サブスクリプションの管理会計各論~インサイドセールスとは?~

経営企画

これまでTHE MODELにおける4つの役割として、インサイドセールスという言葉を使ってきました。
今回は、外勤型のフィールドセールスに対して、内勤型営業と理解されがちな、このインサイドセールスという役割について概説します。

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インサイドセールスとは?

一般的に営業というと、どのような仕事の仕方をイメージするでしょうか?

おそらく大多数の方は、外回り、見込顧客や取引先の所へいくつもまわって商談を行い、成約を取り付ける。
そのような、いわゆる“外勤型営業”を思い浮かべるのではないかと思います。

この外勤型営業、THE MODELロールにおいてはフィールドセールスと呼ばれる営業形態ですが、良い所も多数ある一方、効率面においては大きな弱点を抱えています。
一人のフィールドセールス担当者が対応できる顧客の数には、当然に制限がある中、仮に見込顧客の発掘からクロージングに至るまでの全ての活動を行う事は、非常に非効率と言えますね。
(この非効率には、情報共有の観点でもそうですし、顧客の購買・意思決定プロセスの長期化・複雑化による、セールス活動そのものの非効率化も指摘できます。)

この非効率を解消したい、というニーズがある中、営業の分業化は進んできたわけですが、近年、インサイドセールスという形で新たな営業の形が誕生しました。
インサイドセールスは、電話をはじめとした、内勤にて対応できるツールを活用して行う営業の形態です。
(ITの発展により膨大な数の見込顧客に容易にアプローチできるようになった事や、企業間の競争が激化すると共に、ありとあらゆる分野で人手不足が発生している事が、この非効率の解消ニーズを高めました。)

近年は、インサイドセールスとフィールドセールスの得意分野の異なる営業形態を組み合わせて営業を行う事が増えてきました。

(参考)インサイドセールスのメリット

・効率的な営業活動を行いたい、というニーズのもとインサイドセールスという役割が誕生した
・面談の時間や移動時間が無い事や、ITの活用により、圧倒的に多い数の顧客にアプローチを行う事ができる
・フィールドセールスの成約率向上(確度の高い見込顧客のパス)が可能となる
・リードのリサイクルをはじめとした、ターゲット顧客の枯渇にも対応できる

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インサイドセールスの役割

インサイドセールスの役割は、商談、つまりセールス部門としての役割もあるのですが、一方、マーケティング部門としての性格も帯びています。

リードナーチャリング

まず一つ、インサイドセールスの重要な役割として指摘できるのがリードナーチャリングです。

リードナーチャリングとは、潜在的にはニーズを抱えている見込顧客に対して、各種のマーケティング・セールス手法により、その潜在的ニーズを顕在化させ、購買意欲を高めていくプロセスの事です。
見込顧客の興味関心を育てる、という意味でナーチャリング(育成)という言葉が使われています。
なお、この見込顧客の事を、一般的にはリードと呼びます。

ナーチャリングの手法としては、展示会やメルマガ、セミナー、ホワイトペーパー、フォロー架電など、上述の通り各種のマーケティング・セールス手法が活用されます。

商談につなげられていないリードの掘り起こしや、失注案件・休眠顧客・解約顧客のリサイクルなども、このリードナーチャリングの内数と言えるでしょう。

(参考)ナーチャリングの手法

ナーチャリングの手法には、例えば次のようなものがあります。
マーケティングの手法ともだいぶ被りますね。

・展示会
・オウンドメディア/SNS
・メールマガジン
・ホワイトペーパー
・セミナー/ウェビナー
・フォロー架電

展示会への出展や、オウンドメディア/SNSでの露出により、顧客の自社理解・商品理解を進めつつ、メールマガジンなどで興味・関心を醸成する。
その後、ランディング・ページ経由でホワイトペーパーのDLやセミナー/ウェビナーへ誘導していき、確度の高い顧客に育てていく。
最後に、フォロー架電によりヒアリング等を通じながら、顧客との関係性を構築し商談化、クロージング担当にパスをする。

この流れが、基本的なインサイドセールスのナーチャリングの流れになります。

会社によっては、インサイドセールスが担当するナーチャリングの範囲を、フォロー架電に限定し、そこに特化している、というパターンも良く見かけます。

リードクオリフィケーション

もう一つ重要な役割がリードクオリフィケーションです。

インサイドセールスは、実際にクロージングを行う前の、いわばプレ商談を行う部署です。

つまりリードの興味関心・ナーチャリングの度合いを見極める役割をになっています。
この、ナーチャリングの度合いの見極めがリードクオリフィケーションです。

成約確度が高そうな案件は、すぐにでもクロージング担当に渡す事が求められます。
一方、そもそもとしてナーチャリングができるステータスに来ていないリードは、マーケティング部門に戻す事も同時に求められます。
ようは、優先順位付けです。

このように、マーケティング/セールス活動の分業化によって起きた、役割間をつなぐ仕事もインサイドセールスの役割という事ですね。

(参考)クオリフィケーションの考え方

リードの状態は大きく次の4つの状態にあると整理できます。

1)対象外:自社に対して明らかに興味関心が無い、予算やニーズなどが明らかにマッチしていない
2)潜在層:担当者レベルの情報収集段階、組織としては導入意志が無い
3)準潜在層:何かしらの課題があり情報収集を行っているが、組織課題や最適なソリューションが明確化されていない
4)顕在層:明確な意思に基づいてアクションを行っており、商品選定を進めている

この内、1)対象外の顧客に関しては、ナーチャリングの活動を行っても意味がありません。
リード未満であると判断して、マーケティング担当に戻すのが適切です。
逆に4)顕在層の場合は、即座にクロージング担当に引き渡すのが良いでしょう。
すぐにでも商品を導入したい、と考えている顧客かもしれません。

さて、この大枠の整理指針で考えるのも良いですが、担当者による属人化が進むというデメリットもあります。
このデメリットの解消法として、スコアリングを導入する方法もあります。

スコアリングは、例えば、メルマガを開封したら10点、リンクを踏んで資料DLしたら30点、問い合わせフォームで「説明希望」としたら50点、というような形で、リードの状態を定量化する、という方法です。

このスコアリングが適切か否かは組織によるのですが、膨大な数のリードが存在する場合は、機械的に対処する事も検討した方が良いでしょう。

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インサイドセールスの2つのタイプ

なお、インサイドセールスの役割は、その切り口によってはSDRとBDRという2つのタイプで捉える事もできます。

SDR
(Sales Development Representative)
BDR
(Business Development Representative)
反響型新規開拓型
インバウンドアウトバウンド
SMB向けエンタープライズ向け
インサイドセールスの2つのタイプ

SDR(Sales Development Representative)

SDRは、一般的には「反響型営業」と訳されるインサイドセールスのタイプで、顧客側から商品/サービスを提供している企業に対して接触してきた案件に対して営業を行う形態です。
問い合わせフォームへの問い合わせ、ホワイトペーパーのダウンロード等が代表的な接点です。

基本的にはSMB(スモールビジネス:中小企業)向けです。

BDR(Business Development Representative)

BDRは、「新規開拓型営業」と訳されるもので、SDRとは逆に、企業側から顧客に対してアプローチし、案件化(商談化)に繋げていく営業の形態です。
新規架電、(物理的な)手紙の送付、(デジタルな)ダイレクト・メールの送信、等が代表的なアプローチ手法です。

基本的にはエンタープライズ(中・大企業)向けです。

会社によって、SDRとBDRを分けたり、一つのチームで実施したり、片方(主にSDR)しか実施しなかったりと、その方針はまちまちです。

インサイドセールスのKPI

インサイドセールスのKPI

サブスクリプション/SaaSのKPIの回でも説明したのですが、インサイドセールスの基本的KPIは有効商談化率です。

有効商談化率 = (案件化数)商談化数 ÷ リード数(見込顧客数)

後は、この有効商談化率を高めるためのナーチャリング手法やクオリフィケーションの考え方に基づいて、細かいKPIを会社毎に設計していく形になります。

オウンドメディア/SNSであれば、流入数やそこからのコンバージョン・レート
メルマガであれば、開封率クリック率
ホワイトペーパーDLであれば、DL率(コンバージョン・レート)。
セミナー/ウェビナーであれば、フォロー架電の継続率

こういったものです。

とは言え、一つ、確実に設定できる共通的なKPIがあります。

それは、行動量です。

インサイドセールスの役割は、大量のリードに対して、ナーチャリングなりクオリフィケーションなりで、マーケティングに戻したり、クロージング担当にパスしたりする事です。
このプロセスに必要な重要な事は、圧倒的な行動量です。
この行動量を施策毎に最大化・最適化していく事は、どのような形でインサイドセールス体制を構築しようが、避けてはいけない目標となります。

マーケティングとクロージング担当をつなぐ、という事への意識

さて、KPIを考える上で、もう一つ絶対に避けなければいけない事があります。

その絶対に避けなければいけない事は、部分最適化です。

非常にあるある話なのですが。
商談(や成約)というKPIを最大化したがために、「燃えた」案件をクロージング担当や、その先、カスタマーサクセスのプロセスに渡すという事が、サブスクリプション/SaaSビジネスでは良く見かける光景です。
はっきりと言って、これでは意味がありません。

これはインサイドセールスに限らず、の話なのですが、相互に連携し、情報交換を行い、会社全体としてのKPIの最適化を行う事が重要です。

THE MODELロールでのマーケティング/セールス体制を構築する際には、この点を従業員全員に認識いただく事は必須です。
特に、インサイドセールスに関しては、マーケティングとクロージング担当をつなぐポジションにいる、という事から、ある意味において最もこの役割を求められると言えるかもしれません。

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