アイスランドにて、週休3日制の試験導入が行われて、一定の成功を収めたようです。
トライアルには全労働人口の1%にあたる2,500人が参加し、普遍的に対応できると結論付けられたとのこと。
労働者のメンタル面や幸福度等にもプラスの影響を与えているとのことです。
内容を見てみましょう。
大元のPDFデータはこちらで見れます。
https://en.alda.is/wp-content/uploads/2021/07/ICELAND_4DW.pdf概要
週休3日制のトライアルが給与の削減を伴わない形で、アイスランドで行われました。
期間はトータル、7年間行われたそうです。
(週休3日制、というよりかは労働時間の削減、の方が正確か。)
目的は、ワークライフバランスの改善のみならず、生産性の維持・向上も図るものです。
対象は、オフィスや学校、病院等々、幅広い業種において行われました。
結論として、多くの職場において、労働時間を削減したとしても生産性とサービス提供の質は変わらないか、むしろ向上した、とされています。
加えて、ストレス、燃え尽き症候群、健康、ワークライフバランス等々の様々な指標の改善につながりました。
アイスランドでは、このトライアルの結果を受けて、国全体として労働時間の短縮が進んでおり、この流れは止まらないだろう、とされています。
どのような結果がもたらされたか?
労働時間の短縮により、労働者のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)とワークライフバランス大幅に向上し、その一方で、既存のサービス提供レベルと生産性は少なくとも維持され、場合によっては向上したことがわかりました。
例えば、次のような有益な効果が出たそうです。
- パートナーと過ごす時間や家事に費やす時間が増えることで、家庭でのストレスが軽減される
- より広い範囲の家族や友人と過ごす時間が増える
- 趣味や情熱、その他の関心事、あるいは単に休息のための自分のための時間が増える
- 平日に家事や家事に費やす時間が増えることで、週末に使える時間が増え、その質が向上する
- 男性が家事の責任を負うことで、より公平な役割分担が可能になる
また、この効果は短期的なものではなく、継続的に見られたとのこと。
全労働力の1%が参加し様々な職種で明確な成果が出たことを受け、労働時間の短縮が実行可能性のある非常に有益な政策であること、このトライアルが旗振り役となるであろうことがレポートには記載されています。
どんなことに取り組んだ?マイナスはないのか?
労働時間の短縮に表面上取り組むと、同じ生産量を維持するために、労働者は公式または非公式の残業によって「失われた時間」を補うことになり、意図せずに過労死につながるという懸念がよく聞かれます。
このトライアルは、この一般論に反する結果となりました。
では、どのようなことに取り組み、このような結果につながったのかというと、会議の短縮、不要な作業の削減、シフトの調整、仕事の進め方の見直し、というようなある種、取り組みやすい改善策があげられます。
また、会社の社長やマネージャーといった役職者も率先して、これらの“働き方改革”に取り組んだことが見て取れます。
上の立場の人間が、率先して会社の慣行を変えようとしなければ、組織全体の慣行を変えることはできないので、この点は非常に大きなウェイトをしめているのでは、と推測されます。
一方、多くの職場において業務プロセスは複雑で無く、より最適化された働き方について見出だしやすかった、というような指摘もあります。
欧米ではジョブディスクリプションが日本より明確になっている場合が多いため、この点も労働時間の短縮による生産性の維持・向上が成功しやすかった要因では無いかと推測されます。
また、難点もあります。
主にヘルスケア分野において、不足するリソースを補うために、追加の人員を採用した例もある、というような記述も見かけます。
レポート内では「大した負担ではない」と書かれていますが、利益率の低い産業や国においては、単純に模倣することができないのでは、というような疑念を抱きます。
以上、簡単ですが、アイスランドでの労働時間の短縮により、生産性の維持・向上の取り組みについて、レポートの内容を抜粋してきました。
所感としては、「日本では無理だな」という点です。
根本的な効率化について、それを阻む風潮が国全体としてありますし、また元々利益率が低い国柄でもあります。
会社慣行をトップが率先して変えよう、というような動きも起き辛いでしょう。
一方、先進的な考え方を持っている企業では導入が可能な取組みとも言えます。
国単位での導入は夢物語でしょうが、競争力の維持・向上を図りたい企業は、アイスランドの事例を参考にしてみるのは価値がある可能性があります。
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