ワインの価格が実際の価格よりも4倍高いと、そのワインを美味しいと感じるようになるそうです。
約140人を対象とした、ワインの価格のラベルを変えてのテイスティング実験により、安いワインは高い値段がつくと美味しく感じられること、高いワインについては影響がないこと、「味の強さ」についても価格は影響しないことが示されました。
ワイン会社は、このことをよく知っているようで、ワイン市場で儲けるために、この心理的傾向を利用しているそうです。
価格を操作してのテイスティング実験
スイスのバーゼル大学の研究チームは次のような調査を行いました。
140人のボランティアを対象に、少数グループでのテイスティング実験が実施されました。
使用されたワインは次の3つです。
- 廉価版のワインA(モンテプルチャーノ・ダブルッツォ):小売価格は1本10スイスフラン(約8ポンド)
- ワインB(2013 Tenuta Argentiera Villa Donoratico Bolgheri):中程度の品質で、小売価格は32スイスフラン(約25ポンド)
- ワインC(トスカーナIGT、2013年、Saffredi、Fattoria Le Pupille):傑出していると評価されており、1本65スイスフラン(約50ポンド)
実験では10mlのワインが入った6つのグラスが用意されました。
3つのグラスにはワインA,B,Cが価格のラベルがない状態で入っており、残りの3つのグラスにはワインA,B,Cが本来の価格か、もしくは異なる価格のラベル(価格が操作されたラベル)が貼られていました。
参加者はほぼ均等に条件を変えたグループに振り分けられ、値札と味の評価(「心地よさ」と「味の強さ)を6段階で評価)を行ってもらいました。
参加者はいずれもワインの専門家ではない一般の人です。
ワインの価格は高いほど味が良く感じる
調査の結果、いくつかの興味深い事実が得られました。
まず、「心地よさ」ですが、価格のラベルが貼られていない場合、心地よさの評価に差が出ませんでした。
価格を知らない状態でワインを飲むと心地よさの違いは感じられない、つまり価格が品質の認識に影響を与えることが示唆されました。
そして、安いワイン(ワインA)については、実際の価格よりも4倍の価格のラベルが貼ってあったとき、心地よさが20%も向上しました。
一方、高額なワイン(ワインC)の価格を下げても心地よさには変化がありませんでした。
優れたワインの味を価格により悪くすることはできない、という示唆です。
「味の強さ」については、実際の価格と一致しており、異なる価格のラベルが貼ってあったとしても影響を受けませんでした。
ワインの濃さを価格でごまかすことはできない、という示唆です。
なお、「味の強さ」と感じる美味しさ(心地よさ)は必ずしも一致せず、濃厚が故に好まれない場合もあります。
感じ方は文脈に左右される
この調査は、期待が現実に合うように事実が曲げられる、ということを示しています。
実際、この種の話は各所で聞かれており、例えばマクドナルドのコーヒーと、スターバックスのコーヒー、どちらが美味しいと感じるか?や、ゴディバのチョコレートと森永製菓のチョコレート、どちらが美味しいと感じるか?、ストラディバリウスと練習用の安いヴァイオリン、どちらの方が音が良いか?、性別をブラインドした時の技能テスト付き採用試験での結果は変わるか?というような調査が行われています。
ブラインドテストを行うと、マクドナルドのコーヒーや森永製菓のチョコレートの方が美味しいと感じる人が多いようですし、名器と言われるヴァイオリンよりも練習用の安いヴァイオリンの方が音が良いと感じる人が多いようですし、性別をブラインドすると女性の採用比率が向上するようです。
これは良い悪いの話ではなく、人の感じ方というものは文脈に左右されてしまう、という事実を示しています。
日常生活で困ることはあまりないでしょうが、ビジネスでの意思決定が求められる場面においては、客観的に判断できるよう情報を整える必要があるでしょう。
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