睡眠不足は酩酊と同じくらいに、人のパフォーマンスを下げる悪影響がある、と言われるようになりました。
この話は、多くの方が実体験としても同意するものでしょう。
そして、睡眠不足はパフォーマンスへの悪影響だけでなく、リスク判断を歪める可能性もあります。
睡眠不足は酩酊と同じ
時間外労働に対する規制が強化され、働き方改革の名のもとに、生活習慣や職場環境を見直す企業や人が増えています。
コロナ禍も、それに拍車をかけていると言えます。
そして、見直す対象の一つに「睡眠」もあげることができます。
睡眠不足はパフォーマンスに対して多大な悪影響を与えることが、昔から体験的に、そして近年は科学的に理解されるようになってきました。
下記の記事では、次のように海外の研究についてまとめています。
ペンシルベニア大学とワシントン州立大学が行った実験では、1日平均7~8時間睡眠をとっている健康な男女を48名集め、3つのグループに分けました。
14日後、8時間睡眠のグループに比べると、4・6時間睡眠のグループの注意力が確実に欠如していることがわかりました。
まず、6時間睡眠のグループは、酒に酔っている時と同じような状態になっていたことがわかり、4時間睡眠のグループはテストの途中で寝てしまう人も現れる始末。
そして、睡眠不足によるパフォーマンスの影響はリアルに経済への影響も与えており、米シンクタンク「ランド研究所」の試算(2016年)では日本国内で1380億ドル(約15兆円)の経済的損失、国内総生産(GDP)の3%に当たる額の規模にのぼるとしています。
また、経済的な影響のみならず、労災事故や健康被害にもつながる、悪影響が目立つのが睡眠不足です。
この睡眠不足ですが、実はまだあまり知られていない悪影響があります。
それは、リスク判断を歪める可能性についての指摘です。
睡眠不足はリスク判断を歪める
デューク大学の研究チームは、平均年齢22歳の健康な成人ボランティア29人を対象に、睡眠不足が意思決定に与える影響を、注意力への影響とは別に検証しました。
被験者は、一連の経済的意思決定課題を、通常の睡眠をとった後の午前8時と、睡眠不足の後の午前6時の2回行いました。
実験では、MRIにより、ギャンブルの結果を肯定的に捉えたか、否定的に捉えたかを見ると共に、朝のセッションでは課題を与え、リスクに対する評価について計測を行いました。
その結果として、睡眠不足がポジティブな結果を評価する脳領域の活動が活性化すると共に、逆にネガティブな結果を評価する脳領域の活動が低下することが示されました。
(それにより、ポジティブな報酬に対しては感度が高くなる一方、ネガティブな報酬に対しては感度が低下していた。)
また、金銭的な利益を重視する傾向があり、損失を軽減するような選択は減少することも示されました。
これらのとおり、睡眠不足は人へのパフォーマンス影響を与えるのみならず、リスク判断を歪める可能性が大いにあるのです。
対処法としては睡眠はしっかりとりましょう、という当たり前の話もそうなのですが、重要な意思決定は睡眠不足の時には行わないことが考えられます。
まぁ、踏ん切りがつかなくて、何かしらの後押しが必要ならば話は別なのでしょうが。
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