音楽・映像事業のエイベックス㈱が初の希望退職募集をするとの事です。
コロナ影響によりライブ、イベントの開催自粛が影響し、業績が悪化していることが背景という事ですが。
今回は、エイベックスの経営状況を見てみます。
初の希望退職募集
とりあえず報道を見てみましょう。
音楽・映像事業を手掛けるエイベックス(株)(TSR企業コード:294000011、港区、東証1部)は11月5日、希望退職を募集すると発表した。募集人数は約100名で、エイベックスで希望退職の募集は初めて。
募集期間は12月10日~21日で、退職日は来年3月31日を予定する。ライブ、舞台などを含む音楽事業の一部と間接部門に在籍する40歳以上で、対象社員443名
同日発表した2021年3月期第2四半期(連結)で、最終利益は32億8900万円の赤字だった。「新型コロナウイルス」感染拡大により、「a nation」などのライブ、イベントの開催自粛が影響し、売上高は前年同期比44.0%減の342億7900万円と苦戦を強いられた。
(略)
東京商工リサーチ「エイベックス、初の希望退職募集」より
コロナ影響によりライブ、イベントの開催自粛により業績が厳しいと。
それにより、100名ほど、希望退職を募る、という事ですね。
決算書を見てみる
まずは直近の決算短信です(2021年3月期第2四半期決算短信)。
単位は百万円です。
この通り、売上高は▲44%と大幅な減少、営業損失も22億円と非常に厳しい数字です。
最終損益は約33億円の赤字と、報道通りの数字になっています。
じゃあ現預金残高はどうか?というと、184億円程の残高があり、まぁまぁな積み上げがあります。
一方、借入金合計(短期借入金26,000M、1年内返済予定の長期借入金3,070M、長期借入金3,101M)は321億円あり、仮に短期借入金の返済を要するとなると、全くお金が足りない事がわかります。
ただ、自己資本比率はまだ38.9%あり、全く心配が無いほど潤沢、というわけでは無いですが、追加の借入余力はあると考えても差し支えない水準です。
上記の短期借入金260億円は、ロール対応(返済と借入を同時に行う:借換)が行われると考えられます(そうじゃなきゃあかん)。
つまり、エイベックスの経営状況を見る限り、ここ1年2年でいきなりどうこう(具体的には倒産)なる、というリスクはあまり無いと言えそうです。
希望退職の効果とか狙いは?
それでは希望退職の効果の程を考えてみましょう。
こちらは2020年3月期有価証券報告書から抜粋した「主要な経営指標等の推移」の「連結経営指標等」です。単位は百万円です。
一番下の従業員数を見るとわかるのですが、連結ベースの社員数は1,415人との事。
今回の希望退職募集の人数は100人ですので、全体の7%程です。
ふたたび2Q短信に戻って、経営実績の推移資料を見ると、人件費は半期で53億円。
通期ベースで約100億円超がかかっている事がわかります。
アルバイト等分もあるので、この100億円超の5%程が今回の削減対象になるわけですが、その数字約5億円です(ざっくり計算)。
通期の営業赤字が40億円超になると推測(単純に直近2Qの数字を倍にした)される事を考えると、コスト削減幅は微々たるもの、とまでは言わないにせよ、大きなウェイトを占めているものではありません。
そこで改めて考えてみたいのですが、エイベックスの業績はここ5年、全く成長していないという事実です(上の連結経営指標等の推移より)。
つまり、このような思惑があるはずです。
コロナ影響は時間と共に落ち着きを見せ始めており、もうしばらく辛抱すれば業績回復も見えてくる。
とは言え、事業成長が停滞して数年が経過しており、先行きが不透明なのには変わりない。
コロナ影響、という理由が前面に出せるこのタイミングで不採算性が高い領域の人員を削減し、将来のためのスリム化を今のうちに図っておこう。
今なら体力もまだあるし、実行は十分に可能だ。
実際の所がどうなのかは、中の人にしかわからない事ですが、このような考えなのでは?と推測します。
以上、エイベックスの経営状況について、概観してみました。
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