哲学者フリードリヒ・ニーチェの名言の一つに「自分を破壊する一歩手前の負荷が、自分を強くしてくれる。」というものがあります。
心構え的な言葉のように思えますが、どうやら統計学的には、この格言通りの傾向があるようです。
キャリアの初期段階での失敗が、将来の成功につながる確率を高める、そんな研究を紹介します。
「自分を破壊する一歩手前の負荷が、自分を強くしてくれる。」
ノースウェスタン大学では次のような研究が行われました。
- 米国国立衛生研究所(NIH)の助成金申請に、キャリアの初期段階で応募した研究者を対象とした
- その中でも、通過ラインをわずかに下回る「ニアミス」グループと、わずかに上回る「ジャストミート」グループを抽出
- それぞれのグループに対して、その後10年間に平均何本の論文を発表したのか
- また、そのうち何本の論文が“ヒット”したのかを被引用数で評価した
その結果、「ニアミス」グループの方が、資金調達額は少なかったこと。
そして、どちらのグループも発表した論文の数は同じであること。
一方、「ニアミス」グループの方が、“ヒット”した論文の数が多いことがわかりました(確率にして約6.1%)。
ようは、キャリアの初期段階で失敗した人の方が、資金調達額が少ないにも関わらず、“ヒット”論文を多く生み出しているのです。
「淘汰」の結果では?
研究者たちは、この結果にたいして「淘汰」、つまり、キャリアの初期段階で失敗した人が退職し、優秀な人が残っただけでは?という仮説を考え、検証を行いまいsた。
その結果、「ニアミス」グループの方が、確かに離職率が10%程高かったものの、上の結果を説明づけるほどのインパクトが無いことがわかりました。
研究者たちは、いわゆるグリット(やり抜く力)や、失敗から得られた教訓など、別の要因が大きく影響しているであろうと推測しています(後述も参照)。
とは言え、改善の努力は必要
同グループの後の研究では、「失敗への対処が重要」と研究を進化させています。
「金持ちはより金持ちに、貧乏はより貧乏に」という言葉があり、それは世の中のひっくり返しようのない一つの真理です(マタイ効果、もしくはマシュー効果)。
これらの研究は、マシュー効果を否定する程のものではないですが、「失敗は成功のもと」という言葉を強めるものです。
“改善のための適切な努力”が行われたことが前提として、「自分を破壊する一歩手前の負荷が、自分を強くしてくれる。」のです。
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