上司という生き物は、何かしら無茶ぶりをする生き物です。
部下を適切にストレッチすることは必要なことではあるので、無茶ぶり自体が悪いことではありませんが、過度になると多くの悪影響を及ぼします。
何故、上司は無茶ぶりをするのでしょうか?
どうやら“権力”が2つのバイアスを与えているようです。
“権力”を持つと必要な時間を過小評価しがち
ダラム大学とUCLの研究者は、“権力”がもたらす時間に対する認識について研究を行いました。
ある目標の達成に注意が集中し過ぎると、タスクを遂行するのに必要な情報を無視する傾向があります。
(これを注意の焦点化、と言います。)
この研究では、権力(より正確には責任と権限、という方が良いか)を持つと、注意の焦点化が起きやすくなり、タスクを遂行するために必要な時間を過小評価するであろう、という仮説を確かめるために複数の研究を行いました。
その結果、権力は一貫して、より楽観的で、より正確でない時間予測をもたらすことが示されました。
またこの結果は、楽観性や自己効力感、気分の違い等は影響せず、あくませも注意の焦点化が基礎的なメカニズムとして存在していることが支持されました。
“権力”を持つとそもそも時間に対する認識が歪みがち
もう一つの研究はカリフォルニア大学で行われたものです。
この研究では、権力がある立場にいることで、時間に対する認識がどのように歪められるのかが調べられました。
被験者は上司役、部下役に割り当てられます。
上司役の被験者は、部下役に対して脳トレ問題を選択して与え、また報酬として与えるお菓子の分配方法についても決定を行いました。
また、アンケートにて、時間的余裕についての認識の測定がされました。
この結果、権力を持つことにより、使える時間を多く認識する傾向が強くなることが示されました。
このメカニズムは、人生のさまざまな側面をコントロールしている、という気持ちが時間感覚にも及ぶからだ、と推測されています。
(ある別の研究によると、運勢がダイスの出目に左右される、というゲームにおいても権力を持っている人は他の人にダイスをふらせず、自分自身でダイスをふることを好む傾向が示されています。)
上述の研究をまとめると、「必要な時間を過小評価しがち」そして「使える時間を過大に認識しがち」という2つのバイアスが、上司による無茶ぶり、を発生させていると言えます。
この結論は、単純に業務領域に精通している上司であれば無茶ぶりを防げるということにはつながらない可能性を示唆しています。
何故ならば、仮に必要な時間を正確に見積もれたとしても、使える時間がバイアスにより過大に歪められているのならば、無茶ぶりは起きてしまうからです。
良き上司であろうとするならば、これら2つのバイアスについて自覚し、タスクに対する時間感覚、リソースに対する時間感覚について正常化させようとする努力が必要と言えるでしょう。
コメント