バリュエーションにおける用語で「プレ」と「ポスト」という言葉が出てきます。
わかっている人同士では何気なく使いますが、わかっていない人にしてみれば、不可解な用語でしょう。
ここでは、バリュエーションにおけるプレとポストについて解説していきます。
バリュエーションとは?
まず、バリュエーションとは、ある企業にどれくらいの価値があるのかを示した数値のことで、つまりは時価総額のことを意味します。
時価総額が高ければ高いほど価値のある企業、という理解になります。
企業のバリュエーションは次の式で計算できます。
バリュエーション(時価総額) = 発行済株式総数 × 一株あたり株価(発行価格)
これは、非公開会社(未上場企業)であろうと、上場企業であろうと、基本的には変わりません。
上場企業の場合は、株価が明確にあるため、発行済株式数に株価をかければバリュエーションが求められます。
上場企業においては、取引所が開いている時間において、株価は常に変動しますが、非公開会社(未上場企業)においてはそうはなりません。
ある調達ラウンドを終えた場合、次の調達ラウンドが行われるまで、バリュエーションは動きません。
プレとポスト
ベンチャーファイナンスの調達ラウンド(バリュエーションタームと言う)において使う用語に「プレ」と「ポスト」という言葉があります。
プレはプレマネーバリュエーション(Pre Money Valuation)の略、
ポストはポストマネーバリュエーション(Post Money Valuation)の略となります。
それぞれ、プレバリューやポストバリュー、ないしは何度も使っているように、単純にプレとかポストのように呼ばれます。
ここでは長いので、プレ、ポストと呼びます。
プレとは
プレとは資金調達前の企業価値、つまり新規投資がなされる前の時価総額のことを指します。
(企業価値と時価総額の違いについては、ここでは端折ります。)
上記で、バリュエーションの計算式を次のように示しました。
バリュエーション(時価総額) = 発行済株式総数 × 一株あたり株価(発行価格)
この計算方法はプレの計算方法となります。
そして、一般的にバリュエーションのという言葉を使う際は、プレのことを指します。
用語の使い方が曖昧なシチュエーションにおいては、「今の数字はプレ?それともポスト?」なんて会話が出てきます。
じゃあ、なんで一般的にバリュエーションはプレのことをさすのかというと、それは企業の現在価値をもって、投資家といくら調達するのかを交渉するからです。
企業の現在価値は、DCFやマルチプルを用いて算定しますが、この算定基礎となるのが事業計画です。
事業計画は資金調達前のものになるので、それを元に算定した企業の現在価値は、プレのことをさす形になります。
ポストとは
プレが資金調達前の企業価値のことをさすのに対し、ポストは資金調達後、つまりは新規増資により、新しいお金が入った後の企業価値のことを指します。
ここでプレとポストの関係を整理すると、下記のようになります。
プレ + 新規調達額 = ポスト
プレ = 発行済株式総数 × 一株あたり株価(発行価格)
繰り返しますが、調達ラウンドにおいて、企業が投資家と交渉をするベースはプレになります。
上述の通り、DCFやマルチプルで算定した企業価値を、投資前の発行済株式総数で割ることにより、一株当たり株価、つまり「発行価格(引受価格)」が決まります。
なお、ここでの発行済株式総数ですが、潜在株式(ストックオプションですね)全ての希釈化と、種類株式すべてが普通株式に転換した前提で計算します。
整理すると、次の計算式になります。
プレ = 希釈化後発行済株式総数 × 一株あたり株価(発行価格/投資時の引受価格)
計算例
例として、下記の条件でプレとポストを計算してみます。
プレ:50億円
発行済株式総数:10,000株
経営メンバーの持株比率:50%(5,000株)
引受価格 = 50億円 ÷ 10,000株 = 500,000円/株
調達額:10億円
新規の発行株式数 = 10億円 ÷ 500,000円/株 = 2,000株
ポスト:60億円
発行済株式総数:12,000株
経営メンバーの持株比率:41.7%(5,000株)
こうして考えると、結構簡単と感じるでしょう。
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