ストレスという言葉から、ポジティブなイメージを抱く人は少ないのでは無いでしょうか?
辛い思いをし、心身に負担をかける悪いもの。
そのようなイメージが一般的かと思います。
ここでは、むしろ「良いストレス」があるよ、という点について書いていきます。
ストレス、という言葉の定義
まず最初に、ストレスに対する誤解、と言いますか、混乱について書かないといけません。
ストレスという言葉は、2つの違った意味で使われています。
- (原因)あの上司がストレスだ、仕事が多くストレスになる、クレーム対応でストレスがたまる
- (結果)ストレスで胃が痛い、ストレスでイライラする、ストレスでやる気が起きない
この通り、原因と結果の2つの使われ方が混在しています。
この状況を心理学的に正しく表現するならば、次の2つにわけて考えなければいけません。
- ストレスの原因となるストレッサー
- ストレッサーの結果として生じる精神的・肉体的な障害であるストレス反応
そして、ストレッサーの存在によりストレスが蓄積した結果でるストレス反応のことを、より一般的には心身症といいます。
心身症では次のような障害が発生します。
心に表れるストレス反応
- 疲労
- 倦怠感
- イライラ
- 攻撃性
- 混乱
- 健忘
- 乱雑
- 他者の忌避
- 自信喪失
- 無反応
- 極度なこだわり
- 酒乱
身体に表れるストレス反応
- 頭痛
- めまい
- 高血圧
- 腰痛
- 関節痛
- 呼吸器障害
- 消化器生涯
- 発疹
- 目の充血
- 耳鳴り
- 睡眠障害
ようは、ストレス反応が過度に出ないように、原因であるストレッサーの存在を調節していきましょう、という考え方が重要なのです。
悪いストレス
ここまで見た時に、ストレス反応(心身症)が問題なのではなく、ストレッサーが問題だ、というのはわかったかと思います。
ここで注意しなければいけないのが今回の本題、ストレスの良い悪いの話です。
まず悪いストレスの話です。
悪いストレスとは、簡単に言ってしまえば、意味のない不必要なストレッサーのことです。
具体的には下記の4点です。
- 非合理的、公正でない上司や経営陣の存在
- 明らかに身体や精神に害をおよぼす危険性の高い状況
- 一般的な社会常識を超越した不当な他者からの過剰な要求
- 目的がすでに不明な、ただ慣習として続いている業務やビジネス習慣
これは明らかに、取り除かなければいけないストレッサーです。
無駄の塊、無意味極まりないものです。
放置すれば、従業員が心身症を発症し、果てはうつ状態(適応障害)になり、労務管理上の障害につながります。
従業員にとっても、会社にとっても、良く無い状況になるわけです。
なお、これら悪いストレスのストレッサーは個人で解決できないものも多く、もしこれが自社内に存在するというのならば、経営者や経営幹部は積極的に取り除いていかなければなりません。
一般的には、上記の意味のない不必要なストレッサーを放置している企業をブラック企業と言うのでしょうね。
良いストレス
それでは良いストレスとは何でしょうか?
良いストレス
それは、何とか乗り越えた先に、自分自身を含め、会社組織の成長・成功など、ポジティブな状況が待っているものです。
具体的には下記の4点です。
- 成長につながるもの
- 成果や業績につながるもの
- 他者や社会への貢献につながるもの
- 新たな価値創出につながる課題の解決
こういった負荷は必要な負荷です。
ストレス反応(心身症)の原因になるから、負荷を減らそうなんて話をしたら、この競争社会では生きていけません。
会社がつぶれてしまい、守るべき従業員を守ることもできません。
負荷のライン
もちろん負荷の程度の問題はあります。
ある従業員が耐えられる100%程度の負荷ならば許容すべきでしょう。
本人の適性を見極めて、何とか乗り越えられるというならば120%の負荷もストレッチ目標として考えられます。
しかし、いきなり150%とか200%の負荷が来たら、そりゃあ簡単につぶれてしまいます。
必要な負荷であっても、このような過度な負荷は「悪いストレス」と考えた方が良いです。
経営者や上司は、従業員や部下がどこまでだったら大丈夫なのか?というラインを見極める必要があるわけです。
見極めの目安
実はここがメインテーマです。
ストレス反応(心身症)は次の4つのステージで来ると言われています。
- 疲労感:ゆっくり休んでも疲れが取れない
- 攻撃性:ちょっとしたことですぐ怒る
- 緊張感:パニック状態になり頭の中が真っ白になる
- 憂鬱感:自己否定、自信喪失、他者の忌避
これを見ればわかると思うのですが、ビジネスをしていれば、疲労感位は当たり前にあります。
つまり、第1段階の「疲労感」は、ぶっちゃけスルーして問題ありません。
あって当然のストレス反応だからです。
上司は対象者をウォッチしていれば問題ないでしょう。
問題なのは第2段階からです。
ここからは明確に業務の効率が低下していきますし、周囲への悪影響も出てきます。
対処の重要性や必要性が劇的に上がってくるので、これを一つの目安に考えれば良いでしょう。
第2段階に移行しそうな兆しが見えてきたら、業務調整や1on1での重点ケアなどを入れていく形です。
以上、ストレスの誤解に関して、「良いストレス」の存在と、ラインの見極めについて解説していきました。
経営者や上司は、メンタルヘルスの専門家では当然にありません。
ですので、上記の内容を知っていても、必ずしも適切に対処できるとは限りません。
しかし、上記内容を知っているだけで、対象者がどのような状態にあるのか?の指針になり、問題解決の一助になると言えるでしょう。
別の機会で、ストレッサーへの対処の考え方について、書いていきたいと思います。
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