採用管理を支援するSaaSが登場するなど、採用業務の効率化が進んでいます。
しかし、選考に関しては、従来通り書類選考から面接・評価まで、人が入り自動化されていない会社は珍しくありません。
ここでは人間よりAI/アルゴリズムの方が優秀な社員を採用できる、という話をしていきます。
AI採用が広がっている
AI採用とは、文字通り、採用プロセスの一部にAIを導入し、その採用業務の何かしらを効率化することです。
近年のコンピュータの性能向上やAI技術の発達を背景に、近年急速に拡大が進んでいます。
国内でも、IBMのWatson、採用支援システムのi-web、書類選考AIツールのPRaiO、対話型AI面接サービスのSHaiNなど、いくつかのソリューションが登場しています。
その効能としては、アルゴリズムによる自動化により業務の大幅な削減や、採用判断の公平化などが語られています。
実際、ソフトバンク㈱などが面接評価にAIシステムを導入するなど、大手をはじめ、話題を提供しています。
しかしながら、問題がないというわけではありません。
採用自動化に絡む問題
記憶に新しい問題としては、リクルートキャリアによる「内定辞退率」問題です。
詳細はここでは触れませんが、個人情報に絡む話であり、トヨタ自動車、京セラ、YKKなどの大企業も含めた、大々的に問題に発展しました。
「内定辞退率」というネガティブな側面にフォーカスしたことも問題が拡大した一因なのでしょうが、アルゴリズム採用の世界に水を差しました。
その他には、AmazonがAI採用を打ち切った、という報道が話題になりました。
理由は、AIによる人材採用システムが機械学習の欠陥により、女性を差別する形になってしまったからです。
AIにせよ、他のアルゴリズムにせよ、判断のロジックや学習データ次第では、差別を助長する形になることは、近年知られるようになってきています。
技術発展の過渡期のため致し方がないとは思うのですが、“意外性”もあり、AIによる差別問題は非常に話題になりました。
このようなネガティブな側面があるにしても、AI/アルゴリズム採用は今後も発展し拡大していくと考えられます。
それは、AI/アルゴリズム採用の方が人間が採用するよりも、優秀な社員を採用できるからです。
人間よりAI/アルゴリズムの方が優秀な社員を採用できる
優秀な採用担当者は会社のことを熟知しており、必要なポジションの要件もよく知っています。
多くの応募者を見てきた採用担当者にしてみれば、人を見極め、最適な人を“選別”することが可能なように思うこともあるでしょう。
しかし、それは必ずしも正しいとは言えません。
次の記事で紹介されている研究では、「単純な方程式」により応募者を評価しても、人が評価するよりも25%以上精度が高いことが示されました。
この研究のポイントは、採用担当者が持っている応募者のデータよりも、単純な方程式にはめる情報の方が圧倒的に少ない点です。
人は多くの情報を認知し、複合的に判断できるが故に、採用/評価に関係のない情報にもとらわれてしまい、精度を下げてしまうからだ、としています。
この研究をベースにアルゴリズムを組み直し、実際どれだけ定着率があがるのか?を調査した研究もあります。
この研究で使用されたアルゴリズムでは、応募者を技術的なスキル、正確、認知能力、仕事への適合性など、様々な観点で評価します。
そして、応募者を推奨度という形で「高・中・低」の判断を行います。
その結果、推奨度「高」の応募者は、「中」よりも12日、「低」よりも17日、長く勤務することが示されました。
(実験は、就労期間が短い単純労働を対象に実施されました。)
また、別の実験で、採用担当者の判断で「中」の応募者を採用し、その後、当該応募者の後任(退職したため)として改めて「高」の応募者を採用した所、定着率が約8%向上したことも示されました。
つまり、人が判断するよりも、アルゴリズムが判断する方が、少なくとも定着率という観点では精度が高い、ということです。
また、データの数が少ないため十分な検証がなされていないものの、生産性の観点でも、人よりアルゴリズムの方が精度が高いことも示唆されています。
これらの通り、採用の世界においては、すでに人よりもコンピュータの方が優秀になりつつあります。
経験豊富な採用担当者が“過信”をしてしまうのは、長期的に見てネガティブであると考えた方が良いでしょう。
ただ、「長期的に見て」という点がポイントです。
例えばAIを採用するならば、大量のデータを学習させる必要があり、AI採用が適切に機能するまでに一定の時間を要します。
AIではないアルゴリズム採用の場合も、自社に適合するよう、様々にチューニングと検証を繰り返す必要があります。
この壁を超えない限り、人の方がまだまだ使える、という状況のままになってしまいます。
さて、この状況をどのように捉えるか?
経営者や採用担当者は一考する必要があると言えます。
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