年齢を重ねると共に衰えを感じ、また学ぶ能力も減衰していくと感じる人は多いでしょう。
事実、身体は間違えなく衰えていきますし、意欲も脳生理学的に低下し、意思決定も保守的になっていくことが示されています。
しかし、近年の知見では、何歳になっても人は成長できるし成功できる、ということも示されています。
テック領域での知見
よく、ソフトウェア開発の領域において、年配のプログラマーは急速に変化する技術においてついていけず、スキルが比較的若いプログラマーに劣っている、と言われます。
これは果たして本当なのでしょうか?
ある研究では、この考えに否定的です。
https://people.engr.ncsu.edu/ermurph3/papers/msr13.pdfノースカロライナ州立大学が行った研究によると、年配のプログラマーは若いプログラマーと比較して、同等かそれ以上のスキルを持っていることが示されました。
研究者たちは、StackOverflowというサイトに登録されている8万人以上のプログラマーのプロフィールを調べました。
StackOverflowは、ユーザーがプログラミングに関する質問をしたり答えたりできるオンラインコミュニティです。
このサイトでは、ユーザーが他のユーザーの質問や回答の有用性を評価することもできます。
良い質問や良い回答をしていると評価されたユーザーにはポイントが与えられ、それが “レピュテーション・スコア “として反映されます。
レピュテーションスコアが高ければ高いほど、そのユーザーはプログラミングの問題をしっかりと理解していると考えられます。
この研究では、ユーザーの年齢とレピュテーションスコアの関係、ユーザーが質問したり回答したりしたテーマの数、近年の新しい技術に関する知識、について調査が行われました。
その結果、レピュテーション・スコアによるユーザーの評判は40代までは上昇することが示されました(それ以上の年齢については十分なデータが取れなかった)。
また、テーマの数も30代から50代前半にかけて、カバーしている領域が着実に広がっていることも示されました。
新しい技術については、若いプログラマーと比較して同等の知識を有していることがわかり、決して、新しい知見に対するキャッチアップ能力が劣っていないことが示されました。
つまり、年齢と共にプログラマーとしての総合的な能力は上昇し続ける、ということです。
おそらく、適切に学ぶ能力と意欲の問題と考えられます。
科学研究領域での知見
次は、科学研究領域から得られた知見です。
https://www.nber.org/system/files/working_papers/w19866/w19866.pdfノースウェスタン大学の研究チームは、科学や技術的領域において貢献した人たちの、成功した時期の年齢について調査を行いました。
その結果、20世紀以降にノーベル賞を受賞した受賞者の貢献・年齢についてグラフで表すと次のようなものになることがわかりました。
30代後半から40代において、グラフが大きくなっています。
同様のグラフを、1935年以前、1935年より先から1965年以前、1965年より先で分解すると、次のように、時代と共に成功をする年齢が後ろ倒しになっていくことが示されました。
また、いずれのグラフからも、比率として小さいものの、50代60代になっても成功をしている方がいらっしゃることがわかります。
年齢と共に後進の育成に注力していく傾向があるであろうこと、純粋なバイアスの影響もあるであろうことを踏まえると、科学研究領域での知見においても、何歳になっても人は成長できるし成功できると考えることができるはずです。
脳生理学的な知見
上述2つの研究は、年齢と実態についてのものでした。
研究は脳生理学的なものもあり、最近の研究によると、何歳になっても脳の一部領域は成長することが示されています。
人の脳は、語彙力や機能的推論など、様々な分野において、20代の頃よりも機能しているようです。
物事の要点を掴む能力や、対人関係の判断能力、様々な“何か”が信頼できるか否かを判別する能力等、多くの能力が磨かれていく、とのこと。
確かに、年齢と共に、脳の処理速度や新しいことをスムーズに覚える能力、短期的な記憶力の低下など、様々な衰えは確かにあります。
しかしながら、衰える能力がある一方、磨かれる能力もあるのだ、という知見は全ての人にとって励みになると考えられます。
歳を重ねることにより衰えるものは何か?逆に磨かれるものは何なのか?
これらを適切に把握し、また下記記事のようなリスク回避傾向等についても認識すれば、何歳になっても成長できるし、挑戦し成功を掴むことができる可能性も高まるはずです。
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