大切にすべき顧客は誰なのか?~商圏人口考~

マーケティング

今回は、真に大切にすべき顧客は誰なのか?という話を考えてみます。
新型コロナウイルスの経済影響は、一時期よりだいぶ回復してきたとは言え、依然として厳しい業績の会社も多いです。
特に観光客、とりわけ外国人観光客に頼った所です。

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観光客便りは厳しかった

戦略方針として、訪日外国人観光客をとりに行こう、観光を重視しよう、という選択をとるのは全くおかしな話ではありません。

しかし、少なくとも今回のような感染症蔓延の状況下においては、そのビジネスの脆弱性も同時に明らかになりました。

例えば、ドラッグストアでは、訪日外国人観光客を重視していたマツキヨは他のドラッグストアに比べ回復が著しく遅く、「一人負け」と揶揄されています。

月次Web<月次比較チャート>既存店グラフ より

コンビニ業界も、観光客比率の大きい京都では、東京・大阪のようなビジネスエリア(リモートワーク移行が多かったエリア)より、ダメージが大きい状態が続いていました。

コンビニ商品販売額および前年比,地域別の状況 経産省「商業動態統計」より

家電系においても、ラオックスの業績は非常に厳しい状態です。
(ラオックスを家電系と捉えるのかは微妙ですが。後、ラオックスはコロナ前から、本国である中国からも見放されている状況だったのですが。)

このように、観光客便りの会社は非常に厳しい状況に置かれていました。

これは別に感染症に限らず、災害や政情不安によっても発生し得ることであり、もう一度同じような状況に陥らないとは言い切れません。

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年人換算という考え方

ここで改めて、商圏人口について考えてみましょう。

商圏(しょうけん)とは、ある商業施設や小売店、商店街などを日常的に利用する消費者が生活している地理的な範囲を指す。 商圏の中心から辺縁部までの距離を商圏距離、その施設を利用しているか否かに関わらず商圏内の全人口を商圏人口という。
Wikipediaより

主にtoB、特に実店舗のある小売系において採用される考え方が商圏人口です。
詳しい方も多いでしょう。

観光業ですと、この商圏人口という考え方が、あまり採用されません。
商圏の範囲が大きくなりすぎるため、そこで数字を出したとして、意味が無いからです。
そのため、訪日外国人人数とか、そのような数字感で顧客母数を捉えます。

しかし、それが本当に正しいのでしょうか?

年人換算という考え方があります。

ようは、年間単位で考えた時に、その商圏にどれだけの人がいるのか?という考え方です。

具体例で見てみましょう。

人口50万人の街(市)があったとして、この時の年人換算は、ほぼほぼ50万人です。
(その街から日を跨いだ移動があったとしても、長期の人は少ないし、外からの流入もある。)

訪日外国人人数ですと、直近3千万人を超えたとの事ですが、滞在日数は精々が一週間でしょう。
この時の年人換算は約60万人です。
この内、全員がその人口50万人の街に行くわけでは無いでしょうから、年人換算の流入数はごく一部になるはずです。
(下記表参照。出入国、つまり訪日外国人人数は外国人年人には5%程度の影響しか与えず、在日外国人人数が事実上の数字になる。)

そのため、年人換算で考えると経済影響は言うほど大した事が無いということがわかります(もちろん、3千万人の人が十数万円~数十万円を落としていく、という事は全体で考えれば凄い事ですよ。トータルで兆円単位になるので。)。

(参考)年人換算の詳しい算出方法

①年間の出国外国人正規数。
②出国外国人について、在日期間別に、「年人」(=平均在日日数×人数/365日)を算出する。
③出国外国人のうち、在日期間が2カ月を超える人は外国人登録を行っているとみなし、その「年人」を算出する。
④②を、出国外国人数で除することで、出国外国人の通年での在日期間の比率を算出する。
⑤③を、出国外国人数で除することで、出国外国人のうち外国人登録を行っている人の、通年での在日期間の比率を算出する。
⑥年間の入国外国人正規数。
⑦⑥に④を乗じ、その年に入国した外国人の「年人」を算出する。
⑧⑥に⑤を乗じ、その年に入国した外国人のうち外国人登録を行う者の「年人」を算出する。
⑨⑦から⑧を差し引き、その年に入国した外国人のうち外国人登録を行わない者の「年人」を算出する。
⑩年末現在の外国人登録者数。 ⑪⑩に⑨を加えることで、日本に滞在する外国人の合計「年人」を算出する。

ややこしいので、別に詳細な数字を出す必要があるとは思いません。
考え方として、単純な人数だけ捉えると凄い人数だけれども、年間単位で考えれば、元々いる人の方が多いんだよ、という事です。

今回の新型コロナウイルス影響で、観光客の取り込み”も”行うけれど、基本的にはその商圏に住んでいる方々を大事にしてきた企業は、業績回復が早い傾向があります。

ようは、結局の所、観光関連業種も商圏というものを考えないといけないのでは?という指摘をしたい次第です。

それを考えれば、企業にとって、本当に大切にすべき顧客は誰なのかが明確になっていくはずです。
(その結果として、一見客にフォーカスする、という結論に至ったのならば、それはそれで良いと思います。)

余談ですが、外国人犯罪率の話をする時に、訪日外国人人数(3千万人超)を母数に加え、「日本人より外国人の犯罪率は低い。外国人犯罪率が高いというのは偏見だ。」という言説があります。
これ、年人換算で母数を考えると、外国人犯罪率って、日本人犯罪率の倍以上になるんですよね。

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