いつ頃からからはもうわからないですが、健康は高い関心を持って語られます。
そして健康な食材、安心な食材、という観点で「無農薬野菜」「有機野菜」というワードも頻繁にみかけます。
今日は、じゃあ「農薬」って身体に悪いの?という話を考えてみたいと思います。
切り口としては、農薬に対する専門的な知識、化学や医学に関する専門的な話抜きで、一般的に周知性が高いであろう情報のみで考えます。
なお、結論から言えば「農薬の有無を気にする必要は無い」になるのですが、これは別に、全ての農薬が完全に安全だから、ノーガード戦法でいいよ、という話では当然にありません。
我々の知らない所で、多くの研究者や役所の方々が、安全な農薬を開発し、安全な使用量や接種して問題が無いラインを定めてくれているからこその話であることは留意ください。
それでは本題に入っていきましょう。
お題
まずはこちらの記事を読んでみて下さい。
有機食品を食べると体内に残留する農薬の量が大幅に減ることが、最新の研究で改めて明らかになった。
農薬は、政府の決めた使用量が守られていても、日常的に摂取すると内臓機能や胎児・子どもの発育に予期せぬ影響を及ぼす恐れがあると指摘する専門家は少なくない。
そのため、農薬の摂取や蓄積をどうすれば防げるか世界的に関心が高まっている。
(中略)
食事を有機に切り替えると体内の農薬を劇的に減らすことができることを示した研究は、日本でも最近、報告されている。
(中略)
有機食品は世界的に需要が伸びており、とりわけ新型コロナウイルスの感染拡大以降は、消費者の健康意識や食に対する安全志向の高まりで、先進国を中心に人気が急速に高まっている。
ただ、日本ではまだ認知度が低く供給も限られているため、他の先進国と比べると消費者は手に入れにくいのが現状だ。
猪瀬聖氏「有機食品に農薬排出効果、研究報告相次ぐ」より
なるほど。
有機野菜を食すことにより、発がん性が疑われる物質の接種量・体内残留量を減らせる、という話です。
これだけ聞くと、恐ろしい話だ、有機野菜を食べなければ、と思うかもしれません。
それではここで、表題「農薬は身体に悪いか?」について考えてみましょう。
縛りとしては冒頭にも書いたように、農薬に対する専門的な知識、化学や医学に関する専門的な話抜きで、一般的に周知性が高いであろう情報のみで考えます。
農薬の有無を気にする必要は無い
まず、大前提として農薬の知識を軽くインプットしてみましょう。
農薬の専門知識の話では無く、歴史のお勉強です。
Wikipediaでググって見ると、次の記載があります。
化学合成農薬の登場
20世紀前半までは農薬の中心は天然物や無機物であったが、第二次世界大戦後になると本格的に化学合成農薬が利用されるようになる。
DDTと殺虫剤
1938年、ガイギー社のパウル・ヘルマン・ミュラーは、合成染料の防虫効果の研究からDDTに殺虫活性があることを発見、農業・防疫に応用された。
(中略)
いずれも高い殺虫効果があり、またたく間に先進国を中心に世界へ広がっていった。
(中略)
環境運動と農薬批判
1962年にレイチェル・カーソンが『沈黙の春』を発表し環境運動が世界的な関心を集めてからは、農薬の過剰な使用に批判が起こるようになった。
日本でも水俣病などの公害が社会問題となるなか1974年には有吉佐和子の小説『複合汚染』が発表され、農薬と化学肥料の危険性が訴えられた。
(中略)
残留農薬
毒性・残留試験などに基づいて各農薬・農産物ごとに許される最大残留濃度が決められ、これをクリアするように農薬の使用法が定められた上で登録され使用が可能になる。
残留農薬基準については、2006年5月より「残留農薬等に関するポジティブリスト制度」がスタートし、従来よりも残留農薬に対する規制が強化された。
食品に対する残留農薬は食品及び農薬ごとに一日摂取許容量(ADI)を基準に残留基準が定められており、基準を超えた農薬が検出された場合は流通が禁止される。
Wikipedia「農薬」より
これらをまとめると、次の知見が得られます。
- 化学農薬は1940年前後で開発が活発化し、使われるようになった
- 1970年前後で農薬に対する、健康懸念が高まり、各種規制・ルールの策定につながった
- 現在は、残留濃度や一日摂取許容量が定められている
つまり、化学農薬が誕生してから約80年、各種規制・ルールが制定されてから約50年の月日が流れているのが現在、ということです。
そして現実問題として、農薬による死亡事故としては、下記のように推移しています。
(これは、「農薬 健康被害 件数」で検索。)
その他、諸々検索してみても、農薬による健康被害に関して「実験レベルのエビデンス」はあるものの、人体影響としては「懸念」レベルの話であり、具体として明確な健康被害が出ているか?というと、そのような話はヒットすることはありませんでした。
(もしかしたらあるのかもしれませんが、「悪魔の証明」という話もあり。)
それでは別観点で見てみましょう。
「寿命」です。
日本人の平均寿命は戦後、爆発的に伸びており、それこそ化学農薬が誕生した1940年頃から比較すれば+30歳、農薬に対する諸々の規制が強化された1970年頃から比較すれば+10歳以上の増加が見られます。
健康寿命も同様です。
あまり古い資料がないのですが、ここ十数年だけでも+1歳以上も健康寿命が延びています。
医療技術の発達等々と、農薬による健康被害の関係で、医療技術の発達等々の方がウェイトが大きいだけの可能性がありますが、上記の情報や資料を見る限りは、農薬による健康被害を気にする必要は無いように思います。
帰納法・演繹法的に考えると、入り口としては次のようなロジックで「健康に良くないのではないか?」と懸念されているわけですが。
これは次のように否定され、「農薬の有無を気にする必要は無い」と結論付けられるわけです。
以上、農薬は身体に悪いか?について、一般的に簡単に入手できる情報で考えてみました。
なお、現実問題として、生産されている農薬の内訳として、安全性の高い「普通物」の比率は劇的に伸びています。
加えて、単位ha当たりの農薬使用量も年々減ってきています。
なお、このグラフを見ると、日本の農薬使用量が他国に比較して劇的に多いようにも見えますが、これも理由があります。
日本は国土面積が狭いから、耕地面積当たりの作付を限界まで上げないといけないんですね。
ようは「狭いところにぎゅうぎゅう詰めで生産されている」状態なのです。
こういった事も、実はちょっと詳しく調べれば、すぐにわかる事です。
何かしらの主張を見聞きした際、ちょっとだけでも良いので、調べる時間を使っても良いように思いますね。
手許にはスマートフォンという便利なツールがあるはずなのですから。
コメント