このコーナーでは、セミナー等々で受けた質問に対して回答しています。
今回は会計の歴史についてですね。
質問
「会計の歴史を知りたいです。昔から、今の形なのか。
それとも、現代においては色々と変化しているのでしょうか?」
おぉぉ。
個人的には、この種の質問は非常に嬉しいものです。
まがりなりにも、会計の世界で飯を食べているので、興味を持ってくれるのは、やっぱ良いですね。
というわけで、簡単に会計の歴史を解説していきます。
(しっかり説明すると、本が書ける。)
回答
~1500年(簿記の起源)
まず、簿記の起源からです。
簿記の起源に関しては諸説があり、古代ローマ起源説と中世イタリア起源説の2説が対立しています。
詳細を書き始めると、それだけで本が書けるレベルのものになってしまうので省略しますが、とりあえず言える事は、上記2説のどちらも「メモ」レベルの簡易なものでした。
明確に簿記の原型的に語られているのが15世紀のイタリアになります。
この頃のイタリアは、学生時代にやったと思うのですが「東方貿易」なるものが流行っていました。
当時の航海は、自然との闘いや海賊の存在など、様々なリスクがありました。
このリスク低減のために誕生したのが「銀行」と「手形」です。
そして、「銀行」が「手形」を扱うために必要な物が共通の言語、つまり「簿記」だったのです。
この時に誕生したのが「B/S」、つまり「貸借対照表」です。
この時代には「P/L:損益計算書」は存在せず、シンプルに、いくらの出資をうけていたのか、債務はどうなのか、そして資産はどれくらいあるのか、というものが記載されているのみでした。
この時代は、航海の度に、会社に相当するものが成立し、航海が終わる度に清算する、という事が行われていました。
こんな杜撰なやり方で良いのか?と思うかもしれませんが、当時には「公証人」という、現代で言う会計士と弁護士を足し合わせたような職業があり、この「公証人」が各種書類の証人となっていました。
(まぁ、それでも杜撰オブ杜撰な時代だったんですけれどね。)
要約しても長いんですよ。
この種の話。
~1700年(株式会社の起源)
さて、上記で会社に相当するものは単発のものだった、と書きました。
今現代の株式会社の姿を見知っているのなら感覚的にわかるかもなのですが、これでは非効率で、財産を増やすのが非常に面倒です。
そんな中で誕生したのが「株式会社」です。
17世紀頃の事ですね。
有名な「東インド会社」の誕生です。
こうして、多くの「株主」からお金を集めてビジネスをする「株式会社」が発達する土台が誕生していきました。
(なお、東インド会社の話も、だいぶ混沌としているので、これを整理して話をすると、非常に膨大になる。)
ついでに、「監査役」が誕生したのも、この頃です。
(まぁ、それでも杜撰オブ杜撰な時代だったんですけれどね。)
~1900年(産業革命)
さて、少し想像して見ていただきたいのですが。
パソコンも無い、電卓も無い、まともな教育を受けている人達も少ない。
ついでに監視カメラも無く、貧乏な人達も多い。
そんな時代に会社運営をしていたら、何が起きると思いますか?
杜撰オブ杜撰な事が頻発するに決まっていますよね?
間違った会計報告、適当な監査、不正や盗難。
当然、お金を出している株主は激おこぷんぷん丸です(表現、もう古いか)。
「バブル」そして「バブル崩壊」があったのは学生時代の歴史でも触れられていたので、覚えていらっしゃる方も多いかと思います。
粉飾決算の影響を受けて、公認会計士なるものが誕生したのも、1800年代後半です。
そういった事もあり、各種会計手法の発達もそうですし、諸々株式会社としての役目も発達していきました。
特筆すべき点としては、「減価償却」と「連結決算」の誕生でしょうか。
1800年初頭から中頃、産業革命を背景に鉄道が発達しました。
この時、どんな事があったかというと。
鉄道の投資って、莫大なお金が必要だというのはわかりますよね。
では、ある年に行った投資が全て「費用」として扱われたら、その会社、大幅な赤字を計上する事になると思いませんか?
Cashがあれば倒産はしませんが、株主的にも赤字だと配当を受けられないので、非常に困ります。
そう、ここで誕生したのが「減価償却」であり、期間損益の概念でした。
(同時に、この辺りで、いわゆる「原価計算」も誕生、発達してきました。産業革命の時代ですし。)
更に、上記鉄道会社もそうなのですが、会社の統廃合的な物が活発になったもこの時代。
いわゆる「連結決算」もこの頃に誕生し、現代会計の礎となっています。
そうそう、下記忘れていましたが、「P/L:損益計算書」の誕生は、まだです。
この時代、何をやっていたかというと、年度はじめのB/Sと年度終わりのB/Sの差額を損益として算出し、その内訳書を収益勘定表として出す、という事をやっていました。
~2000年(現代会計学の発達)
1900年代は、現代会計学や現代金融が急激に発達した時代です。
明確に公認会計士の業務が「監査」を行う事、となったのもそうですし、アメリカをはじめ世界各国で証券法、証券取引法の類が定められてきました。
また、グローバル経済の発達と競争環境の激化も起き、単純に物を作って運んで売れば利益が出る、という時代でも無くなった来ます。
とすると、必要なのがコスト管理。
管理会計の発達です。
「P/L:損益計算書」も、そういった事もあり、ようやく誕生しました。
1900年代初頭辺りの事で、また1929年、イギリスで損益計算書の作成が義務付けられるようになりました。
なお、「C/F:キャッシュ・フロー計算書」は、1979年、アメリカの会計基準改定がきっかけで、明確に誕生、世界に広がる形となっています。
つまり、P/LやC/Fの歴史って、会計の歴史の中では、結構短いんですね。
2000年~(国際会計の時代)
さて、現代はグローバル会計、国際会計基準の時代です。
この時代の特徴は「時価」にあります。
ようは、これまでの会計は原価、コスト観点での会計だったのですが、これからの会計は価値、リターン観点での会計に変わってきている、という事ですね。
こうして、会計(アカウンティング)は、ファイナンスへと領域を広げ、今現代でも発達を続けているのです。
(まぁ、一般的にはアカウンティングとファイナンスは別分野だ、と認識される事の方が多いですが。)
物凄く端折って説明しても、これだけのボリュームになるのが会計の歴史です。
誕生の歴史を踏まえると、その会計手法の意味をより深く知ることができるので、個人的には歴史のお勉強を推奨しています。
ご興味あれば、是非、歴史の勉強にも取り組んでみて下さい。
コメント