大戸屋VSコロワイドが話題になっています。
当事者達には大変失礼だとは思いつつ、中々のドタバタ劇であると感じています。
本件については、かなり多くの思う事と教訓があるので、感想を書いていきます。
これまでの経緯概略
入り口のきっかけは、大戸屋創業者である三森久美氏が2015年7月にお亡くなりになられたことに発します。
ここで創業者が持っていた株式約19%は、ご家族(夫人と子息)に相続されます。
これが大きな悲劇のはじまりです。
ご家族、特にご子息にとっては次のような考えがありました(想像)。
- すぐに自分に社長の席が譲られると思っていた(当時26歳)
- 莫大な株式を相続するにあたり必要な税金分の現金を大戸屋が「功労金」としてすぐに満額支払ってくれると思っていた
- 現経営陣が父の理念を引き継ぎ、取り組んでいたことを継続してくれると思っていた
しかし、現経営陣は一定現実的な考えを持っていました(想像)。
- 若い大事な後継者だから長く大切に育てよう(社長の席も早くて10年後)
- 「功労金」を払いたいが、外部、特に株主が納得するだけの説明が必要
- 創業者が牽引してきた赤字事業を切り離さないとメインバンクも納得しない
こういった思惑の不一致があり、創業家と現経営陣で確執が起きます。
結局2016年、ご子息は取締役を辞任し、大戸屋を去ります。
(第三者委員会の調査報告書は、大変失礼ながら、かなりの読み物です。面白いですよ。後、経営側がこれだけのことをすることはまずないのだから、かなり配慮されていますよ。)
創業家は、相続した株式分の税金を支払わなければいけないため(充当した借金の返済が必要)、
2019年10月、持っていた株式の約19%をコロワイドに売却します。
その後、コロワイドは大戸屋に対して、創業者ご子息を取締役候補に含めた株主提案を行い、この場は否決(2020年6月)。
2020年7月に、今話題になっているTOBという流れになっています。
TOBが成功すれば、コロワイドは大戸屋を50%超保有することになるので、子会社として親子上場という関係下で支配に置く形になります。
ここら辺の経緯は、色んな方や記事がまとめているので、読んでみて下さい↓
創業家の言い分
大戸屋側の言い分(第三者委員会の調査報告書)(必見級)
http://110.232.195.129/news/wp-content/uploads/2016/10/c029f081ce9ac494e99a60355a9fa535.pdf
創業家による大戸屋株式のコロワイドへの売却
創業家がコロワイドに株式を渡した理由は「相続税」
株主提案時のコロワイドの行動と蔵人会長の暴言
TOBまでの経緯概略
大戸屋VSコロワイドのテクニカルな解説
ようやく本題の思う事と教訓
オーナー創業者
まず、事業承継問題はしっかりしましょう、ということですね。
株式がコロワイドに渡ったのは、結局の所、相続上の問題が原因です(多分)。
きちんと、事業承継のスキームを構築しており、何かあってもスムーズに相続できるようにしていれば、このようなことにはならなかったはずです。
加えて、相続上の問題だけでなく、経営の引継もです。
ご子息は「自分が正当な後継者」だと、まあ当然に考えますよね。株式も持っているわけですし。
(幼い傲慢な発想ですし、ガバナンス上、それが如何にナンセンスか、は置いておいて。)
ご子息には「きちんと諸先輩の下について、修行しろ。最低でも10年、実績と実力を積め。」と言い聞かせておくべきでした。
現経営陣にも「色々大変だろうが、残された者たちの感情のケアには注意しろ。」と冷静に伝えておくべきでした。
これらは、べつに「べき論」を語っているのではなく、あちらこちらで聞く「あるある話」です。
巻き込まれたらたまったもんじゃないはずなので、ここは一番グリップし、推進できる立場の人間が、きちんと対処しておく問題でしょう。
二世御曹司
ご子息に関しては、もうちょっと身のふるまいを意識した方が良かったと感じています。
若くても優秀な方は大勢いらっしゃいますが、じゃあ26歳とかの年齢で、数百億円規模の会社を背負えるのか?と言われたら、周囲の人たちは不安に思って当然でしょう。
ゼロベースから修行し、丁寧にそして確実に成果をだしていく、実力をつけていく。
そして、二世シンパ(支持者という意味)を作っていく。
これができれば、現経営陣も、元々、ご子息に経営を引き継がせる心持ちだったのだから、いずれは願いが叶ったはずです。
株式だって持っているのですから。
ようは、親の威光をかさに着て何かが叶うと思ってはいけない、ということですね。
残された現経営陣(被買収側)
残された経営陣も、もうちょっとプロフェッショナルに経営して欲しいな、と感じます。
まず業績面。
創業者がお亡くなりになってからの内紛の影響もあるのでしょうが、この業績はいかがなものかと(ピーク時の15%の利益)。
最新直近の決算は、コロナ影響もあるとは言え、赤字です。
山本社長(現在は取締役)のガイアの夜明けの件もかなり酷いものでした。
これだけじゃないのですが、もっと、お客様と従業員のことに目を向けた方が良いかと思います。
更に、これだけ外部に株式をグリップされて、株主提案までされたら、普通は次にTOBが来るって思うでしょ?
なんで、早々に買収防衛策を打たないのですか。
もう、この状況だとホワイトナイト以外、手が無いですよ?
(それも、あまり現実的では無いですが。もしかしたら既に準備しているのかもしれませんが。)
資本主義社会で戦っていくには、ちょっと、M&Aの世界において初心すぎるな、と感じます。
買収側
コロワイドもコロワイドです。
株式を誰かから取得するのも、TOBも、別に合法な手段であり、誰かに非難されるいわれはありません。
しかしですよ、ここで礼節を失ってはいけないでしょう。
こちらで記載のある蔵人会長の明らかな従業員軽視の暴言や、こちら(週刊ダイヤモンド2020.7/18)にあるような野尻社長のあからさまな脅迫ともとれるコメントを出されたら、相手のシャッターも当然におります。
別にM&Aを戦略軸に据えるのは問題が無いのですから、もうちょっと相手様に敬意を払えないもんですかね?
さらに業績です。
「お家騒動で混乱している会社を乗っ取って、自分たちの会社の業績をキレイにしよう。」
という発想が見え見えであり、数字が読める人たちにしてみれば、反感を持たれても仕方が無いです。
IFRSであり、のれん代がPLヒットしない、という魂胆も見透けており、微妙感に拍車がかかります。
進め方がよければ「流石、コロワイド!M&A巧者!」となったはずです。
これまでの進め方だと、もうちょっと既にある事業をしっかり立て直しなよ、と感じてしまいます。
以上、大戸屋VSコロワイドについて思う事について、教訓について書いていきました。
私は、基本的には資本主義の信奉者であり、グローバルな世界で一般的に使われている手法については当然に有りだと思っている立場です。
しかし、ビジネスという物は、人々が幸せになるために行われる物だとも考えています。
今回の大戸屋VSコロワイドの件では、TOBに乗っかる大戸屋株主は儲かってハッピーでしょう。
しかし、それ以外の方々にとっては、誰にも幸せにならない一件のように思えます。
あくまでも私の価値観の世界の話なのですが、見ていて首をかしげてしまいます。
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