医療関連のニュースや記事が、時代情勢も反映して、様々な物が飛び交っています。
その質やスタンス、情報の粒度もバラバラです。
ここでは、医療関連のニュースや記事を読むときに注意しておきたいバイアス各種について紹介をします。
ウェーバー効果
新しい事象については、報告がシンプルに増えるよね、というものが「ウェーバー効果」です。
アメリカの医学雑誌(JAMA200;292:1702-1710)にも記載されていますが、ある予防接種を開始した時、始めに副反応の報告数が増え,接種を継続してもその後は報告数は減少していくという現象の説明に用いられています。その理解は、新しい薬剤に対して、人は(中略)熱狂的に副反応を見つけようという姿勢が無意識に出てしまうため、副反応の報告が増えるが、その後は落ち着いてくるというものです。
(以下略)
医療法人 七美会「予防接種の副反応について」より
ハンリー氏は、母国スコットランドでも子宮頸がんワクチンの副反応がたくさん報告されているが「政府は全然気にしていません」と語り、どんなワクチンでも導入直後の数年は副反応報告が増え、その後、減っていくという「ウェーバー効果」について触れた。
WEDGE Infinity「子宮頸がんワクチン論争」より
統計に関わるバイアス
母集団が適切でないと、データの読み取り判断も適切に行えないよね、というものが「選択バイアス」です。
これは次のまぎれ込み現象にも関係します。
選択バイアス:このように、実際に知りたい集団(今回だと赤ちゃんの子持ち世代)とサンプル(標本)の選択のされ方が異なる場合、選択バイアスになります。
まぎれ込み現象
何か他の要因がまぎれ込むと真の要因がわからなくなるよね、というものが「まぎれ込み現象」です。
何かしら新しいイベントがあったとして、そのイベントで先に出会った母集団は何であろうか?についても留意すると良いでしょう(選択バイアス)。
子どもにとって重要なワクチンは生後2か月から1歳にかけて行われます。(中略)複数回接種する必要があるものもあります。一方、日本の乳児死亡率(出生1000人の中で1歳になるまでの死亡数)は2012年で2人です。(中略)つまり一歳台にこれだけワクチンの回数が多いと、ワクチンの接種時期と種々の原因で不幸にも亡くなられる症例がどうしても重なってしまうパターンが出てきます。現行のワクチン制度の副作用報告はワクチン接種と近接する事象は「因果関係は否定できない」と判定されます。このような現象を「まぎれこみ」と言います。接種回数が多くなればなるほどそのリスクは上がります。(以下略)
医療法人 七美会「予防接種の副反応について」より
フレーミング効果
「コップの水は、半分しかない」「コップの水は、まだ半分もある」。
同じことを言っているのに、言い方により印象が異なる、というものが「フレーミング効果」です。
「〇〇を5g配合」と表現する場合と「〇〇を5000mg配合」と表現する場合も同様です。
情報の印象を大きく左右します。
被験者の医師を2つのグループにわけ、各グループに手術に関する下記の異なる表現の情報を提示して、ガンの治療を行う際に、手術と放射線治療のどちらを選択するかを実験した。
A) 術後1か月の生存率は90%である。
B) 術後1か月の死亡率は10%である。
この質問は意味的には同じであるが、手術を選択した人は生存率にもとづいて情報を与えられた被験者(84%が選択)のほうが、死亡率にもとづいて情報を与えられた被験者(50%が選択)よりも多いことがわかっている。
McNeil, B. J., Pauker, S. G., Sox Jr, H. C., & Tversky, A. (1982). 23On the Elicitation of Preferences for Alternative Therapies. Preference, Belief, and Similarity, 583.
自分にはやらない治療
あるアクションのネガティブな側面を見過ぎてしまうと、かえって正常な判断ができなくなり、非合理的な決断を下してしまう可能性がある、というものです。
次の記事で解説しています。
推論に関わるバイアス
入り口で情報に対するスタンスを決めてしまうと、得る情報も偏るし、得た情報に対する判断も偏る、というものです。
完全ニュートラルは人間なので不可能ですが、意識はしたいです。
- Anchoring Bias
最初に考えた診断に固執して考えを改めない。これはありがちなバイアスですね。 - Confirmation Bias
自分の仮説に適合したデータは受け入れるけれど、不適合なデータを無視してしまうというバイアスです。
研修病院ナビ「臨床推論で注意すべき6つのバイアス」より
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