部下に対する最適なフィードバックの方法は何か?

マネジメント・リーダーシップ

“フィードバック”の重要性は、特に近年強調して語られています。
その中で、多くの管理職経験者が、様々に“成功体験”を語り、フィードバック方法についてその知見が発信されていますが、科学的な調査は少数でした。
そのような中、最適なフィードバック方法について探る、興味深い研究があります。

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効果的なフィードバック方法を探る3つの研究

研究では3つの調査が行われました。

①実際の経験をベースにしたフィードバックに対する印象の調査

1つ目の研究は、数百人の管理職を対象としたグローバルな調査です。

フィードバックを与えた場合と受けた場合に、そして肯定的なフィードバックを受けた場合と否定的なものを受けた場合の4事象で、それらの印象が調査されました。

結果、フィードバックを与えた場合は、良いパフォーマンスであれ、悪いパフォーマンスであれ、相手の能力や努力に起因する、と捉える傾向がありました。
一方、否定的なフィードバックを受けた場合は、ミッションの困難性の問題であったり、自分ではコントロールできない運の要素をあげたり、と自分以外の要素にその原因があるとする傾向がありました。

つまり、都合の悪い、耳に痛いフィードバックについては正確性に欠ける、信頼できないものと判断する傾向があるのです。

②ロールプレイによる効果的なフィードバック方法を探る調査

2つめの研究は、ロールプレイによる調査です。

ここでの調査の目的は「双方向のコミュニケーションは、過去の状況について当事者同士で共有する事により、適切な行動変容につながる。」という仮説を調べるものです。

参加者は、上司と部下にわかれ、部下に関する人事情報が共有された前提で、フィードバック会議を行いました。

結果、フィードバック会議は、良いパフォーマンスについても悪いパフォーマンスについても、どちらについても合意形成が図れず、些細な意見の相違が大きなものになってしまうことになりました。
部下は、成功の要因は個人に起因するものであり、失敗の要因は外的なものであると、以前よりも強固に感じるようになりました。
(肯定的なフィードバックは受け入れやすい傾向であること、ネガティブな過去について双方がしっかりと合意している前提ではフィードバックを受け入れやすい傾向であることは、研究の中で示されています。)

一方、この研究の中で、一つの知見も得られています。

それは、フィードバックを正当でかつ有用であると受け入れるかどうかキーは未来志向にある、という点です。
将来の成功のために、どれだけ新しいアイデアを生み出せるか、というような未来に焦点をあてた会話が起きた場合に、向上心を高める効果が見られました。

③「未来志向」を前提としたロールプレイでの再現調査

3つめの研究では、②の研究の知見を踏まえ、未来志向にフォーカスして強調したものが設計されました。
具体的にはフィードバックのガイドラインとして、評価ではなく、育成であることを強調したものが用意され、その前提で②と同様の調査が行われました。

結果として、ネガティブな評価については、やはりフィードバックを受け入れづらいという傾向に変わりはないものの、未来志向に対する評価が高い場合においては、フィードバックを受け入れやすくなる傾向が示されました。

つまり、②の知見は、程度の問題はあれど、一定の正しさがあることが示されたのです。

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フィードバックにおける具体的な指針

こうなると、これまで言われていたような「肯定的なフィードバックを混ぜて、否定的なフィードバックにより受けるダメージを緩和する」というような話や、「具体例を示して、改善のための有益な情報を提供する。」というような方法は、効果が疑わしいということがわかります。

そのため、受け入れられるフィードバックをするために重要な点が次のとおり指摘されています。

  • 未来に向けて物事を改善する、という目標を示す
  • 何を期待しているのかの理想を明示する
  • 過去の肯定的な事象は素直に褒め、否定的な事象については端的に事実のみを示し、原因の議論や詳細な説明は行わない
  • 相手(部下)には、改善を行うためのモチベーションも能力もあると仮定する
  • 次に何をすべきか?について議論をする
  • 一緒に解決策を考えましょう、と寄り添う姿勢を見せる

徹底した未来志向のガイドラインですが、非常に参考になるのではないでしょうか。

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