株主総会運営、モンスター株主クレーマー株主対応

株主総会

いわゆる総会屋という存在がいなくなって久しいですが、ここ十数年は個人の株主を中心に質の低い質問であったり、総会運営を妨害するようなクレームをつける方が大勢います。
株主総会当日、特に後者のクレーマー株主(モンスター株主)が来場されることが想定される場合の対応について考えていきます。

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クレーマーは株主では無い

まず、最初に明言します。

クレーマーは、例え株式を保有していたとしても、もう株主ではありません。

粛々と、ご静粛願うか、ご退場いただくか、毅然とした対応していきましょう。
クレーマー株主(モンスター株主)は、その他大多数のまともな個人の株主にとってみれば迷惑な存在ですし、その言い分を丁寧に聞くことは、会社側の貴重なリソースを消耗させるだけです。

場合によっては、「そんなに当社の対応がご不満でしたら、株式を手放していただいて結構です。」とはっきりと伝えましょう。
そして、「当社は、〇〇様には十分に誠実な対応をしてまいりました。当社は、これ以上、〇〇様には対応をいたしません。」と対応しましょう。

ネット上の掲示板やSNS等で書かれることを心配するIR担当者、会社もいらっしゃいますが、心配いりません。
一個人の書き込みで株価が動くことはまずありません。
また、日々、誠実に適法に個人の株主の方に向き合っているのならば、そのような言い分は誰も信じません。

会社として、クレーマー株主(モンスター株主)から従業員を守るためにも、他の株主の公平性を守るためにも、毅然とした対応方針をとりましょう。

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ただし、会社側の対応が公正であるかは自問しよう

ただし、上記の記載は、会社側が株主に対して誠実で適法であることが前提です。

上場会社によっては、個人の株主を完全に見下し、まともに対応しない企業も存在します。
IRの問い合わせでぞんざいな対応をしたり、株主優待の送付間違えに対して調べもせずにあしらったりするような企業の存在は、ちらほら耳にします。
(株主優待の送付先を株主名簿の住所一覧とせずに、別に管理していることは決して珍しくなく、事務ミスでアップデートが漏れることは、まあまあ聞く。)

もちろん、靴屋なのに、ピザ注文を代理で受け付けるような、過剰な対応は不要です。
(IRではなくカスタマーサポートであり、また海外事例ですが、実話です。)

確かに、個人の株主からの電話を受け付けてしまうと、十数分、場合によっては数時間、拘束されてしまうような話も、誠に残念ながら非常に多くあります。
株主総会における、個人株主の質問内容も、どう考えたって会社経営全体視点では無い、非常にミクロな現場判断レベルの内容が多いのも事実です。
げんなりしてしまうのは理解できますが、それで株主をぞんざいに扱ってよい理由にはなりません。
(上記のようなことがあるため、上場会社によっては、IRは閑職的扱いで吹き溜まりのような部署扱いされている所もあります。)

誠実にかつ適法に、個人個人への対応ではなく、マスでの対応、を心がけましょう。

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株主総会での対応

それでは、マインド面の前置きが長くなりましたが本題です。

会場セッティングや社員株主による席確保について

よくある対応として、株主総会会場の前方、議長席に近い席を、社員株主で陣取り、確保してしまおうという対応があります。

まずこれは、違法であると認識しなければなりません。
というのも、社員株主であろうと、一般の株主であろうと、同一の扱いをしなければならないからです。
実際に、過去の判例を見ると、仮に株主総会が荒れることが想定されるような状況であったとしても、社員株主による席確保は認められない、という判断が出ています。

精々、警備員的役割も担った社員株主を数名、議長席に近いエリアに分散して着席するようにする対応としましょう。

また、もう一つよくある対応としてあげられるのが、議長席エリアに柵やロープを設置するような会場セッティングを行う対応です。
(議長席に詰め寄る個人株主もいるので、その対策として実施する会社が実際にある。)

正直、これも微妙です。
まず、法的に問題がある対応では無いではありません。
ただ、実際にそのよう総会を見るとわかりますが、非常に断絶感があります。
会社として、株主は敵側と捉えています、というメッセージだと感じてしまうので、かえって総会を荒れさせてしまうかもしれません。

素直に、檀上のある会場を選び、自然と接触が難しいようにするのが良いでしょう。

警備員を利用する、場合によっては警察に同席願う

警備員を複数名配置するのは有用です。
制服を着用した警備員がいると、一般の株主にとって、圧迫感を感じる方も一部いらっしゃるでしょうが、大多数は気にしない、また一部は安心する、というような心理感になります。
クレーマー株主(モンスター株主)にとってのみ、牽制になりますので、活用を検討するのが吉です。

また、議長による指示でご退場願う場合、トラブル対応に慣れていない社員が対応するよりも、トラブルに慣れている警備員に依頼する方が、スムーズにことが運びます。

場合によっては警察に同席願うのもありです。
実際私も、特殊株主で有名なKH氏のような方との対応が予想される状況では、警察の方に同席をお願いしました。

議長による采配

最終的には議長の采配が重要になります。
株主総会の議長は、会社法の定めにより、議事進行に関する権利、秩序を保つ権限があります。

そのため、不規則発言を行うなど、株主総会の秩序を乱す株主に対しては、静粛にすることを命じると共に、従わない場合は退場させることが可能です。

動議、不規則発言への対応シナリオについては、こちらの記事も参照ください。

なお、実際に退場等を命じる場合、やり方を間違えると株主の権利を侵害する可能性もありますので、株主総会運営に詳しい弁護士にも同席を願い、事務局席で即時にアドバイスをいただけるような体制を組みましょう。

最後に

個人の株主は、会社を応援してくれる、非常にありがたい存在です。

一方、誠に残念ながら、道理が通じないクレーマー株主(モンスター株主)が存在するのも事実です。

株主総会は、会社として、議長として、そのような残念な方に、いかに本気で相手をせずに会社法が求める取締役の説明義務を果たすのかという、社長としての器を見極める場と言えるかもしれません。

毅然と、かつ確実に対応をしていきましょう。


新型コロナウイルス対応版の株主総会議事進行シナリオについては、こちらの記事も参照ください。

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