AmazonのAlexaや、GoogleのNestなど、スマートスピーカーが少しずつ増えてきました。
スマートスピーカーでは「スキル」と言うアプリが存在します。
このアプリ(スキル)開発は儲かるのか否か?
これを考えていきます。
(参考)フェルミ推定
フェルミ推定とは、実際に調べることが困難な数字や、感覚的に予測するすることが難しい数字を、論理的に算出する作業のことです。
大きい(または小さい)数字を、要素別に因数分解し、推測可能な(または既に知っている)情報の組み合わせにします。
有名なフェルミ推定例題としては「日本にある電柱の数は何本か?」というものがあります。
日本の国土は40万㎢であり、2割が都市、8割が地方とし、都市部は50m間隔に電柱が立っていると推測。
地方部は200m間隔に電柱が立っているとした場合。
都市部は50m×50mで2,500㎡に1本の電柱があり、地方部は40,000㎡に1本の電柱がある計算になります。
この例題の場合、日本の電柱の本数は、4,000万本と推定されます。
(実際の電柱の本数は3,600万本)
日本の電柱の本数
= (40万㎢ × 20% ÷ 2,500㎡) + (40万㎢ × 80% ÷ 40,000㎡)
= 4,000万本
フェルミ推定では、数字があっているあっていないは大した問題ではなく、その推論の過程が重要になります。
お題:スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模を求めよ
スマートフォンやタブレットのアプリ市場は完全なレッドオーシャン状態に陥っています。
市場規模は十分な大きさですが、大企業から個人まで、様々なプレイヤーがしのぎを削っている世界です。
あたなは、そのような状況を見て、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場ならば、まだ普及率が低い段階なので、アプリ(スキル)開発に食い込めるのでは?と考えました。
それでは、スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模を求め、そこにチャレンジする価値があるか否かを考えていきましょう。
フェルミ推定
まず考えなければいけないのが、スマートスピーカーを使っている人が一体全体どれだけいるのか?です。
つまりスマートスピーカーの普及率がどれくらいか?の推測になります。
次に、マネタイズしなければいけないわけですから、スマートスピーカーを使っている人の中で、いったい全体どれだけの人が課金をしてくれるのか?を推測します。
その上で、じゃあ課金をしてくれるのならば、いくらなら課金をしてくれるのか?が問題になります。
これで、まずお題であるスマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模全体を推測できます。
計算式は下記の通りになります。
スマートスピーカーのアプリ(スキル)の市場規模
= 日本の人口 × 日本のスマートスピーカー普及率 × 平均課金率 × 平均課金額
これを踏まえて、じゃあ自分たちが参入した時に、儲かるか否かを考えます。
まずは、そうはいっても同じようなことを考える人が大勢出てくるであろうから、シェアとしてはどれだけとれるのか?を仮でよいので設定します。
スマートスピーカーらしく、例えば、多様で高音質な環境音を流すアプリ(スキル)を想定して考えてみると、計算式は次のように設定できるはずです。
想定最大事業規模
= 市場規模 × シェア率
市場規模に関して、概算で数字をあてはめて見ます。
市場規模
= 人口1億2千万人 × 普及率5% × 平均課金率10% × 平均課金額300円/月 ×12ヶ月
= 21億6千万円/年
この約22億円がアプリ(スキル)市場における、顧客の財布の金額になります。
これにシェア率をあてはめてみます。
様々なアプリ(スキル)が出てくると想定され、課金しやすい領域はプレイヤーが集まりやすいだろうことも想定し、かつまだ先駆者なので一定市場をとれると考え、トータル顧客の財布の内0.1%をとる目標を設定します(ざっくりでいいんです)。
事業規模
= 市場規模21億6千万円 × シェア0.1%
= 216万円/年
年間あたり216万円の売上をとれるかもしれない、とざっくり推測することができました。
まあまあ優秀な開発者が一個人でとれる数字としては、十分に良い数字ですし、感覚値的にも、まあそんなもんだろうな、という印象です。
実際の数値をはめてみる
それでは、実際に個別の数字を調べて、あてはめてみましょう。
スマートスピーカーの所有率は5.9%。
スマートスピーカーの有料アプリ利用率はデータが無かったのでスマートフォンアプリへの課金率(22.2%)を参考に、ざっくり半分の11.1%を設定。
課金をする人の課金額は月当たり約1,100円(加重平均)。
これらの数字をあてはめると、市場規模は下記の通り計算されます。
市場規模
= 人口1億2千万人 × 普及率5.9% × 平均課金率11.1% × 平均課金額1,100円/月
= 103億7千万円/年
イメージしているよりかは、市場規模は大きいかもしれません。
ただ、スマートフォンアプリへの課金との食い合いになる印象もあるので、実際は「推測」項の約21億円/年の方がしっくりはきます。
まとめ
こうしてみた時に、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場で稼ぐのは、あまり現実的ではないと結論付けられます。
仮に本当に年間216万円の売上をとれたとしても、法人でやるような事業サイズとは言えないでしょう。
ブランディングやPR活動の一環としてやるのでなければ、取り組み意味があるとは思えません。
スマートスピーカーの普及率が増えていくと考えた場合でも、プレイヤーも増えるので、相対的にシェア率は減るでしょう。
アプリ(スキル)開発ができる一個人が、趣味の延長で開発するような市場サイズ感です。
仮に儲けようとしたいのであるならば、最初から世界の数字を狙う前提が欲しいです。
アプリ(スキル)開発ができる、各国語での翻訳のプロデュースができる、開発したいアプリ(スキル)そのものへの知識がある。
これらが全部揃っている前提で、ようやく億円単位のサイズが目線に入ってくる。
そんなレベルです。
以上の通り、スマートスピーカーのアプリ(スキル)市場は、稼ぐのには向いていない市場と推測されます。
フェルミ推定は、このように、見当がつかない数字を推測するのに便利な考え方です。
数字が正しいか正しくないかは重要ではなく、推論の過程と、そこから導き出される、ざっくりとした数時感が重要です。
新規事業を考える経営者や企画業務の方、一個人で稼いでいくフリーランスの方には必須性の高いスキルと言えます。
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