日本は島国気質であり、グローバル化への対応も諸外国に比べて相対的に遅れています。
これがもしかしたら変化するかもしれない、とここ最近思い始めています。
それはリモート化により、コミュニケーション・コンテクストに変化が起きるからです。
リモート化を企業のレベルアップにつなげたいと考えている方向けに解説していきます。
忙しい人向けまとめ
リモート化により起きる変化
- リモート化により日本でローコンテクスト文化が浸透する
- これによりグローバル化への対応が自然と進む
- なぜならば、欧米のコミュニケーションはローコンテクスト文化だから
コンテクストとは
- ハイコンテクストとは「空気を読む」「察し」の文化、日本の特徴
- ローコンテクストとは、言葉そのものでコミュニケーションが行われる文化、明確で正確な指示が必要
- 日本のハイコンテクスト文化が、グローバル化への対応の妨げになっていた
リモート化対応で必要なこと、起きること
- リモート化にはローコンテクストコミュニケーションへの移行が必要
- 「顔が見えない」「言葉以外で伝えようがない」から
- ローコンテクストコミュニケーションにより、情報の保存性や共有性が向上する
- ロジカルに考える癖も身に付きやすい環境に置かれる
- 生産性が向上し、グローバル化への対応も進むかもしれない
ローコンテクストコミュニケーションのポイント
- 「言語化」「可視化」「定量化」を明確に正確に行うこと
- そして、個々人の感情への配慮
リモート化によりコミュニケーション・コンテクストに変化が起きる
リモート化があちらこちらの会社で進み、どのように感じているでしょうか?
コミュニケーションがやりづらい、つい電話であったり、テレビ会議を多用したり、なんとか今まで通りに近いコミュニケーションをとろうとしてはいませんでしょうか?
何故、このようなことが起きるかというと、日本はハイコンテクスト文化のコミュニケーションが浸透しているからです。
一方、Slackのようなビジネス・チャットツール上でのコミュニケーションは、必然的にローコンテクストになりやすい環境でのやりとりになります。
そのため、全ての企業や、順応できる企業でもいきなりは無理でしょうが、日本のコミュニケーション文化がハイコンテクスト文化から、ローコンテクスト文化に変化していくのでは?と考えました。
そして、このローコンテクスト文化の浸透は、日本人が今まで苦手としていたグローバル化への対応にもつながる、と考えました。
三段論法的に言うと、リモート化により日本でローコンテクスト文化が浸透する、これによりグローバル化への対応が自然と進む(なぜならば、欧米のコミュニケーションはローコンテクスト文化だから)、というロジック構造です。
コンテクストとは
そもそもとしてコンテクストとは?という話をする必要があるかと思います。
コンテクストとは一言で書くと「コミュニケーションを取り巻く様々な状況」のことです。
コミュニケーションを取り巻く様々な状況とは、時間や状況、場所などの、つまりは「TPO」のことです。
ある人ともう一人別の人が会話をするとき、様々な状況がその二人を取り巻いています。
例えば、話す場所や時間帯、周囲にいる人々、その時々の気分やタイミング、二人の関係性などです。
こういった様々な状況を考慮せずにコミュニケーションを取る人に対して、日本では「空気が読めない」と揶揄をします。
このような、「空気を読む」行為、TPOから多くの情報を得ようとするコミュニケーション文化のことを「ハイコンテクスト」と言います。
つまりは、「察し」の文化ですね。
ビジネス上でのやり取りでは、曖昧な指示などが飛んだ場合、これがローコンテクストです。
一方、TPOなどのコンテクストよりも、実際に表現された言葉から意味や情報を得ようとする文化のことを「ローコンテクスト」と言います。
言葉通りのコミュニケーションになるわけですね。
ビジネス上でのやり取りでは、明確で正確な指示が必要になります。
ハイコンテクストなコミュニケーション文化は、日本のような長い歴史をもち、かつ人々の流動性が少ない国で見られる光景です。
日本以外ですと、中国や韓国を中心としたアジア諸国、アフリカ系コミュニティや各国の先住民系コミュニティがハイコンテクスト文化を持っています。
一方、欧米は人々の流動性が高く、歴史の分断が大きい傾向が強く、ローコンテクスト文化が浸透しています。
イタリアやラテン系、アラブ諸国などは中間位です。
異文化コミュニケーションを行う場合、ハイコンテクスト文化に所属する人は、ローコンテクスト文化の人たちに対して、できるだけ明確で正確に多くの言葉を使ってコミュニケーションをとる必要があります。
曖昧な表現では伝わらないのです。
ローコンテクスト文化の人がハイコンテクスト文化の人にコミュニケーションをとる場合は、ハイコンテクスト側からすると「ストレートに言うなぁ、、、」とは思うことが多いですが、とりたいコミュニケーションの内容自体はとれるので、あまり問題はありません。
(これは、あくまでもマクロ的な全体感、傾向の話なので、個別コミュニケーションでは該当しないことは当然に多い。)
リモートワークで大事なローコンテクストコミュニケーション
リモートワークで大事なのはローコンテクストコミュニケーションです。
これは、お互いに「顔が見えない」「言葉以外で伝えようがない」からです。
(実際には、オフィスワークでも必要なはずなのだが。)
中高年の方でリモートワークに苦手意識や場合によっては嫌悪感を抱くのは、このローコンテクストコミュニケーションが不得手だからなのでは、と推測しています。
中高年の方の会話はどうしてもハイコンテクストになりがちで、そのため社歴であったり世代やグローバルの壁を越えにくいのでは、そしてそれはリモートにも影響している可能性があります。
これにより、ついつい電話をしたくなったりしないでしょうか?中高年の方。
これは、電話を嫌がる傾向が強い今の若者たちにとっても、組織にとっても悪影響を及ぼします。
コミュニケーション内容の保存性や共有性の観点から、非生産的であるからです。
逆にいうと、コミュニケーションをローコンテクストにすることにより、そして最新のデジタルツールを活用することによって、日本企業はその生産性をあげることができるのではないでしょうか?
日本では長らくハイコンテクストコミュニケーションがとられ、それを汲み取ることを良しとされてきました。
ロジカルで明確なコミュニケーションは軽視されてきました。
そのため、多くの日本企業が社外とのリレーションシップを苦手としており、特に海外対応、つまりはグローバル化対応を阻む要因になってきたと考えています。
Slackのようなチャットツールでは明確に空気感は伝わらないですし、Zoomのような会議ツールでは、多少は空気感が伝わりますが、対面コミュニケーション以上には伝わりません。
リモート化に対応するためには、事前に情報を整理しロジカルに考えるなど準備をし、ローコンテクストに語る必要があります。
なあなあの会話でやってきたことが通用しなくなるので、必然的にロジカルに考える環境に身を置かれることになります。
ローコンテクスト文化ですと、背景の異なる第三者とのコミュニケーション上の認識のズレが起きづらくなるのです。
ハイコンテクストコミュニケーションをとりたい、という欲求を抑え、ローコンテクストに移行すれば、日本企業の生産性は向上し、またグローバル化への対応も進むはずなのです。
ローコンテクストなコミュニケーションをとろう
最後にローコンテクストコミュニケーションをとるための指針を書いていきます。
プロジェクトの生産性を高めるローコンテクストコミュニケーション
- 方針、ポリシーを言語化し、メンバーが同じものを見れるようにする
- タスクを可視化し、いつまでに何をやらなければならないか定量化する
- 情報をオープンにしメンバーが自分でデータをとれるようにする
- リモート会議を減らしテキストベースで完結させる
- 働く時間を明確化しメリハリをつける
チームの生産性を高めるローコンテクストコミュニケーション
- ローコンテクストコミュニケーションを心がける
- きちんと挨拶をし、その日の調子を伝える
- ポジティブ面もネガティブ面も含め、フィードバックをする
- 絵文字やカジュアルワードで、感情が読みやすいテキストにする
- 積極的に雑談する
ポイントは「言語化」「可視化」「定量化」です。
ローコンテクストであることを前提に、ビジネス上でのやり取りを、明確に正確に言語化して物事を伝えるようにしましょう。
煩雑なコミュニケーションをとらなくても、メンバーが情報をとれるように、できるかぎり情報のオープン化につとめましょう。
そして、「言語化」「可視化」されたコミュニケーション・情報については、極力「定量化」を行うように心がけましょう。
また、個々人の感情にも気を配るようにすることも大事です。
ローコンテクストコミュニケーションは冷たく受け止められがちです。
(欧米の人も、ストレートに伝えすぎると、結構傷つく。コンテクスト部分がゼロなわけではない。)
テキスト発信に関して、何かしらスタンプなどリアクションを行う、できれば返信を行う、感謝の気持ちはストレートに伝える、特にポジティブフィードバックについては積極的に伝える。
このように、テキスト上でのやり取りに感情を込める習慣化が大事です。
このリモート化を、致し方なく対応するものではなく、一つのチャンスだと捉えていきたいものです。
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