このコーナーでは、セミナー等々で受けた質問に対して回答しています。
今回は、実務に使える個別の会計手法について勉強しようと思っているが、どうか?という質問ですね。
なお、あまり傾聴的観点は盛り込まず、素朴に実利的観点で回答していきます。
質問
「物流の業務に携わっています。そこでスループット会計というものを勉強しようと思っています。ボトルネックを見つけるためにも、必要だと考えているからです。どう思いますか?」
ふむふむ。
何か業務上の課題感があって、その課題感に対応するための何かしらの手法を勉強したい、ということですね。
回答
まず入り口から申し上げると、私自身がスループット会計、というもの自体を良く知りませんでした。
そこから入って、ではそこまで重要な事なのか否かという直感的感覚で言うと、多分、そこまで重要なものでは無いのだろう、というのが一つの答えになります。
それでは身も蓋も無いですし、根拠性も低いので、もう少し考えてみます。
さて、改めて私もスループット会計というものを調べてみました。
スループット会計は、キャッシュ・フローに着目して、各業務プロセスのボトルネック(制約)を洗い出して、スループット、つまりは「販売によって生み出すキャッシュ」を最大化しよう、という考えの、管理会計の考え方です。
どうやら「ザ・ゴール」系の考え方のようですね。
大きく次の3つの指標があるようです。
- スループット:売上 - 直接材料費
- インベントリー:在庫における直接材料費部分(労務費や製造間接費は含まない)
- オペレーティング・エクスペンス:在庫(直接材料費)関連以外の全ての事業コスト
その上で、上述したキャッシュ・フロー確保を目的に、ボトルネックを解消していこう、という事のようです。
これを見て、私が思った事は、別にスループット会計である必然性が無いな、という感想です。
別に、従来型の製造業管理会計で問題があるとは思えない、十分に適用できると思うのです。
KPIとして、上記を指標として設定し、管理して行こう、という事は全く問題無いのですが、会計学習の入り口として、スループット会計から入るのは、そもそもスループット会計を理解できるのか否かも怪しくなってしまうので、推奨はできないかな、と考えます。
あくまでも会計学習をしたい、という前提に立つと、なのですが。
まずは、古典的・伝統的な管理会計について学習する所からはじめてみてはいかがでしょうか?
そちらの方が、入門書含めて多くの書籍がありますし、知識を習得している方も多く相談相手に困ることが少ないはずです。
(なお、物流上のボトルネックを解決したい、というのであれば、ロジスティックスの専門書に当たる方が早いとは思います。こちらも古典的でかつ有用な書物が多数ありますね。)
ビジネスの世界ですと、常に新しい動きがあり、また書店でも「新手法」「新潮流」的な風潮で様々なビジネス手法の解説本が並んでいます。
新しい物を否定しようという考えは一切ありませんが、古典には古典の良さがあります。
取っつきにくい等々の感覚を持ってしまうかもしれませんが、古典を抑える、という事は学習の入り口として、検討して見る事を癖としてみて下さい。
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