率化

最も効果的な午後の集中力を上げる方法

午後は、ランチも食べて満足なのですが、眠くて仕方がありませんね。
眠気は集中力を妨げる大きな要因です。
眠い、となってしまったら気合と根性でどうにかなる世界でもありません。
この眠気を防ぎ、午後の集中力を上げる方法について見ていきます。

忙しい人向けまとめ

  • ランチは13時~14時の間にとる:貴重な時間の確保のため
  • ランチでは炭水化物を食べない:血糖値の低下により眠くなる
  • ランチ後、コーヒーを飲む:カフェインの眠気防止効果は劇的
  • コーヒーを飲んだら、15分の仮眠をとる:仮眠は効果的

午後の眠気が集中力を上げる妨げになっている

人にはリズムがあります。

こちらのグラフを見て下さい。
これは、人の24時間の内の眠気の強さを示したものです。

こちらにある通り、午後の時間帯、特に13時から16時の間、人の眠気は強くなります。
実際、世界中の多くの研究で、この時間帯に作業ミスが多いこと、交通事故が多いこと、などが示されています。

つまり、午後の時間帯は、生理的にどうしても眠気を感じてしまう、これにより集中力が下がってしまうのです。

それでは具体的にどのように対処をしていけば良いでしょうか?

ランチは13時~14時の間にとる

まず最初にすべきは、ランチの時間をずらすことです。

理由は、貴重な時間の確保にあります。

こちらのグラフを見て下さい。

このグラフの通り、世の中のほとんどの人が12時から13時の間にランチをとります。
つまり、この時間帯は混みあうのです。

入りたいお店に入り辛い、入れても食事が出てくるまで時間がかかる、コンビニで調達しようにもレジが並んでいる。
12時から13時は、混みあうので、この時間帯にランチをとるのは時間の無駄です。

シフト勤務などでどうしても、この時間帯でしかランチに行けないのであれば致し方ないですが、自分自身で時間をコントロールできるのであれば、この時間帯は避けましょう(仕事を変えた方が良いとは思いますが)。
ランチは12時に、というのはどこかの誰かが勝手に決めた、ただの固定概念なので、きれいさっぱり捨て去りましょう。

これだけで、この後にすべきことの時間確保ができます。

ランチでは炭水化物を食べない

次に考えることは食べる内容です。

結論、ランチでは炭水化物は避けて下さい。

炭水化物は、お米、麺類、パンなどに多く含まれています。
丼ものやラーメン、パスタ、サンドイッチ、総菜パンなど、これらのメニューはランチでは食べないようにしましょう。

理由は血糖値の急激な上昇と、その後の急激な減少を抑えるためです。

こちらのグラフを見て下さい。
これは、人が炭水化物を多く含む食事をとった際の血糖値の動きを示したものです。

この食事後の急激な血糖値の低下は、脳の活動に使うエネルギーの一時的な低下も招くため、激しい眠気につながります。
食事後30分から2時間ほどの間、血糖値が安定せず、集中力が低下した状態が続くのです。

これと、ヒトのサイクルが被るため、二重で集中力を低下させていきます。
逆に言うと、炭水化物をとらなければ、集中力を低下させる要因を一つ取り除けるのです。
(ダイエット、つまり減量にも良いので、二重でお得です。)

これは、集中力を阻害させる要因を一つ取り除く方法ですが、次の2つは集中力を向上させる方法です。

ランチ後、コーヒーを飲む

コーヒーは眠気に効果的なのは、よく知られた事実ですね。

実際にコーヒーは、眠気の抑制に劇的な効果があります。

こちらのグラフを見て下さい。
これは、20時間起き続けた後にカフェインを摂取し、その後の業務遂行能力がどのように変化するのかを示した図です。

この通り、カフェイン摂取後、集中力(作業改善)について、1時間以内に効果が出始め、その後2時間程度は効果が継続します。

人のサイクルと食事後の血糖値変化の影響に、ちょうど被らせる形になるので、ランチ後にコーヒーを飲むのは、クリティカルにプラスになります。

コーヒーを飲んだら、15分の仮眠をとる

次が仮眠です。

眠いなら、眠ればいいじゃない、というシンプルな脳筋的発想ですね。

実際、仮眠は眠気の改善に劇的な効果を発揮します。

多くの実験により、15分~30分程度の短時間の睡眠により、眠気の改善と作業効率の維持(低下の防止)につながることが示されています。

これは短くても、また長すぎてもよくないことがわかっています。
(中途半端に昼寝をして、午後、ずっと頭がボーっとした経験がある方は多いでしょう。)

繰り返しますが、15分~30分程度の仮眠です。

お昼ご飯を食べて、コーヒーを飲んだ後、耳栓をして、アイマスクをつけて、15分仮眠するのです。

30分以内に食事を終える、その後15分仮眠とる、とするならば最低でも15分を確保でき、その時間を有意義に使えることも指摘できます。
これが、お昼の時間をずらす効能です。
朝の内にお昼ご飯を用意してしまって、買いに行ったり食べに行く時間を節約するのも手です。

これで、午後の時間を有意義に使えるでしょう。

まとめ

以上、

  • ランチは13時~14時の間にとる:貴重な時間の確保のため
  • ランチでは炭水化物を食べない:血糖値の低下により眠くなる
  • ランチ後、コーヒーを飲む:カフェインの眠気防止効果は劇的
  • コーヒーを飲んだら、15分の仮眠をとる:仮眠は効果的

これらを全て行えば、午後の眠気による集中力の低下を、劇的に改善することができます。

しかも、難しくなく、簡単にできることです。

お昼の時間は自由に使いたい、意識が高い方ならば勉強したい、と思うかもしれません。
しかし、午後の時間を非効率的に消耗させてしまうならば、素直に休憩にあてた方が良いです。

お昼くらい、外に散歩に行きたいんだ、外に食べに行きたいんだ、という人もいるかもしれません。
別にそれは構いませんが、基本的には時間や集中力(眠気)とのトレードオフなので、何を取り、何を捨てるのかは、よく考えた方が良いでしょう。

なお、職場で昼寝をするのを良しとしない会社もあります。
どう考えたって非合理的ですので、そのような会社だったのならば、早々に転職先を探しましょう。
時間を効率的に使いましょう、という話をしている中で、在籍していること自体が無駄な会社に勤め続ける理由は無いです。
さっさと見切りをつけて、もっと条件の良い所にうつりましょう。

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取締役会

社外取締役の任期を短縮したい場合の実務的手順

ベンチャー企業も大きくなってくると、社外取締役を選任するようなステージがいつかは訪れます。
その際、候補者の方が適切に役目を果たしてくれるのか不安に思うのは社長ならば当然でしょう。
ここでは、社外取締役の任期を、社内取締役より短く設定し、適切な方なのか否かについてリスクを下げる方法について解説していきます。

大枠の流れ

① 定款を変更する

② 株主総会招集通知上で、社外取締役候補者の任期を明記する

③ 株主総会議事録上、選任された社外取締役の任期を明記し、登記する

定款変更内容

まずは定款の変更です。

取締役の任期に関して、会社法上では、「(取締役の任期)第三百三十二条 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。」と記載があります。

つまり下記の通り定款を変更すれば、社外取締役の任期を柔軟に変更できることが可能になります。

定款変更後の実務としては、株主総会にて、普通決議での任期付き選任を行う形になります。

(取締役の任期)
第〇〇条
取締役の任期は選任後2年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結時までとする。ただし、株主総会の決議によって社外取締役の任期は短縮することができる。

招集通知の記載例

それでは、招集通知の記載に関して、具体的に示していきます。
定款変更が既にされているという前提のもの(通常の記載例)と、定款変更と同時に選任を行う場合でわけます。

通常の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、社外取締役〇名の選任をお願いするものであります。

なお、社外取締役の任期を1年として上程するものであります。

取締役候補者は次のとおりであります。

定款の変更と同時に行う場合の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、社外取締役〇名の選任をお願いするものであります。

なお、第□号議案が承認可決され社外取締役の任期が株主総会の決議によることとなることを条件として、社外取締役の任期を1年として上程するものであります。

取締役候補者は次のとおりであります。

株主総会議事録の記載例

株主総会後は議事録の作成です。
任期については、認識相違を生みやすいので、少々くどいくらいに確認をする方が良いでしょう。

こちらも、選任のみの場合と、定款変更と同時に行う場合で記載例を示します。
定款変更と同時に行う場合では、1文を追加すれば問題はありません。

なお、新任の取締役については、実印と印鑑証明書が必要になりますので、事前に取得依頼を出しておきましょう。
現実的に大きな問題は考えづらいですが、期限内の登記対応ができない原因の1つに、必うような書類が揃わない、というのはあるある話ですので。

通常の記載例

第〇号議案 取締役〇名選任並びに社外取締役の任期決定の件

議長は、企業の活性化及び一層の業績向上を期すため、下記取締役〇名を社外取締役として選任の必要がある旨を述べた。社外取締役の任期は、選任後1年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会終結時までとしたい旨を述べた。その賛否を諮ったところ、満場一致をもってこれに賛成した。

よって、議長は次の通り選任することに可決された旨を宣した。

取締役 〇〇○○(新任)

※ 取締役 〇〇〇〇については、▲月◇日に承諾予定である旨が説明されると共に、社外取締役としての選任であることが確認され、その任期は1年となる旨が確認された。

定款変更と同時に行う場合の記載例

社外取締役の任期は、前号議案での定款変更を受け、選任後選任後1年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会終結時までとしたい旨を述べた。

以上です。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】居酒屋の事業計画を作ってみよう

前回に引き続き、飲食店系で事業計画を考えてみます。
今回は居酒屋の事業計画です。
こちらも脱サラ・独立開業の定番ですね。

なお、前回のコーヒー店はこちらになります。

お題:居酒屋の事業計画を作ってみよう

条件としては、次の通りです。

  • 池袋、新宿、渋谷のような週末も人が来るビジネスエリア
  • 駅からは10分以上離れた場所
  • 60席くらいの中規模店舗
  • 古いビルの地下店舗、もしくは2階以上の空中店舗
  • 営業は夜のみ

それでは、考えてみて下さい。

試算:週末と繁閑が重要

飲食店の売上高の構成要素

コーヒー店でも示した通り、飲食店における売上高の構成要素は次の通りです。

売上赤 = 客数 × 客単価

まずは、これが基本になります。

週末

次に考えるのが週末です。
週末とは、金曜日と土曜日、加えて祝休日が続く場合の休日中日も該当します。
こういった日は、他の日に比べて多くのお客様が来店する傾向があります。

そのため、シミュレーション上は週末日数をカウントし、別に計算する必要があります。

繁閑

更に考えるのが繁閑です。

飲食店の売上は年を通して一定ではなく、波があります。
12月は忘年会、3・4月は歓送迎会で盛り上がるのはイメージがつきやすいでしょう。

逆に2月や6月など、ほとんど客の入りが無いのも、何となくは伝わるかと思います。

こういった、繁閑を月単位で考えていく必要があります。

事業計画を考えてみる

上記をもとに作成した年間の事業計画は、例えば次のようになります。

これは当然、一つのシミュレーションなので、提供する商品の内容や単価設定、立地・客層に応じて大きく変動していきます。

結構、ボリューミーな印象を受けるかもしれません。
図もちっちゃいですね。
しかし、これでも事業計画策定上のミニマムな粗々なものです。

全体を通して見えること

一番右端の数字を見て下さい。

3.4%とあります。

これは年間の営業利益率です。
飲食店の営業利益率は、大体1桁%台半ば前後なので、どこの飲食店もおおむねこんな感じでしょう。
まあまあ普通の飲食店ですね。

ようは、非常に厳しい、ということです。

仮に、うまく営業していても、何かの外部要因によってお客様が前年より数%減ってしまったらどうなるでしょうか?
他にも、食品原価があがったり、お客様が暴れて店舗備品が壊れた修繕費用がかかったり(当該、客は逃げるなり、弁償しなかったり、訴訟するにも手間とお金がかかるし。)、そんなマイナス要因が一発、二発来たら、あっという間に赤字です。

次の図を見て下さい。

これは居酒屋業界の5F(ファイブ・フォース)分析です。
なんで、このような業界なのかというと、上記の図の通り、居酒屋は参入障壁が低く、また業界内競争・業界外競争も激しく、加えて全体として交渉力が低い、という点が指摘できるからです。

飲食店は居酒屋に限らず、3年で7割、10年で9割が廃業します。

飲食店の世界でうまくやっていきたいのであれば、うまくいかない前提で、入り口から精緻にシミュレーションし、マーケティングも顧客調査から確実に行い、加えて流行の変化なども敏感にとらえて即座に対応する、ということが必要です。
カンマ何%の積み上げにより、ようやく利益が出る世界。
それが飲食業界です。

私は、数ある業界の中で、飲食店がもっとも難易度が高いと考えています。
だからこそ面白いと思うし、好きなんですけれどね。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】コーヒー店の事業計画を作ってみよう

脱サラ・独立開業を、一度は夢見た、もしくは目標としている人は多いのではないでしょうか。
ここでは、独立開業で参入しやすい飲食店業態、コーヒー店をサンプルに、事業計画の基礎を作ってみましょう。
コーヒー店を開業したら、どれくらいの売上を見込めるのでしょうか?

お題:コーヒー店を開業したら、どれくらいの売上が見込めるか?

条件としては、次の通りです。

  • 半住宅街、半ビジネス街のエリア
  • 駅から歩いて3分~5分ほどのまあまあ人通りがある路面店
  • 15坪~25坪程度で、席数も20席未満の小規模な店舗
  • 業態は夕方まではコーヒー店で軽食も提供、夜はバー形式

それでは、考えてみて下さい。

試算:事業計画では条件を細かく設定しないといけない

飲食店の売上高の構成要素

飲食店において売上高の構成要素は何か?
それは次の公式であらわせます。

売上高 = 客数 × 客単価

これをベースに、条件を細かくわけて考えていきます。
具体的には時間帯と、平日・土日祝日の区分、繁閑についてです。

コーヒー店がどのように営業しているかをまずは想像してみてください。

時間帯

まずは時間帯で考えます。

朝の少数ながら朝食需要とテイクアウトのコーヒー。
昼はランチ需要とテイクアウトのコーヒー。
午後はちらほらとスイーツ需要と、仕事スペースを探すビジネスマン利用。
そして夜はバー需要。

それぞれ利用形態に併せて、利用人数や客単価が異なってくるでしょう。

平日・土日祝日の区分

同様に、平日・土日祝日の区分についても考えます。

半ビジネス街というエリアだと、土日祝日の朝と昼は、基本的に客の入りを期待できません。
場合によっては、終日、全く入らない日もあってもおかしくないでしょう。

事業計画を考える上では、これらも見込まなければいけません。

繁閑

繁閑もそうで、飲食店というものは、1年を通して同じような売上高で推移するものではありません。

冬はホットコーヒー、夏はアイスコーヒー需要があるでしょうが、それ以外の月ではあまりコーヒーの販売が伸びない可能性があります。
逆に季節要因を利用するという観点ならば、コーヒーギフトを用意すれば、12月の売上の足しになるかもしれません。

バーも同様で、2月や8月のような時期は基本的に厳しい数字になるはずです。
季節要因で考えるならば、12月はギフト需要同様、バー業態の売上も伸びるでしょう。
カップル向けに雰囲気を整えてあげると効果的でしょうね。

事業計画(売上計画)を考えてみる

これらの要因のパラメータをそれぞれ設定し事業計画(売上計画)を計算すると、例えば次のようになります。

上記は、提供する商品の内容や単価設定、立地・客層に応じて大きく変動していきます。

結構複雑に見えるかもしれませんが、ビジネスをやる上では最低限、このレベルでシミュレーションをしなければなりません。
これでも、最初期に検討する、本当に粗々なものです。
変数がいくつかあるので、その条件設定を見誤れば、せっかく意気込んで独立開業したにもかかわらず、失敗で終わりかねません。

より正確に表現するならば、飲食店は3年以内に7割が廃業します。
それくらい厳しい世界なのです。

業績全体としてはどうなるだろう

今度は、上で作った売上計画を元に損益計算書を簡単にシミュレーションしてみます。
損益計算書とは、事業における通信簿(成績表)みたいなものです。

損益計算書を考えるにあたり、費用の構成要素も考えなければなりません。
飲食店においては、FLR(フード:原価率、レイバー:人件費率、レント:家賃・減価償却費率)という3つの費用が大きな構成要素として存在します。

飲食店における原価率は20%~30%位で、コーヒーの原価率は25%位、フードやお酒も提供するなら平均で30%位になるでしょう。
人件費率と家賃・減価償却費率も20%~30%で設定されるのが一般的です。
(減価償却費とは、内装や機器類の費用を月単位で按分したものです。)
加えて、その他の諸経費として10%程度がかかります。

これらを組み込んで損益計算書を作ってみると、例えば次のようになります。
(借入金は500万円で期限一括の利率2%としました。)

これを見て、どう感じましたか?

独立開業は覚悟が必要だね

オーナーの取り分

独立開業をするからには、やはり「お金持ちになりたい!」という気持ちが大なり小なりあるのではないでしょうか?

仮にオーナーであるあなたが一人で営業していても得られるお金は、人件費部分の約472万円と純利益の約125万円です。
合計で600万円にも届きません。
営業を少しでも楽しようと、アルバイトを雇えば、オーナーの取り分はもっと減ります。
小さなコーヒー店を1店舗開業するならば、安全性・安定性含め、どこかの会社で正社員として働いていた方が、割が良いかもしれません。
儲けようと思うならば、何店舗かお店を出して、人を使いながら、うまく切り盛りする必要があるでしょう。

実際のお金の動きに関しても注意が必要です。
借入の返済分も含めて考えれば、手元に残る会社としてのお金は1年で100万円~200万円です。
精々が1月分の売上高です。
今現在のコロナの影響を考えてみて下さい。
外出自粛が続いたらどうなるでしょう?
これまで汗水流して、何年もかけて稼いだお金が、たったの数ヶ月で溶けて消えてしまう
のです。

独立開業には、かなりの覚悟が必要

ここまで見て考えれば、独立開業にはかなりの覚悟が無ければやれない、ということがわかるでしょう。
そして、やりたいことが好きでないと続けられない、ということも何となくわかるかと思います。
中途半端な覚悟ならば、絶対にやらない方が良いでしょう。

しかし逆に考えれば、覚悟さえあるならば、うまくやれるとも考えられます。
どういうことか?と言うと、まわりのお店の多くは、何かしらのチェーン店で、そこで働いている人たちは雇われている人たちです。
つまり、ライバルのほとんどは、中途半端な覚悟しか持っていない人たちのはずです(当然、正社員として働いていても、本気で取り組んでいて優秀な人はいますが)。

「そんな人たちに、私が負けるはずがない!」
飲食店は結局のところ、店長の力量で業績が決まりますので、本気で事業に取り組めるのであれば、勝算は十分に見込めるはずです。
(実際、チェーン店で働いていたトップクラスの店長が独立開業して、他のお店を押しのけて大繁盛しているケースは多いですね。)

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セキュリティ

メールのパスワード別送に意味はあるのか?~メール誤送信防止機能のすすめ~

メールに添付ファイルをつけて送付する場合、暗号化(パスワード)することが多いでしょう。
この際のパスワードは、別送で通知される場合が、同様に多いのではないでしょうか。
このメールのパスワード別送に意味はあるのでしょうか?

忙しい人向けまとめ

  • メールのパスワード別送には、セキュリティという観点では意味が無い
  • 「GmailSend Address Checker」などによる送信前のチェック機能の追加がおすすめ
  • Gmail標準の「取り消し機能」もおすすめ

意味があるという視点

メールのパスワード別送に意味があるとすれば、下記の理由が考えられます。

  • 第三者への情報漏えいの防止
  • 情報セキュリティに取り組んでいることの取引先へのパフォーマンス
  • PマークやISMS等への対応のため

この内、2つ目と3つ目、取引先へのパフォーマンスや、Pマークなどへの対応は、まあ確かにそうなのでしょう。
どちらも本質的に、どこまで意味があるのかは微妙ですが、それが必要ならば対応しなければいけません。
セキュリティという観点ではなく、社会的に求められているから、という観点になります。

それでは、セキュリティの観点、第三者への情報漏えいの防止効果はあるのでしょうか?

意味がないという視点

結論、全く意味が無いとは言わないが、ほとんど意味が無いと言ってよい、です。

暗号化したファイルの送信直後に、同じ宛先にパスワードを別送していては、当然、誤送信防止効果は期待できないでしょう。
そのため、機械的に自動で暗号化し別送付するシステムは、意味がありません。
元々のメール送信先が間違っていたら、別送したパスワードも間違った宛先に送信されてしまいますので。

自動暗号化に意味があるとすれば、取引先内で送付したファイルが、みだりに共有されないようにする位でしょうか。

仮にパスワードの別送をやるのであれば、暗号化したファイルを送信後、宛先を改めて再設定した方がよいでしょう。
メール以外の手段、つまり別の経路で送信するという方法も考えられます。
ただし、面倒です。
組織という枠組みで考えた時に、対応しない人がいつかは出てきます。
意識の高い個人は、もしかしたら対応できるかもしれませんが、急いでいる時に省略してしまったりするかもしれません。

そこで便利になるのが、メールの送信時のチェック機能の追加です。

Gmailにメール送信内容チェック機能をつけてみる

「GmailSend Address Checker」という、Googleクロームの拡張機能があります。
これは、メール送信前に、宛先や件名、添付ファイルの有無にチェックをいれないと、送信できないようにする機能を追加するものです。

人間はミスをする生き物で、「送信前に確認しよう」と思っても、うっかり忘れたり、面倒になって省略したりします。
これを強制的に確認しなければいけないように、機能を追加してしまうのです。

この拡張機能をインストールすると、通常はGmailのメール作成時に「送信」となっているボタンが「確認」というボタンに変わります。

「確認」ボタンをクリックすると、次の通り「すべてチェックしてください」というウィンドウが開きます。
「From」「To」「Cc」「Bcc」「件名」「添付」の項目をチェックしないと、次の段階に進みません。

□にすべてチェックをいれると、グレーアウトしていた「OK」のボタンがクリックできるようになります。

これでようやく、メールを送信できるようになります。
「確認」のボタンが、「送信」のボタンに変わっています。

ここまでやっても、ズボラに機械的に全チェックを入れてしまう人もいるでしょうが、かなりの誤送信防止効果を期待できるでしょう。

メールの取り消し機能も追加してみる

Gmailには、送信を取り消す機能もあります。

Gmail画面の右上の方にある⚙(歯車)をクリックすると「設定」画面を開けます。
この「設定」画面の「全般」タブで「送信取り消し:取り消せる時間:〇〇秒」という項目があるので、ここで秒数を設定できます。

「30秒」を設定しておけば、誤送信防止効果を向上できます。

まあ、これでも、組織が大きくなると、誤送信する人がゼロにはならないんですけれどね、、、。

まとめ

「GmailSend Address Checker」はGmailでかつGoogleクロームに限定されますし、取り消し機能もGmailの機能です。
他のブラウザやメールシステムを利用している場合は、個別に機能追加が必要ですが、「送信前チェック機能」と「取り消し機能」を追加すれば、誤送信はかなり防げるはずです。

メールのパスワード別送は基本的に意味が無いので、パフォーマンスではなく、本気でセキュリティ向上を図りたいのであれば、要検討でしょう。

ちなみにですが、頻繁にデータをやりとりするのであれば、事前にパスワードを取り決める、という方法や、Googleドライブのような共有フォルダを使用する、という方法があります。
最近は、後者の共有フォルダ方式で対応してくれる企業も増えてきましたが、銀行や伝統的大企業などでは対応してくれない(できない)所がまだ多いですね。

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取締役会

WEB会議での取締役会における即時性、双方向性の確認

この2,3ヶ月でWEB会議が広く行われ、慣れた方も多いでしょう。
取締役会は、通常の会議と異なり、配慮しなければならない点が複数あります。
特にWEB会議のような方法では、最悪、取締役会が無効となるリスクもあります。
ここでは、WB会議での取締役会における運営上の注意点を解説していきます。

忙しい人向けまとめ

WEB会議、テレビ会議、電話会議の方式での取締役会開催においては次の2点が重要

  • 即時性
  • 双方向性

即時性、双方向性に対応するために、次の4点を実施する

  • コミュニケーションに不備が無い事の適時の確認、特に最初と最後で確認をとる
  • 声とジェスチャーでの意思表示
  • 早い内での議事録の作成と回覧
  • 会議記録のデータでの保存

即時性、双方向性の確認が重要

WEB会議に限らず、テレビ会議や電話会議の方式における重要な点が2つあります。

  • 即時性
  • 双方向性

即時性とは、出席役員の音声が即時に他の出席役員につたわることであり、
双方向性とは、出席役員が同じ場所・空間でコミュニケーションをとるのと同じくらいのやり取りがお互いにできることです。

この点については、下記の通り、法務省および過去の判例により示されているものです。
この2点を担保できるのであれば、遠隔地での取締役会は合法に開催できる、逆にいうと即時性・双方向性に難があるのならば、取締役会は有効ではないとされてしまうリスクがある、ということです。

(略)
取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時にほかの取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み
(略)

法務省民事局 規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について

(略)
遠隔地にいる取締役が電話会議方式によって取締役会に適法に出席したといえるためには、少なくとも遠隔地取締役を含む各取締役の発言が即時に他のすべての取締役に伝わるような即時性と双方向性の確保された電話会議システムを用いることによって、遠隔地取締役を含む各取締役が一堂に会するのと同等に自由に協議ないし意見交換できる状態になっていることを要する
(略)

福岡地判平成23年8月9日(裁判所HP、平成21年(ワ)第 4338 号)

そのため、取締役会の運営上、対応しなければいけない点がいくつか存在します。

WEB会議での取締役会運営上の注意点

即時性と双方向性の確認

取締役会の開始から終了まで、意思伝達に問題が無いことをきちんと確認しましょう。

まず開始時に、議長(通常は代表取締役)より、出席役員に、音声が明瞭に聞き取れること、画像が不備なく映っていること、配布資料が閲覧できること、を確認しましょう。

そして、終了時にも同様に、取締役会全体を通じて、音声・画像の伝達に問題が無かったことを、出席役員に確認しましょう。

会議内においても、議案の一つ一つについて、コミュニケーションが適正にとれていることを、適時確認していきましょう。

声とジェスチャーによる意思表示

WEB会議ですと、ちらほらと音声や画像が途切れてしまう場面が出てしまうこともあるでしょう。
音声が、明瞭に聞き取れない場面も出てくるでしょう。

そのため、意思表示のやり方に関して、声とジェスチャーの両方による意思表示を行うような文化にしましょう。

賛成ならば、「賛成です」という声を出すと共に、手でOKポーズを行うと、明確にその意思を他の出席役員に示すことができるでしょう。

WEB会議だからこそ、多少大げさでも良いので、明確に意思表示が行えるように配慮しましょう。

議事録の確認

取締役会終了後は、記憶が新しい内に議事録を作成し、早々に出席役員に回覧しましょう。

内容確認を依頼し、メールやSlack上で、明確に「確認しました。」「次の通り修正提案をします。」といった確認を取りましょう。
修正提案があり、それを受け入れる場合は、その旨と内容も早々に他の出席役員に回覧します。

Slackのようなチャットツールは、テキストの修正や削除ができてしまうので、できればメールのような相手方が一方的に修正・削除ができないような方法の方が望ましいですね。
画像キャプチャーをとる方法もあるのですが、流石にそこまでやるのは面倒ですので、最初からメールでの確認を取る方がリーズナブルでしょう。

記録をデータで保存する

会議は、その内容について記録をデータで保存するようにしましょう。

明確にデータで保管されているならば、後々になって、言った言わないを防げますし、議事録作成上、不明な点が出た場合に確認を取ることが可能です。

ZoomなどのWEB会議システムは、会議の内容を丸っとデータで保管する事が可能です。
「ミーティングを自動記録」というオプションをセットするだけなので、簡単に設定できます(下記図参照)。

電話会議のような方法の場合は、ICレコーダーなどを使い、録音をするようにすれば良いでしょう。

最後に

WEB会議実施の取締役会は、おそらく過去に数が少なく、これから事例が増えてくるものと考えられます。
そして同様に、各種のトラブル事例も報告されてくるでしょう。
そのようなトラブルに、自分たちの会社が該当することが無いよう、多少くどい位で配慮した方が良いと考えられます。
実際、そこまで負荷が増える物でもないですし、慣れればどうってこと無いはずなので、対応していきましょう。

なお、全員WEB会議参加の場合の取締役会招集通知・議事録の書き方については次の記事を。

議事録の電子署名(電子化)対応については次の記事を参考にしてください。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のロジカルシンキング】空間除菌的なアレは効果があるのか?

空間除菌的なアレを身に着ける方や、オフィスに設置してある会社をちらほら見かけます。
ここ最近は特に多いですね。
しかし、この空間除菌的なアレは効果があるのでしょうか?
結論は「効果はない」なのですが、それを科学的な知識ではなく、ロジカルシンキングベースで考えていきます。

繰り返し書きますが、科学的知識は日常生活の中で入手できる範囲内のもので、論理的に整理できるものです。
効果があるという前提で考えた場合と、効果がないという前提で考えた場合で見ていきます。

まず、効果がある前提で考えてみます。

空間除菌的なアレは効果があると考えた場合

空間除菌的なアレは、ようは、あの首から下げているネームプレート状のものや、机においたボトルから消毒成分が出ている、というものです。
一般的に使用されており、しかも首から下げるような人体に極めて近い場所での使用です。
つまり、その殺菌成分は、人体には悪影響を与えないけれども、空気中の細菌やウイルスは消毒できる程度に強力であると考えられます。

人体には悪影響を与えず、消毒効果だけがあるものがあったとして、まああるかもしれないとは思えます。
つまり、空間除菌的なアレから消毒成分が出て、空気中の細菌やウイルスを消毒していく、という流れで、論理構造的には、効果があると考えてもおかしくはありません。

それでは次に、効果が無い前提で考えてみましょう。

空間除菌的なアレが効果がないと考えた場合

感染症というものは、どのように広がっていくでしょうか?
新聞やニュース等で報道されている通り、インフルエンザやコロナをはじめ、風邪に関連するウイルス感染の多くが飛沫感染という形で広がっていくことは一般的に知られています。

言いたいことは、空間除菌的なアレは、咳やくしゃみで飛び散ったしぶき(飛沫)に対して、即時に消毒効果があるのか?という視点です。

ドアノブや電車の取って、身近な手で直接触るありとあらゆるもの。
そういったものに対しても、空間除菌的なアレから出る消毒成分は効果を発揮するのでしょうか?
空間除菌的なアレから蒸発した消毒成分が、しぶき(飛沫)という液体物に対して効果があるとは、ちょっと考えれば無いと推測ができるはずです。
繰り返し書きますが、空気中の細菌やウイルスに対して効果があったとしても、液体内に存在する細菌やウイルスに対して、効果を発揮できるほどのものなのか?と考えれば、疑問が出てくるはずなのです。

確かなことが言えなかったとしても、そして個別の科学的知識に乏しかったとしても、日常的に入手できる情報だけでもって、論理的に考えて、その効果に対して「疑わしい」と考えられるはずです。

これが科学的思考の基礎です。

ロジカルに整理

論理構造での整理

もう少し、論理構造で整理してみます。

効果があると考えた場合

空間除菌製品からは消毒成分がでている
 ⇒ 消毒成分は人体には悪影響を与えず、殺菌やウイルスにだけ消毒効果を発揮する
 ⇒ 故に、空間除菌製品は有効である

効果がないと考えた場合

空間除菌製品ではしぶき(飛沫)に対して有効でない
 ⇒ ウイルス感染の多くがしぶき(飛沫)である
 ⇒ 故に、空間除菌製品は有効でない

検証フェーズ

ここまで来れば、論理構造で整理した仮説に対して、Googleで個別に検索すれば良い段階に入ります。
思考の正しさを検証するのです。

  • 空間除菌における消毒成分は何なのか?
  • その消毒成分はどれくらい強力なのか?
  • 消毒成分は人体に悪影響が無いのか?
  • しぶき(飛沫)に対する消毒効果はあるのか?

それでは、上記2つの論理構造に対して出てくる疑問に関して、実際に見てみましょう。

実際に調べてみると

ここでは別に空間除菌的なアレの確からしさを検証したいわけではなく、あくまでもロジカルシンキングで考えた時に、どう整理できるか?を示したいだけなので、細かい部分ははしょります。

調べてみると答えは簡単です。

消毒成分は「次亜塩素酸」、漂白とかで使う塩素ですね。
多くの人にとってなじみの物です。
確かに消毒効果があり、高濃度の塩素は室内のカビなどを撲滅させたりすることができるなど、強力なものもあります。

浴槽の掃除で使って、気分が悪くなった経験がある方もいるでしょう。
そう、人体に悪影響が出ます。
つまり、確かに消毒効果はあるが、人体にも悪影響をあたえる、人体に悪影響をあたえないレベルの濃度だと消毒効果が小さい、ということがすぐにわかります。

加えて、しぶき(飛沫)に関しても同様で、効果が明らかにない、ということがすぐに調べてわかるはずです。

最後に

検証、というと小難しく感じます。
実際、慣れていないとロジカルに物事を考えるのは、まあまあ大変でしょう。
考えられたとして、論理構造で整理し、示すことができるようにするのも同様に大変です。

しかし、ロジカルシンキングの効用として、自分自身の知識が及ばない領域でも、疑問を整理し、検証するだけのベースを構築できる点を指摘できます。

会社として、空間除菌的なアレを購入している所もあるかと思いますが、ロジカルに考えられれば、科学的な知識が無かったとしても、効果が無いと推測ができ、無駄な経費を使わずに済んだはずです。
人間が知れることには限りがあるので、何も別に空間除菌的なアレに対する知識が無いといけない、とは言っていません。

大事なのは、ある商品やサービスがうたっている、その効果に対する論理構造が納得の行くものなのか、検証できるものなのか、を考えることです。
ロジカルシンキングは身を守るのです。

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生産性・業務効率化

理不尽クレーム電話を減らす方法

クレームは商品やサービスの品質を向上させる重要な示唆となることが多く、宝の山と言えます。
しかし、中にはどう考えたって理不尽な内容のものも多いのが実際です。
日本の事なかれ主義で辛い思いをしている方も多い、理不尽クレーム電話。
今回は、理不尽クレーム電話を減らす方法を解説します。

なお、商品やサービス、関連するサポートの体制がしっかりしていることが前提です。
あくまでも、理不尽な内容のクレーム電話を減らす方法です。
ですので、WEBサイトでのQAの充実とか、そもそもとして商品管理をしっかりするとか、そういうのは当たり前にやりましょう。

忙しい人向けまとめ

  • 録音する旨を伝えると、ひるんでしまい、無茶苦茶なことを言いづらくなる
  • 自動音声応答で最初に伝えるなどの方法がよい
  • フリーダイヤルをやめると、電話代がかかるのを嫌がり、電話自体が減る
  • そもそもとして、電話自体を廃止すれば、クレーム電話がなくなる
  • WEBサイトの問い合わせフォームやチャットフォームの設置など、別にわかりやすく問い合わせ対応ができるようにすればよい
  • 電話というコミュニケーションツールは無駄なので、廃止を含めて検討した方が良い

録音する旨を伝える

録音は有用

こちらの記事でも簡単にふれましたが、録音はクレーム電話を減らすのに有用です。

まず当たり前の話ですが、言った言わないをなくせます。
コミュニケーション上の衝突でよく起きるのが、言った言わないですが、これを防げるのです。

そして、電話が録音されてるとなると、ひるんでしまうのでしょう。
わーっと何かをまくし立てたり、罵詈雑言を浴びせたり、無茶苦茶な要求をしてきたり。
そういう理不尽なクレーム電話を減らせるのです。

証拠が残らない状況だと、無茶苦茶なこを言えるというのも卑怯な話なのですが、間違いなく録音は効果があります。

録音が嫌だという方への対応は?

中には録音は嫌だという方もいらっしゃいます。

そういった方への対応は、例えば次のような方法があります。

  • 「会社の方針」と伝える
  • 「お客様のご意見を正確に伝えるため」と伝える
  • 「録音できないような内容であれば対応できかねます」と断る
  • 「ご希望であれば、データを差し上げます」と伝える、ただし手間が増える可能性があるので微妙

自動音声応答で伝えるのがリーズナブル

しかし、もっとイージーな方法は、自動音声応答で電話録音する旨を最初に伝えることです。

「この通話は、お客様への対応の品質向上のため、録音させていただいております。」

このように、録音音声で冒頭で伝えてしまえば、それでことは済みます。
イージーかつリーズナブルな方法ですので、早々に導入してしまいましょう。

フリーダイヤルをやめる

理不尽クレームをする人は、損をしたくないと思っている人が多い

理不尽クレームをする人は、自分自身は損をしたくない、と思っている人が多いです。
そのため、フリーダイヤルをやめると、途端に理不尽クレーム電話が減ります。

フリーダイヤル、つまり通話にお金がかからない無料の電話窓口だと遠慮なく通話ができるので、いくらでも時間をかけて言いたい放題言ってきます。

問い合わせにお金がかかってしまう、という状況を作りましょう。

改めて、クレーム電話が減ることによる効能

上の録音でも言えることなのですが、クレーム電話が減ると次のような効果があります。

  • 長時間通話の減少
  • 残業時間の減少
  • 経費削減(フリーダイヤルの負担分が減る)

併せて、従業員の人数が少ない場合は、本質的な営業活動にまわせる時間が増えるので、業績向上にも寄与する場合もあるでしょう。

日本は事なかれ主義で、如何にトラブルが起きないかという考えで、負担を現場に押し付けがちです。
しかし、クレーム電話が減れば、業務の効率化ばかりか、状況によっては業績向上効果もあるので、現場仕事と考えずに真剣に考えた方が良いでしょう。

フリーダイヤルが無いことに対するクレームにはどうする?

「そっちからかけなおせ」と言って、連絡先だけ伝えて切る方が想定されます。
そういう方には、折り返し連絡しつつ、冒頭で「録音する」旨を伝達しましょう。
多少は冷静な会話が期待できるはずです。

「フリーダイヤルを導入しろ」という方には、「そのような声があったことを社内で共有させていただきます」と返し、事実上のスルーをきめるのが良いでしょう。

別のフリーダイヤルの窓口を探し、そちらにかけてくる粘着質な方もいらっしゃいます。
例えば、受注専用の窓口とかですね。
そういう場合への対応は、電話での受注の廃止が良いです。
今の時代、インターネット経由でいくらでもできるはずなので、古い方法を改めることを検討するのが良いでしょう。
お問い合わせ窓口への誘導も手間がかかりますし、純粋に無駄です。

いっそのこと電話自体を廃止する

そして、一番の方法は、いっそのこと電話自体を廃止する方法です。
当たり前ですが、電話が無ければ、電話は鳴りません。
HPから、電話番号を消してしまいましょう。

今の時代はインターネット上でいくらでもやり取りができます。
問い合わせフォームやチャットフォームを用意し、簡単にかつわかりやすい場所に問い合わせ窓口が設置してあれば、通常は十分なはずです。
実際、最近は電話問い合わせ窓口を廃止している企業も増えてきました。

また、電話代行業者も増えてきました。
一次受付は代行業者が担当し、重要な電話だけ折り返し対応するようにすれば、効率が劇的に向上します。

例えば、リンク先の代行業者ですと、管理機能がSlackと連携できるようになっており、電話があったらSlack上に通知が飛んでくるように設定できます。

fondeskのSlack通知イメージ

最後に

今の時代、基本的に電話でやり取りをしなければいけないようなことなど、ほとんど無いはずです。
電話というコミュニケーションツールは、非常に無駄なので、早々に廃止を含め、検討をした方が良いです。
特に最近の若い方たちは、電話を使う場面が少なく、苦手意識を持っている方が多いです。
離職率防止という観点でも電話廃止は有用ですので、これも含めて検討をする価値があります。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】インフルエンザの予防接種はコスパが良いか?

今回の「今日のフェルミ推定」はインフルエンザの予防接種のコスパ試算です。
個人の視点と、企業の視点(会社で補助すべきか否か?)のそれぞれで考えてみます。
それでは、見ていきましょう。

(参考)フェルミ推定とは

フェルミ推定をご存じない方は、別で検索いただくか、下記記事も参考にしてみてください。

インフルエンザの予防接種の状況

参考までですが、インフルエンザの予防接種を受ける人は4割超ほどです。

インフルエンザの予防接種に関するアンケート n=2,000 2019年

予防接種を受けない人は、その理由の3番目(事実上2位タイ)に「費用が高い」「費用が高そう」をあげており、27%ほどです。

インフルエンザの予防接種に関するアンケート n=2,000 2019年

お題:インフルエンザの予防接種はコスパが良いか?

あなたは、インフルエンザの予防接種を受けようか否かを迷っている状況です。

今までかかったことがあるない関係なく、とりあえず時間的にも金銭的にも問題が無いとします。

つまり、純粋にインフルエンザの予防接種を受けるためにかかるコストと、万が一かかった時に失う時間との比較で考えてみて下さい。

試算

それでは、試算していきます。

感染率の推測と、かかってしまった場合に失う時間の見積もりがポイントでしょう。
感染率はざっくり10%、失う時間は3日×16時間の合計48時間とします。
時間価値は日本人の平均給与から逆算して2,000円を設定します(これは他の推定でも使用している)。

計算式は次の通りになります。

インフルエンザに感染した場合の損失
 = 感染率 × 失う時間 × 時間価値
 = 10% × 48時間(3日×16時間) × 2,000円
 = 9,600円

予防接種にかかる費用は、直接の費用だけが注目されますが、当然、受診にかかる時間についても加算すべきでしょう。
計算式は次の通りになります。

予防接種にかかる費用
 = 直接の費用 + 受診にかかる時間 × 時間価値
 = 4,000円 + 2時間 × 2,000円
 = 8,000円

比較すると、9,600円 > 8,000円なので、インフルエンザにかかってしまった場合の損失の方が大きい、つまり予防接種をした方がよい、と考えられます。
少なくとも損はしなさそうですので、感染して苦しむ際の苦痛損失を考慮すると、むしろ安いと言ってよいのではないでしょうか。

なお、実際の感染率は約9.7%のようです。
これは、厚生労働省の資料を元に、「人口 ÷ 患者数」の計算式で算出しています。
加えて、実際の直接費用は3,631円とのことです。

補足すると、単純に感染率で考えるのではなく、実際には感染率と発症率で考えなければ正確性に欠けます。
感染率に関しては、国立感染症研究所の資料ではざっくり30%ほど、発症率は日本臨床内科医会の資料ではざっくり40%ほどとなっています。
つまり、30%×40%で、上記で言う「感染率」で換算すると約12%となり、少なくともフェルミ推定で考えるベースの数字としては納得感のある数値と言えます。

見方を変えてみる:企業は予防接種の補助をすべきか?

上記の試算は難易度が低かったと思います。
これでは面白くないですね。

見方を変えて、企業の総務・人事の担当者の立場で考えてみましょう。
会社で、予防接種の補助をすべきか否かです。

結論を言うと、予防接種費用の補助はコスパが良いのでやった方が良い、です。

予防接種の効果には「有効率」という考え方があります。
こちらはここで解説すると長くなってしまうので、別で検索ください。
ようは、予防接種をしても、必ずしも効果があるわけではない、ということです。

この有効率の考え方と、上述の感染率、発症率を含めて、従業員数100人の企業でシミュレーションをしてみます。
会社内での接種率ごとに、発症者数が下記の表のように変化していきます。

前提

  • 社員数 100人
  • 有効率 70.0% 諸研究より
  • 感染率 30.0% 国立感染症研究所より
  • 発症率 40.0% 日本臨床内科医会より

これをベースに費用対効果を算出します。

接種率目標を70%とすると、約5人、発症者を減らせる計算になります。
補助額を3,631円で設定します。
感染した場合、従業員を1週間休ませなければいけないので、5営業日分の労働力ロスです。

会社補助負担額
 = 100人 × 70% × 3,631円
 = 254,170円

労働力ロス額
 = 5.1人 × 8時間 × 5営業日 × 人件費単価2,000円
 = 408,000円

シミュレーションの結果、明らかに会社で予防接種の負担額を補助した方が良い、ということになります。

労働力ロスが発生したとしても、休ませている間は給料が発生しないから、いる人で何とかカバーすれば実額損失は無い、という考えでも良いのですが。
現代の企業経営者に対する目線で考えれば、明らかなブラック思考ですよね。

とりあえず、個人レベルでも、企業レベルでも、インフルエンザの予防接種はコスパが良い、ということでまとめさせていただきます。

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