セグウェイ、終焉の理由~生産終了、20年の歴史に幕を閉じる~

経営企画

セグウェイが生産を終了、20年の歴史に幕を閉じるとの報が出ていました。
今回は、この華々しく語られた反面、多くのネガティブな見方も存在したセンセーショナルなテック製品いついて、なぜ終焉に至ったのか、その理由を考察していきます。

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セグウェイの歴史概略

セグウェイは2001年12月に発表がされました。

ただ、発表以前からビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズといったIT業界の著名人たちから絶賛する話がでていたため、世界からの期待を集めていたプロジェクトとなっていました。

しかしながら、実際に製品として発売されたものの、経営側が期待から大きく乖離する数字(売上)しか出せませんでした。
(計画の1%未満だったとのことです。)

その後、各国で販売の努力がなされたものの、数字は振るわず、2009年には個人の投資家に、2013年に投資会社に、2015年には中国の輸送ロボット会社に売却される流れとなりました。

そして、2020年7月をもって生産を終了する形で、その歴史に幕を閉じることとなりました。

なぜセグウェイは売れなかったのでしょうか?

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セグウェイが売れなかった理由

セグウェイが売れなかった理由を結論から述べると、次の4つになります。

  • 顧客層の見誤り
  • 法のハードル
  • 危険なイメージ
  • 安価な製品の台頭

顧客層の見誤り

セグウェイの商品思想としては、「車の代替になるクリーンな移動手段」というものがありました。

ではセグウェイの製品はどのような仕様かと言うと、その速度は20Km/hにも満たないもので、価格が数十万円(60万円~100万円)もしました。

この価格帯でこの性能ならば、別に自転車でも問題がありません(自転車もクリーンですからね)。
またこの価格帯の製品を購買できる層は普段から運動を行うなど健康に気を遣う層であり、セグウェイに対するニーズが存在しません。

つまり、ターゲットとしている顧客層を完全に見誤ったのです。

結果として、購入をしたのは、警察や宅配関連での運用や、工場等での移動に対してニーズがある所に限定されてしまいました。
(toC販売を想定していたけれども、toB販売にしかつながらなかったのですね。)

法のハードル

次に法のハードルです。

販売が最初にされたアメリカでは、多くの州で公道での利用が可能である一方、他の国では公道での利用が一切できないことが珍しくありませんでした。
日本もそうで、セグウェイを日本の行動で走らせることはできません。

また、公道でなくても、その利用に関して、敷地の所有者から、セグウェイの利用者に対して利用を禁ずるなどの処置も行われ、利用できる場面が非常に限定されてしまうことが珍しくありませんでした。
関連して訴訟も行われていますが、それでも状況を打破することには繋がりませんでした。

危険なイメージ

ネガティブなイメージがついてしまったのも大きいでしょう。

2003年、アメリカの元大統領がセグウェイを利用しようとして、転倒しそうになった映像は世界中に流布し、有名になりました。

ソフトウェアの不具合も発生し、(これだけが原因でないにせよ)転倒事故や衝突事故が多発していました。
このソフトウェア不具合問題に関しては、2006年にリコール処置が行われています。

更には、2010年、セグウェイを買収した投資家の事故死もセンセーショナルに報道されました。
プライベートでの利用中、転落事故が発生してしまったのです。

移動手段を提供する商品なので、事故はつきものです。
統計的感覚で言うと、決して多いとは思わないのですが、期待値の高い商品であった反動もあり、「危ない」というイメージが定着したのです。

安価な製品の台頭

そして、最後のトドメとなったのが安価な製品の登場です。

モーター類、センサー類などの価格は年々低下しており、誰しもが類似の製品を作れる環境が整ってきました。

それにより出たのが下記のような製品です。

Amazonサイトにて「セグウェイ」で検索して出てきた類似商品

これは、Amazonで現に購入することができる製品の例です。

電動キックボードですと10万円せず、ローラースケートにモーターがついたようなものも数万円で購入ができます。

公道では走れず、走れるにしても危なかったり重かったりで制限がある。
利用できる場面は、広い公園などの限定された場所のみ。
そのような所で100万円近いお金を出して、移動の代替手段を手に入れるか?
10万円もせずに、買える別の製品があるのに。

こうして、セグウェイは市場から退場する形となったのでしょう。

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セグウェイの歴史はあるある話

この話は何も不思議な話ではありません。

技術や製品にはライフライクル、というものが存在します。
どんなエポックな技術や製品でも、導入期 – 成長期 – 成熟期 – 飽和期 – 衰退期 という流れを辿るものです。

その意味で、セグウェイの辿った歴史は決した珍しい話では無く、あるある話なのです。

逆に考えると、20年もの歴史を積み上げられ、現在での様々な商品にその思想が生き残っていることを考えると、もの凄いアイデア・製品であったことを感じ取れます。
素直に敬意を払うのが適切でしょう。

一つの歴史が終わるのを見るのは悲しいですが、学べることも多々あります。
セグウェイの歴史から、マーケティングや商品企画の妙や悲哀を感じ取るのは、ビジネスを志向する方にとって、大きなプラスになるものと考えます。

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