ストレスと言うとネガティブな印象が強く受けられますが、「良いストレス」がある、ということも認知されるようになってきました。
一方、同じストレスであっても、周囲の環境次第では、その影響を強く受けることがあります。
ここでは、環境をコントロールできるか否か?とストレス耐性の関係について見ていきます。
環境をコントロールできるか否か?
生きていれば挫折の一つや二つ(いや、もっと多くの)、何かしら経験するものです。
その大小に関わらず、です。
では、挫折した何かに対して、再度チャレンジをする意欲は何が要因で維持できるのでしょうか?
それは環境をコントロールできるか否かにあると、一部の研究は示しています。
この論文では、被験者にストレスを与えた上で、失敗体験を与え、再度チャレンジするか否かについて調査を行いました。
実験では、まず被験者にストレスを与えます。
(冷たい水が入ったバケツに2分間手を入れ、更にその様子を撮影する、という作業を行います。過去の知見では、この作業によりストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されることがわかっています。対象群であるストレスを与えないグループでは、ぬるま湯に2分間手を入れ撮影も行いません。)
次に仮想の学位を得るための試験を受けてもらいます。
この試験は何度もチャレンジすることができ、仮に誤った答えを回答したとしても、同じ問題が出るが故に、被験者はいずれは正解に辿り着けるようになっています。
ここでのグループ設定は、一方は試験を単純に繰り返すグループ、もう一方は被験者の意志に関係無く学位の対象となる講義がランダム「休講」、つまり強制的に学位がキャンセルされてしまう可能性がある設定となっています。
つまり「ストレスの有無」と「挫折に対する環境のコントロール性の有無」の2軸でわけた4事象で、学位を得るためのチャレンジを継続するか否かが調査されました。
その結果、最もチャレンジ意欲が減衰し継続できなかったのが、「ストレスが有り」「挫折に対する環境のコントロール性が無い」グループでした。
「ストレスが有り」でも「挫折に対する環境のコントロール性が有る」グループは、「ストレスが無い」グループと同程度の継続性を示していたのと、また、「挫折に対する環境のコントロール性が無い」グループでも「ストレスが無い」場合も高い継続力を維持していたことも示されました。
つまり、ストレスとコントロール不能性の組み合わせは、人の意欲を大きく奪う、ということが示唆されているのです。
マネジメントにおける知見
この実験は仕事におけるマネジメントに非常に有用な知見を与えてくれます。
つまり、会社や上司は、従業員に対して不要なストレスを与えない方が良い、ということがわかりますし、そうは言ってもストレスをゼロにすることは不可能なので、可能な限り従業員に環境をコントロールできる仕組みを構築した方が良い、ということがわかります。
「ボス」という人種は、「部下」をなにかとコントロールしたく思うものですが、このマインドは下策だ、ということです。
(仮にあなたが、会社としての成果よりも、部下を支配する、そのような欲求を満たすことの方が大事だ、というならば致し方ないですが。)
なお、従業員に環境をコントロールできる仕組み、とは、仕事量の調節ができたり、決裁権限を柔軟に得られる、などが考えられます。
与えることができるのは持っている者のみです。
マネジメントに悩んでいる方は、これらの知見を活用してみてはいかがでしょうか。
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