新型コロナウイルスによる新設住宅着工戸数への影響

統計・経済

国土交通省より、2020年4月分の新設住宅の着工戸数統計が発表されています。
2020年4月は、9年ぶりに7万戸を下回るという、非常に大きなマイナス着地になっています。
ここでは、この新設住宅着工統計について、解説していきます。

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2020年4月の新設住宅着工戸数概要

国土交通省より、2020年4月分の新設住宅の着工戸数統計が発表されています。

2020年4月の住宅着工戸数は69,162戸(前年同月比▲12.9%)で、東日本大震災があった2011年以来の9年ぶりに7万戸を下回ったとのことです。
また、10ヶ月連続のマイナスにもなっており、消費税増税により駆け込み需要の反動減に加え、コロナショックによるマイナス影響が表れた結果となりました。

新型コロナウイルスの影響については、経済影響に加え、各国各地で生産している建築資材の不足、営業活動の制限、緊急事態宣言による手続きの滞りなどがあります。

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新設住宅着工戸数統計の概観

新設住宅着工戸数統計(月別)

新設住宅統計は比較的充実しており、1965年頃より数字が取得できます。

こちらが、月別の新設住宅着工戸数推移になります。

月別新設住宅着工戸数推移(1965年~)
月別新設住宅着工戸数推移(1965年~)

このグラフを見ているとわかる通り、過去の主要な経済イベントの影響を大きく受けていることがわかります。

(参考)過去の主要な経済イベント

高度経済成長期:1954年~1970年
ニクソン・ショック:1971年
オイルショック:1973年
バブル:1985年~
消費税新設(3%):1989年
バブル崩壊(失われた30年の開始):1991年~1993年
消費税増税(3%⇒5%):1997年
ITバブル:1990年頃~2000年初期
サブプライム問題:2007年~
リーマンショック:2008年9月
東日本大震災:2011年3月
アベノミクススタート:2012年11月
消費税増税(5%⇒8%):2014年
消費税増税(8%⇒10%):2019年10月

毎年4月は床面積が大きい

さて、上記のグラフを見ていると、床面積の線が波打っていることに気が付くかと思います。

面白いなと思う所なのですが、どうやら4月(新年度のスタート月)は、1年でもっとも床面積が大きい月のようなのです。

月別の床面積(1965年~2019年の新設住宅着工の床面積加重平均)

年を改めての家を買う、という行為は、気を大きくするのかもしれませんね。

住宅種類別の概観

住宅種類別の積み上げで見てみると、実数、比率でそれぞれ次のようになります。

年別住宅種類別新設住宅着工戸数推移(1965年~)
年別住宅種類別新設住宅着工比率推移(1965年~)

長らく1,000,000戸を超える水準で推移していたものが、リーマンショックを得て大幅に下落、その後アベノミクス効果により緩やかに回復も、2回に渡る消費税増税のマイナス影響を受ける、という概観です。
これを踏まえて、この10年をばくっと見ると、ほぼほぼ横ばいで推移しているという状況ですね。

比率で見てみるとわかるのですが、1990年代中頃より一度落ち込んだ持家比率(分譲住宅含む)が高くなっており、ここ20年~30年の間で、持家神話が続いていると見えます。
日本人のマインドは、良くも悪くも、そうそう景気影響を受けない、ということなのでしょう。

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2020年4月のスコープ

4月はなぜ重要か?

さて、いくつかの経済紙では話題になりましたが、何故4月の数字は重要なのでしょうか?

それは、こちらのグラフにある通り、ある年の着工戸数は、4月の数字である程度占えるからです。

4月は決して一番着工戸数が多い月では無いのですが、概ね4月の数字をトップラインに、全体感を掴めるようなイメージになります。

過去5年(2015年~2019年)の月別着工戸数

消費税増税と新型コロナウイルスの影響

さて、冒頭の記載の通り、2020年4月の住宅着工戸数は69,162戸(前年同月比▲12.9%)と、2011年以来9年ぶりの7万戸を下回った月となりました。

なお、7万アンダーという数字は2008年のリーマンショック影響より過去にさかのぼると、1966年の69,342戸以来、約40年以上も出たことがない数字です。

着工戸数4月のみ抽出

新型コロナウイルスの影響は、ここまで甚大な影響を及ぼしているのです。
一方、空き家問題もあり、新設住宅着工の抑制も行っていかなければならないことも別観点で指摘できます。

建築業界にとっても、しばらくは非常に厳しい状況が続くと予想されます。


新型コロナウイルスの影響による持ち家ニーズの変化考察については、こちらの記事も参照ください。

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