ソフトバンクが、保有する英アームを米エヌビディアに売却する、という報道が流れています。
こちら、各所で投資会社というスタンスになったのか、とか英アームを活かしきれなかった、とか言われており、どちらかというと冷めた意見が多いように感じます。
果たして、SBGによる英アームの米エヌビディア売却はネガティブな結論だったのでしょうか?
なお、記事執筆時点(2020年9月14日)ではまだ確報では無く、取り引きが流れる可能性がある、ということは付しておきます。
SBGによる英アームの米エヌビディアへの報道
まずは報道を見てみましょう。
グラフィックスプロセッサーを開発するNVIDIAが、ソフトバンクグループからチップメーカーArmを買収することで合意に近づいており、早ければ今週にも発表されるという。Bloombergが米国時間9月12日、匿名情報筋の話として報じた。Bloombergによると、Armの企業価値は約400億ドル(約4兆2500億円)と評価され、現金と株式で取引される。チップ業界で過去最大規模の買収となる可能性があるとされている。
CNET japan「ソフトバンク、NVIDIAにArmを4兆円超えで売却か–合意間近と報道」より
ソフトバンクは英アームを米エヌビディアに約4兆2千億円で売却するそうです。
ソフトバンクによる英アーム買収時(2016年)の金額が約3兆円4千億円ですので、差額約8千億円がソフトバンクの利益となる形になります。
これを受けて、各所で次のように言われています。
「ソフトバンクを投資会社として見るならば大成功なのでだろうか?」
「IoT構想はどこにいったのだろうか?」
「もともとグループシナジーについて懐疑的だった」
冷めて意見を散見するのですが、この見方は果たして正しいのでしょうか?
英アーム売却に対価に株式が入っている
売却額は約4兆2千億円ですが、報道によると、どうやら対価として、エヌビディアは自社の普通株式も入れるようです。
これにより、約6.7%~8.1%のエヌビディア株をソフトバンクが保有することになります。
(もちろん、まだ確定じゃないですよ!:9月14日時点)
つまり、支配という形では無いにせよ、ソフトバンクはエヌビディアに対して最大株主として影響力を持つ事になります。
しかも、今回売却するアームに対してもそうで、間接的に影響力を及ぼせる形になります。
ようは、過去の投資の対価を回収しつつ、エヌビディア-アーム両社に対する影響力も獲得する、という中々とんでもないスキームなのです。
なお、この話はエヌビディアにとっても良い話で、GPUイメージが強いエヌビディアですが、CPUも獲得する形になります。
今後の戦略の幅が広がるわけです。
(しかも、実はエヌビディアとアームはつながりが強い事も指摘できる。)
ソフトバンクの構想は?
実はソフトバンクは、過去にエヌビディアの株式を保有していた時期がありました。
AI群戦略の一環という形だったのですが、諸々の経緯があり結論として2019年1月に売却する事となりました。
つまり、改めてソフトバンクはエヌビディアに対して投資をする事になったわけですね。
ソフトバンクのアームに対する投資姿勢も、基本はAI群戦略がベースにあったはずです。
事実、ソフトバンクはアームのIoT事業をSBGに移管、AIへの強化を図っていました。
(参考)ソフトバンクのIoTサイト
(参考)ソフトバンクの自動運転サイト
ここでポイントなのが、実はエヌビディアは、上述の通りGPUイメージが強いですが、IoTや自動運転という領域にも強いという点です。
ようは、アームを買収してAI・IoT構想を進めたいけれども、なんかうまく進まないぞ、という状態。
それなら、エヌビディアと一緒にやった方が早いんじゃないか?という発想ですね。
さらに、上でも軽く触れたのですが、エヌビディアとアームは元々IoT領域で提携関係にもありました。
今回の取引が成立したのならば、この提携関係が支配関係という形に変わるわけですが、両社の事業の促進がスムーズに進むのでは、と推測されます。
まとめるとソフトバンクは、自社のAI群戦略構想を進めるための打ち手として、英アームを米エヌビディアに売却、そして米エヌビディアと英アームに対する影響力を手に入れる、という今回の取引を進めている、と読み取れます。
結構、すごい取引だし、中々ヤバ味の強い構想ですよ。
まぁ、端的にまとめると、こんな感じです。
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