ベンチャー企業が求める資質「カオス耐性」とは?

IPO・バリュエーション

ベンチャー界隈に生息していると「カオス耐性」とう言葉をちらほら聞きます。
語呂感から何となく言わんとしていることはわかるレベルの意味合いの「カオス耐性」ですが、ベンチャー企業が求める資質として頻繁に取り上げられています。
ここではこの「カオス耐性」について整理してみることにします。

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「カオス耐性」はベンチャー企業から求められている

ベンチャー企業は、顧客基盤も組織体制も整っていない、人もお金も無い無いだらけの組織である場合がほとんどです。
つまり「カオスな状態」にあります。
そのため、世の中のチャレンジをしている企業や経営者は、自分たちの会社が成長していくために必要な人材として「カオス耐性」の高い人を求めています。
これは私が勝手に言っているのではなく、たとえばここや、ここここなど、複数の事例で語られています。

また、中には下記のような求人要件を見ることもあります。

必要スキル
【必須】
・コンサルティングファーム(戦略、会計、リスク、業務コンサル等)にてマネジメントのご経験がある方
・事業会社等にて新規事業立ち上げのご経験かつマネジメントのご経験がある方
【歓迎】
・海外交渉レベルの英語力
カオス耐性のある方

つまり「カオス耐性」を持っている方は、ベンチャー適正が高い(はずだ)ということです。
では、この「カオス耐性」とは何でしょうか?
もう少し具体的に言語化を行っていきます。

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カオス耐性とは具体的になにか?

各所で語られている「カオス耐性」や私自身の経験・考え方をまとめると、下記のように言語化できると考えました。

成果(もしくは成長)に対して貪欲であること
①圧倒的な成果を出す
②過去の事例に囚われない
③成果に天井を設けない
自発的にかつ主体的に動けること
④仕事を積極的に奪う
⑤良い質問をする
⑥不満は具体的に解決・改善する
会社のことを自分事化できること
⑦仕事に対して責任を持つ(仕事が終わるまで仕事を終えない)
⑧自分で稼ぐマインドを持つ
⑨社長(創業者)はスーパーマンでは無いと知る

一つ一つ具体的に見ていきます。

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①圧倒的な成果を出す

ベンチャーという言葉ですが冒険(アドベンチャー)という意味を持っています。未知なる世界への冒険ですね。
顧客基盤は大体において脆弱ですし、社内の体制も大体において整っていません。
非常に多くの領域において「0(ゼロ)」から始め無ければいけません。

ようは、非常に倒産するリスクが高いです。

そのため、何にも優先して、顧客を獲得すること、事業運営に必要な資金をかき集めることが必要になってきます。
知名度0の会社が、この必要なことをやるにあたって、圧倒的な成果を出すことが必要です。
大企業に勤めている社員が出すよりも多くの成果です。

また、この成果を出すにあたって、世の中の動き、特に競合の動きには目を光らせなければいけません。
成果というものは絶対性もありつつ、相対性もあるからです。

もうこの世の中、100%完全に「今までに無い新しいビジネス」なんてものは存在しません(解釈にもよりますが)。
つまり、必ず競合がいる、ということです。
自分たちにとって120%の成果を出せたとしても、競合が140%の成果をだしたら、相対的に85%の成果になってしまいます。
競合が140%を成果を出したのならば、自分たちはそれ以上の成果を出していくことが必要です。

②過去の事例に囚われない

これは主に2つの観点があります。
1つは世の中の変化は速すぎるし、今やっていることが正しいとは限らない、という点です。
もう1つは前の所属組織のやり方や世の中の常識が、今の組織で正しいとは限らない、という点です。

ベンチャー企業は新しいことにチャレンジをしているので、当然にそのやり方も日々模索しながらになります。
一度こうだ!と決めたことをやり切るのは大事なのですが、朝令暮改も同時に大事になってきます。
それは冒頭にも書いた通り、世の中の変化が速すぎること、一度こうだと決めたことが正しいとは限らないからです。

そして、別の組織のベストプラクティスですが、それが今の組織にも適合するかどうか。
これはやってみなければわからない点があるので、とりあえずトライしてみるのは良いのですが、固執するのは非常に危険です。
ベストプラクティス、というのは人数規模や業種などに限らず、内部要因・外部要因含め、様々な環境要因によって成り立っている場合がほぼ全てです。
そのため、以前の組織のやり方が、今いる組織にとって良いとは限りません。

常識ですが、これは言うまでも無いかもしれません。
新しいことをやる、というのはつまりは非常識なことをやる、ということです。
常識に染まっていては、新しいものは生み出せません。
良い意味での非常識は推奨していきましょう。
ただし勘違いしてはいけないのは、この社会に生きる人間や働く上での常識、というものは当然に持っておくべきです。
ここで言っている良い非常識の意味をなんとなくでもわからない人は、ベンチャー適正が無いので、素直に会社を去りましょう。

③成果に天井を設けない

ベンチャー企業はありとあらゆるリソースが限られています。
そのため、あなたの成果や成長の限界が、会社組織の限界値となります。
つまり、自分自身のだした成果や成長に対して、決して満足をしてはいけない、ということです。
常に高い理想をもって、昨日より今日、今日より明日、というマインドでより高い成果を、より高い水準への成長を目指しましょう。

大企業はリソースもあり仕組みも整っており、商品力・知名度・ブランド力も非常に高いものを持っています。
そしてベンチャー企業は、大企業が持っているものを持っていません。
当たり前に想定できる水準の成果、成長では到底大企業には太刀打ちできません。
大企業が今まで提供してきた既存のサービスに対する期待値を上回る、圧倒的な成果を出し、成長し続ければ、いつかは自分たちが大企業に成長できるはずです。

大企業も最初は0からスタートしたベンチャー企業だったはずです。
そのベンチャー企業には、常に高い水準で成果を出し成長し続けた、「誰か」がいたからこそ、今の大企業が存在するはずです。
この「誰か」にあなたがなるのです。

これは一見難しいように見えますが、言うほど難しくは無いと考えています。
性格の悪い書き方に読めてしまうかもしれませんが、ちょっと考えてみて下さい。
大企業に勤めている人たちがどんな人たちか?



そう、普通の人たちです。

あなたも普通の人ですが、大企業に勤めている人も普通の人たちです。
では、勝負をわけるのは何でしょうか?
それは掲げるミッション・ビジョンに対する強い想いであり、圧倒的な成果を望む気持ちであり、常に成長したいという貪欲な姿勢だと考えます。
あなたの想いと行動が本物であるのならば、たとえ無い無いづくしのベンチャー企業であったとしても、大企業と対等に渡り合えるはずです。

④仕事を積極的に奪う

ベンチャー組織はリソースが限られているのにも関わらず、やらなければいけないことが膨大にあります。
経営者や先輩社員たちは当然にそのやるべきことに忙殺されています。
大体の場合において、新しいメンバーに手とり足とり、仕事を教えている余裕は無いでしょう。
もし、言われたこと、与えられたことしかやれない指示待ちの姿勢であるならば、すぐに改善するか、会社を去りましょう。

ベンチャー企業においては、自分がやるべきことは自分自身で決める姿勢が大事です。
そしてリソースは限られているので、適切に優先順位をつけて、抜け漏れないようにToDoを自分で管理し、効率的なやり方を自分自身で模索できる能力も必要です。
つまり、「自発的」にかつ「主体的」に動く、ということです。
これらは、あなたの価値を示すものになるでしょう。

難しく聞こえるかもしれませんが、これも思うほど難しくないはずです。
経営者や先輩社員は多種多様な仕事に忙殺されていて、誰かが自分の仕事を奪ってくれるのを、心待ちにしているはずです。
そして、経営者や先輩社員が抱えている仕事は、必ずしも彼ら彼女らが得意ではない仕事が含まれているはずです。
その組織に採用された、ということは何かしらの強みや得意な領域があるからこそだと思います。
その自分自身の強みや得意な領域で、経営者や先輩社員が抱えている仕事を奪ってしまえばいいのです。
非常に喜ばれるでしょう。

⑤良い質問をする

自発的にかつ主体的に動き、経営者や先輩社員の仕事を奪うのは大事ですが、奪い方には注意が必要です。
引継の話です。
忙殺されている人から仕事をとるにせよ、何かしらの引継は必要です。
この際、具体のHowを相手に求めてはいけません。
相手にしてみれば、その具体のHowを説明して引き継いでいる時間があるのならば、自分でやった方が速いからです。

中には懇切丁寧に具体のHow説明してくれて、寄り添ってくれる方もいるかもしれませんが、それに期待してはいけません。
ベンチャー企業に勤めている方々は若い方が多く、大体の場合においてマネジメント経験や人を教育してきた経験が乏しいことが多いです。
ですので、愚かな質問(具体のHow)を投げかけると、冷たく扱われてしまうでしょう。

経営者や先輩社員から聞くのは、大枠の考え方や方針にとどめ、その後は過去の資料や成果物を自分自身でしっかり読み込み、「どうあるべきか?どうしたいか?そしてそれらのためにどうすればよいか?」を自分の頭で考えましょう。

その上で、この自分の頭で考えた「どうあるべきか?どうしたいか?そしてそれらのためにどうすればよいか?」を経営者や先輩社員にぶつければよいのです。
これは良い質問ですので、きっと良い壁打ち相手になってくれるはずです。
高い評価ももらえるでしょう。

⑥不満は具体的に解決・改善する

基本的に不満を持っていない人はいないと思います。
そして、ベンチャー組織のような所ですと、人より不満を多く持ってしまう場面も多いでしょう。
それは決して悪いことではありません。
不満は発明や改善の母だからです。

ようは、その不満を不満のまま終わらせるのでは無く、具体的なものとして言語化して、解決するなり、改善するなり、逆に無視をするなりをするべきだ、ということです。
文句を言うのは別に悪いことでは無いですが、生産性は無いです。
もう一度書きますが、不満があるのならば積極的に、解決するなり、改善するなり、スルーするなり、をしましょう。

ベンチャー組織は至らないことが大勢あるはずで、それは仕方が無いことです。
この点を「宝の山」と見えなければ、良い悪いでは無くアンフィットですので、会社を去るべきでしょう。

もう一点付け加えると、ベンチャー企業の経営者(創業者)は大なり小なり変な人です。
変な人でなければ、わざわざ新しいことをやろうとなんてしないでしょう。
また、経営者というものは非常に忙しいです。
つまり、大体において経営者の考えていることなんて簡単には理解できないですし、経営者も社員に理解してもらえるようコミュニケーションを取ることが難しいです。
ですので、もし、経営者の考えていることがわからなくなったり、方針が納得できないものだったら、積極的に聞くべきでしょう。
経営者という生き物は、大なり小なり自分のやっていることや考えていることを他者に知ってもらいたいので、聞けば忙しい中でも時間を作ってくれるはずです。
もし、そういうことに真剣で無い経営者でしたら、素直に会社を去るのも選択肢でしょう。

⑦仕事に対して責任を持つ(仕事が終わるまで仕事を終えない)

ベンチャー企業の従業員数は、大体において少数です。
そのため、一人が担当する範囲や業務量は、大企業に比較して、相対的にインパクトが大きいです。

何を言いたいのかというと、何かしらの都合で仕事を休んだり、定時に帰りたい・オンオフを切り替えて土日は仕事のことを考えたくないというマインドを持ったりすると、会社に与える影響が大きくなります。

これは何も滅私奉公をせよとか、昨今の働き方改革に逆行する動きをせよとか、そのようなことを言っているわけではありません。
ベンチャーというものは不安定なものなので、大口の受注が突然はいったり、逆に重要顧客の解約などがはいったりします。
土日や深夜にトラブルが発生して、緊急対応をしなければならない状況も、限られたリソースの中で発生したりするでしょう。
当たり前ですが、ベンチャー企業で突然に発生した何かをスルーし続けると、倒産します。
ですので、ベンチャー企業でがっつり働いている人たちは、土日も関係なく夜遅くまで働いているのです。

休むなら休む、早く帰るなら早く帰るで、何かが発生したとしても大丈夫な体制や仕組みを構築する必要があります。
しかし、大体においてそれは難しいです。

最近は、大企業と変わらない、場合によっては大企業より労働環境が良好なベンチャー企業も増えては来ていますが、そこに期待をしない方が良いでしょう。
休みたい、早く帰りたい、という考えを持っている人は、能力不足だとか悪だとか言っているわけではなく、単純にアンフィットなだけですので、それが可能な大企業(希望とフィットする企業)に行くべきです。

⑧自分で稼ぐマインドを持つ

何度も書きますが、ベンチャー企業はリソースが限られています。
顧客基盤も不安定なので、売上も大企業に比較すれば、吹けば飛ぶものでしょう。
「誰かがやってくれる」的なマインドは極めて危険であり、組織にとって有害です。
自分で自分の食い扶持を稼ぐ位の気持ちが欲しいです。

これは何も、セールス担当で無い人間も案件をとってこい、という話ではありません。
各人に任せられた、もしくは自分自身の信念に基づいてやるべきだ!と思ったことを、やり切りましょう、高い水準で完遂しましょう、ということです。

アニメの話なのですが、好きな言葉があります。

「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。」

攻殻機動隊 S.A.C. 公安9課 荒巻大輔のセリフ

これこそがベンチャー企業が求めるハイパフォーマンス集団のマインドであると考えます。

そしてもう1点。
会社は出資者(株主)によって、その存在が成り立っています。
つまり、誰かがお金を払っているのです。
この誰かは、創業者であったり、シードステージの時に支援するエンジェル投資家、ある程度母体ができてきた時に出資してくれるベンチャーキャピタル(VC)、シナジー効果を求める事業会社などです。
会社はストレートに言えば、出資者(株主)のものです。
社員や顧客のものではありません。
(勘違いが無いように補足すると、会社は社員・顧客・社会などの取り巻く全ての人たちのものである、というマインドを持つのは大事です。)
出資者(株主)の期待に応える責務が企業にはあります。
もしあなたが、より高い次元での仕事を望むのであるならば、この点も意識する必要があるでしょう。

⑨社長(創業者)はスーパーマンでは無いと知る

日本のベンチャーエコノミクスの成長は著しく、非常に若い方たちが果敢にチャレンジをするようになりました。
ベンチャー企業の経営者には、20代30代の方も大勢いらっしゃいます。
中には、どこかの企業に就職することなく、大学などなどを卒業後、起業している方もいらっしゃいます。
そのチャレンジ精神は非常に尊敬に値します。

ここで大事なのは、彼らも普通の人たちである、という点です。
これは彼らを卑下するような話ではありません。
普通の人が、「こういう世の中を実現したい!」という熱い想いをもって、リスクを承知の上でチャレンジをする。
この想いに共感した、同じく普通の人たちが集ってベンチャー企業ができあがります。
ここに(組織運営上の関係は別として)上下関係は無いはずです。
同じ想いを持つ同士として、共に戦っていきたい、という考えを持つのが良いでしょう。

そして、経営者は決して万能な存在ではありません。
わからないことだらけでしょうし、日々悩み、会社の行く末がどうなるか不安で一杯なはずです。
当たり前なのですが、20代30代の若者がどんなに努力していたって、その知識や経験がどこの誰よりも優れているということがあるはずがありません。
だからこそあなたがいるのです。
あなたの強みや得意なことの何か一部は、経営者より優れている所があるはずです。
その強みや得意なことでもって会社に貢献し、自分の想いを叶え、ミッション・ビジョンを実現していく、これこそがアドベンチャー(冒険)だと、私は考えます。

最後に

さて、これまで「カオス耐性」を良しとする前提で書いてきましたが、これは一つの価値観です。
一人ひとり異なる価値観を持っているはずで、喜びのありかた、幸せのありかたは異なるはずです。
もし、「カオス耐性」をもっているのならばチャレンジをすることは、あなたに幸せをもたらすでしょう。
逆に、憧れだけでベンチャー企業に飛び込むのならば、それはきっと双方にとって不幸な結果につながるはずです。
このテキストが誰かにとっての指針になれば幸いです。

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