この2,3ヶ月でWEB会議が広く行われ、慣れた方も多いでしょう。
取締役会は、通常の会議と異なり、配慮しなければならない点が複数あります。
特にWEB会議のような方法では、最悪、取締役会が無効となるリスクもあります。
ここでは、WB会議での取締役会における運営上の注意点を解説していきます。
忙しい人向けまとめ
WEB会議、テレビ会議、電話会議の方式での取締役会開催においては次の2点が重要
- 即時性
- 双方向性
即時性、双方向性に対応するために、次の4点を実施する
- コミュニケーションに不備が無い事の適時の確認、特に最初と最後で確認をとる
- 声とジェスチャーでの意思表示
- 早い内での議事録の作成と回覧
- 会議記録のデータでの保存
即時性、双方向性の確認が重要
WEB会議に限らず、テレビ会議や電話会議の方式における重要な点が2つあります。
- 即時性
- 双方向性
即時性とは、出席役員の音声が即時に他の出席役員につたわることであり、
双方向性とは、出席役員が同じ場所・空間でコミュニケーションをとるのと同じくらいのやり取りがお互いにできることです。
この点については、下記の通り、法務省および過去の判例により示されているものです。
この2点を担保できるのであれば、遠隔地での取締役会は合法に開催できる、逆にいうと即時性・双方向性に難があるのならば、取締役会は有効ではないとされてしまうリスクがある、ということです。
(略)
法務省民事局 規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について
取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時にほかの取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み
(略)
(略)
福岡地判平成23年8月9日(裁判所HP、平成21年(ワ)第 4338 号)
遠隔地にいる取締役が電話会議方式によって取締役会に適法に出席したといえるためには、少なくとも遠隔地取締役を含む各取締役の発言が即時に他のすべての取締役に伝わるような即時性と双方向性の確保された電話会議システムを用いることによって、遠隔地取締役を含む各取締役が一堂に会するのと同等に自由に協議ないし意見交換できる状態になっていることを要する
(略)
そのため、取締役会の運営上、対応しなければいけない点がいくつか存在します。
WEB会議での取締役会運営上の注意点
即時性と双方向性の確認
取締役会の開始から終了まで、意思伝達に問題が無いことをきちんと確認しましょう。
まず開始時に、議長(通常は代表取締役)より、出席役員に、音声が明瞭に聞き取れること、画像が不備なく映っていること、配布資料が閲覧できること、を確認しましょう。
そして、終了時にも同様に、取締役会全体を通じて、音声・画像の伝達に問題が無かったことを、出席役員に確認しましょう。
会議内においても、議案の一つ一つについて、コミュニケーションが適正にとれていることを、適時確認していきましょう。
声とジェスチャーによる意思表示
WEB会議ですと、ちらほらと音声や画像が途切れてしまう場面が出てしまうこともあるでしょう。
音声が、明瞭に聞き取れない場面も出てくるでしょう。
そのため、意思表示のやり方に関して、声とジェスチャーの両方による意思表示を行うような文化にしましょう。
賛成ならば、「賛成です」という声を出すと共に、手でOKポーズを行うと、明確にその意思を他の出席役員に示すことができるでしょう。
WEB会議だからこそ、多少大げさでも良いので、明確に意思表示が行えるように配慮しましょう。
議事録の確認
取締役会終了後は、記憶が新しい内に議事録を作成し、早々に出席役員に回覧しましょう。
内容確認を依頼し、メールやSlack上で、明確に「確認しました。」「次の通り修正提案をします。」といった確認を取りましょう。
修正提案があり、それを受け入れる場合は、その旨と内容も早々に他の出席役員に回覧します。
Slackのようなチャットツールは、テキストの修正や削除ができてしまうので、できればメールのような相手方が一方的に修正・削除ができないような方法の方が望ましいですね。
画像キャプチャーをとる方法もあるのですが、流石にそこまでやるのは面倒ですので、最初からメールでの確認を取る方がリーズナブルでしょう。
記録をデータで保存する
会議は、その内容について記録をデータで保存するようにしましょう。
明確にデータで保管されているならば、後々になって、言った言わないを防げますし、議事録作成上、不明な点が出た場合に確認を取ることが可能です。
ZoomなどのWEB会議システムは、会議の内容を丸っとデータで保管する事が可能です。
「ミーティングを自動記録」というオプションをセットするだけなので、簡単に設定できます(下記図参照)。
電話会議のような方法の場合は、ICレコーダーなどを使い、録音をするようにすれば良いでしょう。
最後に
WEB会議実施の取締役会は、おそらく過去に数が少なく、これから事例が増えてくるものと考えられます。
そして同様に、各種のトラブル事例も報告されてくるでしょう。
そのようなトラブルに、自分たちの会社が該当することが無いよう、多少くどい位で配慮した方が良いと考えられます。
実際、そこまで負荷が増える物でもないですし、慣れればどうってこと無いはずなので、対応していきましょう。
なお、全員WEB会議参加の場合の取締役会招集通知・議事録の書き方については次の記事を。
議事録の電子署名(電子化)対応については次の記事を参考にしてください。
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