ジャスダック上場の「Nuts」が倒産、状況を解説

IPO・バリュエーション

ジャスダックに上場しているNutsが破産手続きに入ったという方が出ました。
私もはじめて聞いた会社で、コロナ倒産?とも思いましたが、全然違く、不正会計案件のようです。
状況を見ていきます。

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今年2社目の上場企業倒産、ジャスダック上場の「Nuts」

とりあえず報道を見てみましょう。

ジャスダック上場のアミューズメント事業「Nuts(ナッツ)」(東京)は17日までに、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けたと発表した。負債総額は約5億1000万円。上場企業の倒産は、5月のレナウンに次ぎ今年2社目。

時事ドットコム「ジャスダック上場のNuts破産 偽計で強制調査、負債5億円」より

なんでも、赤字が続いている中、不正会計を行い、諸々指摘を受けている中の倒産、という事です。

(存じていなかったのですが、トップボーイという名前でゲーム販売店をチェーン展開していた時期があったようです。その後、パチンコ機、パチスロ機の販売に転換。)

帝国データバンクまとめがまとまってます。
濃厚です。

こうしたなか、2016年3月期以降、単体では4期連続で当期純損失を計上、2019年3月期の年売上高は約1億2100万円に減少していた。
2020年2月には証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反(偽計)の嫌疑で強制調査に入り、さらに同年4月には監査法人による財務諸表監査の過程で、当社の現金が帳簿上は約8億900万円計上されていたのに対し実際は約50万円しかない事実が発覚、監査法人との監査契約が解除される事態となった。
8月13日に別の監査法人を選任、9月末までに2020年3月期の有価証券報告書を提出し定時株主総会を開催する予定だったが、現預金が枯渇、監査報酬の一部を支払うことが出来ず、9月7日に監査契約の解除通知を受け、有価証券報告書を提出出来ない状況となっていた。
上場維持、事業継続の見通しが立たないことから、当社取締役からの破産手続き開始の申し立てを受け、今回の措置となった。

帝国データバンクより

ざっくりまとめると。

偽計の疑いで強制捜査(調査委員会も設立)

内部統制上の致命的なエラー、からの監査法人との監査契約解除(有報提出できず)

監査法人を変更も資金が枯渇し監査報酬を払えず契約解除(結局、開示書類提出できず)

破産申請(今ココ)

ですね。
概要は、帝国データバンク報道の通りなのですが、Nuts社の開示資料を見ながら、状況を見ていきます。

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Nuts社の業績(どこまで真かは不明)

まずは連結推移です。
有価証券報告書は2019年3月期までしか開示されていないので、それをベースに見てみます。

Nuts社のIRページはこちらです(いつまで掲載されているかは不明です)。

第41期から連結会社になったようなので、その前までの数字は単体に掲載されています。
単体はこちらです。
連結と単体でほぼほぼ業績イコールなので、こちらをみれば良いでしょう。

この通り、4期連続で、しかも会社規模を考えたら尋常じゃない赤字が続いています。

従業員数が1桁台なのは、気になりますが、ここで突っ込んでも仕方が無いのでスルーします。

こういう状況でも増資対応してくれる株主が誰かしらいるのが不思議ですね(本当に不思議ですね!)。
自己資本比率が2019年3月期段階で60%を超えています。

なお、2019年3月までは、一定数字は正しいはずです。
というのも監査法人による監査の手続で、残高確認というものがあり、銀行残高は間違いなく確認がされます。
株主名簿も管理代行の信託会社資料で確認しており、業績数字は何かエラーがあるかもしれませんが、現預金残高や株式まわりは、まぁ正確性が高いと考えられます。

この後の数字は真実性が全く保証できません。
四半期決算は監査法人によるレビュー手続き、ようは簡易的な監査にとどまるため、数字の正確性が一気に保証できなくなります(それでも通常はレビュー手続きで当たり前に問題が無い)。

最後に開示されている決算が2020年3月期第3四半期、つまり2019年12月末の数字です。
(真ん中の数字が2020年3月期の数字です。)

現預金もこちらの通り、8億円が計上されています。
この数字が大きく誤っていた、という事ですね。

なお、2020年3月期は、数字上、売上高が急回復していっている期だったので、株主の期待は大きかったのでは無いでしょうか?

株価も下落が続いていた中、100円台まで回復をしていました(2019年12月末では93円でしたが)。

Google市場概説より
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う~ん。。。

と、これまでは数字の概観です。
次にこれを見てみて下さい。

同社のPLですが、1億円台の売上高で、8億円とか9億円とかの赤字を出していて、10人にも満たない従業員、と何人かの役員。

これで、1億円台の交際費を使用しており、加えて役員報酬が1億7千万円(2018年3月期)、2億3千万円(2019年3月期)と尋常じゃない数字が計上されています。
支払手数料の金額もヤバイですね(なんの手数料なんでしょうね?)。

(もうこれだけ見て、十分に真っ黒だと感じます。いやまぁ、数字は真っ赤なんですけれどね。表面的な数字しかみない投資家ならともかく、深く資料を読み込む方にとっては、明らかにヤバいね、というのが伝わります。完全にマネーゲームですね。)

取締役と大株主の推移を見てみる

ここで取締役について見てみましょう。
2019年3月期(6月株主総会後)のものですね。

太字の森田氏が2016年6月の総会で就任された代取で、佐々木氏以外は、この時期に就任された役員です。

代表取締役社長 森田 浩章
取締役 佐々木 浩司
取締役 中村 健司
取締役 毛利 努
取締役 阿久津 明
取締役(監査等委員) 粂川 勲
取締役(監査等委員) 西片 大
取締役(監査等委員) 松尾 慎祐

次に大株主です。

代表取締役社長である森田氏が大株主にあがっています。
こちら履歴を見ると、途中から入ってきた大株主のようで、2016年6月の就任以降、事実上、この森田氏がNuts社の実験を握って、経営の舵取りを行ってきた形になります。

これ(2019年3月末)が、こうなって(2020年9月末:この数字は正しいはず)。

こなります(破産手続開始に関する資料内にある最終情報)。

当時、代表取締役社長であった、森田 浩章氏の株式、5,475千株の記載が無くなっています。

ちなみに、この株式5,475千株を2019年7月~2020年2月頃の間に売却していたとしたら、5億円位のCashになるはずですね。

森田氏の所有割合は10%を切っていたため、主要株主の異動にもあたらず、情報が開示されていません。
いつ、何が起きたのでしょう。
5,475千株はどこに行ってしまったのでしょうね?

Nuts社では何が起きた?

ここから先は確かな情報が無く、推測が大いに混じってしまうのですが。

下記外部サイトにて、諸々、断片情報を元にした推測ベースの解説があります。
(どこまで正かは知らないですよ。ただ、過去の経緯含めて推理がされているので、参考になります。)

そこの最後の一文。

貸付金が増資資金への還流し、さらに調達した資金が引受先に流れている――世間ではそれを架空増資という――可能性が濃厚である。当サイトは10月7日、Nutsに取材を申し込んだが、同社から期日までに回答がなかった。

財務諸表の数字の作りが、どう考えたっておかしいので、どこまで真実かは果たして不明ですが、一定の事実があるように思えます。

また、こちら。
(もう、丸々掲載します。)

これ、どういう事かと言うと、2019年3月期に業績回復につながる大施策として打ち出していた、医療施設の開設予定があったと。
それが、施設への不法侵入が発覚し、それで医療施設の開設を延期。
2019年3月期の数字達成が「未定」と修正されました。

結局、(情報開示上は)当該施設が2019年5月にオープン(どこにオープンしたのかは、情報の記載がありません)。
継続して会員が増えていますよ、売上が立っていますよ、としていましたが(月次の開示があった)、2019年3月期の数字の作り方、計画の公表の仕方含めて、この部分が偽計とされたのでしょう。

極めて少人数の会社で、社員たちはおそらく事情を大体把握していたはずです。
調べていると、元々各所から「大丈夫か?」と言われていた会社のようで、いよいよ取引所サイドも重い腰をあげたのでしょう。

なお、全てのキーは2016年1月に入社し、同6月に代取に就任した、大株主だった(過去形)、こちらの方が握っているはずです。
(冒頭の業績推移と中段の経費の使い方も改めて見てみて下さい。)


開示情報と散らばっている断片情報しか入手し、検証できない立場ですが。
本件は、単純に上場会社が一つ倒産した、という事実にとどまらず、刑事事件に発展する可能性があります。
今後、各登場人物が、どういう人達だったのか、どのような話が飛び出てくるのか、そして、どう発展したとしても、もう驚かないだけの表面情報が満載です。

事実は一切不明ですが、本件推移次第で、また無駄に監査手続、IPO審査の負担が増える可能性があります。

なんともまぁ、残念な案件です。

本件は、これ以上追っても、ゴシップ風にしかならないと思うので、もう追いかけません。
ぐちゃぐちゃしすぎていて、正直、キレイに整理するのも大変ですし。
報道だけ追いかける事にします。

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