一般的に社員の人数が30人、50人、100人と増えていくに従い、乗り越えなければいけない「壁」があると言われています。
多くの経営者や人事など組織構築に携わる方が、この悩みを迎えてきました。
ここでは、「25%へのアプローチ」という考え方に則って、社員数〇〇人の壁の乗り越え方について考えていきます。
社員数〇〇人の壁とは
ベンチャー企業が成長するに従い、必然的に社員数も増えていきます。
少人数の時は、経営者や一部の中核メンバーの目が会社全体に届くために、組織的な課題は起きづらいのですが、いくつかのポイントごとに、新たな課題が発生し、そしてその課題を乗り越えていく必要に迫られます。
この、いくつかのポイントのことを「壁」と表現します。
一般的には、社員の人数が30人、50人、100人・・・と増えていくに従い、乗り越えなければいけない「壁」が訪れます。
(この〇〇人は、事業内容や、構成人員などによっても変動するが、概ね10人、30人、50人、100人、300人、500人、1000人、、、と、1-3-5の数で「壁」が出現すると言われている。)
25%へアプローチすれば良い
それでは、次に「25%へのアプローチ」についてです。
これは日本では全く馴染みが無く、言葉としても成立していないので、「25%へのアプローチ」と表現することとします。
さて、ペンシルベニア大学の研究にて、組織的規範を改革するためには、どれくらいの人間に働きかける必要があるのか?という論文がだされていました。
この研究によると、組織全体の中で、マイノリティの規模が一定数以上に達すると、その組織コミュニティに影響を及ぼすことができるとされています。
これは、過去の多くの研究でも示されており、マイノリティの規模が10%から40%に達すると、変化が起きると言われていました。
この変化が起きるポイントを「臨界点」と呼びます。
この実験では、より大規模な実験を元に、この「臨界点」がどれくらいなのか?の精度が高められた形になります。
この臨界点は25%です。
臨界点が25%を超えると、組織内で急激な変化が発生し、改革を受け入れる形になるとのことです。
(改革を受け入れることのインセンティブを与えると、この効果がより高まるそうです。)
つまり、社員に対して、全体の25%が改革を受け入れるように働きかけると、社員数〇〇人の壁を乗り越えられる変化を起こせると考えられるのです。
これが「25%へのアプローチ」の考え方です。
スパン・オブ・コントロールで考えてみる
それでは、スパン・オブ・コントロールを元に、具体的な数字を用いて考えてみます。
スパン・オブ・コントロールについては、次の記事も参考にしてみてください。
スパン・オブ・コントロールを2~7までで変動させると共に、その変動にあわせて合計人数(社員数)が1-3-5の数になるように階層を設定したのが次の表です。
各階層は、必ずしも会社組織における階層(等級)とは一致しないでしょうが、概ねとしての組織階層として認識ください。
この通り、1-3-5の数毎に出現する壁にあわせて、臨界点25%に達する階層が変わってきます(青色の網掛け)。
この臨界点に達した階層と、その一つ下の階層が、社員数〇〇人の壁を乗り越えるための、重要なアプローチ対象となります。
各フェーズに沿って、必要な対応を見ていきましょう。
社員数~10人
まず社員数が10人までは、創業社長と役員クラスの中核メンバーが、大きな影響力を発揮する形になります。
このステージは、ただ事業の立ち上げだけを考えれば良いフェーズです。
社員数10人の壁(10人~30人)
社員数10人の壁を乗り越え、30人に達するまでには部課長クラスの存在感が大きくなります。
社員数10人~30人の範囲内の内に、各セクションにおける「マネージャー」的役割の人員を配置し、各メンバーに対して指導や管理監督が行われるよう、組織を構築していく必要が発生します。
社員数30人の壁(30人~50人)
社員数30人の壁を乗り越え、50人に達するまでには現場リーダーが主役となってきます。
ここから先は、しばらくは現場リーダーの存在感が大きいフェーズが続きます。
フラット組織であったとしても、明確に各階層の役割を設定し、マネジメントが行われる体制を構築していくフェーズに突入するわけです。
同時に、部課長クラスへのマネジメント教育の重要性が増してきます(黄色の網掛け:15%)。
ベンチャー企業は若い方が多く、必ずしも部下を持ったり、持っていたとしても大勢の人数をマネジメントしたことがある人は少数です。
この段階で、部課長クラスへの、「マネージャーとはなんたるや」をインプットし、成果に繋げていく仕組みが必要となってきます。
社員数50人の壁(50人~100人)
このフェーズに入ると、スパン・オブ・コントロールを拡大していかなければならなくなります。
というのも、人材市場から優秀な人材を採用するのが困難になり始めてくるからです。
一人の人間が管理監督できる範囲を増やしていかなければ、組織拡大ができないのです。
コミュニケーションやプロジェクト管理を簡便にする各種ツールが必須となってきます。
なんだかんだ言って、一人一人がコミュニケーションをしっかりとれるサイズ感なので、ミッション・ビジョンなどの希薄化以上に、業務の効率化の観点でハードルが出てくる印象です。
社員数100人の壁(100人~300人)
スパン・オブ・コントロールが更に拡大します。
そして、人員数が増えたことにあわせて、部課長クラスのみならず、現場リーダークラスへのマネジメント教育の重要性が増してきます(赤色の網掛け:23%)
優秀な現場リーダーを牽引していく必要があるため、当然に部課長クラスのレベルアップも要求されます。
一気にやらなければいけない組織課題が増えるため、多くの組織がこのレンジ内で成長を止めていきます。
経営者も、この辺りから明確に「もう自分の組織では無い」と自覚し、権限移譲を進めないと組織が停滞していきます。
更に、一人一人がコミュニケーションをとれるサイズ感では無くなってくるため、会社がなんのために創業し、どこを目指しているのか、をきちんと共有していく必要があります。
この段階が一つの大きな壁と言えるでしょう。
社員数300人の壁(300人~1,000人)
この辺りに来ると、会社組織としても、組織体制を成長・拡充していくためのノウハウが蓄積されていきます。
急激な人材採用を進めるなどの無理をしなければ、一定安定して、組織の拡大を図れるフェーズです。
実際、500人の壁、という言葉をあまり聞かないという点も、この考えを補強していると思われます。
焦らず、しかし確実に組織を育てていけば良い段階です。
社員数1,000人の壁(1,000人~)
社員数1,000人を超えると、組織階層を更に拡充しなければいけなくなります。
つまり、メンバークラスに対しても、マネジメント教育を実施する必要性が出てくるのです。
(マネジメント教育は、必ずしも課長とかが受けるような教育ではなく、シンプルに人と人との関係性の話であったりです。)
わざわざ大規模な全社集会を意識的に行っている会社が多いのも、メンバー一人一人に、組織の重要な人物であることの意識を持ってもらうためです。
ただ、このフェーズに達すると、スパン・オブ・コントロールが限界に到達するため、一人一人のキャパシティという観点では安定化をはじめます。
1,000人の壁を越えた組織は、かなり安定して人員拡大を図れる状態になります。
これまで、多くの経営者や人事など、組織構築に携わる方々により、社員数〇〇人の壁を乗り越えるためのノウハウが公開されてきました。
今回は、「25%へのアプローチ」の考え方に基づいて、各フェーズを切ってみたわけですが、驚く位に周知されているフェーズ感と、各フェーズへの対応ノウハウが一致することがわかりました。
日本人はどうしても真面目な気質なので、メンバー全員に丁寧に向き合わなければならない、と考えてしまいがちです。
そして、その真面目さゆえに、一人でもマネジメントできないメンバーが存在すると、自分はマネージャーに向いていない、できない、とも考えがちです。
「25%へのアプローチ」の考え方に基づくと、必ずしも無理してメンバー全員に丁寧に向き合わなければいけない、というわけではないことがわかります。
多くの業務において効率化が求められるように、マネジメントにも効率化が必要なはずです。
この「25%へのアプローチ」の考え方は、マネジメントの効率化を図る、重要な考え方であると言えます。
コメント