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仕事と健康,運動

職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、という話

人は承認を求める生き物で、他者との良好な関係性がないと、心身を適切な状態に保てないものです。
今回紹介する研究によると、職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、ということが示されています。
どれだけ社会に溶け込んでいるか?が健康リスクに影響を与えるというのです。

職場の状況と健康がどのように関係をするのかが調査された研究

次の記事では、職場の状況と健康がどのように関係をしているのか、を調査した研究が紹介されています。

https://www.apa.org/news/press/releases/2011/05/co-workers

研究では、成人820人を対象都市、1988年から20年間に渡る追跡調査が行われました。

被験者は、金融、保険、公共事業、製造業など、幅広い業界に従事している人たちが対象であり、平均労働時間は8.8時間/日、3分の1が女性で、80%が既婚者で子供がおり、45%が12年以上の正規教育を受けていた人たちでした。

研究では、生活習慣のアンケート、身体測定や血液検査等による健康診断、そして職場の状況についてのアンケートが実施されました。
職場の状況についてのアンケートは、仕事で要求されていること、職場でのコントロールの状況、上司や同僚によるサポートの状況についてが聞かれています。

ここ言う“コントロール”とは、主体性を発揮でき自分のスキルをどのように使うのが最善かを決める機会があった、与えられた仕事をどのように達成するか、仕事の中で何をすべきかを自由に決定できた、という状態について、コントロールがある、としています。

20年間の追跡調査中、53名の被験者が死亡しました。

職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる

上述の調査の結果、職場の人たちと良好な人間関係を築けていると健康になる、ということが示されました。

職場で、同僚から適切なサポートを受けられる状態にある人は、そうでない人と比較して健康リスクが有意に低かったのです。
この結果は、38歳か43歳までの年齢層で顕著に見られたということです。

ここで言う“適切なサポート”とは、同僚が問題解決に役立ち友好的である状態、のことを示しています。

一方、上司からのサポートについては、健康リスクに影響を与えませんでした。
上から、ではなくて、横のつながりが大切だ、ということなのでしょう。

なお、別の研究によると、男性においては地位や権力が高いと感じていると同様の健康リスクの低減効果があることがわかっています。
逆に女性の場合は、地位や権力、といったパラメータは健康リスクにマイナスの影響があることも示されています。

成功するチームは、メンバー同士が協調しており、またEQが高い

別の研究では、ある種の課題をうまく遂行できるチームは、別の課題についても同じようにうまく遂行できる傾向があること、そのチームの特性として集団的知性(EQ)が高いという特徴があることが示されています。

ここで面白いのが、メンバーにIQが高い人が入っているチームが必ずしも適切に機能するとは限らない、という点です。

高いEQがメンバーの状況を適切に把握し、サポートをする協調関係のベースになることは容易に想像がつきます。
上述の研究とも関連付けられ、適切なサポートがある状況では仕事のストレスが減り、間接的に健康にプラスの影響を与えるのでしょう。

そして、このようなチームを意図的に組成する上において重要な要素として、「行動規範」が存在します。

この成功する「行動規範」としては2つのものがあげられています。

1つ目が「会話のターンテイキング分布の均等性」、つまり、良いチームは、メンバーがほぼ同じ割合で発言していること。
2つ目が「チームの平均的な社会的感受性が高い」こと。

会社や上司は、これらのことを意識すると、チームのパフォーマンスをあげて、またメンバーのウェルネスを向上させることができるはずです。

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ビジネスと心理学

荒れそうな会議がある場合にはお菓子を用意するとよいかもしれない

糖分を多く摂っていると、攻撃性が抑制され、“キレる”のを防ぐことができる可能性があります。
オハイオ州立大学で行われた研究では、砂糖が入った甘い飲み物を飲んだ被験者と、人工甘味料入りの甘い飲み物を飲んだ被験者を比較し、前者の方が“キレる”ことが少なかった、という結果が示されました。

甘い飲み物が攻撃性を抑えるという実験

オハイオ州立大学の研究チームは、62人の大学生を被験者に対戦ゲームを用いた実験を行いました。

https://www.dailymail.co.uk/health/article-1334642/Feeling-angry-Why-spoonful-sugar-sweetens-mood.html

実験の概要は次のようなものです。

  • 実験開始前に3時間の断食を行う
  • 被験者はコンピューターを相手に反応時間を競うゲームを行う(被験者は相手がコンピュータだと知らない)
  • 被験者の半分には砂糖で甘くしたレモネード飲料を飲んでもらう
  • 残りの半分には人工甘味料で甘くしたレモネード飲料を飲んでもらう(血糖値が上がらない対象群)
  • 飲料を飲んだ8分後に反応テスト(ゲーム)を実施(糖分が吸収されはじめる時間)
  • 被験者は25回ゲームを実施した
  • ゲームに勝った場合、相手に60デシベルから105デシベルの大音量のホワイトノイズを流せる
  • この範囲内の10段階で勝った方が音量を決められる
  • 勝敗は、実際には無作為に12回かつようにせっていされていた

この実験は、体内の血糖値が怒りの度合いにどれだけ影響するのか?を調べるものです。

砂糖により血糖値があがったグループと、人工甘味料により血糖値があがらなかったグループを比較して、音量という攻撃性がどれだけ示されるのか?がわかるのです。
(攻撃性は、1回目の反撃の強さ、つまり対戦相手に挑発される前に選んだ騒音の強さで測定。)

実験の結果、砂糖入りのレモネード飲料を飲んだグループの方が、対象群より攻撃性が低かったことが示されました。
(実験群は10点満点中、平均4.8点、対象群は同平均6.06点だった。)

怒りの衝動を抑えるにはエネルギー、つまり糖分が重要

研究者たちは、この結果は、脳のエネルギー源となる血中のグルコースにより起きたものであると考えています。

怒りの衝動を抑える自己コントロールにはエネルギーが必要であり、グルコース、つまり糖分がそのエネルギー源となります。

上述の実験では吸収できる砂糖が入ったレモネード飲料を飲むことで、他人への攻撃性を抑制するためのエネルギーが供給されました。

なお、この研究は単純に怒りとエネルギーの関係を示しただけでなく、糖尿病がもたらす社会的影響についても言及しています。

研究者は糖尿病の話に言及した前提で、「(グルコースの正常な代謝が、人々に自己コントロールのためのエネルギーを提供し、より平和な社会に貢献することができるかもしれません。」としています。

荒れそうな会議がある場合にはお菓子を用意するとよいかもしれない

この話は糖尿病という疾病の話に限らず、様々な場面で活用ができそうです。

例えば、荒れそうな会議がある場合には、事前にお菓子を用意しておくとよいかもしれません。

場が和む、という効果もそうですが、お菓子を食べて脳内に糖分を供給することにより、会議が荒れることを抑えられる可能性が考えられます。

また、何でも良いのですが、何かしらイライラしている時に一口でも良いのでお菓子や甘い飲み物を食べると、アンガーコントロールがうまくいくかもしれません。

甘い物の食べ過ぎは健康に良くはないですが、適度な活用は良いでしょう。
ギスギスしない職場環境構築の一つのネタにどうでしょうか。

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マネジメント・リーダーシップ

仕事が忙しくてストレス過多だと性格が悪くなる

三つ子の魂百まで、と言われるように人の性格は一般的には変わらないと言われていますが、それは誤解です。
例えば、仕事が忙しくてストレス過多の状況が続くと、神経症傾向が増加し、外向性と誠実性が減少することがわかっています。
有体に言えば、性格が悪くなるのです。

仕事が忙しくてストレス過多な状況が続くと性格が悪くなる

次に紹介する論文では、仕事の状況と性格の変化について記されています。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0001879115300191

研究では、オーストラリアの1,814人の家計・所得・労働動態調査を元に、仕事上の忙しさやストレス、ジョブコントロールの状況が性格がどのように変化していくのか?のモデルが探られました。
性格はビッグ5性格診断により測定されました。

その結果、まず第一に、仕事の忙しさとジョブコントロールが、仕事のストレスに正または負の影響を与えることがわかりました。
また、仕事の忙しさはストレスを増大させること、そして長期的には神経症傾向の増加と外向性と誠実性(良心)の減少を誘発することがわかりました。

一方、ジョブコントロールの増加は、協調性、誠実性(良心)、寛容さを増加させること、そして神経症傾向や外向性には影響しないことがわかりました。

つまり、三つ子の魂百まで、という言葉は誤りであり、職場の環境により人の性格は容易に変わり得る、ということです。

忙しさは成功に必要な性格である「外向性」に悪影響を与える

上述の研究は個人や組織の成功に関係している可能性があります。

例えば、次の記事では、出世にプラスの影響がある性格として「外向性」が唯一のものであること、そして、内向的な性格の人が無理に外向的に振舞うとネガティブな感情を抱き、疲労しやすいこと、を解説しています。

仕事が忙しくてストレス過多な状況が続くと外向性を減少させてしまう、ということは成功のために忙しく動いていると、成功につながる性格要素に影響を与える、というパラドックスがうまれる可能性があるのです。

また、誠実性の減少は成功に必要な性格の一要素であり、それが失われることにより悪影響が出るものです。

怒りっぽくなると過去の失敗から物事を学ばなくなる傾向についても知られており、反省し成長するためのアクションが減少してしまう可能性も考えられます。

ジョブコントロールが低い組織は成功に必要な要素に悪影響を与える

組織の成功についてはどうでしょう。

こちらの記事では、組織の成功のためにはチームの平均的な社会的感受性が高いこと、チームとして感情知能(EQ)が高いこと、が重要であることを解説しています。

忙しさは外向性や誠実性を減少させるため、チームとしての社会的感受性や感情知能に悪影響を与えることが一定推測できます。

また、ジョブコントロールも低いのならば、協調性、誠実性、寛容さ、という性格の増加が妨げられるため、同様にチームとしての社会的感受性や感情知能に悪影響を与えることが一定推測できます。


これらのことは組織設計を考える上で、非常に重要なことであると推測されます。

現代人が忙しくてストレス過多なのは、一定程度仕方がないにしても、組織設計・文化形成における努力と工夫で緩和することが必要でしょう。
成功のために忙しくなる結果として、成功に必要な性格要素が失われるリスクがあるのですから。

最低限、ジョブコントロールを従業員に渡すよう努めることには取り組んだ方が良いでしょう。

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人事・総務

リモートワーク/テレワークのTipsまとめ

リモートワーク/テレワークのTipsに関する記事のまとめになります。

リモートワークのマネジメント

リモートワークの実務

補足

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マネジメント・リーダーシップ

マネジメントについてまとめ

マネジメント関連の記事についてのまとめになります。

組織の人数

マネジメントの心構え

従業員満足度を高めるためには?

目標管理等々

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ビジョン的思考

優しいと出世できない?嫌なやつほど出世しやすい?出世に必要な性格とは

世の中には驚くような嫌な性格をしている権力者(組織において出世している人)がいます。
そのような方が目立つが故に。優しいと出世できない、嫌なやつほど出世しやすい、というようにも感じてしまいます。
実際の所、出世に必要な性格はどのようなものなのでしょうか?

嫌なやつが出世しやすい、ということはなさそう

けんか腰で冷たく、利己的な行動をとる傾向がある人。

“嫌なやつ”をカリフォルニア大学の研究者は定義づけをし、出世との関連性について調査を行いました。

https://www.pnas.org/content/117/37/22780

“嫌なやつ”が出世すると、組織にとって多くのマイナスの影響を与えることは想像に難くありません。
そして現実に、世の中には驚くような嫌なやつが出世をし、権力を握っています。
果たして嫌な性格と出世には関連性があるのでしょうか?

結論から言うと、嫌な性格が出世にプラスの影響を与えることはありません。

研究では、数百名の大学生・MBA生を対象に行われました。
学生たちはまず、ビッグファイブと呼ばれる性格診断テストを受けました。
そして約14年後に、彼らのキャリアを追跡し、どれだけの権力を得たのか(出世を果たしたのか)を調査しました。

その結果、嫌な性格が出世にプラスの影響もマイナスの影響も与えない、ニュートラルだということが示されました。
この結果は、性別や民族、組織文化などの様々な変数を考慮しても同様でした。
転職回数や勤続年数、組織の規模なども関係がありませんでした。
(“優しい性格”でも同様のようです。)

研究者達は別の調査も併せて行っており、権力を獲得する(出世をする)ための行動と正確との関連性について、調べました。

その行動は次の4つです。

  • 「支配的行動」(恐怖や脅迫を用いる)
  • 「政治的行動」(影響力のある人と同盟を結ぶ)
  • 「共同体的行動」(人を助ける)
  • 「有能な行動」(仕事が得意なこと)

その結果、“嫌なやつ”は「支配的行動」と取る一方、「共同体的行動」についてはあまり取らない傾向があることがわかりました。
つまり、「支配的行動」による出世のプラス影響を獲得する一方、協調行動を取らないことによるマイナス影響も同時に抱え、相殺されてしまうのではないか、ということです。

(なお、この結果は一見喜ばしい様に見えますが悲報でもあります。何故ならば、優しい性格であろうと嫌な性格であろうと、同様に出世する、ということでもあるからです。「組織は、気が合う人と同じ割合で、気の合わない人を出世させる。」「嫌なやつも、いいやつと同じくらいの割合でトップに立つ。」)

それでは出世に有利な性格は?

それでは、出世に有利な性格は何なのでしょうか?

調査では、たった一つ、「外向性」のみが出世と明確に関連していたことを示しています。

もう一度、出世のために必要な4つの行動を見てみましょう。

  • 「支配的行動」(恐怖や脅迫を用いる)
  • 「政治的行動」(影響力のある人と同盟を結ぶ)
  • 「共同体的行動」(人を助ける)
  • 「有能な行動」(仕事が得意なこと)

いずれも「外向性」が大きく影響しそうな内容であり、この結果は非常に納得感があります。
(有能な行動は、内向的なものも多分に含むであろうことは含みおきたい。)

(外向性を身につけろ、と言って身につくような簡単な話ではないでしょうが)もし、権力を握ることを志向するならば、上記4つの行動と外向性について意識して仕事に取り組むのが良いと言えるでしょう。

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マネジメント・リーダーシップ

組織の性格はトップの性格によって決まる

組織というものはトップ次第で大きく変わる、ということは感覚的によく知られています。
トップの影響力について、重々承知している人は承知しているでしょうし、いやまさかそんな、と思う人もいるかもしれません。
トップの性格(CEOのパーソナリティ特性)が如何に組織の性格(文化的価値観)に影響しているか?
今回は、この点を示していきます。

CEOのパーソナリティ特性と文化的価値観との関連

https://link.springer.com/article/10.1007/s10869-009-9109-1
https://www.researchgate.net/publication/225810720_Leadership_and_Organizational_Culture_Linking_CEO_Characteristics_to_Cultural_Values/link/0deec5224efa832956000000/download

複数大学の研究チームは、リーダーシップと、そのリーダーが率いる組織で生まれる文化的価値観との関連性について、実証的な調査を行いました。

つまり、CEOのパーソナリティ特性と、その組織のメンバーの間で共有される文化的価値観との関係についての調査となります。

調査の方法としては、32人のCEOを対象に、Big-five方式によるパーソナリティ特性および個人的な価値観測定を行った後、その32の組織の従業員467名に対しても組織文化に関連する価値観についての測定が行われました。

その結果、CEOのパーソナリティ特性と組織の中に共有されている文化的価値観が関連していることが統計的に示されました。

トップは自分の影響力を自覚した方が良いし、株主もトップの影響力を知った方が良い

この結果は、望ましい組織文化を作っていくためには、CEOのパーソナリティ特性が重要であり、如何に適合するか?という観点について真剣に検討が必要であろうことを示しています。

組織というものはトップ次第で大きく変わる、ということは感覚的によく知られていますが、この点を具体の分析でもって示された例はあまり知られていません。

企業としての純粋な成長しかり、変革しかり、何かしらの変化を達成するためには、組織のトップ自身の大幅な変化、もしくは人事的な変化が必要と考えられます。

トップは自分自身が組織に与える影響についてもっと自覚した方が良いですし、株主もトップの影響力についてもっと知り、経営に対してもっと発言をしていくことが望ましいと言えるでしょう。

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