Googleがチームの力を最大限高めるために「心理的安全性」という考え方を出してから、このワードがベンチャー界隈を中心に流行っています。
内容としては頷けるものである一方、その世の中の捉えられ方には首を傾げるものも多々見受けられます。
今回は、心理的安全性を勘違いするな、と題して、その考え方について解説していきます。
なお、以下は筆者個人の考えになりますので、異論・反論は大いにあって当然だし、結構だと考えています。
心理的安全性とは
心理的安全性とは
心理的安全性については、色々な書籍や記事で書かれているので、ここでことさら何か詳細に解説することはしません。
適当にググってください。
大本の考え方の発信も参考にしてみてください(TED動画:日本語無し)。
概要だけ簡単に述べるにとどめると、ようは、下記のことです。
「恐怖や不安を感じることなく、安心して発言、行動できる状態のこと」
そして、心理的安全性がないと、問題の共有や、その解決策、その他もろもろの意見やアイデアが出にくくなり、ひいては、プロジェクトの失敗や、不正の温床になるなど、チームのパフォーマンスや信用問題に影響する可能性がある、とされています。
心理的安全性の有無が、組織の未来を左右する、というのですね。
ここまで書くと、全くもってそうだね、と当然に思えます。
では、世の中の捉え方として、どのような誤解をされているのでしょうか?
心理的安全性の勘違い
心理的安全性は、みんなで楽しくワイワイ仕事をする環境を作ること、ではありません。
心理的安全性を勘違いして、みんなが楽しく仕事をすることだ、と捉える人は結構多い印象です。
加えて、自分が辛い状況だと、「心理的安全性が無い組織だ」と考える人が、まあまあ存在します。
心理的安全性をストレートに表現すると、
「あくまでもパフォーマンスを最大化して成果を出すための考え方であり、仲良しグループを作るための考え方では無い」のです。
成果を出すことが前提にある、資本主義の権現の考え方なんですよ。
どうすれば正しく心理的安全性のある組織にできるか?
心理的安全性が誤解される理由
心理的安全性を正しく適用する方法を考える前に、何故、誤解されやすいのか?を考えてみましょう。
まず、心理的安全性を阻害する、と言われている原因ですが、次の4点が指摘されています。
- 無知だと思われる不安
- 無能だと思われる不安
- 邪魔だと思われる不安
- 批判的だと思われる不安
何も知らない、仕事ができない、議論の邪魔、あいつは批判ばかりetc…。
こう思われるのが不安であり、無難な発言、無難な態度にとどめようとしてしまうのです。
そのため、対処法として、次の4点を積極的に行っていきましょう、とされています。
- 質問をする
- 失敗をする
- 発言をする
- 反対意見を言う
ようは、相手を認め、尊重しましょう、ということですね。
。。。。。
こんなん、「皆さん、相手を認め、尊重しましょう。」と言うだけで、できるようになるわけ無いじゃないですか。
会社組織として「心理的安全性を推進しましょう」としても、これは言うは易し系です。
結局、どうすれば良いのかわかりづらいのだから、自分の印象を良く見せる方向に一人一人が行動してしまうに決まっています(絶対そうなる、という意ではなく、人間心理としてベクトルがそうなる、ということ)。
それで、何となく仲良しグループができて「心理的安全性が確保されている!」と勘違いしてしまうのです。
酷い状況になると、経営者が「これはぬるま湯だ、不味い。」と思って軌道修正を図ると、「言っていることとやっている事が違う。」と反発を招く形に発展してしまいます。
どうすれば正しく心理的安全性のある組織にできるか?
では、どのようにすれば、正しく心理的安全性のある組織にできるのでしょうか?
ここで改めて、心理的安全性を阻害する要因を見ていきましょう。
- 無知だと思われる不安
- 無能だと思われる不安
- 邪魔だと思われる不安
- 批判的だと思われる不安
逆説的に考えてみて下さい。
そもそもとして不安に思わないような強い状態にすれば、良いと思いませんか?
ようは、下記の状態になるように、採用や教育を行っていけば良いのです。
- 従業員が自分たちの仕事をする上での知識を十分に有している
- 会社が求める成果の基準を明確化し、それを従業員が達成している
- 不要な会議を排し、必要な会議に必要な人のみをアサインしていく
- 組織ファシリテーション能力をチームとして高めていく
もっとストレートに表現すると「優秀な人を雇えば良い」のです。
強いメンバーでチームを構成すれば、心理的安全性の確保がしやすくなります。
きちんと成果意識のあるメンバーでしたら、どんな優秀な人間でも知らないことはあるし、ミスもするし、勘違いもするし、色んな不安を抱えている、ということを知っています。
その上で、成果に意識をフォーカスをしている。
こういうメンバーが揃っている状態で改めて「心理的安全性を推進しましょう。」と発信すれば、自然とそのような組織が出来上がっていきます。
チーム・ビルディングの手法は、それ単独で成立するものではない、ということですね。
都合よく人を採用できるわけない!という反論
ここまで書くと、かなりハードな考え方のように思われるかもしれません。
(まあ、実際ハードなのですが。)
そして、「そんな都合よく、人を採用できるわけないじゃないか!」という反論も出てきそうです。
(まあ、実際、そんな都合よく人を採用できるわけ無いんですけれどね。)
ここでまず、納得しなければいけない点が1つあります。
それは、
心理的安全性はGoogleでは上手くいっているかもしれないが、
他社においても心理的安全性を確保すればGoogleのように上手くいくわけではない。
ということです。
ようは、一種の生存者バイアスなのです。
これを納得した上での朗報がこちらの記事です。
組織というものは、構成要員の25%にアプローチができれば、その影響が全体に波及するものです。
つまり、全員を心理的安全性適正が高いメンバーで構成せずとも、25%程度構成できれば望む方向にベクトルを向けることができると考えられるのです。
ここまでハードルを下げれば、なんとかなると思いませんか?
(というか、本当に心理的安全性が確保されている組織にしようと思うならば、なんとかしましょう。ビジネスは甘くないんですよ。)
以上、心理的安全を勘違いするな、と題して、正しく心理的安全性が確保された組織にする方法について考えてきました。
ここでのベースとなる思考ロジックは、その他諸々の事象でも応用できます。
- 世の中の成功事例は生存者バイアスであり、真似をしても上手くいくとは限らない
- 何かの手法や考え方は、大体において、それ単独では機能しない
- (身も蓋もないけれど)結局の所、優秀であること、成果に意識が向いていること、が重要
輝かしく成功している企業の事例を、取り入れたいという気持ちは当然にそうだと思うのですが、どういう仕組みでうまく機能しているのであろうか?と一歩引いて冷静に考えることも重要ですね。
(この点が、本件で一番言いたかったことです。)
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