マルチタスクは本当に生産性を下げるのか?~一流の経営者が同じ服を着る理由~

生産性・業務効率化

マルチタスクは人間の生産性を下げてしまう、というのが現在の知見です。
しかしながら、マルチタスクからは中々逃げられないのが現代社会の宿命です。
ここではマルチタスクは本当に生産性を下げるのか?をテーマに複数の論文・記事を横断レビューしていきます。

これを読めば、一部の一流経営者が同じデザインの服を着ている理由がわかります。

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マルチタスクは生産性を下げる

マルチタスクについては、研究の歴史がそれなりにあり、1960年代から心理学領域を中心に様々な実験がされてきました。
マルチタスクを継続して行うことにより、人間の能力が向上するのではないか?という仮説があったからです。

結論を先に言ってしまうと、マルチタスクは人間の生産性を大きく下げます。
こちらの記事(マサチューセッツ工科大学)では、マルチタスクを行っている時の人間の脳は、複数のことを同時並行して処理しているのではなく、1つのタスクを短い間集中して処理することをひたすら繰り返しているだけにすぎない、としています。
しかも、脳のリソースそのものはフル稼働している状態で、別のことを繰り返して処理しているため、1つのタスクにふりわける脳のリソースは大幅に低下してしまいます。

これがマルチタスクをすると生産性が大きく下がってしまう原因です。

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生産性低下のみならず、疲労と認知機能低下を招く

更に悪いことに、マルチタスクを行っている間は高い集中力を要するため、脳内の神経科学物質をガンガン消費します。

結果、短い時間で「頭が動かない」「疲れた」と感じてしまうのです。
これは多くの働く人が経験したことがあるでしょう。

こちらの研究(英サセックス大学)では、PCやスマートフォンなど、複数のデジタル端末を同時によく利用する人と、そうでない人で比較し、複数端末の同時利用者の脳の一部(前帯状皮質灰白質)の密度が小さくなっていることが示されています。
研究では、この脳密度の低下が脳の認知機能の低下や、社会的感情の悪化を招いているのでは?としています。

こちらの記事(マギル大学)では、上述のマサチューセッツ工科大学や英ロンドン大学、カリフォルニア大学などの研究を横断的にレビューし、現代社会がいかにマルチタスク環境下におかれ、人間にストレスを与えているかを解説しています。
例えば、スマートフォンの不在着信一つをとっても、かけた側が「返信が来るに違いない」、うけた側も「折り返しかけないと」と、意識を不在着信にとられてしまうため、一見大したことが無いように思えても、脳のリソースが奪われるとしています。
メールの返信一つ(返信をする、しないの意思決定)にしても、重大な意思決定に使う脳のリソースと大きく差が無いため、雑事に気を回すと、どんどん生産性を低下させていきます。
そのため、このようなマルチタスク環境下にあると、IQ10ほど低下させてしまう、としています。

重要ではない意思決定に脳のリソースを奪われたくない。本当に大切なことに限られた脳のリソースをまわしたい。これ (服を選ぶという意思決定を削減する) が、一部の一流経営者が、毎日同じデザインの服を着る理由でもあります。

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悪いとわかっているのに何でやめられないの?

上述したマサチューセッツ工科大学の解説によると、私たち人間が文明を持つ以前の生活に起源があるとしています。

現代社会は極めて安全ですが、猿の時代や、原始時代はそうではありません。
周囲は危険にあふれており、常に気を配っていないと、そもそもの生存がおぼつかない状況です。
そのため、マルチタスクに向いていない生理的性質があるにも関わらず、生存本能の観点でマルチタスクを行ってしまうのでは?としています。

また、マルチタスクを行い、複数のタスクを消化していくことが、麻薬的な報酬を脳を与えてしまうのでは?という意見もあります。

ただ、どうやらトータルのパフォーマンスはあがる可能性がある

これまで、マルチタスクが如何に人間に悪影響をおよぼすかを書いてきましたが、本当に弊害しか無いのでしょうか?
どうやら、弊害だけではなく、マルチタスクは人間のトータルのパフォーマンスを引き上げる可能性が示唆されています。

こちらの研究(ミシガン大学)では、マルチタスクを行っているという認識そのものが、人間のパフォーマンスをあげる可能性を示しています。
過去の研究の蓄積として、人間は処理するタスクの難易度があがると、努力しようとするモチベーションや、認知制御機能が向上することが示されていました。
そのため、この部分が上述のマルチタスクを行っているという認識そのものが、人間のパフォーマンスをあげる可能性につながってきます。
実験ではシングルタスクとマルチタスクのグループにわけてタスクを処理した結果、マルチタスクを行っているグループの中でさらにマルチタスクを行っていることを認識していた被験者の集中力が高かったことが示されました。

この研究は、まだ蓄積がすくなく確かなことは言えませんが、一定経験則とも合致する部分があります。

一日のはじめの、「今日やることリスト」をズラッと並べてから仕事にとりかかると、高い生産性を出せた経験は多くの人にあるでしょう。
「今日やることリスト」は一種の「マルチタスクを行っていることの認識」につながるため、これが集中力の向上につながる可能性があります。

(おまけ)女性も男性も等しくマルチタスクには向いていない

なお、以前から、女性はマルチタスクが得意(だから家事育児に向いている)という考えがありましたが、これは誤りです。
こちらの研究(ロンドン大学)で、マルチタスクの性差影響が調査されていますが、差が無いという結論が出ています。

人種だとか、性別だとか、年齢だとか。
そのようなものに縛られず、偏見なく、一人ひとりが自分自身が本当に実現したいことに素直にまい進できる世界が早く来ると良いですね。

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