“交渉”は後々の関係性に悪影響を及ぼす可能性がある

ビジネスと心理学

仕事でも生活でも。
人は日常的に何かしらの“交渉”を行っています。
この“交渉”ですが、取扱いを間違えると後々の関係性に悪影響を及ぼす可能性があります。

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“交渉”後、仕事のパフォーマンスが下がるという実験

ペンシルベニア大学の研究チームは、“交渉”とその後の仕事におけるパフォーマンスの関係について、複数の実験を行いました。

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3039256

代表的なものとして、参加者(被験者)を2つのグループ、賃金に関する交渉を行ったグループと行わなかったグループにわけて、その後のパフォーマンスについて調べた物があります。
(雇用者と労働者は、報酬の取り扱いにおいて、基本的には対立関係が潜在的にある。賃金が少なければ雇用者の取り分は多くなるし、その逆もまた然り。)
実験では、純粋に交渉のプロセス自体がパフォーマンスに与える影響を見るために、交渉を行おうが、行うまいが、賃金は変わらない、という設定がなされました。
(なお、複数の実験で、トータル1,200人が参加した。)

果たして、結果はどうだったでしょうか?

賃金交渉を行わなかったグループより、行ったグループの方が仕事のパフォーマンスが低い、という結果が示されました。

この結果については、賃金交渉、というプロセスを挟んだ結果、雇用者と労働者の間にある潜在的な対立関係が、顕在化したのが要因、と考えられます。

つまり、表題の通り、“交渉”は後々の関係性に悪影響を及ぼし、パフォーマンスも低下させる可能性があるのです。

それでは、どのように対処すれば良いのでしょうか?
3つの方針が考えられます。

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Win-Winに持っていく

上述の話はよくよく考えれば、感覚的にわかることのはずです。

交渉というものはとかく「パイの取り分を多く」することが勝利条件とされがちです。

しかし、自分の利益“だけ”が多い状態で、相手が納得すると思うでしょうか?

誤解をしていたら非常に危険なのですが、交渉を行い、契約を締結したと、さぁ仕事に取り掛かろう!という時、一方的に損を被った相手方は交渉のプロセスについて、印象強く記憶するはずです。
冷静に考えたら、一方的に損を被った相手方が、その後の仕事で手を抜くリスクは高まるのは自明なはずです。
手を抜かなくても、別の契約相手を探され、早々に打ち切りされるかもしれません。

(例:一般的な高い買い物で、商品を自宅に送ってくれるとします。このシチュエーションで価格交渉で優位に立ったとして、店員さんが丁寧に対応してくれるかどうか。後回しにされるかもしれませんし、梱包が他より雑になるかもしれません。これは通常のビジネスにおいても同様なはずです。)

つまり、第一において、いわゆる「Win-Winな関係」というものを構築しないと、巡り巡って悪影響を受ける可能性があるのです。

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そもそも交渉を行わない

研究者は、そもそも交渉を行わない、という選択肢も考えられるとしています。

これは一般的に言われているコミュニケーションとは逆の提案です。

ようは、避けられる交渉ならば避けることによって、関係性の悪化も回避しよう、という戦略です。

現実的には、交渉を避けること自体による関係性の悪化も考えられるので、使いどころは難しいようにも思いますが、一つのオプションとして持っておくのは良いでしょう。

ラポール形成を行う

また研究者は、ラポール形成の重要性についても触れています。

ラポールとは、端的に言うと相手との信頼関係のことです。

ラポールとはカウンセリングやセラピーといった心理療法の世界で、基本とされるクライアントとの関係性のことで、一言でいえば信頼関係のことです。フランス語で「架け橋」を意味する言葉です。
架け橋ができていないと人の動きや物流などに支障が出るように、このラポール形成ができていないと、カウンセリングやセラピー、またコーチングなどのどんなテクニックも機能しないと言われます。
このことは心理療法の世界だけでなく、セールスや交渉、プレゼンといったビジネスの世界はもちろん、家庭やプライベート、また教育の分野でもラポールという言葉は使われるようになりました。
ラポールとは、相手との良好な関係性のことですが、安心感、好感、そして信頼性といったいろいろな意味合いを持つ言葉です。大切なことは、あなたのコミュニケーションの目的を成し遂げるためにふさわしい関係であることを理解してください。

Life&Mind「ラポール形成の決定版!プロが教える信頼関係を生み出す秘訣」より

上述の「Win-Winに持っていく」とも共通する要素もありますが、交渉のプロセスの中で、根本的な共通の利益を見出だすことは重要でしょう。
また、世間話や一緒に食事をするなどして、親密な関係を構築し、協力しやすい関係も構築することは重要と考えられます。

これらを通じてラポール形成が図れたならば、交渉は成功と言えるでしょう。


この研究の重要な点は、交渉は一つの単独事象でもないですし、交渉が終わったからそれで万事解決、というものではない、という所にあります。
あくまでも、その後の関係性や仕事をしていく上でのはじまりに過ぎない、という認識を持つことが必要でしょう。

改めて、交渉とは「パイの取り分を多く」することではない、と認識し、相互に利益があり、信頼関係が構築された状態を目指すことが必要です。

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