ここではサブスクリプション系の上場会社の開示資料を参照しながら、KPIの具体例を見ていきます。
サブスクリプション/SaaS系ビジネスのKPIは、だいぶ一般的になってきたのか、開示資料内においても掲載される例が増えていきました。
本稿では、これまでの説明を踏まえて、具体の開示例を見ながらKPIに対するイメージを掴んでいただければと考えています。
前回はこちら↓
収益性:ARR,ARPA
マネーフォワードは、次の通り年次単位でのARRを開示しています。
成長率も併せて示しており、伸び具合が明確にわかります。
freeeはIPO時の成長可能性資料の中で、CAGRを示し、中長期での成長について説明しています。
チャットワークは、無料プランの数も多い事から、ID数について重要視して開示しています。
具体的にはDAU(※)と課金ID数の数字と併せて、登録ID数全体を示しています。
DAUと課金ID数の伸びは、確かに単独だと鈍い要素があるので、登録ID数と併せて示す事により、アップセル余地が大きい事を説明しています。
※ DAU(Daily Active User)は1日に1度以上「Chatwork」を利用したユーザーID数のことであり、対象期間内での最大値
マネーフォワードはARPAの開示も行っています。
クロスセル/アップセルでの増加と、新規プランのリリースによるARPA拡大を示し、ARR(MRR)への貢献を説明しています。
一方、freeeはARPAではなく、ARPUでの開示を行っています。
生産性:セールス効率
生産性指標について開示している所は少なく、カオナビがコンバージョン・レートとリード数推移について開示していました。
これは成長の源泉でもあるので、明確に示せるのであれば、直近短期での成長見通しがわかりやすくなります。
その他、セールス効率を示しているのがfreeeです。
推移と、明示はしていないものの他社比較の中で、自社のセールス効率が向上している事と他社と比較し優位性が一定あることを説明しています。
継続性:Churn Rate,プロダクト・エンゲージメント
解約率ですが、スマレジがMRRベースの Gross Churn Rate を開示しています。
開示例で多いのはGrossですね(数字が良く見えるので)。
一方、Sansanは、同じMRRベースの解約率でも Net Churn Rate を開示しています。
Netで1%を大きく切る解約率ですので、驚異的な数字です。
確かに自信をもって開示したくなります。
Negative Churn についての開示は、指標としての説明より成長可能性に関する説明資料の中で、自社の成長度合いをコホート推移で示している例が一般的です。
こちらはチャットワークの Negative Churn の説明例です。
プロダクト・エンゲージメントについては、開示例がほとんどありませんでしたが、freeeが独自の指標を開示しています。
具体的には、手作業工数について「マジ価値KPI」と称し、カスタマーサクセスの成功度合に関して説明しています。
事業性:ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスも開示例が少ない指標です。
カオナビがマーケティング関連費用の推移と併せて、ユニットエコノミクスの開示を行っています。
「サブスクリプションの管理会計」の本編については、これで以上とし、次回からは各論・補足という形でサブスクリプション/SaaS系ビジネスに関連する話に触れていきます。
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