環境志向・健康志向の高まりと、科学技術の発展を背景に、培養肉による代替食品(人工肉)が開発されはじめています。
この培養肉市場への参入は有りなのか無しなのか?
フェルミ推定をベースに考えていきましょう。
(参考)フェルミ推定とは?
フェルミ推定については、下記の記事も参照し、イメージを掴んでいただければと思います。
お題:代替食品(培養肉)市場はどれだけのサイズ感を見込めるか?
生理的な拒否感が大きそうな培養肉ですが、アメリカを中心に欧米では一定のマーケットができはじめています。
食肉の生産コストは高く、また環境負荷も大きいため、日本もいずれは培養肉が一般的になる時が来るでしょう。
では、仮にあなたが食品メーカーに務めていて、最新技術に関連するポジションについていたとします。
培養肉市場に参入するでしょうか?
とりあえず、生理的なものは脇においておいて、市場規模だけで考えてみましょう。
フェルミ推定
まず、培養肉が普及しはじめた段階と普及した段階で考えた時、そしてその中間で考えます。
アーリー、ミドル、レイターですね。
アーリー期
アーリー期は、本当にごくごく一部の極めて関心が高い層が、高い値段を払って購入・消費するようなイメージになるでしょう。
計算式は次の通りになります。
アーリー期の市場規模
= 人口 × 健康や健康志向に極めて関心が高い層 × 培養肉への関心も高い層 × 購入単価/日 × 消費ペース
それぞれ仮でパラメータを当ててみると、下記の通り、125億円がざっくり見込めます。
テストマーケティングとしては、十分すぎるほどのサイズ感と言えます。
週1消費ではなく、月1消費としても約29億円ですので、初期の市場形成段階としては良い数字でしょう。
アーリー期の市場規模
= 人口1.2億人 × 関心度極めて高い率1% × 培養肉高関心率20% × 1,000円/日 × 52日(週に1回消費)
= 約125億円
ミドル期
ミドル期では、値段が下がり、そこまで関心が高くない層も買うような想定になると思われます。
関心無し層、中間層、高関心層の3パターンで分けて考え、それぞれざっくりとパラメータをはめてみます。
すると、市場規模としては約677億円となり、マーケットとしては大企業でも狙うに値する数字感になってきました。
ミドル期の市場規模
① 人口 × 健康や環境志向への関心度0%(60%) × 培養肉関心率(0%) × 0円 × 0日 = 0円
②人口 × 健康や環境志向への関心度50%(39%) × 培養肉関心率(5%) × 300円 × 52日 = 約365億円
③人口 × 健康や環境志向への関心度100%(1%) × 培養肉関心率(20%) × 500円 × 260日 = 約312億円
① + ② + ③ = 約677億円
レイター期
レイター期になると、市場のあり方が大きく変わると推測されます。
具体的には、加工食品や、ひき肉などに、培養肉がまざるような状況です。
この場合、食肉市場全体のうち、単価の安い培養肉が〇〇%の割合で構成される、というようなイメージ感になると考えられます。
まずは食肉市場の規模を考えます。
食肉市場規模
= 人口 × 1日あたりの肉消費額 × 365日
= 1.2億人 × 100円 × 365日
= 4兆3,800億円
そして、培養肉が最終的に30%混ざるような構成で考えます。
(現在でも、植物性タンパク質が食肉加工品に当たり前のように含まれているので、これくらいはいくだろうと推測。)
そうすると、下記の通り約1.3兆円の市場規模が想定されます。
結構な数字です。
レイター期の市場規模
= 食肉市場規模 × 培養肉添加割合
= 4兆3,800億円 × 30%
= 1兆3,140億円
実際の数値をはめてみる
まずリンク先資料の通り、現時点での世界の培養肉市場は1,200億円と推計されているようです。
欧米を中心としたアーリー期と言えるので、仮に日本で培養肉を販売した場合、10%位まではアーリー期でも取れるであろうと考えた場合、125億円という推計は、かなり良い線いっているのではないでしょうか。
ミドル期も同様の話で、培養肉の市場は年間約8%で成長していくことを踏まえると、時間はかかるにせよ約677億円は到達しそうです。
普及に伴う価格の低下と、味・品質の向上、イメージ感の改善次第で、普及スピードはあがるでしょう。
なお、食肉市場の2020年時点の市場規模は約3兆円とのことです。
推測の4兆3,800億円からは、まあまあ外れてしまいましたが、それでもレイター期の割合を30%とした場合、市場規模が約1兆円ですので、結構なサイズ感です。
最後に
培養肉の普及の努力は、特に生理的な嫌悪感の払拭を中心に大変なものになるでしょう。
しかし、ここまで見てきた通り、その市場規模はかなりのサイズ感が見込めます。
仮に10数年後、5社程度の主要プレイヤーで培養肉市場を競うような状況になっていたとしても、その事業規模は2,000億円ほどを見込めます。
大企業でも、2,000億円の売上高は相当なものです。
結論、現時点でこの先未来を見越して、培養肉の開発は参入する価値あり、と考えられます。
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