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離職率を下げるにはどうしたらよいか?

離職率を下げるにはどうしたらよいのか?という悩みは多くの企業が抱えています。
そして、離職兆候が出た従業員に対して、色々とアプローチをする企業が多いのですが、効果が出ないのが実際でしょう。
それでは、離職率低下のためには何をしたら良いのでしょうか?

離職兆候の例

離職兆候の例として、次のようなものがあげられます。

  • 挨拶をしていた人が、挨拶をしないようになった
  • 逆に、挨拶をしない人が、清々しい挨拶をするようになった
  • 愚痴や不満が少なかった人が、愚痴や不満ばかりを言うようになった
  • 逆に、愚痴や不満ばかりを言っていた人が、途端に愚痴や不満を言わなくなった
  • これまで複数人でランチに行っていた人が、一人でランチに行くようになった
  • 休憩中に業務とは関係のない勉強をするようになった
  • 業務や自社の業界とは違う話をするようになった
  • 服装が変わった(スーツ等がしっかりするようになった)
  • 遅刻や早退が増えるなど、時間の使い方が変化した
  • スマートフォンを持って離籍する頻度が増えた
  • 会議での発言が明らかに減った
  • 以前より、机や身の回りの物を整理整頓されている
  • 引き継ぎマニュアルを唐突に作り始める

ようは、既に会社を見限り、転職のための行動をはじめているか、転職先が決まったが故にその準備をしている、ということです。

この時点で、何かしらのアプローチをすれば間に合うのでしょうか?
それとも時すでに遅しなのでしょうか?

離職理由

ここでよく言及されるのが、厚労省が出している雇用動向調査のような資料です。

離職理由ランキングを明らかな会社要因(定年等を含む)を除いて考えると男女別に次のようになります。

男性の離職理由

  1. 給料等収入が少なかった:9.4
  2. 職場の人間関係が好ましくなかった:8.8
  3. 労働時間、休日等の労働条件が悪かった:8.3
  4. 会社の将来が不安だった:7.1
  5. 能力・個性・資格を活かせなかった:4.9
  6. 仕事の内容に興味を持てなかった:4.7

女性の離職理由

  1. 職場の人間関係が好ましくなかった:13.3
  2. 労働時間、休日等の労働条件が悪かった:11.6
  3. 給料等収入が少なかった:8.8
  4. 仕事の内容に興味を持てなかった:5.2
  5. 能力・個性・資格を活かせなかった:5.0
  6. 会社の将来が不安だった:3.4

ランキングの並び順はともかくとして、概ねこの6要素が離職理由を占めていることがわかります。

では、この6要素を改善するアクションをとれば離職率を下げられるのでしょうか?

従業員が離職行動に出るメカニズム

少し古い(1994年)研究ですが、従業員が離職行動に出るメカニズムが研究されています。

https://www.researchgate.net/publication/200130237_An_Alternative_Approach_The_Unfolding_Model_of_Voluntary_Employee_Turnover

この研究では次のようなフローチャーを提示した上で、従業員の離職行動について解説しています。

まず論文では、「個人が認識しているシステムに対するショックによって、自己認識=現状ギャップが生まれ、離職行動ないしは定着行動が模索される。」ことを前提に、心理的要素に着目してフローチャートが描かれています。

ここで言う自己認識とは、従業員に何かしらの影響を与え、自分自身の仕事について熟考し、その結果として離職行動にでるような出来事のことです。
上述のような6つの離職理由が例としてあげられます。
会社都合や自分自身の変化は、この自己認識には該当しないとしています。

離職モデル

フローチャートでは、4つの離職モデルが提示されています。

①良い所が見つかったパターン

このパターンでは、個人が認識しているシステムに対してショックがあった際に、今の会社とは別の自分自身の認識しているシステムに合致する会社が見つかったら離職行動に出る、というものです。

ようは、離職理由を起因に転職行動に出て、良い所が見つかったら転職する、というパターンです。

②良い所が見つからなかったパターン

このパターンは、個人が認識しているシステムに対してショックがあった際に、今の会社とは別の自分自身の認識しているシステムに合致する会社が見つからなかった、というものになります。

ようは、離職理由を起因に転職行動に出たけれども、良い所が見つからなかったパターンです。

この場合、今の会社に居続けることを選択しますが、その後、改めて良い所が見つかり、その際に今の会社が自分自身の希望と合致していない場合に離職行動に出ます。

③会社側が改善のための代替案を持っているパターン

このパターンは、会社側に代替案があるものです(会社側が意識的もしくは自発的に代替案を提示していない状況で、従業員側が既にある代替策を選択できる状態も含む)。

つまり、何かしら改善のための代替案がある状況で、従業員が今の会社ではなく、別の会社の方が良いと判断し離職行動に出たパターンです。

このパターンでは、とりあえず会社を飛び出た者、業務を忌避し者、という形で玉石混交の性格が強くなります。

④会社都合や個人の環境変化等によるパターン

このパターンは、個人が認識しているシステムに対するショックが無いパターンです。

会社都合のものや、個人の環境変化(結婚・出産・介護等)のものであり、会社と従業員の間で致し方がなく乖離が生まれている状況です。

このパターンでは、会社側が代替案を提案し、従業員がそれを検討することにより一定分岐するものになりますが、これも一つの離職行動の一つとなります。

このフローやそれぞれのパターンを見ていくと、パターン②~④においては、きちんと何かしらの代替案を提示し、それについてきちんと検討をすることを促せば離職の決断に対して一定の制御が可能であることが示唆されます。
(パターン①については、離職行動の制御は無理と考えられます。)

つまり、そもそもとしての離職理由が発生しないことは重要ですが、何かしらの兆候が出た場合に、アクションを取っていくことも重要なのも確か、ということです。

離職したいと思う人と在職し続けたいと思う人の離職理由は異なるので、離職防止施策は別に考える必要がある

ここでの注意点が一つあります。

こちらの研究(研究途中の経過報告)では、次のように概要を説明しています。

https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12845/

より重要な点として、「在職者」と「離職者」を比較した場合、「組織に残り続ける理由」と「組織を辞める要因」は表裏一体ではないことが確認された。例えば、在職者が組織に残り続ける理由として「勤務地」や「仕事内容」を挙げる一方、離職者では「給与・待遇」、「パワハラの有無」、「会社の将来性」等が在職者よりも高い割合で挙げられていた。この結果は、在職者をより長く組織に留めるための施策と、離職者の退職防止施策は別々に考えなければならないことを示唆している。

つまり、離職したいと思う人と在職し続けたいと思う人の離職理由は異なるから、離職防止のためのアクションを一律に考えて実施してはいけない、ということです。
(一律のリテンション・マネジメント施策が効果的でない要因がここにあると考えられます。)

人事担当者にとっては、検討しなければならない事項が増えてしまうでしょうが、自社の離職率を下げたいと思うのであれば、離職理由が発生することの防止と、離職理由が発生した場合のアクション、それも従業員の離職行動のパターンに応じて施策をわけることが必要です。

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リモートワーク/テレワークのTipsまとめ

リモートワーク/テレワークのTipsに関する記事のまとめになります。

リモートワークのマネジメント

リモートワークの実務

補足

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人間よりAI/アルゴリズムの方が優秀な社員を採用できる~AI採用のすすめ~

採用管理を支援するSaaSが登場するなど、採用業務の効率化が進んでいます。
しかし、選考に関しては、従来通り書類選考から面接・評価まで、人が入り自動化されていない会社は珍しくありません。
ここでは人間よりAI/アルゴリズムの方が優秀な社員を採用できる、という話をしていきます。

AI採用が広がっている

AI採用とは、文字通り、採用プロセスの一部にAIを導入し、その採用業務の何かしらを効率化することです。

近年のコンピュータの性能向上やAI技術の発達を背景に、近年急速に拡大が進んでいます。

国内でも、IBMのWatson採用支援システムのi-web書類選考AIツールのPRaiO対話型AI面接サービスのSHaiNなど、いくつかのソリューションが登場しています。

https://www.ibm.com/jp-ja/watson
https://www.humanage.co.jp/service/lp/i-web/
https://praio.jp/
https://shain-ai.jp/

その効能としては、アルゴリズムによる自動化により業務の大幅な削減や、採用判断の公平化などが語られています。

実際、ソフトバンク㈱などが面接評価にAIシステムを導入するなど、大手をはじめ、話題を提供しています。

https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20200525_01/

しかしながら、問題がないというわけではありません。

採用自動化に絡む問題

記憶に新しい問題としては、リクルートキャリアによる「内定辞退率」問題です。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1912/04/news159.html

詳細はここでは触れませんが、個人情報に絡む話であり、トヨタ自動車、京セラ、YKKなどの大企業も含めた、大々的に問題に発展しました。

「内定辞退率」というネガティブな側面にフォーカスしたことも問題が拡大した一因なのでしょうが、アルゴリズム採用の世界に水を差しました。

その他には、AmazonがAI採用を打ち切った、という報道が話題になりました。
理由は、AIによる人材採用システムが機械学習の欠陥により、女性を差別する形になってしまったからです。

https://jp.reuters.com/article/amazon-jobs-ai-analysis-idJPKCN1ML0DN

AIにせよ、他のアルゴリズムにせよ、判断のロジックや学習データ次第では、差別を助長する形になることは、近年知られるようになってきています。

技術発展の過渡期のため致し方がないとは思うのですが、“意外性”もあり、AIによる差別問題は非常に話題になりました。

このようなネガティブな側面があるにしても、AI/アルゴリズム採用は今後も発展し拡大していくと考えられます。
それは、AI/アルゴリズム採用の方が人間が採用するよりも、優秀な社員を採用できるからです。

人間よりAI/アルゴリズムの方が優秀な社員を採用できる

優秀な採用担当者は会社のことを熟知しており、必要なポジションの要件もよく知っています。

多くの応募者を見てきた採用担当者にしてみれば、人を見極め、最適な人を“選別”することが可能なように思うこともあるでしょう。

しかし、それは必ずしも正しいとは言えません。

次の記事で紹介されている研究では、「単純な方程式」により応募者を評価しても、人が評価するよりも25%以上精度が高いことが示されました。

https://hbr.org/2014/05/in-hiring-algorithms-beat-instinct

この研究のポイントは、採用担当者が持っている応募者のデータよりも、単純な方程式にはめる情報の方が圧倒的に少ない点です。

人は多くの情報を認知し、複合的に判断できるが故に、採用/評価に関係のない情報にもとらわれてしまい、精度を下げてしまうからだ、としています。

この研究をベースにアルゴリズムを組み直し、実際どれだけ定着率があがるのか?を調査した研究もあります。

https://www.comstocksmag.com/bloomberg/machines-are-better-humans-hiring-best-employees

この研究で使用されたアルゴリズムでは、応募者を技術的なスキル、正確、認知能力、仕事への適合性など、様々な観点で評価します。
そして、応募者を推奨度という形で「高・中・低」の判断を行います。

その結果、推奨度「高」の応募者は、「中」よりも12日、「低」よりも17日、長く勤務することが示されました。
(実験は、就労期間が短い単純労働を対象に実施されました。)

また、別の実験で、採用担当者の判断で「中」の応募者を採用し、その後、当該応募者の後任(退職したため)として改めて「高」の応募者を採用した所、定着率が約8%向上したことも示されました。

つまり、人が判断するよりも、アルゴリズムが判断する方が、少なくとも定着率という観点では精度が高い、ということです。

また、データの数が少ないため十分な検証がなされていないものの、生産性の観点でも、人よりアルゴリズムの方が精度が高いことも示唆されています。


これらの通り、採用の世界においては、すでに人よりもコンピュータの方が優秀になりつつあります。
経験豊富な採用担当者が“過信”をしてしまうのは、長期的に見てネガティブであると考えた方が良いでしょう。

ただ、「長期的に見て」という点がポイントです。

例えばAIを採用するならば、大量のデータを学習させる必要があり、AI採用が適切に機能するまでに一定の時間を要します。
AIではないアルゴリズム採用の場合も、自社に適合するよう、様々にチューニングと検証を繰り返す必要があります。

この壁を超えない限り、人の方がまだまだ使える、という状況のままになってしまいます。

さて、この状況をどのように捉えるか?

経営者や採用担当者は一考する必要があると言えます。

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給与の前払いは従業員の生産性をあげるかもしれない

従業員の生産性をあげるための方法は、古今東西、多くの職場で模索されてきました。
今回は、1つの示唆を紹介します。
もしかしたら、給与の前払いは従業員の生産性をあげるかもしれません。
(とはいえ、多くの経営者にとって、心理的に嫌な方法かもしれませんね。)

https://www.nber.org/papers/w28338

研究結果~給与の前払いと生産性~

インドの貧困層を対象にある実験が行われました。

内容としては、次のようなものです。

  • 約400人の主に貧困層を対象に約2週間実験が行われた
  • 実験の時期は厳禁が不足し、生活のために借金を行わなければいけないタイミングとした
  • 労働者は飲食店用の使い捨てのお皿を製造している
  • 約1月分の給与を前払いした実験群と、通常通り後払いの対照群で比較を行った
  • 給与の前払いを受けた実験群は、平均生産性が0.11標準偏差(6.2%)増加した
  • さらに(皿だけに)、製造のミスも少なく、集中力が高まったことも示唆された

給与の前払いは従業員の生産性をあげるのかもしれません。

給与の前払いにより生産性が向上する理由は?

給与の前払いにより生産性が向上する理由は、端的に言えば、お金が無いことによる心理的ストレスが軽減されるからであろうと推測されています。

多くの研究が、“現金が無い”という状況、つまりはお金の心配がストレスを生む、精神的負担になることを示唆しています。
(また、そんなの研究によらず、多くの方が実体験としてわかっているはずです。)
貧困が、寄生虫のように、有益なことに使うはずの精神的リソースを奪っていく、というのですね。

研究者曰く「貧困とは、つまりは“徹夜をしたようなもの”だ。」

つまり、給与を前払いすることにより、この心理的ストレス、精神的負担が軽減され、より生産的な仕事ができるようになった可能性が示唆されます。
(関連する研究でも、この可能性が支持されているとのことです。)

活用の想定

上述の研究の効果は、貧しい労働者程、その傾向が見られるとのことです。

また、論文に記載されている内容外の一般論として、同じ施策が長く続くと“慣れ”が生じるものであるため、短期労働に効用があると推測されます。

つまり、企業がこの知見を活用しようとするならば、短期の非正規雇用を対象に前払給与の施策を導入することが考えられます。

平均生産性が0.11標準偏差(6.2%)増加する、という効果は中々大きいものです。

企業は、給与の前払いが従業員の生産性をあげる可能性を意識し、人事施策を検討すると良いかもしれません。

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(取締役会議事録の書き方)定時株主総会を招集する場合

ここでは取締役会議事録の「定時株主総会を招集する場合」の書き方例について解説します。
IPO進行上、適法な招集と実際の取締役会運営は、必須です。
取締役会運営上も、議事録に記載がある通りに進行するようにしましょう。

取締役会議事録テンプレート

取締役会議事録

下記の通り、取締役会を開催した。

開催日時:YYYY年MM月DD日hh時mm分
開催場所:当会社の本店会議室
出席者:代表取締役 hogehoge(議長兼議事録作成者)
    取締役 hogehoge
        hogehoge
        hogehoge
        hogehoge
    監査役 hogehoge
        hogehoge
        hogehoge

欠席者:取締役 hogehoge

定刻hh時mm分、代表取締役hogehogeは定款の定めにより議長となり、開会を宣した。

報告事項

① 月次業績報告
議長より別紙の通り、〇月度の月次業績報告があった。
(中略)
.....など詳細な説明があった。

(意見、質疑応答の要旨)

ア.質問内容を記載(取締役 hogehoge)
イ.回答を記載(代表取締役 hogehoge)
ウ.以下略
エ.
オ.

② hogehogeの件
(略)

(意見、質疑応答の要旨)

特になし

書き方のポイント
ここまでは議事録テンプレート部分です。
以下の決議事項からが、定時株主総会を招集する場合の書き方例になります。

決議事項

第〇号議案 第〇回定時株主総会招集の件

議長より、当会社第〇回定時株主総会に関し、以下の通り招集したい旨の説明があった。
また、株主総会参考書類に記載すべき事項については、別紙の招集通知のとおりとし、軽微な修正については代表取締役に一任いただきたい旨の説明があった。
議長がその賛否を議場に諮ったところ、本議案は満場一致をもって原案どおり承認可決された。

日時 YYYY年MM月DD日hh時mm分
場所 当会社の本店会議室
会議の目的事項

報告事項
1 第〇期(YYYY年MM月1日からYYYY年MM月DD日まで)事業報告の内容、連結計算書類の内容ならびに会計監査人および監査役会の連結計算書類監査結果報告の件
2 第〇期(YYYY年MM月1日からYYYY年MM月DD日まで)計算書類の内容報告の件

決議事項
第1号議案 〇〇〇〇の件
第2号議案 〇〇〇〇の件
(以下略)

(意見、質疑応答の要旨)

(省略)

書き方のポイント

取締役会設置会社においては、株主総会を招集したい場合、取締役会において決議します。
また、株主総会の事項についても取締役会の決議で決定します。
通常、送付する招集通知を別紙として添付することが多いです。
ここの手続きが漏れている場合、最悪、株主総会の決議取消しの訴えの事由となりますので、注意が必要です。

軽微な修正については、代表取締役、つまりは事務局側に一任する形としています。
これは、招集通知に修正が入った場合、その都度、修正の決議をとらなければいけない事態になるのを避けるためです。
IPO進行上、取締役会で決議した招集内容と、実際の招集内容に差異がある場合、望ましくない状況になる場合があります。
会社法上、株主総会の目的事項については当該事項を定める、とされているためです。

以上をもって本取締役会の議事を終了したので、議長は閉会を宣し、hh時mm分に散会した。

上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、議長並びに出席取締役及び監査役は記名押印する。

YYYY年MM月DD日

株式会社〇〇〇〇 取締役会

議長 代表取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

関連法令等

会社法
(株主総会の招集)
第二百九十六条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。

会社法
(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
(中略)
4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

会社法施行規則
(招集の決定事項)
第六十三条 法第二百九十八条第一項第五号に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
(以下略)

会社法
(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。

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取締役会議事録テンプレート,書き方のポイント

ここでは取締役会のテンプレートを提示すると共に、書き方のポイントについて解説します。
近年はガバナンス強化が求められると共に、特にIPO準備企業においては、実効性のある取締役会運営が必要です。
取締役会議事録の充実は、その証明にもなるので、きちんと内容を理解し記載するようにしましょう。

取締役会議事録テンプレート

取締役会議事録

下記の通り、取締役会を開催した。

開催日時:YYYY年MM月DD日hh時mm分
開催場所:当会社の本店会議室
出席者:代表取締役 hogehoge(議長兼議事録作成者)
    取締役 hogehoge
        hogehoge
        hogehoge
        hogehoge
    監査役 hogehoge
        hogehoge
        hogehoge

欠席者:取締役 hogehoge

書き方のポイント

ここは定型部分なので、基本的には使いまわしで日時だけ更新すれば良いでしょう。
取締役会議事録には、取締役会が開催された日時と場所の記載が必要です。
元号記載より西暦記載の方が間違い等が減るので良いです。
開催場所は、基本的には本社の会議室になるかと思いますが、仮に社外で実施する際には所在地を明確にする必要があります。

欠席者については記載する必要がありませんが、定足数を充たしているか否かは重要なので、全ての役員を記載し、出席者の欄と欠席者の欄にわける方が利便性は高いでしょう。

なお、途中退席をした取締役や監査役がいる場合には、どの報告事項・決議事項のタイミングで途中退席をしたのか?は記載する必要があります(定足数は、各議案毎に充足している事が求められるため)。

定刻hh時mm分、代表取締役hogehogeは定款の定めにより議長となり、開会を宣した。

書き方のポイント

議事の進行について記載する必要があります。
議長を別に選出した場合には次のような記載が必要です。

「出席取締役の互選によりhogehogeが議長となり開会を宣し、議事に入った。」

また、仮に議長が途中で交代した場合には次のような記載が必要です。

「定刻hh時mm分、代表取締役hogehogeは定款の定めにより議長となり、開会を宣した。なお、第〇号議案hogehogeの件いついては、議長である代表取締役hogehogeが_____のため、取締役hogehogeが議長となり、議事を進行した。」

____の部分は、特別利害関係人であるため、というように理由を明確に記載します。

役員全員がWEB会議参加の場合の書き方例については、下記を参照してください。

報告事項

① 月次業績報告
議長より別紙の通り、〇月度の月次業績報告があった。
(中略)
.....など詳細な説明があった。

書き方のポイント
取締役会議事録は、本質的には会社法および法務省令等に規定された記載事項が、確実かつ漏れなく記載されていることが必要です。
多くの会社はルーズな場合が多いですが、IPO準備企業においては、簡潔に要旨では良いものの、どのような説明があったのか、きちんと記載する必要があります。
テンプレートだけが毎回記載されている場合、取締役会の実効性や形骸化を懸念されます。
とは言え、実務面での簡素化のため、別紙の活用は良いでしょう。

(意見、質疑応答の要旨)

特になし

② hogehogeの件
(略)

(意見、質疑応答の要旨)

ア.質問内容を記載(取締役 hogehoge)
イ.回答を記載(代表取締役 hogehoge)
ウ.以下略
エ.
オ.

書き方のポイント
上述に加え、取締役会の中で、どのような説明があったのか、だけでなくどのような議論があったのか、を簡潔に要旨では良いものの、きちんと記載する必要があります。
ここは抜けている会社も多いですが、IPO準備企業では(意見、質疑応答の要旨)というような欄を設けて、要旨を記載するようにしましょう。

決議事項

① hogehogeの件
議長の指名により、取締役hogehogeより、hogehogeの件について説明した。
(中略)
議長がその賛否を議場に諮ったところ、本議案は満場一致をもって原案どおり承認可決された。

(意見、質疑応答の要旨)

(省略)

以上をもって本取締役会の議事を終了したので、議長は閉会を宣し、hh時mm分に散会した。

上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、議長並びに出席取締役及び監査役は記名押印する。

YYYY年MM月DD日

株式会社〇〇〇〇 取締役会

議長 代表取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     取締役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

     監査役 hogehoge 印

押印行為を電子署名で行う場合

下記文言を記載し、押印欄は省略する。
「上記議題及び決議内容を明確にするため、この議事録は電磁的記録をもって作成し、議長並びに出席取締役及び監査役は電子署名を付す。」

関連法令等

会社法施行規則
(取締役会の議事録)
第百一条 法第三百六十九条第三項の規定による取締役会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。
2 取締役会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。
3 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
二 取締役会が法第三百七十三条第二項の取締役会であるときは、その旨
三 取締役会が次に掲げるいずれかのものに該当するときは、その旨
イ 法第三百六十六条第二項の規定による取締役の請求を受けて招集されたもの
ロ 法第三百六十六条第三項の規定により取締役が招集したもの
ハ 法第三百六十七条第一項の規定による株主の請求を受けて招集されたもの
ニ 法第三百六十七条第三項において準用する法第三百六十六条第三項の規定により株主が招集したもの
ホ 法第三百八十三条第二項の規定による監査役の請求を受けて招集されたもの
ヘ 法第三百八十三条第三項の規定により監査役が招集したもの
ト 法第三百九十九条の十四の規定により監査等委員会が選定した監査等委員が招集したもの
チ 法第四百十七条第一項の規定により指名委員会等の委員の中から選定された者が招集したもの
リ 法第四百十七条第二項前段の規定による執行役の請求を受けて招集されたもの
ヌ 法第四百十七条第二項後段の規定により執行役が招集したもの
四 取締役会の議事の経過の要領及びその結果
五 決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名
六 次に掲げる規定により取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
イ 法第三百六十五条第二項(法第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)
ロ 法第三百六十七条第四項
ハ 法第三百七十六条第一項
ニ 法第三百八十二条
ホ 法第三百八十三条第一項
ヘ 法第三百九十九条の四
ト 法第四百六条
チ 法第四百三十条の二第四項
七 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
八 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名
4 次の各号に掲げる場合には、取締役会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
一 法第三百七十条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした取締役の氏名
ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
二 法第三百七十二条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

会社法
(取締役会の決議)
第三百六十九条 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

会社法
(議事録等)
第三百七十一条 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。
2 株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の議事録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3 監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社の営業時間内は、いつでも」とあるのは、「裁判所の許可を得て」とする。
4 取締役会設置会社の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会設置会社の議事録等について第二項各号に掲げる請求をすることができる。
5 前項の規定は、取締役会設置会社の親会社社員がその権利を行使するため必要があるときについて準用する。
6 裁判所は、第三項において読み替えて適用する第二項各号に掲げる請求又は第四項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該取締役会設置会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第三項において読み替えて適用する第二項の許可又は第四項の許可をすることができない。

会社法
(取締役会への出席義務等)
第三百八十三条 監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。ただし、監査役が二人以上ある場合において、第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第二項の取締役会に出席する監査役を定めることができる。
(以下略)

昭和40(オ)68,株主総会決議取消等請求,昭和41年8月26日,第20巻6号1289頁
判示事項
二 議決時に定足数を欠くにいたつた取締役会の決議の効力
裁判要旨
二 株式会社の取締役会の定足数は、開会時に充足されただけでは足りず、討議・議決の全過程を通じて維持されるべきであり、議決時にこれを欠くにいたつた場合には、当該決議は無効というべきである。

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人事・総務

(電子証明書)オンライン登記のハードルがまた下がりました

商業登記規則が2021年2月15日付で改正・施行されました。
あわせて、登記の申請書にマイナンバーカード(公的個人認証サービス電子証明書)が対応可能になり、オンライン登記のハードルがまた一段と下がる形となりました。

印鑑からの解放が進んでいます。

商業登記規則が改正されました

2021年2月15日から、登記の申請(と印鑑証明書の請求)を行う差異、これまでは商業登記電子証明書がなければ対応できませんでしたが、マイナンバーカードでの電子証明書も使用できるようになりました。

これにより、まだ面倒はあるものの、商業登記をオンライン対応する場合のハードルが一段と下がります。

登記実務で何が便利になる?

これまでは、法人実印に代わる電子証明書の取得が必要でしたが、これが不要になります。
(代わりに、マイナンバーカード電子証明書による電子証明書を付す必要がある。)

従前のフローは下記の通りです。

登記に必要な書類PDFを用意する

クラウドサインにて、各登場人物(役員や株主など)が署名対応をする

クラウドサインから電子署名が付されたPDFを出力

法務省指定の「申請用総合ソフト」にて、「法人実印」に代わる「電子証明書」による電子署名を付す

司法書士の先生にデータを提出し、司法書士の先生からオンライン登記を行う

(↓参考:昨年の登記実務対応の緩和案件について)

これらの内、申請書についてはマイナンバーカード電子証明書による電子証明書で良く、添付書類についてはクラウドサインをはじめとするクラウド型電子証明書サービスによる立会人型電子署名でOK、というような流れになります。
つまり、PDFを出力して商業登記用の電子署名を追加で付す必要が無くなりました。

移転等による電子証明書取り直し問題もクリア

移転等の事象により管轄の登記所(出張所含めて)が変更になった場合、電子証明書を取り直す必要が無くなったので、これもまたプラスですね。

代表取締役の変更事案もだいぶ緩和

代表取締役の変更事案についても、大きく利便性が向上しています。

代表取締役の変更事案については、従前は代表者の商業登記電子証明書と、役員のマイナンバーカード電子証明書による電子署名(もしくは特定認証業務電子署名)が必要でした。
これが今回、変更前の代表取締役がマイナンバーカード電子証明書による電子署名があれば、他の役員はクラウド型電子証明書サービスによる電子署名でOKになります。

一部の登場人物がクラウド型電子証明書を使えない場合

一部の登記においては、登場人物が多い場合もあり、仮にクラウド型電子証明書サービス対応が不可の場合、一律紙となる場合がありました。
今回、これもだいぶ緩和されるはずです。

というのも電子署名を付したデータ(電磁的記録)をCD-R等の媒体に記録し、登記所に提出する事が可能となったからです。

申請書は紙、電子署名を付したデータはCD-R、登場人物が多い書類については紙、という対応が可能となりました。

銀行系や古い会社等、対応いただけない所についても、かなりハードルが下がったはずです。
工夫の余地が大きく出てきました。

繰り返しますが、代表者のマイナンバーカード電子証明書は必要です。

対応しているクラウド型電子証明書サービスは?

対応しているクラウド型電子証明書サービスは下記の通りです。

クラウドサイン、GMOサインあたりがメジャーなものでしょうか。

法務省HP’「商業・法人登記のオンライン申請について」より

以上、今回の法改正に伴う登記実務について見ていきました。

この1年でどれだけ世の中が変わったんだ、という感じがしますね。

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人事・総務

「取締役会決議事項の提案書」をクラウド型電子契約でやろう

取締役会の決議を省略するための方法として提案書方式というものがあります。
通常はPDFデータや紙で送付したものを、メールでの同意、ないしは紙での同意を取得します。
別にこの方式でも問題無いのですが、最近浸透してきたクラウド型電子契約サービスを使うと非常に良いです。

ちなみに、 提案書方式 = 書面決議 = みなし決議 です。

提案書方式をクラウド型電子契約サービスでやると良い理由

結論、内部統制面で一番良いと考えられます。

紙は不便なので電子が良く、電子でもメールで十分と言えば十分です。

ただ、メールの場合、単純に「同意します。」と返信されても、何に対して同意なのかの曖昧性が高く、センシティブな決議の場合、揉める可能性がゼロではありません。
ようは、書面決議で良い旨の同意なのか、それとも議案に対する同意なのかを明確にしてもらわないといけない、という事です。
(忙しい経営者ですと、本当に一言、主語とか省略して「同意します。」って返してきます。)

そこで、”締結”という形で同意を取得する意味で、立会人型の電子署名が付されるクラウド型電子契約サービスの登場です。
この方法は、内部統制的に最も適している、と考えられます。

過去の記事で、取締役会議事録の押印に関して、クラウド型電子契約サービスが使えるよ、という事はお伝えしてきましたが、提案書方式でも使えるのですね。

やり方はそんなに複雑では無く、一般的な「取締役会決議事項の提案書」をPDFに起こして、それをクラウド型電子契約サービス上で設定、取締役に送付・回覧すればOKです。

なお、利害関係取締役は提案書の送付対象ではありませんが、人間関係というかビジネス・コミュニケーションの常識として、一応、他役員に送付している旨、伝達した方が良いでしょう。

業務監査権限がある監査役について

監査役に関しては異議が無い事の確認がとれれば良いので、別にこの送付に加える必要はありませんが、その異議が無い旨を明確に確認する意味でも送付対象に加える事は差し支えないでしょう。

(業務監査権限がある監査役がいる場合に、異議無しコメントが必要。定款・登記簿に「当会社の監査役の監査の範囲は、会計に関するものに限る。」との規定が無い場合は、業務監査権限がある監査役となります。)

定款の定め

定款には下記のような定めがあることが前提です。

電磁的記録が入っていなかった場合は、記載の方法で対応するしかないですね。
早々に定款変更を行いましょう。

当会社は、取締役の全員が取締役会の決議事項について書面または電磁的記録により同意したときは、当該決議事項を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。但し、監査役が異議を述べた場合はこの限りでない。


ここで話は以上になるのですが、提案書や同意書、その後の議事録に関して、テンプレートを参考資料として提示しておきます。

取締役会決議事項に関する提案書テンプレート

2020年mm月dd日

役員各位

株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇

取締役会決議事項に関する提案書

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて、会社法第370条の定めに基づき、下記のとおりご提案致しますので、取締役におかれましては、当該提案内容にご同意いただけます場合は、2020年mm月dd日(aaa)までに、電磁的方法にてご返信下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。

敬具

提案の内容

第1号議案 〇〇〇〇の件

本文

第2号議案 〇〇〇〇の件

本文

以上

同意書テンプレート

2020年mm月dd日

株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇 殿

同意書

私は、2020年mm月dd日付にて貴殿から書面により提案のありました、下記提案事項に同意し、会社法第370条の定めに従って、取締役会による決議を行うことなく、全ての提案が可決されたとみなされることに同意いたします。

取締役 〇〇〇〇

提案 

第1号議案 〇〇〇〇の件

第2号議案 〇〇〇〇の件

以上

取締役会議事録テンプレート

取締役会議事録

下記の提案事項に関して、取締役全員が同意の意思表示をするとともに、各々の監査役からは異議が述べられなかったため、会社法第370条の規定により、各提案事項を可決する旨の取締役会の決議があったとみなされた。

1.取締役会の決議があったとみなされた日

2020年mm月dd日

2.取締役会の決議があったとみなされた提案事項

第1号議案 〇〇〇〇の件

本文

第2号議案 〇〇〇〇の件

本文

3.議事録作成に係る職務を行った取締役氏名及び作成日

代表取締役 〇〇〇〇(作成日:2020年mm月dd日)
         
以上のとおり、書面による取締役会の決議があったとみなされた事項を明確にするため、この議事録を作成し、代表取締役(議事録作成者)が次に記名押印する。

2020年mm月dd日

株式会社〇〇〇〇 取締役会

代表取締役 〇〇〇〇 印

以上

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人事・総務

クラウド型の電子契約サービスはどこまで実務に使えるか?

筆者もクライアントにて電子契約導入のサポートを行い、諸々知見が蓄積されてきたので、ここで整理をします。
現実的にどこまで電子化できるか?の参考になるかと思います。

基本的なクラウド型の電子契約サービスの状況については次の記事を参考にしてください。

基本的に、法人実印に代わる電子証明書の取得を行えば、理論上は登記実務まで電子で完結できるようにはなりました。
要注意事項については、下記記事内にて解説しています。

押印そのものに関する基礎的部分に関しては次の記事を参考にしてください。

通常の契約

まず、(相手先がいる)通常の契約締結に関しては、相手先がNGでなければクラウド型の電子契約サービスにての締結で問題がありません。

下記記事にて整理しているのですが、クラウド型の電子契約サービスを導入する上での課題は次の3つです。

  1. 契約の有効性
  2. セキュリティ
  3. 内部統制

この内、1.契約の有効性、2.セキュリティに関しては、法的な解釈整理やサービスが提供する仕様で解決が可能です(解決が可能と整理する)。

内部統制に関しては、代理権限の証明(無権代理のけん制)が必要です。

この代理権限の証明(無権代理のけん制)に関しては、次の2つの記事を参考にしてください。

登記が関係しない取締役会議事録

登記が関係しない取締役会議事録に関しては、これもクラウド型の電子契約サービスにて対応が可能です。
(社内保管用なので、そこまで神経質にならなくても良い。)

この辺りの話は、下記の記事を参考にしてください。
クラウドサイン等の一部クラウド型の電子契約サービスが登記対応する前の記事なので、一部古い記載がありますが、基本的な考え方に関しては参考になるはずです。

なお、役員にクラウド型の電子契約サービス上で、押印回覧をするかと思いますが、この場合、必ず役員のメールアドレスを指定するようにしましょう。

社外取締役とかで秘書の方を指定している場合もありますが、この場合は必ず本人から承認する旨の文面をメールでもらうようにしましょう。

後で揉める可能性がゼロではありません。

登記に関係する議事録(取締役会議事録、株主総会議事録)

登記に必要な書類に関しては、現実的に紙の方が便利なんだろうな、という考えです。

まず、そこまで登記が必要な場面が多くない事と、登記書類の電子化にはクラウドサイン等のクラウド型の電子契約サービスでは不足があり、法人実印に代わる電子証明書の取得が必要です。
加えて、押印に関係する登場人物の一人でも(取締役会議事録における社外役員が想定される)、電子NGとなった場合、一部だけ紙で、という対応が不可能な点もあります。

そのため、なんだかんだ、登記に必要な書類は紙の方が良いよね、諸々は司法書士先生にお願いするし、という結論になります。

電子証明書の取得自体は、そこまで難しく無いので、諸々社会全体で電子対応がこなれてくれば、状況は変わるでしょう。

(電子証明書を取得して運用していく事が、関係者含めて苦で無いのならば、電子の方が良いので、そこは悪しからず。)

投資契約のような複雑な契約

投資契約のような複雑な契約に関しては、使い分けが良いという結論です。

下記のような形で、例えば、登記に使う物なのか、払込に必要な物なのか、で整理するとわかりやすいでしょう。

登記に必要な書類 → 紙で準備

  • 定款
  • 株主一覧
  • 株主総会議事録(取締役会に委任していれば取締役会議事録)
  • (★)総数引受契約書
  • 取締役会議事録(投資契約の承認)
  • 資本金の計上に関する証明書
  • 種類株主への通知を証する書面(契約承認、取締役会に委任していれば募集事項の決定も)
  • 払込があったことの証明書
  • 委任状(司法書士先生に依頼する場合)

払込に必要な書類 → 電子でOK(ただし★は登記にも使うので紙で)

  • 株主総会議事録(種類株主総会分も必要があれば)
  • (★)総数引受契約書
  • 投資契約書(株式引受契約書、という名称の場合も)
  • 株主間契約書

種類株主への通知に関しては、簡素化方法がありますので、こちらの記事を参考にしてください。

なお、株主間契約書ですが、株主によっては電子契約NGの所もあります(銀行系VCとか)。

この場合、ハイブリッド型での契約締結が考えられます。

具体的には、押印箇所のみ当該株主から株主人数+会社分、作成・郵送してもらい、他の電子契約OKな株主の押印箇所に関してはクラウド型電子契約サービスの締結を証する画面の印刷を挟み込む形で(他の紙面部分と併せて)製本・割印するイメージです。

登場人物が多い場合、押印部分の収集が一番面倒ですので、これだけでもかなりの手間暇を省力化できるはずです。


以上、現在時点において、現実の実務でどこまでクラウド型電子契約サービスが使えるかを整理してきました。

まだまだ不便な所(システム的な所だけでなく、社会的な受容度の観点で)がありますが、従来の押印実務に比べれば非常に便利になってきています。

押印部分がリモートワーク等の妨げになるだけでなく、業務の非効率化を生んでいる部分もありますので、積極的に電子契約の導入を進めていきたいものです。

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人事・総務

組織変更時の規程内部門名称改定(変更)の簡易化方法

組織変更があると、規程内にある管掌部門の部門名称の変更も必要であり、その改定手続(通常は取締役会決議)は非常に煩雑ですし、抜け漏れが起きやすいです。
今回は、この組織変更時の規程内部門名称改定の簡易化方法について解説します。

対応方法は2つあります。

  1. 取締役会での読み替え決議
  2. 規程内の記載を部門名称では無く役割を指定する方法

取締役会での読み替え決議

1つ簡便的な方法が読み替え決議です。

例えば、経理部を財務部と統合して経理財務部とするような組織変更があったとします。

この場合、取締役会において「当社規程中、経理部ないしは財務部とあるものは、経理財務部と読み替えるものとする。」という決議を行うのです。

規程の改定は通常、(取締役会設置会社の場合)取締役会決議を得るものとする会社が多いと思いますが、これでカバーが可能です。
(取締役会設置会社で無い場合は、取締役決定決議で同様のことを行えばOKです。)

ただ、例えばファイナンス部を経営企画部と財務部にわけるような場合には、対応が困難です(すでに制定している規程で、経営企画部と財務部にそれぞれ対応する管掌部門が分かれる場合)。

また、過去のこの種の読み替え決議が積み重なっている場合には、管理も煩雑です。

一時的な対応としては問題無いですが、常用するのはあまりおススメできません。

規程内の記載を部門名称では無く役割を指定する方法

役割指定にする

もう一つの簡便化方法、こちらがおススメなのですが、規程内の記載を部門名称では無く役割を指定する方法です。

具体例で示します。

例えば印章管理規程があったとして、その規程内には総務部が管掌部門であると指定されていたとします。
この場合、総務部が仮に人事総務部に変更になった場合は、規程の改定が必要となります。

(旧)総務部 → (新)人事総務部

この手続きが煩雑なわけですが、規程内の記載が部門名称指定でなくて、例えば「総務管掌部門」というような役割指定にすると、規程の改定が不要になります。
非常に簡便になりますね。

業務分掌規程で部門と役割を紐づけておけば内部統制的にもOK

上記の対応だけだと不安だ、曖昧になる、と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。
実際、微妙に曖昧ですしね。

その場合、業務分掌規程(組織規程類でも良い)で、業務の役割と担当する管掌部門を紐づけておけば問題がありません。
例えば、印象管理業務(各種書面への押印行為等)という業務があって、その役割名称を「総務管掌部門」とし、実際の部門名称として「人事総務部」としておけば良いです。

この場合、組織変更があれば、業務分掌規程(または組織規程類)のみ変更(取締役会決議)を加えれば良いので、非常に簡便になります。


組織変更に伴う規程改正は重要な作業ではあるのですが、では生産性がある業務か?というと無いよね、というのが実際です。

上記対応により、かなりの省力化、簡便化が図れるはずですので、是非、導入検討を行ってみて下さい。

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