数多くの研究がオープンオフィスが生産性を下げる、という意見を支持しています。
その弊害は、集中力の低下、プライバシーの喪失、健康への悪影響、騒音への暴露、コミュニケーションの質の低下と多岐に渡ります。
しかし、どのような要因が生産性低下を招いているのか、推測しかされていませんでした。
オープンオフィスが生産性を下げる要因
オープンオフィスは、一般的に同僚間のコミュニケーションや交流を促進し、職場の満足度やチームワークの向上など、生産性を高める効果があると信じられています。
しかし、数多くの研究が、オープンオフィスが生産性を下げる、という意見を支持しています。
シドニー大学の研究チームは、カリフォルニア大学バークレー校の研究センターであるCenter for the Built Environment (CBE)が提供している居住者調査のデータベースに基づいて実証分析を行いました。
その結果が次のグラフです(オフィスについて、どのような点に不満があるのか?を示したグラフ)。
5色のグラフはそれぞれ次のことを表しています。
- Enclosed private:完全個室で従業員毎に部屋が与えられている
- Enclosed shared:完全個室だが従業員同士でシェアードする
- Cubicles with high partitions:高い仕切りがあるオフィス
- Cubicles with low partitions:低い仕切りがあるオフィス
- Open office with no/limited partitions:仕切りがないか限定的な、いわゆる「オープンオフィス」
結果は一目瞭然で、個室vsオープンオフィスという単純な構図で見た場合、オープンオフィスが勝てる要素がありません。
不満の要素としては「音のプライバシー(会議の声等がまわりに漏れる)」「視覚的なプライバシー」「騒音」が上位を占めています。
不満=生産性低下、という構図がきれいに成立するとは限りませんが、この要素を見る限り、一定の生産性低下効果があることは確実と言えるでしょう。
コラボレーション効果(交流のしやすさ)について
また、論文の中では、オープンオフィスにより生まれるコラボレーション(交流のしやすさ)が、この生産性低下分を補うのか否か?という話の中で、コラボレーションの効果を否定しています。
過去の研究では、複雑で重要なタスク程、オープンオフィスによる生産性低下の影響を受けやすい、ということも示されています。
どのようなタイプのオフィスであっても、「交流のしやすさ」を問題にしている労働者は少なかったことも指摘されています。
これは、「クローズドな環境が多いオフィスでは、話をするためのプライベートな場所を探すという、あまりにも一般的な課題が回避されるから。」とされています。
何が満足度に影響を与えるのか?
研究では、何が不満だったのか?という観点だけでなく、何が満足度に影響を与えているのか?という観点でも調査を行っています(回帰分析)。
結論としては、「ワークスペースの不足(もしくは広さ)」が大きく影響しているとのこと。
これらの結果を踏まえると、生産性の高いオフィスは「十分な広さがある個室」ということになります。
そしてそれは、多くの企業にとって、従業員全員に与えることが不可能と言えるでしょう。
この意味でも、改めてテレワークの有用性を見直すべきではないでしょうか。
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