今回の新型コロナウイルス騒動により、多くの人が不安に多い、多くの企業が苦境に陥っています。
そのような中、義(ぎ)、つまり利欲ではなく正義により行動する企業が賞賛されています。
いくつかの企業を参考に、真のロイヤルカスタマーを作るための、義のマーケティングについて考えていきます。
忙しい人向けまとめ
- マーケティング活動の役割は、セリング(売り込み)を不要にすること
- いくつかの企業が利欲ではなく、義、つまり社会のための活動を行い賞賛を浴びている
- 「利欲にとらわれず、なすべきことをすること。」ができれば、真のロイヤルカスタマーを作ることに繋がり、長く支持される会社になれる
マーケティング活動の考え方
マーケティングの定義を考えた時に、各様に語られている世界ではあるのですが、かのコトラー氏の言葉を借りると次のようになります。
どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること。
フィリップ・コトラー
つまり、ざっくりと整理すると、次のような流れになります。
マーケティング活動による認知獲得
↓
製品・サービスの提供
↓
ロイヤルカスタマーが生まれる
これをもっと端的に表現し、マーケティングの目的を考えたときに、かのドラッガー氏は次のように言いました。
マーケティングの究極の目標は、セリング(売り込み)を不要にすることだ
ピーター・ドラッガー
そもそもとしてマーケティング活動・セールス活動自体を不要にする状態にしましょう、ということですね。
これに関して、今回の新型コロナウイルス騒動において社会不安が起きている中、いくつかの企業の行動が賞賛を浴びています。
久原本家グループ
こちらのツイートを見て下さい。
久原本家グループは、「茅乃舎だし」で知られる、福岡県にある総合食品メーカーです。
この久原本家が、北海道の顧客に対して、自社の商品である鍋の素や味噌汁などが無償で届けられたというのです。
そして、このツイートのリツーイトが約3,000、まとめサイトの閲覧数は約80,000と、非常に多くの人の目にとまる結果となりました。
久原本家は、以前から災害支援などに意欲的であることを知られていましたが、改めて多くの人から賞賛の声と、感謝の言葉が届けられています。
菊水酒造
次は、こちらのリリースをご覧ください。
高知県の酒造メーカーである菊水酒造が、アルコール度数77%の高濃度スピリッツ「アルコール77」を製造開始する、というニュースリリースです。
現在、世の中ではアルコール消毒剤が非常に枯渇しており、非常に入手しづらいと共に、その値段も高額になっている状況です。
そのような中での対応となります。
今回見ていて、非常に面白いと思ったのが次の一文です。
酒税:385円/本を含んでいます。
ニュースリリースより
※当商品は消毒用アルコールと同等のアルコール分を含んでおりますが、消毒や除菌を目的に製造されたものではありません。
どういうことかと言うと、消毒用アルコール製剤として販売すると、医薬関連の商品として扱われることになるため、摘要される法律が変わってしまうのです。
消毒用アルコール製剤には、一般的にイソプロピルアルコールが添加されており、飲用には適さない状態にします。
これにより酒税法の範疇ではなく、薬機法の取扱いになり、酒税がかからず第3類医薬品として安い値段で消費者の元に届く形になります。
今回の菊水酒造の対応は、「自分たちが今まで使ってきた販路で流通させられ、かつ法の範囲も守る」「酒税分は自分たちで負担する」ということになります。
このテキストを読む限り、関係した省庁・役所の方々も裏側で協力したことが伺えます。
大人の事情満載な、日本人らしい、ハイコンテクストな内容です。
こちらはニュースリリースが4月3日、まとめサイトでもとりあげられるようになったのが4月5日なので、まだ拡散は少ないものの、多くの人が関連するツイートし、5,000を超える人がまとめサイトを閲覧しています。
こちらも、多くの人から賞賛の声と、感謝の言葉が届けられています。
なお、本対応は、過去の豪雨被害に対する恩返し、とのことです。
当社は、2018年7月豪雨により甚大な被害を受けましたが、各方面から多大なご支援をいただきました。当社の有する製造設備等を活用して、皆様のお役に立てる製品を提供することで、恩返しにつながればと考えたものです。
ニュースリリースより
栄光
最後はこちらのブログ記事になります。
株式会社栄光は、同人誌印刷の会社で、その業界の方々にはよく知られている会社になります。
各イベントの自粛、中止の影響をうけ、多くの印刷会社が苦境に陥っています。
そのような中で次のようなコメントを発信しています。
そこで、心身ともに余裕のある皆様については、お願いできるのであれば本を創り続けていただきたいです。同人誌書店やピクシブさんのBOOTHなど頒布する術をお持ちの方は、即売会用に作りかけた原稿があれば、どうぞそのまま本を仕上げてください。
ブログ記事より
そして、普段からお使いになっている、印刷会社に引き続きご注文願います。
特定の同人誌印刷会社、数社だけが生き残ったのでは、ダメなのです。
この記事と関連する元ツイートは、リツイートが約27,000、4月4日に出たまとめサイトの閲覧数が約17,000となっています。
短期間で非常に多くの人の目にとまっています。
特定の誰かが頑張る、生き残るのでは駄目で、業界全体で頑張り生き残らなければいけない、という強いメッセージに感銘を受けたのか、多くの人から、励まされたという声が出ています。
義のマーケティング
これらの活動を見ていると、次のような強い想いを感じます。
- 社会を支援したい
- 顧客へお礼がしたい
- 業界への貢献がしたい
もちろん、企業は営利団体ですので、自社の利益を考えた行動なのは間違いないでしょう。
それでも、こういった真摯な想いこそが、結局の所、世の中から支持され、真のロイヤルカスタマーを作ることになるのだと考えます。
つまり、義の基づいた企業活動では、通常のマーケティング活動とは異なり、次のような流れになるのです。
義のマーケティング
↓
ロイヤルカスタマーが生まれる
↓
製品・サービスの購買行動
なお、久原本家は1893年創業、菊水酒造は1881年創業、栄光は比較的若い会社ですが1975年創業と、企業の平均寿命が20年ちょっとであることを考えると非常に長く企業活動を続けている会社になります。
義とは、「利欲にとらわれず、なすべきことをすること。」という意味です。
企業の理念的な本質としての役割は社会貢献にあるはずで、そこに立ち返った行動をとれる企業こそが人々から賞賛され、長く存続しつづけるのでしょう。
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