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ビジネスと心理学

高IQの人ほどプレッシャーに弱いし心身も病みやすいという話

高IQの人は認知能力の高さ故、多くのことに対処できる、というような印象を持つかもしれません。
しかし、現実には高IQの人ほどプレッシャーに弱いし、心身も病みやすい、という研究があります。
意図的に考えない、リラックスをする、という取り組みを意識的に行うことが重要です。

高IQの人はプレッシャーに弱い

次に紹介されている研究では、ワーキングメモリーの大きさと、プレッシャーによるパフォーマンスの変化について調査がされています。

シカゴ大学では次のような実験が行われました。

まず、被験者をワーキングメモリーテストの成績に応じて、高ワーキングメモリーグループ(HMV)と低ワーキングメモリーグループ(LMV)の2つのグループに分けます。

そして、低プレッシャー、および高プレッシャーの2つの条件で、簡単な数学の問題、そして複雑な数学の問題を解いてもらいます。

低プレッシャーの条件は、与えた問題を「練習」という位置づけで解いてもらい、高プレッシャーの条件は金銭的報酬や、周囲からの圧力、第三者評価などの現実的に起きうるプレッシャーを想定したものが設定されました。

その結果、高プレッシャー条件において、高ワーキングメモリーグループ(HMV)の方が、低ワーキングメモリーグループ(LMV)よりも、パフォーマンスの低下が顕著であることが示されました。

要求が高い時、HMVの方がパフォーマンス低下が起きやすい、つまり高IQの方がプレッシャーに弱い、ということが言えるのです。

高IQの人は心身を病みやすい

他にも次のような研究があります。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160289616303324

端的に言うと、高IQの人の方がメンタル面や様々な疾病など、心身を病みやすい傾向があるのです。

これらの現象は、高IQの人は使える脳のリソースが大きいが故に過剰に情報を処理してしまうからだ、と推測されています。

つまり、認知能力の高い人は、考えすぎたり、分析しすぎたりする傾向がある、ということです。

なお、人類のIQは伸び続けている、という報告も存在します。

ミシガン大学のNisbett教授によると、IQの平均は1947年から2002年の間に18上昇しているという。30年で約10上昇している。この現象のことをFlynn effect(フリン効果)と呼ぶ。従って20歳の成人と50歳の成人を同じ知能検査で同じ基準で比較するのは難しい。50歳の成人の30年前に受けた知能検査の平均値は、現在の平均値より10近く低い。スウェーデン・ウメ大学のElijah Armstrongとブリュッセル自由大学のMichael Woodleyによると、一定の出題パターンを見抜く事で容易に解けるようになる問題の方が、パターン把握を認識しにくい問題に比べてフリン効果は顕著だという。

Wikipedia「知能指数」より

ただでさえ忙しい現代人ですが、心身を病んでいる人が増えているのは、上述の理由も考えられます。

意図的に考えない、リラックスをする、という取り組みを意識的に行うことが必要かもしれません。


休憩の取り方については、こちらも参照にしてください。

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マネジメント・リーダーシップ

人は褒められるとパフォーマンスが向上し問題解決能力があがるという話

世の中には、褒めると調子にのってつけあがるからパフォーマンスが落ちる。だから褒めない。
という人が意外にいるのですが、これは間違いです。
その理由は、褒められるのが嫌いな人は基本的にはいないこと、人は褒められるとパフォーマンスが向上し問題解決能力があがるからです。

「褒め」とパフォーマンスの関係の研究

ハーバード・ビジネス・スクールは、「褒め」とパフォーマンスの関係の研究を行いました。

https://www.thecut.com/2015/09/please-tell-me-about-a-time-i-was-awesome.html

実験では、75人の被験者を対象に、問題解決能力を測るテストが行われました。

半分の被験者については、友人や家族、同僚に、被験者を褒める内容や場面について書いてもらいました。
そして、テストを行う直前に、そのテキストが提示されました。

残り半分の被験者については、特になにもせずに、そのままテストを行ってもらいました。

なお、行うテストは、「ドゥンカーのロウソク問題」と言われる、古典的な問題解決能力を測るための認知能力テストです。

ドゥンカーのロウソク問題:このテストでは、被験者に1つの問題が与えられる。それは、コルクボードの壁にロウソクを固定し、点火するというものである。ただし、溶けたロウが下のテーブルに滴り落ちないようにする必要がある。この問題を解決するにあたり、被験者はロウソク以外に、1束のマッチ、1箱の画鋲だけを使うことが許される。

ロウソク問題の解答:箱から画鋲を取り出して画鋲で箱をコルクボードに固定し、ロウソクを箱の中に立ててマッチで火をつけるというのが答えである。機能的固着のコンセプトが予測するところによると、被験者は箱について画鋲を入れるための道具としてのみ見て、そこに問題解決に有効活用できる別個の機能要素があるとはすぐには気付くことができない。

Wikipedia「ロウソク問題」より

人は褒められるとパフォーマンスが向上する

テストの時間制限は3分で、実験の結果、時間内に問題を解けたのは「褒められた」グループでは約51%、対照群である「褒められていない」グループでは約19%にとどまる形となりました。

つまり、人は褒められるとパフォーマンスが向上するのです。

この傾向は他の実験でも示されており、「良い状態の自分」を想起できたグループは、忍耐力が向上したり、スピーチを問題なくこなすなど冷静さを保つ能力が向上することがわかっています。

人は褒めた方が良い

これらのことから、基本的には人は褒めた方が良い、ということがわかります。

褒められることが嫌いな人は、多くの場合いないことも容易に想像できるでしょう。
実際、(それがどこまで健全かはともかく)人間関係を長く続けるためには、否定的コミュニケーションより、肯定的なコミュニケーションを重視した方が良い、とされています。

また、人は自分にとって都合の悪い、耳に痛いフィードバックについては正確性に欠ける、信頼できないものと判断する傾向があるという研究もあります。
つまり、成功の要因は個人に起因するものであり、失敗の要因は外的なものであると、以前よりも強固に感じるようになってしまう傾向があるのです。

ビジネスでも育児でも。

もちろん、褒めるだけではダメなシチュエーションもあるでしょうが、褒めることを重視してみると、非常に良い結果が返ってくるでしょう。

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生産性・業務効率化

自然に触れ合うと認知機能やクリエイティビティが向上するという話

現代は多くの人が都市部に住むようになり、自然は身近なものではなくなりました。
自然には人の緊張した神経を落ち着かせ、疲労を癒す効果があるとされています。
また、どうやら自然に触れ合うと認知機能やクリエイティビティが向上するという効果もあるようです。

Mom Was Right: Go Outside

自然に身を置くとクリエイティビティが向上する

カンザス大学で行われた研究では、人里離れた場所でのハイキングがクリエイティビティにどのような効果を与えるのか、調査が行われました。

その結果、バックパッカーにトレイルに入る前と入った後で、クリエイティビティに関するテストを行った所、テストの結果が約50%も向上したことが示されました。

自然は、虫や温度・湿度等、不快に感じる環境ではあるのですが、脳にはポジティブな影響を与えるようです。

研究では、自然に身を置いて3日間で、ポジティブな影響がピークになる、としています。

緑の中を散歩するとメンタルが回復し、認知機能も向上する

他の研究でも同様の効果が示されています。

ミシガン大学で行われた研究では、大学生にGPS受信機を装着した状態で散歩をしてもらいました。

樹木園を歩く学生も入れば、繁華街を歩く学生もいました。

その後、複数の心理テストを受けてもらいました。

その結果、自然の中を散歩した人は、メンタルがポジティブに向上し、注意力や短期記憶の点数が有意に向上していることが示されました。

短い時間でも良いので緑を眺めると休憩になる

別の研究では、短い時間でも緑を眺めるだけで生産性が向上する、という結果も示されています。

これらの研究は、都市部に身を置いている人に限定された効果かもしれません。

しかし、現代人の多くは大なり小なり自然と身近でない人の方が多いでしょう。

そんな現代人にとって、定期的な旅行やちょっとした散歩、もしくはほんのちょっとの短い時間の休憩でも良いので、自然に触れ合うことは様々なポジティブな影響があるということです。

「サバンナ理論」によると、人間は太古の昔から基本的な性質は変わっていない、とされています。

サバンナ理論:人間の脳は、はるか昔アフリカのサバンナで暮らしていた頃から基本的に変わっておらず、現在でも、サバンナになかったものはうまく認識できないという。
現代人の、テレビやポルノへの反応にも、この原則が当てはまる。テレビについては、画面に映っている映像がつくりものに過ぎないことが、われわれにはわからない。サバンナにはテレビなどなかったからである。
この原則を知能にあてはめたものが、「サバンナーIQ相互作用説」である。それによれば、大昔の祖先の環境(サバンナ)に存在しなかったものをどれだけ理解できるかで、知能の高低を説明することができる。
音楽を例に挙げれば、楽器の演奏(とくにクラシック)に惹かれる人は、知能が高い傾向にある。サバンナには楽器などなかったからである。音楽の起源は「歌」(声を出すこと)だったと考えられている。
また書かれた文章、活字に惹かれる人も同様である。そのほか、さまざまなことが、この説によって説明されるという。
Wikipedia「サトシ・ナカザワ」より

そして、認知能力が低い人にとって都市環境はストレス負荷が高い、とされている。

そのように考えれば、現代社会がデフォルトで、人にとってストレスフルであろうことは当然と言えます。
意識的に自然の中に身を置くことを意識すると良いでしょう。

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仕事と健康,運動

【若い内からの認知症予防】テレビを長時間見る習慣がある人は認知症リスクが高い

何かしらの趣味を持っている人は認知症にかかるリスクが低いことが一般的に知られています。
しかし、この趣味にはテレビ視聴のようなものは含まれません。
テレビを長時間見る習慣がある人は、そうでない人に比べて認知症リスクが高いのです。

趣味を持っている人は認知症にかかるリスクが低い

ミネソタ州のメイヨーククリニックの研究チームにより、読書をしたり、編み物をしたり、コンピューターゲームをしたりするような趣味に没頭すると、認知症のリスクが低下し、発症を遅らせることができることが示されました。

研究では、70歳から89歳の軽度の認知症を持つ約200人を対象に、認知障害がないグループと比較する形で調査が行われました。

調査では、被験者に過去1年以内の日常生活について尋ねると共に、50歳から65歳までの間に、どれだけ精神的に活発であったのかがヒアリングされました。

その結果、読書や編み物、ゲームなどの趣味に没頭していた人は、認知症のリスクが約40%減少することが示されました。

その後の人生についても、同様の活動により、30%~50%、認知症リスクが減少することもわかりました。

ただし、テレビ視聴は認知症リスクを高める

しかし、上述で言う“趣味”にはテレビ視聴は含まないようです。

むしろ、長時間テレビの前にいる習慣がある人は、認知症リスクを高める可能性があります。

テレビの視聴時間が1日7時間未満か、それ以上かのグループでは、前者の方が認知症にかかるリスクが50%も低いことが示されています。

おそらく、受け身で情報を受け取るだけのテレビでは脳が刺激されないのでしょう。

脳を使う習慣を身に着ける

研究者たちは、認知機能を鍛えることで、将来の認知症リスクを低減させることができるとしています。

もちろん、この研究は被験者の記憶に頼ったものであり、不確実性ははらみます。
しかし、脳を使う習慣があれば、衰えも遅らせられるであろう、と考えることが不合理とは思えません。

何かしらの新しいスキルを身につけたり、新しい言語を学んだり楽器を習ったり、パズルを解いたりするなど、脳を鍛える、チャレンジをすることは楽しいだけでなく、良好な老後を過ごすことにつながり得ると考えて良いでしょう。

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フェルミ推定・ロジカルシンキング

孤独が好きな人は高い「知能」を持つ傾向がある、という話

興味深い研究があり、「知能」が高い人は一人、つまりは孤独を好む傾向がある、とされています。
多くの幸福に関する研究が、対人関係の充実と幸福に関連があることを示しています。
ただし、それは例外があるようで、「知能」という変数が影響を与えます。

最初に補足:「知能」の種類

最初に補足をしておきます。

知能には様々な要素があります。

  1. 論理・数学的知能
  2. 博物学的知能
  3. 視覚・空間的知能
  4. 内省的知能
  5. 言語・語学知能
  6. 身体・運動感覚知能
  7. 音楽・リズム知能
  8. 対人的知能

このような知能が存在する中で、上述の「知能」は1~5のいわゆる「IQ」的な「知能」を指しています。

つまり、以降の話で言う「知能」の高低は、頭が悪いとか良いとか、そのような話ではないということは留意ください。

孤独が好きな人は高い「知能」を持つ傾向がある、という研究

こちらの研究では、「知能」の高い人が友人等との付き合いを頻繁にすると、人生の満足度が下がる理由について説明しています。

https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/bjop.12181

その観点は、進化心理学に基づいたものです。
「知能」は、ある特定の課題を解決するための能力であり、「知能」の高い人は集団の中で仲間たちの助けを借りずに問題を解決することができました。

一方で、「知能」の低い人は、問題解決のために仲間たちと協力をすることが必要です。

そのため、進化の過程で、「知能」の高い人は孤独を好み、「知能」の低い人は誰かと一緒にいる方が幸福を感じるようになっていきました(というのが研究の主張)。

「知能」と孤独、幸福の研究の概要

研究では、18歳から28歳までの15,197人にアンケート調査を行い、幸福度、知性、健康等について測定が行われました。
その結果、友人と付き合うと幸福になる、という傾向が示されました(人が密集している所にいると人は不幸になる、という傾向も併せて示されています)。

つまり、大多数の人にとって、友人との付き合いは幸福度の向上につながります。

ただし、上述の通り、「知能」の高さが例外を生みます。

詳細は「幸福のサバンナ理論/サバンナ幸福論/サバンナ理論」というキーワードで参照いただきたいのですが、現代の歪な社会構造(太古の時代には無かった人間関係の構造)では、不特定の知り合いでも無い人たちとの交流が求められます。
知り合い以上、友達未満のような関係性の浅い人間関係もです。

この環境は非常にストレスが多く(実際、都市部の方が地方よりもストレスが多いことが示されている)、高い「知能」は特定の方向に、この高ストレス環境に適応をしました。

それが孤独です。

「一般的に、高い知能を持つ人は、私たちの祖先が持っていなかった不自然な嗜好や価値観を持っている可能性が高いです。人間は友人関係を求めるのは極めて自然なことなのですが、その結果として知能の高い人は逆に友人関係を求めなくなる可能性が高いのです。」と研究者は言います。

ようは、自分を理解してくれる人が少なければ、一人でいることを好むのは自然なことなはず、ということです。

孤独はストレスのリセットにもなる

また研究により、「知能」が高い人は、交流関係から恩恵を受けていない(と感じている)にもかかわらず、「知能」が低い人よりも多くの人付き合いをしていることが示されています。

つまり、高い「知能」を持っている人は、孤独をストレスのリセット機能として活用しているのです。

高ストレス環境下にうまく適応する形で進化していると、研究者たちは言及しています。

加えて書くと、「知能」の傾向として、都市部の平均値の方が、地方の平均値より高いということもわかっています。
また、地方で産まれた「知能」の高い人は、その後都市部に移り住む傾向が高いこともわかっています。

忙しくて疎外感を受ける環境は、高い「知能」を持つ人にとって悪影響を与えない、ということです。


この研究は非常に興味深いものです。

誰かが一人でいるからと言って、その誰かが寂しい人だとか、本当に孤独だとは限らないのです。
加えて、高い「知能」を持っている人にとって、孤独は同時に高い生産性につながる時間を作り出します。

一方で、留意しなければならない点も多くあります。

上述の研究は、相関関係を示しただけであり、因果関係を示したものではありません。
人付き合いを好む人の「知能」が低い、とは限りませんし、そもそもとして知能には様々な種類があり、IQ的観点だけで語れるものではありません。

また、別の研究で、高い「知能」を持っている人は、同時に孤独の原因となるストレスを抱えやすい傾向があることもわかっています。

繰り返しますが、この話は良し悪しの話ではなく、傾向であったり、性質の話です。
「知能」に対する理解を深める題材として捉えると、世の中の見え方が拡がるかもしれません。

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ロジカルシンキング,フェルミ推定まとめ

「ロジカルシンキング,フェルミ推定」のまとめになります。

ロジカルシンキング

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仕事と健康,運動

若い内からの認知症予防まとめ

「若い内からの認知症予防」シリーズのまとめになります。

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仕事と健康,運動

【若い内からの認知症予防】音楽と認知症リスクの関係

運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
一方で、音楽と認知症リスクの関係は、あまり知られていないのではないでしょうか。
ここでは、お風呂と認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。

楽器演奏経験は聴力や話の理解力の衰えを緩和できる

まず結論から。

どうやら、若年での楽器演奏経験の有無や、楽器演奏の継続が中高年以降の聴力や、話の理解力に影響をするようです。
どうしても避けられない聴力・理解力の衰え、老化を緩和できる可能性がある、という示唆です。

こちらの記事で紹介されている研究では、楽器演奏を継続している中高年は、雑音の中で話を聞き分ける能力が高いことが示されています。
また、楽器演奏を若年(特に研究では9歳以前としている)で始めた人は、高い聴力を維持していることが示されています。

https://www.dailymail.co.uk/health/article-1386156/Forever-young-Why-musician-slow-effects-ageing.html

そしてこちらの研究では、楽器演奏の経験がある人は、経験がない人よりも速い速度で、人の話を認識できることが示されています。
(実験では、ヘッドホンを着けた状態で、様々な速さの音声を聞いて、認識できるか否かがテストされた。)

https://www.jneurosci.org/content/35/3/1240

いずれの研究も20人程の少数の実験であり、現状で確かなことは言えないものの、音楽と認知症リスクの関係がポジティブに示唆されていると考えられます。

マルチリンガルが認知症予防になる、という知見も

音楽以外にも言語について言及している研究があります。

こちらの研究では、マルチリンガルの人は、認知症にかかるまでの時期が遅くなることが示されています。
その効果は、第2言語を学ぶ時期が成人以降であってもその効果は同様だ、としています。

https://n.neurology.org/content/81/22/1938

上述の研究では、音楽鑑賞では効果がなく、楽器を演奏する行為が重要だとしています。

こちらの研究から、第2言語を学ぶ行為が重要と考えられるので、受動的なものではなく、能動的なアクションが脳にプラスに作用するものと考えられます。


音楽を学ぶ時期については不明な点が多いですし、可能な限り若年層の方が望ましい、という研究が多いのは事実です。

しかし、言語学習については何歳から始めても問題がないことがわかっています。

楽器演奏も、年齢仮説を否定するものが出ていますので、年齢を気にせず、やりたいと思った時期に取り組んでみるのが良いと考えられます。

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仕事と健康,運動

【若い内からの認知症予防】ゲームと認知症リスクの関係

運動と認知症リスクの関係は比較的よく知られています。
また、「脳トレ」と言われるように、脳機能とゲームの関係も知られるようになってきました。
ここでは、ゲームと認知症リスクの関係について科学的知見を見ていきます。

ゲームは認知症の予防や治療に役立つかもしれない

こちらの研究では、一部のゲームが認知症の予防や治療に役立つ可能性について示しています。

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0187779

研究では、55歳から77歳の33名の被験者を対象に、ゲームをプレイするグループ、コンピューター機器で楽器を演奏するグループ、対象群を用意し、半年に渡って研究が行われました。
その結果、ゲームをプレイするグループで優位に記憶に関連する脳部位である海馬の灰白質が増加していることが示されました。
(コンピューター機器で楽器を演奏するグループも同様の結果は得られたものの、効果はゲーム程ではないとのことです。)

なお、ゲームのジャンルは何でもよいわけではないようです(これについては、よくわかっていません)。

おそらく、新しい経験であり、その経験の複雑性が高い場合に効果があるのではないかと推測されます。

認知症の早期発見にも有効

予防や治療だけでなく、早期発見にも有効とする研究もあります。

https://www.pnas.org/content/116/19/9285

研究は、50歳から75歳の約2万7千人を対象に行われました。
プレイするゲームの内容は、記憶した地図を元に船を操縦し、目的地にたどり着く、というものです。

その結果、ゲームのプレイデータ(スコア)を分析することで認知症(研究ではアルツハイマー型認知症を対象としている)の予兆を発見できる可能性を示唆しています。

認知症の主な症状として記憶力の低下がありますが、この研究は記憶力の低下に限らず、目的地に向かう最短ルートを予測してその通りに行動する能力(ナビゲーション能力)の観点でも、認知症の早期発見に有効な可能性がある、ということです。

純粋に認知機能の改善にも有効

他にも純粋に認知機能の改善にも有効だ、という知見が多くあります。

  • ゲームによって依存症になることはほぼない(ついでにゲームによって暴力的になることもない)
  • ゲームは認知機能(IQ的なもの)を向上させる
  • ゲームはモラルやチームワークなど、社会性を向上させる

上述もしましたが、重要なことは新しい刺激的であり複雑な経験を得ること、と考えられます。

ゲームは非日常的な世界で、新しい複雑なタスクを多くこなす必要があります。
ゲームをプレイする時間が少ない人にとって、それらの経験は非常に刺激的なものになり、脳にポジティブに働く可能性があります。

実際、ボードゲームも脳機能改善に有効だ、とする研究もあります。

https://academic.oup.com/psychsocgerontology/article/75/3/474/5628188

いつもと異なる刺激、をポイントに日々の趣味を見直してみるのは良いかもしれません。

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マネジメント・リーダーシップ

メンバーによりチームのパフォーマンスはどれくらい変わるのか?

一般的には、パフォーマンスの高い個人を集めた方がチーム全体のパフォーマンスも上がると考えられています。
一方で、ごくごく普通の会社にもかかわらず、とんでもない成果を出すような光景を目にすることもあります。
果たして、メンバーによりチームのパフォーマンスはどれくらい変わるのでしょうか?

いわゆる集団的知性

いわゆる集団的知性、という言葉があり、本稿はこの集団的知性とメンバー構成について考えたいと思います

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E7%9F%A5%E6%80%A7

簡単に集団的知性とは?について、Wikipediaから引用します。

集団的知性(Collective Intelligence、CI)は、多くの個人の協力と競争の中から、その集団自体に知能、精神が存在するかのように見える知性である。
(中略)
Atlee は集団的知性を「集団思考(集団浅慮)や個人の認知バイアスに打ち勝って集団が協調し、より高い知的能力を発揮するため」のものと主張している。
(中略)
集団的知性研究のパイオニアである George Por は、集団的知性現象を「協調と革新を通してより高次の複雑な思考、問題解決、統合を勝ち取りえる、人類コミュニティの能力」と定義している。
Tom Atlee と George Por は「集団的知性は、関心をひとつに集中し、適切な行動を選択するための基準を形成する能力がある」と述べている。
(略)

なんだか小難しい感じですが、ようは「チームが協調して、ある目標の達成に向かって適切に邁進し、課題を解決していく、集団としての能力」のことと言えるでしょう。

メンバー構成と集団的知性の研究

こちらの記事である研究が紹介されています。

https://www.linkedin.com/pulse/why-some-teams-smarter-than-others-nicholas-mohnacky

複数大学の研究チームが、約200を超えるグループ(チーム)に、様々な種類の課題を与えて、そのパフォーマンスを測定したとのこと。

その結果、ある種の課題をうまく遂行できるチームは、別の課題についても同じようにうまく遂行できる傾向が示されたそうです。

そして、そういうチームの特性として集団的知性が高いという特徴(因子)があることが示されました。

研究では、IQが高い人が入っているチームが、必ずしも集団的知性も高いというわけではないことも示しました。

会社組織においてどのようなメンバーを集めるか?

ビジネスをやっている方にとって、この知見をどう活用しようか、悩む所でしょう。

一般的には「頭が良い人」の方が、パフォーマンスを発揮できると思われていますし、現実問題として、そのように見えるはずです。

一方で、研究では、必ずしもそうでは無いことを示しています。

研究は次の要素が集団的知性を高める因子だ、としています。

  • コミュニケーションが多いこと
  • 女性がいる多様なチームであること
  • 感情知能が高い人がいること(特にここが重要だとしている)

感情知能は、「心の知能とは、自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能を指す。 」と定義されています。
ようは、自分の感情を適切に把握しコントロールできたり、人の気持ちについても精度高く察することができること、というものです。
EQ、と言われるものと近しいと考えても良いでしょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E3%81%AE%E7%9F%A5%E8%83%BD%E6%8C%87%E6%95%B0

IQが高すぎるとマネジメント上の失敗が起きるリスクが高まる、という研究もあります。

ビジネスにおいては、職場は特定のスタープレイヤーに依存しがちですし、トップダウン型のマネジメントも広く見られます。
集団の知性や個人の感情より、個々人のパフォーマンスの方が優先されるのが会社組織のあるあるなのですが、改めて感情知能、もしくはEQについて見なおしてみるのも良いかもしれません。

(もちろん、IQも高い方が良い、両方兼ね備えているのがベストです。)

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