登記に関する基礎知識~雑学込み~

人事・総務

多くの方にとって、「登記」は馴染みのない手続きです。
今回は、この「登記」について、基礎的な部分を解説します。
ちょっとマニアックな雑学が入っているのは、そちらの方が楽しいからです。

豊臣秀吉が日本の登記の起源、って聞くと、びっくりするはずです。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

登記とは

登記とは、重要な権利や義務について、法的に社会に示すと共に保護するための手続きです。
「法務局」という役所にて行う、ようは事務手続きを行います。
多くの人にとっては、ほとんど関わりのない手続きではあるのですが、例えば家を買ったときや、親族の不動産を相続したときに行わなければいけない役所での手続き、と書けばぼやっとはイメージできるでしょう。
なお、これを「不動産登記」といい、他には会社を設立した時などに発生する「商業登記」、「法人登記」「動産譲渡登記」「債権譲渡登記」「成年後見登記」「船舶登記」「工場財団登記」などがあります。

日本での登記で一番多いのが土地や建物の物理的な状態と、権利義務関係について行われる「不動産登記」です。
不動産登記は関連する手続きや確認をしっかり行わないと、大きなトラブルに巻き込まれる可能性のあるものです。
ここら辺とか、詳しいので読んでみては(「不動産登記 トラブル」で検索しても、たくさんでてくる)。

雑学ですが、立木(りゅうぼく)登記というものもあり、土地の上に生えている木の所有権に関して登記を行うこともあります。
これは土地収用の問題などにおいて、反対派が抵抗するための手法として行う場合があり、これを「立木トラスト」といいます。
有名なところとしては、安保闘争時代に発生した「下筌(しもうけ)ダム」の案件があります。
現在でも、ダムの建設反対運動などに、実際に行われていたりします。

スポンサーリンク

登記に関するTips

会社の場合、役員の改選任や定款の変更、増資、ストック・オプションの交付などがあった場合、登記手続きを行わねばならず、これを怠った場合、「過料(かりょう)」という罰金が発生する場合があります。
しかも、この「過料」の通知は代表取締役個人宛に裁判所から届くため、法的な手続きを軽視していたり、知識が乏しかったりすると、ある日突然、ぞわっとする想いを経験することになります。
こういうのです。
「過料」は、何年間も手続きを放置していた、などの悪質性が高い場合に課せられるので、登記の期限である2週間を過ぎたからといって、過度に心配する必要はありません。
よくあるパターンは、役員の改選人や、役員の住所変更(引っ越し)を何年も放置していた、というケースです。

登記手続きを行ったあとに取得できる書類を「登記事項証明書(とうきじこうしょうめいしょ)」と呼びます。
一般的には「登記簿謄本(とうきぼとうほん)」や単純に「謄本(とうほん)」と呼びます。
こういうのです。
この謄本は、法務局で発行手続きを行うのが一般的で、そのため、役所に赴かないと取得できないと勘違いしている方も多いです。
実際は、オンラインで郵送手続きを行えますし、こういうサービスを使うと簡単に取り寄せや逆にお取引先様へお届けすることができたりします。
なお、会社の謄本は、赤の他人でも取得できるため、与信や反社の確認などに活用されます。

昔は紙で記録されており、そのため「登記簿謄本」と呼んでいましたが(謄本は文書という意味)、現在はデジタルでの記録のため、「登記事項証明書」と呼び方が変わりました。
ついでに書くと、お取引先様などから「謄本の原本をちょうだい」と依頼をうけることがあるかと思いますが、謄本の原本は法務局にデジタルデータとして記録保管されているもので、法務局から発行される紙の謄本はあくまでも「写し」です。
逆に「謄本の写しをちょうだい」と依頼をうける場合もあります。
ですので、依頼されているものが「発行された紙の写しの原本」のことなのか、「コピー」や「PDFデータ」でよいのか、をきちんと確認をしないと、手間が増える場合があります。

なお、不動産登記は、「不動産登記法」という「民法」が、「商業登記」は「商業登記法」という「商法」がカバーしており、登記と一言でいっても、法律の種類が異なります。
登記は「司法書士」と呼ばれる方々が代行できます。
自分自身で登記手続きを行うのは、決して簡単では無いですし、煩雑ですので、通常は司法書士に依頼して対応してもらいます。

スポンサーリンク

登記の歴史

日本での登記の歴史は意外に古く、あの豊臣秀吉がおこなった「太閤検地(たいこうけんち)」にさかのぼります。
懐かしい単語がでてきましたね。
太閤検地を簡単に説明すると、太閤である豊臣秀吉が命令して行わせた全国規模の土地調査のことです。
教科書的な書かれ方としては太閤検地は兵農分離や刀狩りとセットで語られ、イメージが悪いですが、権利関係や税制の整理や、単位の統一、法制度、経済などの基礎となるもので、国の発展という観点において、非常に意義のある取り組みでした。

その後は、明治初期に、土地の所有権を示した「地券」が東京府下の土地所有者に発行され、地価を基準に課す不動産税の基礎となり、そしてようやく登記が法律として施行されたのは、明治20年(1887年)になってからです。
フランスの登記制度をベースに制定され、土地や建物に関して、所有権取得などを登記しました。
民法の施行が明治31年(1898年)なので、なにげに登記に関する法律の方が歴史が古いです。
当時のイメージは、このあたりを見ると、掴めるでしょう。

世界では、英国系の登記制度(イギリス、ニュージーランド、オーストラリア)と、大陸系の登記制度(ドイツ、フランス)がありますが、そもそもとして登記制度がない国が多いです。
英国系の登記制度、「トーレンスシステム」は1858年にさかのぼりますが、これのもっと起源としては、「コモン・ロー」と呼ばれる中世イングランドから続く、独自の慣行や正義に関して示した概念にたどり着きます。
大陸系の登記制度としては、ドイツやイタリアで発祥した「公証制度」があげられ、その更に起源は中世の神聖ローマ帝国のローマ法にたどりつきます。
なお、司法書士という職業は日本にしかなく、海外では弁護士や、公証人が代行して行います。

海外での登記

海外の登記の歴史が話題に出たので、最後に海外で起業する場合の話を簡単に触れます。

海外で会社を起こす場合、登記手続きや、それに該当する役所での手続きが必要になります。
ただでさえ決して簡単ではない登記手続きを現地の法律と言語で行うわけですので、非常に難易度が高くなります。
そのため、海外での登記手続きを代行する業者が多数存在します。
海外進出時の手続きに関しては、きちんと調査して、適切な業者を探しましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました