睡眠不足がパフォーマンス、つまりは生産性に悪影響を与える、ということは非常に知られています。
そして、生産性に悪影響を与えるだけでなく身心にダメージを与え、幸福を感じにくくなってしまうこと、また肥満や歳をとった時の体力にもマイナスの影響を与えることが研究でわかっています。
睡眠不足は身心に悪影響を与える
米・サウスフロリダ大学の研究で、わずか1日だけでも睡眠不足になると身心に悪影響を与える、ということが示されています。
研究では約2,000人の中年を対象に、8日間の睡眠時間や感情、生活行動等についてデータを収集し、分析がされました。
その結果、睡眠時間が6時間を下回った人において、有意にネガティブな感情(怒り、いらだち、神経質、フラストレーション、神経質等)が増加したことがわかりました。
また、ネガティブな感情のみならず、胃腸や呼吸器等、健康上の悪影響も増加したことがわかりました。
この悪影響は睡眠不足が続くと悪化を続け、3日目でいったん落ち着くものの、6日目で更に悪化する事も示されました。
この悪影響から逃れるためには十分な睡眠が必要である、としています。
睡眠不足は幸福度を下げる
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、睡眠不足がポジティブな出来事からうける幸福な感情が低下し、ネガティブな感情が増加すること、つまりは幸福度が下がることが示されました。
研究は、約2,000人の中高年を対象に行われ、8日間の睡眠時間、ポジティブもしくはネガティブな出来事、その出来事から感じた感情等についてインタビュー調査が行われました。
その結果、睡眠不足になると、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が低下すること、逆にネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が増加することがわかりました。
一方で、十分な睡眠をとっている被験者は、ポジティブな出来事からうける幸福な感情の増加幅が増加すること、ネガティブな出来事からうける幸福な感情の減少幅が低下することもわかりました。
研究者は、睡眠が与える身心への影響のみならず、人生の幸福にも影響をしていることを指摘しています。
睡眠不足は肥満につながる可能性
さらに、睡眠不足が肥満につながる可能性についても指摘されています。
フランス・国立衛生医学研究所の研究では、睡眠不足が肥満と関連があることが示されています。
研究では、睡眠不足の状態になると、食欲抑制ホルモンであるレプチンが体内で18%減少すること、一方で食欲増進ホルモンであるグレリンが28%増加することが示されました。
この睡眠不足が言う睡眠の時間は、1日4時間睡眠を2日間繰り返した場合、とのことですが、現代人の睡眠状況では珍しくないかもしれません。
他の研究でも、睡眠時間が短い人は肥満傾向があることが示されており、肥満と言う観点でも、長期的な身体への悪影響が推測されます。
睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性
そして、睡眠不足は将来、介護施設に行くリスクを高める可能性があることが示されました。
この研究では、平均年齢83歳の高齢女性約1,600人を対象に、ウェアラブルデバイスによる3日間の行動データが取得され、そして追跡調査により5年後の介護施設への入居状況が調査されました。
その結果、睡眠時間が短い女性(夜間に起きている時間が長かった女性)は、有意に介護施設に入居する割合が高かったことが示されました。
この結果は、認知症との関連も考えられるため、睡眠不足と介護施設に行くリスクが直接的に結びついているとは限りません。
また、高齢者が眠らない、ということが周囲の介護者のストレスを増大させ、介護施設に入居させるインセンティブが高まる、という可能性も考えられます。
しかし、睡眠不足が身心に悪影響を与える、ということを考えると、長期的な身体機能や認知機能の低下を招き、介護施設に行くリスクを高める可能性は十分にあると言えます。
現代人は、睡眠を十分にとれる環境の確保が難しいのは確かなことでしょう。
しかし、これだけの悪影響があることを踏まえれば、如何に睡眠時間を確保するのか?は重大な検討事項であるのは間違いがないでしょう。
自分自身の人生を大事にするのであれば、良質な睡眠を十分な時間、取れるよう、最大限の工夫をすべきと言えます。
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