マネージャーとはどうあるべきか?~チームの運用と部下の育成~

マネジメント・リーダーシップ

マネージャーに就任したあなた。
チームの重要課題が明確になり、方針も策定し、あとは実際に日々のチーム運営で成果を出すだけ。
というのに不安で一杯で仕方ありません。

マネージャー教育というものがほとんど行われないこの日本において、そんなマネージャーに向けて、マネージャーとはどうあるべきか?について解説していきます。

前半後半にわけて書いていき、今回は後半「チームの運用と部下の育成」についてです。

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忙しい人向けまとめ

  • 安心感は「成果をだすことに集中できる環境」を作る
  • 褒める時は人前で、叱る時は1対1で
  • コーチングとティーチングは適切に使い分ける
  • 全員に高い人事評価をつけられるように、逆算でチーム運営を行う
  • 1on1はツールなので、絶対視しない
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前回の概要

  • マネージャーの役割はチーム全体で「成果を出すこと」
  • マネージャーというポジションは多くの情報が集約される「砂時計のくびれの部分」、情報伝達のキーパーソンと言える
  • 「部下に尽くす」と自己変革(自己洗脳)を行うのが重要
  • 着任後、短い時間でチームをグリップする、グリップに時間をかけるとチーム運営の難易度があがっていく

マネージャーというものの例えについて、前回は「砂時計のくびれの部分」のようなものだと例えました。
マネージャーの所で、経営の情報と、現場の情報が交差する、情報伝達のキーパーソンとなるからです。

そして、マネージャーの最大の役割は、チームとして「成果をだす」ことだと書きました。
そのため副次的な役割として、次の役割を担う形になります。

  • 業績のコントロール
     チームの方針の策定
     策定された方針の遂行状況のチェック
  • 砂時計のくびれの機能
     経営・部長への報告
     部下への方針と情報の伝達
  • チームの運用と部下の育成
     部下の状態の把握と健康・モチベーション維持
     部下の育成、パフォーマンスの引き出し・引き上げ
  • 社内外との調整
     他部署や外部との交渉・政治

今回は、この役割のうち「チームの運用と部下の育成」についてです。

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チームの運用と部下の育成

成果を長期的に出し続けていくために必要なことが、チームの運用と部下の育成がです。
このチームの運用と部下の育成について、次の点でポイントを解説していきます。

  • 安心感
  • 褒めと叱り
  • コーチングとティーチング
  • 人事評価と1on1

チームメンバーに安心感をもってもらう

前回の記事で書いた通り、マネージャーに就任した際には「自己変革」が重要になります。
それは、マネージャーは、チームのメンバーにとっては影響力が大きいポジションだからです。
管理職としては最下層に位置するポジションですが、「ノブリス・オブリージュ」の精神を、自主的にもった方がよい、と書きました。

そして、マネージャーがもつ影響力はチームの雰囲気も左右します。
成果をだすことに集中できる環境を作ることを、仕事の一つとして捉えましょう。
そして、成果をだすことに集中できる環境とは、「安心感」がある環境のことを指します。

安心感のある環境のポイントは次の3つです。

  • 明瞭明確な指示・伝達
  • 圧倒的な責任感
  • どっしりとした態度

仕事そのものに対しては、部下にその意味・意義を示し、やりがいをもってもらえるようにすることが必要です。
指示については、曖昧に伝えず、明確に言語化し、わかりやすく伝える方がチーム運営が円滑に進みます。
やるべきことが明確な状態は、迷いや不安を減らします。

失敗に関しても、チームや部下の失敗は、すべて自分の責任として捉えるようにしましょう。
不幸にも、働きの悪い部下がいて、明確にその人の責任であったとしてもです。
「何かおきてもマネージャーに守ってもらえる」という状態は、明確にメンバーに安心感を与えます。
ただし、失敗した人を放置するような「ぬるま湯」環境を作ることと混同してはいけません。
「ぬるま湯」は、最終的にはマネージャーに対する不信を招き、チームを崩壊させます。
ようは、守ることと叱ることは、両立できるということです。
褒め方・叱り方に関しては、次項で触れます。

また、辛いことがあったとしても一々、動揺していてはいけません。
マネージャーの気持ちの浮き沈みは、部下にも伝わります。
不安がっている人の指示を、安心して遂行できるでしょうか?
常に疲労を顔ににじませた人が、出世して社会に貢献したいと思うでしょうか?
あくまでも自分は成果を出すための装置だと考え、気持ちを常にフラットに保つよう、努めましょう。
常にフラットを自然体にでき、どっしりとしていれば、チームメンバーは安心します。

なお、ここで言っている雰囲気は、「成果をだすことに集中できる環境」のことをいっており、「雰囲気の良し悪し」については書いていません。
組織の雰囲気の良し悪しと業績には相関性がないことが、各種の研究でわかっています。
(ギスギスしていても、ひたすらに成果を求める環境であれば、業績向上には確かにつながりやすい。)
ですので、無理に仲良しこよしの環境を作る必要はありません。
ただ、せっかく同じ働くのであれば、雰囲気が良い方がいいのは確かなはずなので、どうせ「成果をだすことに集中できる環境」を作るのであれば、ついでに雰囲気も良くするように努めると良いでしょう。

褒めと叱り

褒められると人は喜び、叱られると辛い思いをする、のは説明をするまでもないでしょう。

とりあえず先に一番重要なことを書くと、「褒める時は人前で、叱る時は1対1で」です。
人前で褒められれば自尊心は高まりますし、逆に人前で叱られれば自尊心は傷つきます。

さて、成果を出していても、何も伝えられなければモチベーションは自然と低下していきます。
部下の能力や出した成果にあわせて、褒めていくことが必要です。
この際に、自分自身を尺度にしてはいけません。
あくまでもその人を基準に褒め方を考える必要があります。

過度な褒めは、薄っぺらさを招いてしまいますが、仮にそうなったとしても実害は少なく、褒めの難易度はまだ低いといえます。
褒められること自体は人を喜ばせるからで、難しいのは叱り方です。

叱りは、人によっては人格攻撃と捉えてしまうこともあり、大切なことであっても全く伝わらない場合があります。
人は基本的に変化を恐れる生き物なので、変えようとする圧力には自然と抵抗してしまいます。
自ら、自分を変えるような促しが必要です。
例えば、マネージャー本人の失敗談などを交えて、その叱りの対象について変化しないことのリスクを理解してもらうなどの工夫が考えられます。
ただし、これも人によって工夫の仕方は考えなければいけません。
「自分の失敗談を語る」というテクニックを知っていて、それを小賢しいと思う部下であれば、かえって反発を招く場合もあるからです。
どうすりゃいいねん。

ひたすら経験を積んでいくしかない、というのが一つの答えですが、比較的汎用性の高い叱り方のポイントはあります。
それは次の4つです。

  1. 事実関係の確認:動機が正しいミスであれば問題なく、そのミスについて部下に考えさせる
  2. 問題に至った原因の究明をさせる(責任追及は別の場所でやる、もしくは割り切ってやらない)
  3. それでも気がつかないのなら直接原因を伝える
  4. 最後に感情のフォローアップをする

コーチングとティーチング

仕事ができる部下を伸ばすのも大事ですが、パフォーマンスが低い部下を引き上げる方が、チーム全体の成果にはつながりやすいです。
そこで、コーチングとティーチングという手法が登場してきます。

コーチングとは、すでに対象者がもっているものを引き出すサポートのことで、
ティーチングとは、対象者がもっていないものを与えるサポートのことです。

つまり、相手のスキルやマインドセットに応じて、コーチングとティーチングを使い分ける必要があります。

スキル水準が低い人には、ティーチングが必須です。
世の中にはコーチングの書籍が多数あり、コーチングの習得に熱をあげるマネージャーも多いのですが、コーチングが適切に機能するとは限らない事は覚えておかねばなりません。
スキル水準が低い人に、コーチングをしても意味がないからです。
本人の中に、引き出すだけのスキルが無いのならば、なにも引き出せないのは想像すればわかるでしょう。

ある程度のスキル・経験があり、自走できる人はコーチングが機能するでしょう。
コーチングの心構えと禁止事項について、3つずつ示しておきます。

3つの心構え

  • 価値を認め、可能性を信じる
  • 秘密を守り、信頼を築く
  • コーチングですべてが解決できると思わない

3つの禁止事項

  • アドバイスや指示、提案
  • YES/NOで答えられる質問
  • 非難に聞こえる「なぜ?」という投げかけ

人事評価について

人事評価のそもそも論なのですが、全員に高い評価をつけられるようにチームを運営していくことが重要です。
つまり、誰かに対して低い人事評価を行う、ということ自体がマネージャーの責任なのです。
高い人事評価がつけられるよう、逆算でのチーム運営を行わなければなりません。

その、そもそも論がある上で書いていくと、人事評価の要諦は、あくまでも成果を基準に考えることです。
成果は、これまで出してきた成果と、これから出すであろう成果の二軸で考えます。

後者のこれから出すであろう成果の期待値が大きいメンバーは昇格させます。
部下の昇格に全力を尽くすのはマネージャーの役割の一つです。

人事評価の際に重要なのは、好き嫌いで評価しないという点です。
客観的に、自分の感情をおしころして判断しなければなりません。
好き嫌いでの評価は、上述した「安心感」の毀損を招き、信頼を失い、チームを崩壊させていきます。
また、明確に失敗をした部下に対しても、下手な温情は不要です。
下手な温情は部下の成長機会を奪うことに繋がりうるからです。

低い評価をださなければいけない場合には、人事評価のタイミングでいきなり伝えるのではなく、定期的に評価に関するコミュニケーションをとり、「低い評価」に関してサインを発信していくことが必要です。
本人は頑張っていたつもりでいて、いきなり低い評価を与えられれば、びっくりしますし、マネージャーに対して恨みや不信を抱いてしまうものです。
ただし、繰り返しになりますが、下手な温情は不要です。
今後の期待を中心に話をし、低い評価を前向きに捉えられるように努めましょう。

1on1について

1on1はベンチャー界隈を中心に流行ってはいますが、絶対性のあるものではありません。
辛辣に表現するのならば、1on1は「マネージャーのコミュニケーション能力の低さを補うツール」です。

実際に、1on1は有効でしょう。
しかし、常日頃から部下のことを気にかけ、その言動を見守り、業務の進捗を確認できているのならば、実は1on1はあまり必要がありません。
部下が成果を出したらその場で褒めれば良いですし、何かやらかしたのであれば即日フィードバックすれば良いだけです。
マネージャー自身の貴重な時間的リソースを奪うことも言うまでもありません。

これらを踏まえた上で、1on1というツールが自身にとって有効だと思うのであれば、やってみれば良いと思います。
1on1はあくまでもツールですので、使い方が適切ならば、適切に機能します。
(昭和なコミュニケーションと基本一緒で、使い方を誤れば害を生みますし、相手や環境を間違えなければ適切に機能するのです。)

1on1を実施する場合、どこか個室の会議室でやる、と決めずに、ランチでもいいし、おやつの時間にカフェでコーヒーすすりながらでもいいし、飲みの場でも良いでしょう。
自分自身と、相手にとってやりやすい場所と方法を変えるのが吉です。

まとめ

前回も書きましたが、ここまで書いてきたことは「高尚」なことで、実際に難しいことばかりです。
簡単にできるのならば、誰も悩みはしませんし、苦労はしません。
しかし、やりながら、失敗しながらトライ&エラーを繰り返していかなければ、スキルも経験も身に付きません。

ですので、大事なことは「全部を完璧にやる」ことではなく、「そうあろうと努める」ことです。

努力が必ず実るとは限りませんが、実った成果の背景には必ず努力があります。
身構えすぎず、自然体に、確かな日々を積み重ねていけば、開ける世界があるはずです。

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