㈱レオパレス21が2020年9月9日、決算発表の再延期をリリースしました。
希望退職募集により、決算要員が想定以上に退職したことが影響しているとの事ですが。
一般的には「経理が逃げ出す会社はヤバイ」と言われます。
果たして、レオパレス21は大丈夫なのでしょうか?
決算発表の再延期リリース
㈱レオパレス21は2020年9月9日、2021年3月期第1四半期決算発表の再延期をリリースしました。
理由としては、下記を提示しています。
当社が先般実施しました希望退職募集により、決算業務に従事する従業員が想定以上に退職したことによって、決算プロセスに更なる時間を要する見込みであり、2020年9月11日に予定しておりました決算発表を再延期せざるを得ない状況となりました。
㈱レオパレス21「2021年3月期第1四半期決算発表の再延期に関するお知らせ」より
この理由を単純にそのまま受け取ると、「あら、大変なのね」で済む話ではあるのですが。
決算業務に従事する従業員、とは一般的に会社の情報、実情を深く知っている、把握できる環境にいる人達がほとんどです。
そのため、ゴシップ的に「経理が逃げ出す会社はヤバイ」と言われたりします。
それでは、レオパレス21の経営は果たして大丈夫なのでしょうか?
倒産の危険が迫っているのでしょうか?
レオパレス21の業績
さて、レオパレス21と言えば、建設した物件の約4分の3で何かしらの施工不備があったとして、その評判を大きく落とした事は記憶に新しいかと思います。
この影響により、決算が公表されている2020年3月期の業績は経常損失363億円、最終損失802億円を出すに至りました。
(そして、決算発表がされていない第1四半期決算に関しては、コロナ影響も大きく受けているはずです。主力の法人向け事業、得にかき入れ時の4月と重なり、リモートワーク影響等により、大ダメージを被っているはずなので。)
さて、会社という物はいくら赤字を出していても、お金が尽きなければ倒産はしません。
その最後の綱であるお金ですが、2020年3月末の現預金残高は605億円です。
この605億円を何かしらの手段で厚くするか、業績を改善させてキャッシュ・フローがまわるようにすればOKなわけです。
いよいよジ・エンドが迫っているか?
まず借入はできそうか?という話ですが。
この右端の0.66が2020年3月期の自己資本比率なのですが、1%を切っています。
結論、銀行からの融資は、ほぼほぼ不可能と言って良い状況でしょう。
(なお、金融機関からの借入と社債に関しては、財務制限条項がついていて、既に抵触している状況のようです。一方、期限の利益の喪失に関しては、権利行使が行われない旨の承諾を得ているとの事です。ようは、「いいから金返せ」とはなっていない、という事ですね。)
そして、施工不備のあった物件に対して改修工事が行われているようですが、完了しているのは10%にも満たず、半分弱が着手中、残りのほとんどは未着手という状況で残っています。
補修工事関連損失引当金が479億円、積まれていることを考えると、500憶円程のCashOutは今後発生することが見込まれます。
純粋な営業損失に加えて、上記の補修工事、そして希望退職者へ退職金(30億円程)が発生するので、手持ちのCash約600億円では全く足りません。
さらに、リース債務、社債を含む有利子負債も361憶円存在する事も指摘できます。
IRニュースを見ていると、物件の売却や投資有価証券の売却を行っており、100億円規模のCashを工面しているようですが、やはりこれだけでは全く足りないように思います。
じゃあ、エクイティでの調達(新規の株式の発行等)ではどうでしょう?
現在の時価総額は400憶円弱です。
必要なCash額を鑑みるに、生半可な増資では対応できません。
どこかのファンドの支援を得た上でのMBOが必要でしょう。
(資本提携をしてくれるスポンサー探しも難航しているようですし。)
全株式を買い取った上で非上場化、更に追加資金を投入して全部をキレイにして再上場、というような大手術が必要と考えます。
問題は株主です。
大株主上位3社が、アクティビスト系(モノ言う株主)であり、投資の理由が明らかに利ザヤ抜き、それも会社の事情に配慮しないものである事が予想されます。
(2位と3位は、いわゆる「旧村上ファンド系」です。)
つまり、単純にMBOするにも、アクティビストの投資分に上乗せするだけの金額が要求されるはずで、それに応えようという姿勢を示すファンドが果たして出てくるでしょうか?
(時価総額400億円+αに加えて、立て直しに必要な1,000億円規模の投入が必要。)
(なお、上記で提示したアクティビスト3社は、口は出しますが、改善のノウハウは一切持っていないので、業績改善支援を期待する事は、全くできません。)
民事再生法適用申請の可能性があるか?
国交省的には、これだけの規模の会社を潰したくは無いでしょうから、生かさず殺さずで置いておきたいはずです。
民事再生法適用申請の可能性が十分にあります。
(債務超過になると、会社更生が一般的。一応、2020年3月期はギリギリ債務超過手前。)
ただ、過去の業績推移を見てみると、今の状況程酷くは無かったにせよ、入居率が低かった時期はありました。
そして過去のPLを見るに、必ずしもかつてあった90%超の入居率に満たなくても、100億円規模の利益を出すことは可能なように思います。
(下表は2011年3月期から2015年3月期の業績推移。酷い時を乗り越えた後に、安定的に100億円超の利益を出している。)
今進めている早期退職も決着させ、不採算物件の整理(改修工事込みでしょうが)を行い、全体として経営をスリムにしていけば、まだまだ復活できるだけのポテンシャルはあるようにも思います。
明確に先行きが読めない状況ですが、早急に経営改革を進めれば、可能性は存在します。
支援してくれるファンドを見つけられる可能性もあります(例えばLBOスキームならファンドのリターン目線があう可能性もある)。
(一応、2020年3月期時点ではゴーイングコンサーン、つまり「継続企業の前提」はついていません。決算延期は、これについて監査法人ともめているのもあるんでしょうね。)
引き続き、状況をウォッチしていきたいと思います。
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