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緊急事態宣言解除後の経済シナリオを考えてみる~アフターコロナの経済~

新型コロナウイルスの新規感染者数も幸いのことに、減少に転じてきました。
2020年5月6日に緊急事態が解除されるか延長されるかが注目されています。
ここで、5月6日後、経済がどのように動いていくか、そのシナリオを考えてみます。

ベストシナリオ、ノーマルシナリオ、ワーストシナリオの3ケースです。
ベストシナリオで推移すると良いのですが、あまり期待はできそうにありません。

なお、こちらの記事にもある通り、感染そのものはこのGW明け頃には一定の落ち着きを見せるものと推測しています。

ベストシナリオ

ベストシナリオの起点としては、緊急事態宣言が5月6日に全面的とは言わないにせよ、大部分が解除されることにあるでしょう。
感染も一定程度の落ち着きを見せ始めます。

世の中的には、解除されたからすぐに元の生活に戻る、というようなことは無いでしょう。
リモートワークに移行した企業も、何となく安全が確認されるまでリモートワークを継続する、という選択を取るケースがまあまあな数出てくると思われます。
つまり、今の外出ムードの状況をずるずると続けながら、少しずつ状況が改善していくような動きになると推測されます。

2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の時は、半年くらい、影響が継続したことを踏まえると、2020年の秋口までは、景気が落ち込んだ状況が続きます。
日本では、例年より多くの倒産企業数、経済的死者数(自殺者数)が発生します。

これがベストシナリオです。

ノーマルシナリオ

ノーマルシナリオでは、緊急事態宣言が5月6日に一部解除されるものの、全体としては延長という判断に落ち着く、というものです。
場合によっては、一部を除き概ね解除されるものの、継続して外出自粛・リモートワーク推奨が出される、というケースも考えられます。

延長の可能性が大きそうですけどね。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が5月6日に期限を迎える中、自民党の世耕参院幹事長は国民生活や企業への影響を考え、宣言の延長について今週中にも判断すべきという考えを示しました。

TBSnews 自民・世耕参院幹事長、緊急事態宣言の延長“今週中に判断を” 2020年4月28日

日本医師会の釜萢敏常任理事は28日に開いた記者会見で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う政府の緊急事態宣言について、5月6日を期限として解除することは「難しい」と述べた。特定の都道府県だけ解除すると他の地域からの「人の移動を引き起こすことが懸念される」と指摘し、全国で延長する可能性が高いとの見方も示した。

日本経済新聞 緊急事態宣言の解除「難しい」 日医、全国延長言及 2020年4月28日

この場合も、一定程度は外出する人が増えるものの、元の生活に戻る、ということは無いでしょう。
巣ごもり消費が継続して好調に推移するでしょう。
リモートワークを導入した企業の多くは、そのまま継続するでしょう。

飲食店をはじめ、多くのリアル店舗が根をあげ始めます。
なんとか、4月を乗り切ったリアル店舗も、5月6月、、、と苦境が続き、この先半年で爆発的に倒産数が増加します。
あわせて、経済的死者数(自殺者数)も大幅に増加するでしょう。
場合によっては、新型コロナウイルスによる死者数よりも多くなる可能性もあります。

そして更に追い打ちをかけるように、2020年冬頃から再度、新型コロナウイルスの感染者が増え始めます。
1918年にはじまったスペイン風邪では、3回の波があり、結局のところ収束まで3年がかかりました。
本当の意味での第2波が訪れるのです。
(感染をして回復しても、必ずしも抗体を獲得できるわけではない。加えて、そもそもとして感染者数が少なく、集団免疫効果が少ないので、高い確率で第2波が来ると想定される。)

再び外出自粛の風潮、場合によっては緊急事態宣言も出て、何とか2020年を乗り切った企業に大ダメージを与えます。
当然、2021年のオリンピックの開催も現実的で無くなってきます。
少なくとも、強行しても期待する経済効果を生むことはないでしょう。

なお、既に開催の可能性について、否定的な意見が出ています。

AP通信は10日(日本時間11日)、「組織委員会の事務総長、2021年の五輪開催さえも疑わしいと示唆」の見出しで報道。9日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤事務総長は、新型コロナウイルス流行の影響で東京五輪のさらなる延期や中止を想定する必要性について問われ、「いつ終息するのかは誰も明確に言えない」と語った。

中日スポーツ 「組織委事務総長が2021年の五輪開催は保証できないと語る」米メディアが報道 2020年4月11日

この頃には、有効な治療薬や、ワクチンの開発に目途が立つ可能性もあるので、感染症そのものへの脅威は2021年で落ち着くと、一定の期待が持てます。

2021年一杯まで経済不況が続き、事態がようやく収束します。
非常に多くの倒産数・破産者数と経済的死者数(自殺者数)が発生し、感染症から来る間接的な影響がまき散らせます。
数字を見ず感情的に怖がる人たちと、統計的・科学的に物事を見て感染症そのものよりも経済的ダメージの方が大きいとわかっている人たちの間で、埋めがたい溝も生まれるでしょう。

これがノーマルシナリオです。
可能性として高いと考えているため、少なくともノーマルシナリオ前提で企業の経営者・経営企画担当者は事業計画を見ておいた方が良いです。
直近でIPOを考えているベンチャー企業も2021年はきついでしょう。
2022年にまで伸ばす前提で考えた方が良いです。

ワーストシナリオ

上述した通り、1918年のスペイン風邪のように、感染拡大が3回発生します。
新型コロナウイルスの感染影響が3年ほど続くのです。
日本においては1918年の第1波よりも、1919年1920年の第2波第3波の方が死者数が大きいという結果になりました。

2020年の外出自粛に辟易とした人々が油断し、2021年の再拡大時には普段通りの生活を続けます。
開発が追い付いたという治療薬やワクチンが、想定よりも効果を発揮しません。
感染症による直接的な死者が2020年よりも多く発生します。

世界的にも同様の動きが発生し、各国で社会不安が継続します。
経済も落ち込み、各国が景気刺激策を乱発します。
具体的には貨幣乱造が考えられ、これによりインフレが世界的に発生します。
アメリカをはじめ、欧米の経済が大幅に落ち込むでしょう。
1929年の世界恐慌を上回る、第二次世界恐慌への突入です。
(景気刺激は必要ですが、やりすぎるとかえって経済にダメージを与えます。)

また、北朝鮮の情勢も不安です。
最悪、北朝鮮の核がロシアないしは中国経由で中東やアフリカ地域に流れることも予想されます。
そうすると起きるのが、欧州・中東あたりでのテロリズムの頻発や、紛争・戦争の発生です。
世界的には経済が落ち込むものの、軍事需要の発生により中国が経済的に台頭します。
アメリカに代わり、中国が世界の経済リーダーになっていく可能性があります。
このワーストシナリオの中でも最悪ルートを辿った場合、第三次世界大戦が勃発する可能性も否定できません。

なお、常々不安視されていた通り、日本ではハイパーインフレが発生します。
日本の経済圏はズタボロになり、倒産企業・破産者の爆発的増加と、感染症による直接死者数を大幅に上回る経済的死者数(自殺者数)が出てしまうでしょう。

これがワーストシナリオです。

(追記)金正恩氏の動向が不透明でしたが、その姿を各種報道の通り見せたようです。
何が真実で、何が誤りなのか、得られる情報からは判断がつかないですが、報道が真実ならば、各流出のリスクは下がったと見て良いでしょう。

ワーストを想定して準備をしよう

流石にワーストシナリオに突入する、ということは起きないものと信じたいです。
しかし、経営者は楽観的に見ていてはいけません。
ワーストシナリオが起きる前提で、できる対策は打っておいた方が良いでしょう。

  • 早々にリストラ策を実行し、事業体をスリムにする
  • 業務のIT化を進め、外出自粛が長期化、もしくは再度発生した場合でも業務継続ができるようにする
  • 固定費を抑制し、売上減少への対応力を高める
  • 金利スワップなどリスクヘッジに対応、金利の大幅増加に備える
  • 既存プレイヤーが凋落し、新規ビジネスのチャンスが増える、時代の変化に注視する

感染自体が落ち着いたとしても、100%間違いなく、経済影響は長引きます。
長期戦前提で、この先1年2年を乗り切りましょう。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】ヒゲ脱毛は時間節約につながりコスパが良いか?

毎朝ヒゲを剃り、スーツを身にまとい出勤する。
どうしても仕事の関係で、そのような生活をしている方が大勢いるでしょう。
ヒゲ剃りは面倒です。
いっそのこと脱毛をしてしまえば?と思ったことがある人もいるでしょう。
今日は、このヒゲ脱毛に関して、コスパが良いか否かを試算してみます。

(参考)フェルミ推定とは

フェルミ推定をご存じない方は、別で検索いただくか、下記記事も参考にしてみてください。

お題:ヒゲ脱毛は時間節約の観点でコスパが良いか?

会社はリモートワークをやらない、ヒゲも剃らなければいけない。
あなたはそんなサラリーマンだとします。

ヒゲは濃く、毎日のことで手馴れてはいるけれども、最低でも5分はかかってしまう。

そんなある日、永久脱毛の広告を見ました。
お値段は、全部で20万円です。

そのような前提です。
さて、ヒゲ脱毛は時間節約の観点でコスパが良いでしょうか?

コスパ試算

これまでは市場規模や事業規模を推定してきました。
つまりマクロな試算ですね。

これを応用して、ちょっとしたことの投資判断に役に立たないか?考えてみます。

ようは、生涯の中でヒゲ剃りにかかる時間から換算される金額的価値と、永久脱毛にかかる費用との比較になります。

計算式は次のようになるでしょう。

生涯の中でヒゲ剃りにかかる金額的価値
 = 1回あたりのヒゲ剃りにかかる時間 × 年間あたりヒゲ剃りの回数 × 現役で働く期間(年数) × 時間価値

ヒゲ剃りにかかる時間を5分、1年に働く労働日数を260日、現役でいるであろう残り期間を30年、時給換算の時間価値を2,000円として、上記式にあてはめてみます。

生涯の中でヒゲ剃りにかかる金額的価値
 = ヒゲ剃りの時間5分/回 × 年間260回 × 30年 × 時給換算2,000円
 = 130万円

結構な金額です。
永久脱毛のコスト20万円と比較しても圧倒的な差があります。
永久脱毛という投資にかかる回収期間も5年程度で済みます。

投資回収期間
 = ヒゲ脱毛のコスト200,000円 ÷ ヒゲ剃りの時間価値(43,333円/年) = 約5年

結論

数字上は圧倒的に明らかな結果となりました。

ヒゲに対する憧れとかが無いのならば、早々にヒゲ脱毛をした方がよいでしょう。
平日の朝の5分を確実に確保ができます。
実際は5分以上の時間がかかるものなので、時間節約には間違いなく有用です。

これは一種の価値観や好みも混じってくる話ではあるので、万人におすすめするものではありません。
しかし、過去の時間を買い戻すことはできません。
将来の時間を買う、という観点で若い内に、早々に永久脱毛という投資をするのは、十分に価値のある検討だと言える
でしょう。

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統計・経済

ロックダウンってあまり意味が無いっぽいぞ、多分、緊急事態宣言も

先行きが不透明な状況が続いています。
将来のシナリオを推定する前提として、まず、新型コロナウイルスの感染拡大はいつまで続くのか?を考える必要があると考えました。
それについて考察すると共に、考察の過程ででてきた仮説を解説します。
ロックダウンはおそらく効果が無いようです。

感染の急拡大が進む期間は1月半ほど

次の対数グラフを見て下さい。
これは、感染の多い国をいくつかピックアップして、感染者数の推移を対数グラフで表現したものです。
(イタリア、フランス、ドイツ、イギリス、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ)
(比較として日本も入れている)

こちらにある通り、多くの国において、1ヶ月から2ヶ月ほどで感染の急拡大が落ち着いています。

もう一度書きますが、対数グラフの動き方を見ている限り、感染が急拡大するのは、せいぜいが1月半程度なのです。

日本でも換算の急拡大がはじまったのが2020年2月26日頃からなので、統計的なサイクルで考えるならば、すでに感染のピークを越えて、終焉に向かっている可能性があります。
潜伏期間の様子見2週間、継続して発生する感染者対応で+αで考えると、日本ではGW明けには、かなり収束した状況になっているのでは?と希望観測的に考えます。

5月はGWに入るため、多くの働く方にとって、休みやすい環境に入ることと、気温湿度が共に上昇していき、ウイルスにとって生存しにくい環境に入ることも指摘できます。

このままなんとか、感染の拡大が落ち着いてくれると良いのですが。

ロックダウンはコロナウイルスの感染拡大防止には効果が無い

感染拡大封じ込めのためにロックダウンを行っている国があります。
部分的な封鎖や、緊急事態宣言に留めている国もあります。
その効果の程はどうなのでしょうか?

次のグラフを見て下さい。

この対数グラフは次の視点での比較を行ったものです。

  • ロックダウンを行ったイタリアとスイス
  • 地域封鎖にとどめたアメリカ
  • 何もしていないスウェーデンとベラルーシ
  • 比較として日本

対数グラフを見る限り、もちろん国によって動き方に差異はあるにせよ、ロックダウンを行った国と、行っていない国、部分的な地域封鎖に留めた国で大きな差異がありません。
疫学的な観点ではなく、統計学的な観点において、どうやらロックダウンや地域封鎖は、感染拡大防止の効果が無いようなのです。

緊急事態宣言を行った日本の推移は不思議な感じです。

なお、死者数の推移としては下記の通りになります。
こちらのグラフからも、新型コロナウイルスの影響は(感染という観点のみで)落ち着きを見せ始めていることがわかると共に、ロックダウンや地域封鎖を行っていようが、いまいが、差異が無い、ということがわかります。

日本の推移が不思議な感じ

日本は何故、感染が急拡大しつつも、他国に比べてそのペースを抑制できているのでしょうか?
これは、現時点において、説明をするだけのデータが揃っていません。
仮説として考えられるのは、次のようなものです。

  • そもそもとして接触が少ない文化(握手やハグが無い)
  • マスクを当たり前に着用する文化
  • 手洗いうがい、と言われるように幼少期より衛生面での教育が行われている
  • 他国に比べて規律正しいから外出自粛に全体として大人しく従っている可能性
  • PCR検査の数が少ないだけ(別にこれは悪くはない)

将来的に新たな感染症脅威が訪れた時のためにも、何故、日本は感染拡大のペースが少ないのか、医学や疫学的な観点だけでなく、行動的観点からも解明が必要でしょうね。
とりあえず、上述の通り、GWを乗り越えれば感染急拡大は落ち着くはずなので、ここまで来たのならば後少々、外出を自粛し、封じ込め切るのが良作でしょう。

(私個人の考えとしては、当たり前の衛生対応、つまり無駄に人や物に接触しない、マスク着用、手洗いうがいをしていれば問題なく、外出自粛は過剰対応、という前提に立っている。)

(参考)対数グラフについて

上で掲載したグラフは、対数グラフと呼びます。
対数グラフとは、グラフの軸を実数ベースのスケールではなく対数スケールで表現したグラフのことです。
数字の範囲が非常に広いデータを取り扱えます。

感染症の観点では、次の効果があります。

  • 感染症は指数関数的に拡大していくため、実態に即している
  • 感染拡大の推移(変化)を直線的な変化で表現できるため、シナリオとしてどのような状況にあるのかがわかりやすい
  • 状況が似ている国や異なる国が直感的にわかるので、参考にする国を抽出しやすい
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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】人工肉(培養肉)への参入は儲かるか?市場規模は?

環境志向・健康志向の高まりと、科学技術の発展を背景に、培養肉による代替食品(人工肉)が開発されはじめています。
この培養肉市場への参入は有りなのか無しなのか?
フェルミ推定をベースに考えていきましょう。

(参考)フェルミ推定とは?

フェルミ推定については、下記の記事も参照し、イメージを掴んでいただければと思います。

お題:代替食品(培養肉)市場はどれだけのサイズ感を見込めるか?

生理的な拒否感が大きそうな培養肉ですが、アメリカを中心に欧米では一定のマーケットができはじめています。
食肉の生産コストは高く、また環境負荷も大きいため、日本もいずれは培養肉が一般的になる時が来るでしょう。

では、仮にあなたが食品メーカーに務めていて、最新技術に関連するポジションについていたとします。
培養肉市場に参入するでしょうか?

とりあえず、生理的なものは脇においておいて、市場規模だけで考えてみましょう。

フェルミ推定

まず、培養肉が普及しはじめた段階と普及した段階で考えた時、そしてその中間で考えます。
アーリー、ミドル、レイターですね。

アーリー期

アーリー期は、本当にごくごく一部の極めて関心が高い層が、高い値段を払って購入・消費するようなイメージになるでしょう。
計算式は次の通りになります。

アーリー期の市場規模
 = 人口 × 健康や健康志向に極めて関心が高い層 × 培養肉への関心も高い層 × 購入単価/日 × 消費ペース

それぞれ仮でパラメータを当ててみると、下記の通り、125億円がざっくり見込めます。
テストマーケティングとしては、十分すぎるほどのサイズ感と言えます。
週1消費ではなく、月1消費としても約29億円ですので、初期の市場形成段階としては良い数字でしょう。

アーリー期の市場規模
 = 人口1.2億人 × 関心度極めて高い率1% × 培養肉高関心率20% × 1,000円/日 × 52日(週に1回消費)
 = 約125億円

ミドル期

ミドル期では、値段が下がり、そこまで関心が高くない層も買うような想定になると思われます。
関心無し層、中間層、高関心層の3パターンで分けて考え、それぞれざっくりとパラメータをはめてみます。
すると、市場規模としては約677億円となり、マーケットとしては大企業でも狙うに値する数字感になってきました。

ミドル期の市場規模
① 人口 × 健康や環境志向への関心度0%(60%) × 培養肉関心率(0%) × 0円 × 0日 = 0円


②人口 × 健康や環境志向への関心度50%(39%) × 培養肉関心率(5%) × 300円 × 52日 = 約365億円


③人口 × 健康や環境志向への関心度100%(1%) × 培養肉関心率(20%) × 500円 × 260日 = 約312億円


① + ② + ③ = 約677億円

レイター期

レイター期になると、市場のあり方が大きく変わると推測されます。
具体的には、加工食品や、ひき肉などに、培養肉がまざるような状況です。

この場合、食肉市場全体のうち、単価の安い培養肉が〇〇%の割合で構成される、というようなイメージ感になると考えられます。
まずは食肉市場の規模を考えます。

食肉市場規模
 = 人口 × 1日あたりの肉消費額 × 365日
 = 1.2億人 × 100円 × 365日
 = 4兆3,800億円

そして、培養肉が最終的に30%混ざるような構成で考えます。
(現在でも、植物性タンパク質が食肉加工品に当たり前のように含まれているので、これくらいはいくだろうと推測。)

そうすると、下記の通り約1.3兆円の市場規模が想定されます。
結構な数字です。

レイター期の市場規模
 = 食肉市場規模 × 培養肉添加割合
 = 4兆3,800億円 × 30%
 = 1兆3,140億円

実際の数値をはめてみる

まずリンク先資料の通り、現時点での世界の培養肉市場1,200億円と推計されているようです。

欧米を中心としたアーリー期と言えるので、仮に日本で培養肉を販売した場合、10%位まではアーリー期でも取れるであろうと考えた場合、125億円という推計は、かなり良い線いっているのではないでしょうか。

ミドル期も同様の話で、培養肉の市場は年間約8%で成長していくことを踏まえると、時間はかかるにせよ約677億円は到達しそうです。
普及に伴う価格の低下と、味・品質の向上、イメージ感の改善次第で、普及スピードはあがるでしょう。

なお、食肉市場の2020年時点の市場規模は約3兆円とのことです。
推測の4兆3,800億円からは、まあまあ外れてしまいましたが、それでもレイター期の割合を30%とした場合、市場規模が約1兆円ですので、結構なサイズ感です。

最後に

培養肉の普及の努力は、特に生理的な嫌悪感の払拭を中心に大変なものになるでしょう。

しかし、ここまで見てきた通り、その市場規模はかなりのサイズ感が見込めます。
仮に10数年後、5社程度の主要プレイヤーで培養肉市場を競うような状況になっていたとしても、その事業規模は2,000億円ほどを見込めます。

大企業でも、2,000億円の売上高は相当なものです。

結論、現時点でこの先未来を見越して、培養肉の開発は参入する価値あり、と考えられます。

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アフターコロナとESG投資~上辺だけの取り組みは通用しない~

近年、ESG投資に対して注目が集まるようになってきました。
環境、社会、ガバナンスは、企業の持続可能性を測る要素だと考えられているからです。
このESGですが、アフターコロナの世界では、その捉えられ方が変わると推測されます。
それはなぜでしょうか?

忙しい人向けまとめ

  • ESGとは、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)のことを指し、ESGに取り組む企業に対する投資、つまりESG投資には近年注目が集まっている
  • ESGに取り組む企業は高い持続可能性を持つと考えられている
  • 現代社会は、上辺だけの社会貢献をするグリーンウォッシング企業などが揶揄され、晒される時代になっている
  • 新型コロナウイルスの影響により、従来の環境への取り組みだけでなく、「人」、つまりはS(社会)への取り組みや、リモートワークへの移行といったG(企業統治)への取り組みが、企業によってコントラストがわかれ明確になった
  • 社会が急変している時代、ESGへの取り組みは、単なる「社会貢献」の意味合いではなく、企業の変化への柔軟な対応力を示すものになっている

ESG投資にお金が集まっている

利益だけを追求し、社会を顧みない会社を世間はどのように評価するでしょうか?
人は感情の生き物ですので、そのような会社は快く思われないでしょう。
長期的には、会社の経営にさえ影響が出てくる可能性があります。

反対に、社会に対して貢献意識のある企業は、社会から評価され、高い持続可能性を持つ、と考えられています。

ESG投資とは、このような社会に対して貢献意識のある企業に対して行う投資のことです。
Eとは環境(Environment)、Sは社会(Social)、Gは企業統治(Governance)のことを指します。
この内、特に環境保全に対する取り組みが長らく注目されてきました。

近年、金融市場において、ESG投資に対する注目度が高くなっており、世界中の投資家からお金が集まっている状況になっています。

ESG投資にお金が集まっている。

代表的な所としては、GPIFです。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、世界有数の運用資産を保有する団体で、このGPIFもESG投資へのシフトを明確にしています。

その他の世界中の投資家からもお金が集まっており、また実際にその投資パフォーマンスは、TOPIXなどと比較して、高い結果を発揮しています。
リンク先のページで詳細なグラフを含めて記載がありますので、参考にしてみてください。

一方、ESG投資にお金が集まりやすい、という点から上辺だけの環境保全への取り組みなどを行っている企業も存在します。

上辺だけのESGが通用しなくなってきている

グリーンウォッシング、SDGsウォッシングとは

多くの企業が環境保全や、後進国や難病に苦しむ方々への寄付などの取り組みをPRしています。
しかし実際の所として、どれだけ本気になって、取り組んでいるでしょうか?
「やっていますよ」アピールに終わっている企業が多いのではないでしょうか?

環境配慮をしているように装い、上辺だけの環境訴求をしていることをグリーンウォッシングと言います。
そして、そのような企業をグリーンウォッシング企業と揶揄して表現をします。
同様に、SDGsへの上辺だけの取り組みのことはSDGsウォッシングと呼ばれています。

世の中には、CSR報告書などに関係のない自然の写真を掲載して、エコなイメージをアピールしたりする企業や、表面上取り組んでいる体裁を保つために無意味にリサイクル素材を活用したりする企業が非常に多く存在します。
酷い企業になると、環境保全への取り組みは効果・実効性共にあること確かに実践していても、従業員には低賃金・長時間労働の環境下で、まるで奴隷のように扱う企業も存在します。

ひと昔前は、このような会社の存在が表に出ることはありませんでした。

SNSの発達に、上辺だけの欺瞞的な会社が晒されやすくなっている

Twitter、Facebookをはじめとし、SNSが急速に発展しました。
それにより、上記のような企業がインターネット上で晒されるようになりました。

  • 世界的ハンバーガーチェーン店が、ロゴの色を緑基調のものに変えて、環境アピールをする
  • 自動車会社の販売するエコカーが、全然エコでないことが暴露される
  • 環境に優しいとされたおむつ製品が、実際は化学素材ばかりであることが広まる

このような情報が世界中で一瞬にして流布してしまうようになりました。

また、グリーンインデックス、というグリーンウォッシングを評価するような指標も出ています。
もう、上辺だけのESGが通用しない時代になったのです。

そして、このESGへの取り組みが新型コロナウイルスの影響により、更に変化を迫られる状況になっています。

E(環境)だけでなく、S(社会)やG(企業統治)がなぜ注目されるのか?

ESGへの取り組みは何故重要なのでしょうか?
これは冒頭に記載した通り、企業の持続可能性が高いと考えられているからです。

株式市場、そして企業は社会や環境問題から切り離されたものではありません。
非常に密接な関係性があり、企業は社会の変化の影響を強く受けます。

新型コロナウイルスも、企業に変化を突き付けるものでした。

G(企業統治)が優れた会社は新型コロナウイルス騒動に柔軟に対応ができている

新型コロナウイルスの影響で、世界的にリモートワークが一般的になってきました。
これにいち早く対応するには、業務のIT化が必須です。

今の世の中は、工場や病院、物流関連のようなところでも無ければ、そのほとんどの仕事が遠隔で対応できるはずです。
リモートワークに対応できているか否かで、企業の業務効率化に対する姿勢が明らかになりました。

また、BCP(事業継続計画)の観点においても、ガバナンスに対する姿勢が見えるようになりました。
災害などを見越して、遠隔で対応できるように準備をしていた企業は、今回の騒動でスムーズにリモートワークに切り替えられたはずです。

人財という言葉

「人」に対する姿勢もそうです。
従業員の雇用や補償に誠意をもって向き合う企業と、そうでない企業のコントラストがわかれました。

シンプルな話なのですが、「人」を人財として捉え、手厚く遇すると優秀な人が集まりやすくなります。
優秀な人が集まりやすくなれば、当然に業績貢献に結びつき、それは企業価値の向上につながります。

今回の新型コロナウイルス騒動で「人」に対して、淡白な姿勢を示した企業は、今後「あそこはそういう会社なんだ」という目で見られるでしょう。

ウォッシングが明らかになりやすい時代、上辺だけの取り組みは、それ自体がリスクだということを認識すべきでしょう。
そして、ESGのS(社会)とG(企業統治)が注目される中、ソーシャルウォッシング、ガバナンスウォッシングも明らかにされていくでしょう。

ESGへの取り組みは必須、できる所からやっていこう

気候変動は、これから激しくなり、人類の生存に対して物理的な脅威を伴ってくるようになります。
AIやIoTをはじめ、技術はこれからも急速に進歩していきます。
後進国・新興国の急激な経済発展にあわせて、経済格差を是正する圧力が高まり、同時に社会不安も大きくなって来るでしょう。
社会は恐ろしいスピードで激変しています。

なんちゃって環境対策だけをやっていては、もう駄目な時代になっています。
形だけの上辺ではない、実を伴ったESGへの取り組みが、これからの時代求められています。

もっと的確に表現するならば、ESGへの取り組みは必須です。
社会が激変していく中で、ESGへの取り組みは、変化への対応力のバロメーターと言えるからです。

とは言え、全ての企業が十分な取り組みができるとは限りません。
できる所からやっていけば良いと思います。
未来を見据えた、確実な一歩、成長への意欲こそが大事です。

(追記)こういうさりげないアピールがちょうどよい

このような、多くの人に愛されている商品と絡めてアピールすると、いやらしさがなく企業イメージの向上につながるのでしょうね。
ヤマザキは、リンク先の資料のような取り組みを行っているけれども、こんなん出されても読みたくないですし。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】ウーバーイーツ配達員向けアプリ開発は儲かるか?

ウーバーイーツの配達員を見かけることが、すっかり一般的になってきました。
配達員の仕事は、1件あたりの単価が低く、収益的に非常に厳しいと聞きます。
それでは、ウーバーイーツの配達員を支援するアプリ開発はどうでしょうか?
ウーバーイーツ配達員向けアプリ開発は儲かるか?を考えていきます。

(参考)フェルミ推定

フェルミ推定とは、実際に調べることが困難な数字や、感覚的に予測するすることが難しい数字を、論理的に算出する作業のことです。
大きい(または小さい)数字を、要素別に因数分解し、推測可能な(または既に知っている)情報の組み合わせにします。

有名なフェルミ推定例題としては「日本にある電柱の数は何本か?」というものがあります。

日本の国土は40万㎢であり、2割が都市、8割が地方とし、都市部は50m間隔に電柱が立っていると推測。
地方部は200m間隔に電柱が立っているとした場合。
都市部は50m×50mで2,500㎡に1本の電柱があり、地方部は40,000㎡に1本の電柱がある計算になります。
この例題の場合、日本の電柱の本数は、4,000万本と推定されます。
(実際の電柱の本数は3,600万本)

(40万㎢ × 20% ÷ 2,500㎡) + (40万㎢ × 80% ÷ 40,000㎡) = 4,000万本

フェルミ推定では、数字があっているあっていないは大した問題ではなく、その推論の過程が重要になります。

お題:ウーバーイーツ配達員向けアプリ開発の事業規模を求めよ

町の中を走っているウーバーイーツ配達員を見て、あなたは思いました。

「大変そうだなぁ。彼らを支援するようなアプリを開発できたら、彼らも助かって、自分も儲けられるかも。どうだろう?」

ウーバーイーツ配達員向けアプリを開発した場合、どれだけの事業規模を見込めるでしょうか?
イメージとしては、自転車に取り付けて、ナビゲーションや効率的な配送ルートを指示してくれる、一々ウーバーイーツの管理画面と別アプリをがちゃがちゃしなくても一連の操作がスムーズにできるスマートフォン・タブレットアプリです。

ビジネス向けアプリになるので、月額課金制のサブスクリプション型のサービスとなるでしょう。

フェルミ推定

まず一番最初に考えなければいけないのがウーバーイーツ配達員の人数です。
次に、アプリの使用率で、加えてそこから課金率月額課金額を推測します。

事業規模は下記の計算式で求められるはずです。

ウーバーイーツ配達員向けアプリ事業規模
 = ウーバーイーツ配達員人数 × アプリ使用率 × 課金率 × 月額課金額 × 12ヶ月

ここで一番推測がしづらいのがウーバーイーツ配達員の人数です。
東京、大阪、名古屋など、都市部に限定して存在し、主要な駅に5人ずつ程度、配達員がいると仮定します。
その他のパラメータをざっくり過程で置いて考えると、次のようになります。

ウーバーイーツ配達員向けアプリ事業規模
 = 配達員5,000人 × アプリ使用率30% × 課金率50% × 課金額300円/月 × 12ヶ月
 = 270万円/年

結構、小さいですね。

もう少し、市場を大きく捉えられないか?

ウーバーイーツ配達員の実際の人数に関して、統計的な資料は見当たりませんでした。
それでも大きな問題はありません。
年額売上高が270万円というのは小さすぎるので、想定に根本的な誤りがあり10倍の規模だったとしても、少なくとも法人で取り組むサイズ感でないのは明確だからです。

ここでは視点を変えて、「もう少しスケールさせられる方法は無いか?」を考えてみます。

まず、食事の配達を考えた時に、「出前館」という大手の存在が浮かびます。
ウーバーイーツに限定せず、食事宅配を考える方々向けのアプリを考えるのです。

また、リンク先の記事を見ると、何人もの配達員を束ねてグループで活動している団体も存在するとのこと。
グループ単位で活動している配達員向けアプリも考えられます。
この場合、サブスクリプション型モデルでいうならば、上位プランを設定できるでしょう。

もう少し事業の範囲を広く考えるならば、既存のお弁当宅配業者向けの、最適配送ルートの自動案内のアプリなども考えられます。

一応、ここでは、上記2つでパラメータを再検討してみます。
出前館のような別の配達サービス込みで配達員を10,000人と仮定します。

配達員向けアプリ事業規模
①個人単位での配達想定
 = 配達員7,000人 × アプリ使用率30% × 課金率50% × 課金額300円/月 × 12ヶ月
 = 378万円/年 
②グループ管理機能有り
 = 配達員3,000人 × アプリ使用率50% × 課金率100% × 課金額500円/月 × 12ヶ月
 = 900万円/年 


① + ② = 1,278万円/年

これでも、事業規模は小さいと言わざるをえません。
ただでさえ配送単価が低いこのビジネスで、そこまで有料課金額を増やせるとは思えません。
(更に10倍の値段でも使いたくなるような神アプリが開発できるなら別ですが。)
配達員の人数が仮に10倍の10万人だったとしても、ようやく年間1億円の売上高です。

まとめ

こうしてみた時に、ウーバーイーツの配達員向けアプリ開発は、法人レベルでは割に合わないと結論付けられます。

まず大前提として、出前館などの別の配達サービスにも対応できることが必要です。
加えて、課金額を増やせる、上記プランの設計も必須です。
それでも、小規模事業者の売上高レベルです。

仮に取り組むとしたら、ウーバーイーツの配達員が複数人所属するグループで、他の配達員やグループでも使えるようなアプリを開発し、業務効率化も図るし、自分たちの収益の足しにもするようなイメージでしょう。
これでしたら、かなり現実味を帯びてきます。

配達のノウハウや困りごとをよく知っている配達員当事者がアプリ開発に取り組むのは、一考の価値があるかもしれません。
食事配達の市場規模は年々増加していくと考えられるので、先駆的に開発できれば、結構な収益基盤になるでしょう。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

【今日のフェルミ推定】スマートスピーカーのアプリ(スキル)開発は儲かるか?

AmazonのAlexaや、GoogleのNestなど、スマートスピーカーが少しずつ増えてきました。
スマートスピーカーでは「スキル」と言うアプリが存在します。
このアプリ(スキル)開発は儲かるのか否か?
これを考えていきます。

(参考)フェルミ推定

フェルミ推定とは、実際に調べることが困難な数字や、感覚的に予測するすることが難しい数字を、論理的に算出する作業のことです。
大きい(または小さい)数字を、要素別に因数分解し、推測可能な(または既に知っている)情報の組み合わせにします。

有名なフェルミ推定例題としては「日本にある電柱の数は何本か?」というものがあります。

日本の国土は40万㎢であり、2割が都市、8割が地方とし、都市部は50m間隔に電柱が立っていると推測。
地方部は200m間隔に電柱が立っているとした場合。
都市部は50m×50mで2,500㎡に1本の電柱があり、地方部は40,000㎡に1本の電柱がある計算になります。
この例題の場合、日本の電柱の本数は、4,000万本と推定されます。
(実際の電柱の本数は3,600万本)

日本の電柱の本数
 = (40万㎢ × 20% ÷ 2,500㎡) + (40万㎢ × 80% ÷ 40,000㎡)
 = 4,000万本

フェルミ推定では、数字があっているあっていないは大した問題ではなく、その推論の過程が重要になります。

お題:スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模を求めよ

スマートフォンやタブレットのアプリ市場は完全なレッドオーシャン状態に陥っています。
市場規模は十分な大きさですが、大企業から個人まで、様々なプレイヤーがしのぎを削っている世界です。

あたなは、そのような状況を見て、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場ならば、まだ普及率が低い段階なので、アプリ(スキル)開発に食い込めるのでは?と考えました。

それでは、スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模を求め、そこにチャレンジする価値があるか否かを考えていきましょう。

フェルミ推定

まず考えなければいけないのが、スマートスピーカーを使っている人が一体全体どれだけいるのか?です。
つまりスマートスピーカーの普及率がどれくらいか?の推測になります。

次に、マネタイズしなければいけないわけですから、スマートスピーカーを使っている人の中で、いったい全体どれだけの人が課金をしてくれるのか?を推測します。
その上で、じゃあ課金をしてくれるのならば、いくらなら課金をしてくれるのか?が問題になります。

これで、まずお題であるスマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模全体を推測できます。
計算式は下記の通りになります。

スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模
 = 日本の人口 × 日本のスマートスピーカー普及率 × 平均課金率 × 平均課金額

これを踏まえて、じゃあ自分たちが参入した時に、儲かるか否かを考えます。

まずは、そうはいっても同じようなことを考える人が大勢出てくるであろうから、シェアとしてはどれだけとれるのか?仮でよいので設定します。

スマートスピーカーらしく、例えば、多様で高音質な環境音を流すアプリ(スキル)を想定して考えてみると、計算式は次のように設定できるはずです。

想定最大事業規模
 = 市場規模 × シェア率

市場規模に関して、概算で数字をあてはめて見ます。

市場規模
 = 人口1億2千万人 × 普及率5% × 平均課金率10% × 平均課金額300円/月 ×12ヶ月
 = 21億6千万円/年

この約22億円がアプリ(スキル)市場における、顧客の財布の金額になります。
これにシェア率をあてはめてみます。
様々なアプリ(スキル)が出てくると想定され、課金しやすい領域はプレイヤーが集まりやすいだろうことも想定し、かつまだ先駆者なので一定市場をとれると考え、トータル顧客の財布の内0.1%をとる目標を設定します(ざっくりでいいんです)。

事業規模
 = 市場規模21億6千万円 × シェア0.1%
 = 216万円/年

年間あたり216万円の売上をとれるかもしれない、とざっくり推測することができました。
まあまあ優秀な開発者が一個人でとれる数字としては、十分に良い数字ですし、感覚値的にも、まあそんなもんだろうな、という印象です。

実際の数値をはめてみる

それでは、実際に個別の数字を調べて、あてはめてみましょう。

スマートスピーカーの所有率5.9%

スマートスピーカーの有料アプリ利用率はデータが無かったのでスマートフォンアプリへの課金率(22.2%)を参考に、ざっくり半分の11.1%を設定。

課金をする人の課金額は月当たり約1,100円(加重平均)。

これらの数字をあてはめると、市場規模は下記の通り計算されます。

市場規模
 = 人口1億2千万人 × 普及率5.9% × 平均課金率11.1% × 平均課金額1,100円/月
 = 103億7千万円/年

イメージしているよりかは、市場規模は大きいかもしれません。
ただ、スマートフォンアプリへの課金との食い合いになる印象もあるので、実際は「推測」項の約21億円/年の方がしっくりはきます。

まとめ

こうしてみた時に、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場で稼ぐのは、あまり現実的ではないと結論付けられます。

仮に本当に年間216万円の売上をとれたとしても、法人でやるような事業サイズとは言えないでしょう。
ブランディングやPR活動の一環としてやるのでなければ、取り組み意味があるとは思えません。

スマートスピーカーの普及率が増えていくと考えた場合でも、プレイヤーも増えるので、相対的にシェア率は減るでしょう。
アプリ(スキル)開発ができる一個人が、趣味の延長で開発するような市場サイズ感です。

仮に儲けようとしたいのであるならば、最初から世界の数字を狙う前提が欲しいです。
アプリ(スキル)開発ができる、各国語での翻訳のプロデュースができる、開発したいアプリ(スキル)そのものへの知識がある。
これらが全部揃っている前提で、ようやく億円単位のサイズが目線に入ってくる。
そんなレベルです。

以上の通り、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場は、稼ぐのには向いていない市場と推測されます。

フェルミ推定は、このように、見当がつかない数字を推測するのに便利な考え方です。
数字が正しいか正しくないかは重要ではなく、推論の過程と、そこから導き出される、ざっくりとした数時感が重要です。
新規事業を考える経営者や企画業務の方、一個人で稼いでいくフリーランスの方には必須性の高いスキルと言えます。

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マネジメント・リーダーシップ

【部下のマネジメントと一緒】休業要請に応じないパチンコ店の店名公表は逆効果

非常に多くのリアル店舗が営業自粛や短縮営業などに協力している一方、一部の「遊技場」、つまりパチンコ店は休業要請に応じていません。
そのような中、各自治体は店名の公表という「晒し」による処罰に動いています。
しかし、これは逆効果です。
ビジネスにおける部下のマネジメントと一緒です。

忙しい人向けまとめ

  • 処罰の公表は、状況の改善につながらず、かえって事態を悪化させるリスクがある
  • 一言で表現するならば「逆効果」
  • 制裁感情・処罰感情を満足させるだけのことにどれだけの意味があるのか
  • 人はロジックではなく感情で動いているが故に、自分はロジックで動かなければならない。

店名の公表は逆効果

パチンコ店というものは、比較的大多数の国民から、悪感情をもたれている業種です。
その影響もあるのか、昨今の状況を踏まえた休業要請に応じないことに対して、極めて強い意見があちらこちらから出ています。

各自治体では、休業要請に応じない店舗について、店名の公表を実施、もしくは公表の検討を行っています。

しかし、これは逆効果です。

この表の通り、「やりたい層」にとって、店名の公表は、むしろ「営業している店舗がわかりやすいので嬉しい」という状態です。
店舗にとっても集客効果はあるので、改善は難しいでしょう。
(公表をうけての更なる休業要請で、ようやく休業に応じた店舗もあるようですが。店舗と現場担当者間での交渉の結果として、更に休業に応じる店舗が増えれば良いですが。)

「やりたくない層」にとっての処罰感情の充足のみが図れるだけになるのではないでしょうか。
また、「やりたい層」にとってみれば、自分たちがただ遊びたいだけなのに、何でこんなに一方的に叩かれなければいけないのか、と思うはずです。
世の中の反発をうけて、かえってアウトロー精神を醸成させてしまうリスクがあります。

また、一定の偏見を込みで書くのならば、「やりたい層」は衛生リテラシーも低いと推測されるため、仮に3密と言われる遊技場空間を閉鎖したとして、どこまで感染拡大の防止につながるのかが疑問です。

部下のマネジメントと一緒

この話は、ビジネスの現場における部下のマネジメントと一緒です。
社員が何か失態をし、それに対して会社として処罰をしなければいけない、という状況を想定します。
失態をした社員が、素行不良社員の場合と、普段は問題がない優良社員の場合で考えます。

処罰対象が素行不良社員の場合

この表の通り、素行不良社員にとって、処罰の公表は、反発心を抱かせるだけで、かえって素行が悪化するリスクが高まります。
普段から迷惑をうけていた周囲の社員の処罰感情を充足させるだけで、上述の状況と一緒です。

むしろ、処罰を内々に収めて、素行不良社員からの信頼を得る方が、後々のマネジメントのやりやすさにつながる可能性があります。
この場合は、周囲の社員の処罰感情が充足されませんので、個別にケアが必要でしょう。

処罰対象が優良社員の場合

この表の通り、優良社員にとって、処罰の公表は、恨みの蓄積につながります。
表面上は事態は収まるでしょう。
普段から優良なので、叱責は素直に受け入れ、行動も改善するでしょう。
しかし、組織に対する安心感は低下するので、将来的な離反リスクを高める結果につながります。

周囲の社員にとっても、普段から真面目に働いていても、何かあったら「晒される」となると、委縮してしまうでしょう。
組織にとって、マイナスの結果につながります。

この場合は公表をせず、内々に収める方が良く、優良社員からの信頼を勝ち得る可能性が高いと考えられます。

まとめ

国でも会社でも、処罰というものは必要でしょう。
罰なしに行動を改善できる人たちばかりではありません。

しかし、そのやり方次第では、表面上問題が無くなったように見えるだけで、事態を悪化させるだけという結果につながるリスクがあるのです。

特に処罰の公表はマイナス影響があることは理解すべきです。
普段、「人はロジックではなく感情で動いている。」と言う方々が、この種の話題になると突然、感情で行動・発言してしまう様子を散見し、首をかしげている次第です。

今回の状況に関して言うならば、短期の改善は難しく、そこにあてるリソースはコスパが悪いので、長期的視座に立って法改正のための働きかけを国民側からする方が良いと考えられます。
業態としては急激な縮小が進んでいることもあるので、素直に放置するという選択肢もありえます。

「人はロジックではなく感情で動いているが故に、自分はロジックで動かなければならない。」
考えるようにしましょう。

(追記)残念ながら予想通り

残念ながら予想通り、蓋を開けてみれば大行列という結果になってしまいました。
「何を目的に、対策を実施するのか?」
これを見失ってしまうと、このような結果になってしまうのです。
国民全体での盛大なスルー、話題にも一切上げない。
これが最適解のはずなのですが。

堺市内の店舗では開店1時間前の午前9時過ぎには整理券を受け取るために約150人の客が並び、従業員が間隔を空けるよう呼び掛けた。駐車場には神戸や和歌山など府外ナンバーの車も見られ、開店時には列は約300人に達した。

60代の男性は「毎日の習慣なので今日も来た。普段より並んでいる客が多いような気がする」と周りを見回した。

毎日新聞 店名公表パチンコ店、堺では300人行列 住民「ウイルス持ち込むかも、怖い」

(追記2)最終的に法改正にまで持っていくのが良いか?

その後、改めて考えた時に、目標設定の置き場所を変えた方が良い、と感じました。

ようは、「目の前、今の状況のパチンコ店の開店をどうにかしよう」、という話ではなく、「今後同様の事態が発生した時に、速やかに強制措置がとれるようにしておこう」という目標設定です。

西村経済再生担当大臣は27日の記者会見で、以下のように述べたとのことです。

西村経済再生担当大臣は記者会見で、「特別措置法45条に基づく『要請』にも応じない場合には今後、「指示」という、より強い措置も考えられ、すでに16の自治体から相談を受けている」と述べました。
そのうえで、「『指示』にも従わない施設が多数発生する場合は、罰則や強制力を伴う仕組みの導入に向けた法整備を検討せざるを得なくなる。
(略)」と述べました。

NHK パチンコ店「罰則や強制力伴う法整備 検討も」西村経済再生相 2020年4月27日

要請をだす ⇒ 応じない ⇒ 指示をだす(が、出すだけにとどめる) ⇒ 応じない ⇒ じゃあ、法改正しかないね!
戦術目標の達成ではなく、戦略目標として、法改正を念頭においているのならば、まあ有りなのかな、とは考えられます。

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営業

経済が停滞した今、営業ができること、やっておくべきこと

経済が停滞した状況が長く続いています。
営業をしていても、顧客は「何かやる状況じゃない」「今を生き残らないといけない」「先を見通せないから新しい投資はできない」という反応が多く返ってきていることでしょう。
こんな状況下、営業が今できること、やっておくべきことについて考えていきます。

忙しい人向けまとめ

  • 経済は必ず再び動き出す
  • レピュテーションリスクも考えて営業しよう
  • オンライン営業(WEB営業)の打診をする
  • 顧客のために情報提供をする
  • 自社サービスの期間限定無料提供も考える
  • 既存顧客に対するフォロー、つまりカスタマーサクセス活動もする
  • 顧客の立場に立って、一緒に悩んでくれる営業は、信頼を得られる
  • 人を思いやり、利欲にとらわれずなすべきことをなす(仁義の精神)

まず、この騒動はいつかは終わると思う

アフターコロナ、withコロナの世界は、これまでとは状況が一変しているでしょう。
しかしそれは、必ずしもネガティブな話ではなく、あくまでもビジネスのやり方が大きく変わる世界になる、ということです。

今の経済が停滞した状況は必ず終わりを迎えます。
東日本大震災の時も、リーマンショックの時も、その他過去様々にあった経済危機もそうでした。
世界のあり方は変わっていきますが、経済が動き出す時が必ずきます。

だからこそ、ただ手をこまねいて待っていても仕方がありません。
今の状況だからこそ、経済が改めて動き出した時のために、できること、やるべきことをやっておくべきです。

オンライン営業(WEB営業)の打診

何はともあれ、安全の確保です。
この安全には、レピュテーションリスクも含みます。

確率論的に考えれば、新型コロナウイルスの脅威は、感染症に対する適切な対処さえしていれば怖がるものではありません。
しかしながら、万が一感染をしてしまった場合、そして自社が原因で感染を広げてしまった場合のリスクを考慮しなければならないでしょう。
特に、今の世の中の反応を見ていると、感染者に対する風当たりは、まるで「魔女狩り」の様相を呈しています。
ウイルス以上に、人が怖い状況です。

そのためにできることが、オンライン営業(WEB営業)の打診です。

リモートワークが一気に一般化し、WEB営業も増えてきました。
しかし、ITに対して苦手意識を持っている顧客も多いでしょう。
だからこそ、このタイミングで改めて打診をしてみるのです。
効率性の高さと、やってみれば大して難しくないことに、顧客は驚くのではないでしょうか。
拒否反応が多いならば、電話商談でもよいでしょう。

今のご時世、そもそもとして、テレアポや飛び込み営業、対面営業は時代遅れです。
このタイミングで営業の効率化を図るのは、営業をする側にとってもプラスになるはずです。

顧客の困りごとに寄り添う、長期的な目線に立つ

一番困っているのは顧客

次にやるべきことは、顧客い寄り添うことです。

今この状況で一番困っているのは誰でしょうか?
そうです、顧客、もしくは見込顧客です。

すべて「顧客」という言葉で統一しますが、災害や経済危機ではなく、感染症による経済の停滞は、ほとんど全ての顧客が経験をしたことがない事象のはずです。
顧客は「何かやる状況じゃない」「今を生き残らないといけない」「先を見通せないから新しい投資はできない」と思っています。
そもそもとして、何をしたらよいのかがわからない状況のはずです。

だからこそ、できることがあります。

情報の提供

同業他社ではどのように今の状況に対応しているのか。
世の中の状況がどのように動いているのか。
自社なりに情報が集まっているはずなので、そういった情報を顧客に提供することはできるはずです。
そして、そういった情報提供は喜ばれるはずです。

サービスの無料提供

また、自社サービスを期間限定で無料提供をしている会社も多く存在します。
これは、単純に自社サービスを無料利用可としているだけでなく、エンタメ領域やメディア領域などにおいて、過去コンテンツの無料公開なども含みます。
新規の投資はできないけれども、使いたいと思っていたサービスの試用はしてみたい、と思っている顧客は多いはずです。
また、一度使い始めると、何かしら愛着がわき、続ける動機を探し始めるのも人間です。
まずは触ってもらう、という状況を作ってみましょう。

既存顧客のフォロー

既存顧客に対してもフォローが必要です。

資金繰りなどが厳しく、使用していたサービスを解約したい、と思う顧客もいるでしょう。
そのような顧客向けにフォローをするのです。

上述の情報の提供もそうですし、期間限定無料提供も考えられます。

提供しているサービスの内容や顧客の状況に応じて、やれること、やるべきことは変わってきますが、解約という状況につながらないよう、最大限のフォローをしましょう。
ようは、カスタマーサクセスへの取り組みです。

ここまで書いてきたことは、顧客の目線に立つこと、一緒に悩むことです。
長期的な目線に立てる営業は顧客から信頼されるはずです。
経済が動き出した時に、このようなことができる営業は、一気に受注を獲得できるはずです。

絶対にやってはいけないこと

絶対にやってはいけないことがあります。

一言でいえば、強引な営業です。
これは絶対にやってはいけません。

何とか1つでも案件を取りたい。
そう思うのは自然なことですが、顧客が悩んでいる状況での強引な営業は純粋に迷惑です。

そして、感染症による経済停滞だからこそ、対面営業も避けなければいけません。
対面営業を嫌がっている顧客の所に、飛び込み営業をする、訪問をするようなことはもっての外です。

このようなことを強いる会社や上司だったならば、早々に見限った方が良いでしょう。
顧客のことを大事にできない会社が成長を続けるなどありえません。
そのような会社で頑張り続けること自体が時間の無駄なので、次を探しましょう。

最後に

ここまで書いてきたことは、言うなれば「人として当然のこと」をやりましょう、ということです。

辛いのは自社だけでなく顧客であり、その先にいる顧客であったり一般消費者であったりです。
こういう状況だからこそ、相手の立場に立って考える、行動する、という当たり前のことをやるべきです。
そして、そういう営業こそが顧客からの信頼を勝ち得、長期的な案件の獲得を成し遂げていくでしょう。

仁義の精神です。
(人を思いやること、利欲にとらわれずなすべきことをすること。)

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営業

営業のオンライン化を阻むものは何か?~顧客のITリテラシー問題~

急激に営業の効率化が進んでいます。
オンライン営業は一気に一般的なものとなってきました。
しかしながら、今のご時世でなおリアル営業は無くなりません。
WEB会議が身近になった今、営業のオンライン化を阻むものは何なのでしょうか?

このような状況でなお、対面営業、リアルの商談が残っている

新型ウイルス騒動により、WEB会議ツールを用いたオンライン営業をはじめとして、リモート対応の営業が増えてきました。
特に2020年3月に入ってからは、自粛要請の影響もあり、緊急事態宣言前であってもリアル営業のみの営業を実施している会社が16%ほどとなりました。

その後、緊急事態宣言後は、リアル営業のみの営業は7%と急激に減少しています。
(アンケートの取り方や、集計の方法が異なるので単純比較はできないことは留意。)
感覚値としても、リアル営業が急減していることは納得できると思います。

しかしながら、逆に言うと、今この状況に至っても、リアル営業を実施している会社が存在している、ということです。

もちろん、取り扱う商材が高額であったり、膨大な量にのぼる場合は、対面で詳細なすり合わせを行わなければならない状況もあります。
ほとんどの会社はそのような取引は扱っていないはずで、何かしら営業のオンライン化を阻む要因があるはずです。

営業のオンライン化を阻むITリテラシーの問題

数字を見ていくと、大きく2つの問題があることがわかります。

オンラインツールを活用した営業活動の浸透を阻害する要因 速報!アフターコロナの営業活動に関するアンケート ウィルソン・ラーニング社 2020年4月16日より作成

1つが自社側のITリテラシーや環境の問題で、2つが顧客側のITリテラシーや環境の問題です。
セキュリティの問題、というのはおそらく上記2つのどちらかに分類できるはずなので、大きくはこの2つの問題と推測します。

このITリテラシーの問題、というのはITに対する苦手意識であったり、担当者や責任者・管理者のマインドを指しています。
環境の問題、というのはネットワーク環境のことを指しています。
ネットワーク環境は、ITリテラシーやマインドがあれば解決できることのはずであり、また今のご時世、ITとビジネスの密接度合いを考えればITに対するマインドも広くITリテラシーの一つであると考えることができるはずです。

つまり、営業のオンライン化を阻むものはITリテラシーの問題と言えます。

自社側のITリテラシーの問題であれば、何とか解決するか、素直に会社に見切りをつけて他者に移るしかないでしょう。
問題は、顧客のITリテラシーをどうするか?です。

顧客のITリテラシーの問題はどうするか?

顧客のITリテラシーを高める啓もう活動に取り組むか?

顧客、つまり他社の問題です。
言ってしまえば、ここに手をつけるか否かは、会社や営業担当者としての価値観であったり、ポリシーの領域になります。

その上で書くならば、そこ(顧客のITリテラシー)にも手を付ける、啓もうをしていくのも営業の役割なのでは、と考えます。
ただ単純に顧客の要望に応えて、リアル営業を実施するだけが営業としての動き方ではないはずだ、という考えです。

インターネットが一般的になり、情報を入手することは容易になりました。
しかし、その分、情報格差は広がっています。
現実には、日々の業務に追われ、新しい技術や考え方に関心をもってインプットする余裕がない方は多いでしょう。
中小企業では、アドバイスが適切にできる情報技術担当者を雇う余裕がない所も多いでしょう。
つまり、ITリテラシーの向上部分を顧客の自助努力だけに求めることは別に間違ってはいませんが、チャンスを逃す可能性がある、と思うのです。

自社から、WEB営業ツール、WEB会議ツールを用いた効率的な営業活動について、ブログ記事やメルマガを発信したり、WEBセミナー(ウェビナー)を開催して有用性を示したりすることができるはずです。
社会全体として、リアル営業は減っていくでしょうが、このタイミングだからこそ、自社でもWEB営業をプッシュしていくことは有益なはずです。
また、ITを用いた効率化は、ITリテラシーが低い顧客にこそ有効性が高いはずなので、顧客にとって役立つ情報をセレクトして、わかりやすく整理し、顧客の課題解決を図っていく営業の主旨にもあっています。

素直にアプローチしないという考え方も有り

そういった活動余力が無いのならば、素直にITリテラシーの低い顧客層はアプローチしない、という選択肢も当然に正でしょう。
ITリテラシーが低い顧客層にアプローチするアナログ営業の会社は引き続き存在し続けるでしょうが、共に競争力は低いはずなので、時間と共に自然淘汰されていくはずです。

まとめ

営業のオンライン化を阻むものは何か?
それは、ITリテラシーの問題であり、それが自社か顧客の問題として存在する、ということです。

顧客側の問題に手を付けるのは、上述の通り、価値観であったり、ポリシーの領域で、会社の状況にもよりきりです。
啓もう活動は、顧客の課題解決を図ることにつながるため、本来の営業の役割にかなっていますし、別の形でチャンスにつながる可能性があります。

啓もう活動に取り組まないにせよ「顧客側の問題もある」と意識し、どのように対応していくのか方針を明確にすることは重要です。
今のご時世、リアル営業のみ、という方法は明らかに時代遅れです。
そして、中途半端に組み合わせて、顧客に応じて柔軟にやり方を変える、という方法も消耗を招きます(効率が悪いです)。

WEB営業に特化をするのならばリアル営業はやらない、と明確に決める。
リアル営業もやるならば、それに特化したチームを組成し、インサイドセールスと外回りを混ぜない、とコントラストをはっきりさせる。

このように、何となくは把握しているであろう問題も、明確に意識し、明確に方針を定めることにより、限られた会社のリソースを効率的に使えるようになるはずです。

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