反論・批判を受け入れない人~バックファイア効果から見る経営判断と新型コロナウイルス~

ビジネスと心理学

世の中の言説は、正しい情報や明らかに誤った情報が入り乱れています。
特に、ここ1,2ヶ月では、社会的インパクトが大きい事象について、明らかに誤った言説がされ、それに対して強い反論がされていますが、誤った言説が正される気配は見えません。
反論や批判を受け入れない現象を「バックファイア効果」と言い、経営の意思決定においても悪影響を与えている光景を多々見受けます。
今回は、このバックファイア効果について解説していきます。

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忙しい人向けまとめ

  • 人は反論・批判を受けると、それを否定して、もともとの考えを強め心理的反応があり、この現象をバックファイア効果と言う
  • バックファイア効果により、社会や経営の現場で、反論が受け入れられず、本来正しいはずのことが行われない状況が多々見受けられる
  • バックファイア効果は科学的には証明されきってはいないが、人生における感覚値と一致する
  • 感情に触れる領域での反論や批判はバックファイア効果が起きやすい可能性がある
  • バックファイア効果が出やすい人と、出にくい人がいて、これは遺伝子によって決まっている可能性がある
  • 反論や批判が目的ではなく、行動変容が目的ならば、言い方、表現には気をつけた方がよい
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バックファイア効果とは

「お前は間違っている!」
こう言われた時、あなたはどう感じるでしょうか?

「なんだとう!間違っているのはお前だ!」
カチンときて、頭に血がのぼり、こう反論したくなりませんか?

このような、自分にとって、信じたくない情報、都合の悪い証拠、反論、批判に直面すると、それを否定して、もともと持っていた考えや信念、主義主張をより強めてしまう現象を「バックファイア効果」と言います。

米ダートマス大学が行った、イラク戦争に関連する情報の受け入れ方に関する実験において、大量破壊兵器の存在を否定する情報をえた人が、大量破壊兵器を事前に廃棄したから、という考えを強めたという現象から、提唱されている心理学的効果になります。

この現象は実際の経営の意思決定の現場や、新型コロナウイルスに関連する言説においても多く見られます。

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新型コロナウイルスから考えるバックファイア効果

まず、新型コロナウイルスに関連するバックファイア効果を考えていきます。

まず、新型コロナウイルスの脅威度ですが、当ブログにて繰り返し主張している通り、十分な脅威はあれど、風邪やインフルエンザと比較した時の相対的な脅威度は低い、というのが数字から見る実態と考えられます。

PCR検査の全数実施についても同様で、全数検査は明らかな不合理なのに、未だに全数検査を主張する人はいなくなりません。

脅威度は相対的に低い事や、全数検査は明らかな不合理な点は、私に限らず多くの冷静かつ論理的で合理的な方々が解説し、発信しています。
それにも関わらず、脅威を主張する人、全数検査を訴える人はいなくなりません。

これはバックファイア効果が働いているからです。

なお、今現在、急激に感染者が拡大している現状でこういった言説をする私にもバックファイア効果が作用してしまっている可能性は存在し、これは留意が必要です。

経営の意思決定から考えるバックファイア効果

次に経営の意思決定の現場においても考えていきます。

社長や声の大きい幹部が「〇〇をやるぞ!」と言ったとします。
〇〇はあなたのお好みで、あてはめてください。

これに対して、論理的な人が「〇〇は、これこれこういう理由でやめた方がいいです。」と言ったとします。
無視・スルーされ、当初の掛け声どおり〇〇が実施される光景が目に浮かびませんか?
最悪、叱責をうけ、その論理的な人の居場所が会社の中で無くなる可能性もあります。

もちろん、これはその会社のカルチャーや、中の人たちの性格にもよるでしょう。
ただ、多くの人が、「反論をした結果として受け入れてもらえなかった」という経験をしたことがあるはずです。

バックファイア効果が働いてしまっているからです。

言い方、表現には気をつけよう

バックファイア効果は科学的には証明されていないが感覚値とは一致する

なお、バックファイア効果は、まだ心理学的に証明されきった現象ではありません。

まず、バックファイア効果ですが、上記のイラク戦争に関連する実験の他、米ダートマス大学では減税に関する論争についても実験をしており、また英エクスター大学のワクチン接種に関する実験や、米マサチューセッツ大学で行われた環境負荷に関するこちらの実験などで、その効果が主張されています。

一方、オハイオ州立大学で行われた、バックファイア効果に関するメタ検証や、52に及ぶバックファイア効果に関する実験でバックファイア効果に関して、疑問を呈する主張がでています。

つまり、繰り返しになりますが、バックファイア効果自体はまだ科学的には証明されきっていないのです。
それでは、何故、日常の中の感覚値で、バックファイア効果は確かに存在するな、と感じるのでしょうか?

これは私の仮説になるのですが、感情に触れる領域での反論や批判において、バックファイア効果が出るのでは?という仮説です。
また、バックファイア効果が出やすい人と、出にくい人がいるのでは?という仮説もあります。

感情に触れる領域での反論や批判はバックファイア効果がおきやすい

まず、感情に触れる領域での反論や批判においてバックファイア効果が出やすい、という仮説の説明です。

上述の英エクスター大学のワクチン接種の実験や、米マサチューセッツ大学での環境負荷に関する実験は、環境負荷に触れやすい設問だったと感じます。
というのも、「ワクチン接種は危ないから子供に打たせない、子どもは私が守る」と考えている親に対して、「ワクチン接種をしないと子どもが危ないですよ、ワクチンを子どもに打たせないことは一種の虐待ですよ」と伝えたら、感情的な反論がきて当然だと思いませんか?

環境負荷も同様です。
「環境に負荷を与える生活をすると、地球に優しくないですよ、次の世代の子どもたちに負担を背負わせますよ」と言われたら、「いや、中国や後進国が悪い。自分は何も悪くない。」と受け止められて、かえってエコな生活から遠ざかる可能性があります。

バックファイア効果が出やすい人がいる

次に、バックファイア効果が出やすい人と、出にくい人がいるのでは?という仮説の説明です。

米カリフォルニア大学の研究によると、特定の遺伝子をもった人は、リベラルな思想を持ちやすいことが発見されています。
別の研究では、米バージニア工科大学で行われた、不快な画像に対する反応実験において、リベラルや保守といった政治思想と脳の反応、ひいては遺伝子に特徴があることが示されています。

これらの研究から特定の遺伝子の有無によって、反論・批判の受け入れやすさに差がでるという可能性が考えられます。
反論・批判を、高年になって精神が成熟し、物事を受け入れやすくなる人は確かにいますが、幼少期から他者の反論・批判を受け入れて自分の成長に活かす人もいます。
逆に、何歳になっても頑固で、むしろ歳を取れば取るほど悪化する人もいます。

バックファイア効果が出やすい人と出にくい人がいる、という前提で考える方が現時点では良いように思えます。

言い方、表現には気をつけよう

最後にまとめると、何か反論や批判をしたい時はストレートに物を言うのではなく、相手のことを肯定した上で、ソフトに物事を伝えると良いであろう、というコミュニケーションの話に帰結します。

反論や批判が目的ならば良いのですが、本来の目的は社会や相手の行動変容のはずです。
行動変容を促す、相手が受け入れやすいようにコミュニケーションを取ることは、バックファイア効果を考えると、その重要性を感じます。

逆に、大して重要じゃない内容で、あえて反論・批判をストレートにぶつけて、相手の反応を見る、相手がどういうタイプの人間なのかを測る、というのも有効と考えられます。
こういったことを計算高く行う人間は嫌われがちですが、コミュニケーションにおいて、相手との距離を測るのは常なので、一つのツールとして持っておくことは、人生のどこかで役に立つかもしれません。

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