新型コロナウイルスの拡大にあわせて「正常性バイアス」という言葉が広がっています。
どうも「軽視しすぎている」ということらしいです。
ここでは、正常性バイアスについて解説すると共に、より怖がるべきものがあるのでは?という話を書いていきます。
なお、ここ数日は新型コロナウイルスに関連して記事を書いていますが、当ブログでは医療系のブログを志向しているのではなく、あくまでもビジネス系のブログを志向しています。
それでは、なぜ新型コロナウイルスに関連した記事を書くのかというと、経済への影響度合いが極めて高いからです。
世の中に対して、早く経済が回復し正常化するために、冷静でかつ正しい情報を発信することが重要と考え、微力ながら現在の方針としています。
忙しい人向けまとめ
- 正常性バイアスは、ネガティブな出来事を軽視したり無視したりするなど過小評価すること
- 正常性バイアスは悪い事ではなく、人間の防衛機構の一種
- 不都合な状況で正常性バイアスが働くと、最悪の事態に陥るリスクがある
- 新型コロナウイルスは脅威だが、やはり人々は過剰反応をしている
- 人々はただの風邪やインフルエンザに対して正常性バイアスがかかっている
- 日常的に感染症に対する対策をしていれば、新型コロナウイルスは怖くないはず
- 経営の現場でも正常性バイアスが見られ、クレームや事故、ハラスメント、過度なコスト感覚などで経営危機のリスクを高めている
- 今の状況を教訓に、正常性バイアスに対して理解すると共に再考をすると良い
「正常性バイアス」とは?
自分にとって予期しない出来事に直面したり、都合の悪い情報を目耳にしたとき、どのような反応を示すでしょうか?
正常性バイアスにかかっていると、上記のようなシチュエーションの際、「ありえない」という先入観や偏見が働き、その予期しない出来事や都合の悪い情報を無視したり過小評価したりします。
つまり、予期しない出来事や都合の悪い情報を「正常な範囲内のこと」と認識するのです。
この文章だけ読むと、良くないことのように見えてしまうかもしれませんが、これは人間の防衛機構の一種となります。
何かネガティブなことがあるたびに、いちいち反応していては、脳のリソースが消耗しています。
精神的に疲れ、場合によっては鬱などになってしまうかもしれません。
つまり、正常性バイアスはネガティブなこと、つまりストレスに対しての防衛機構であり、精神の安定を図る心の作用なのです。
しかし、この正常性バイアスが、それこそ不都合な状況で働いてしまうと問題が発生します。
例えば、災害時です。
災害時に、「大したことない」と判断し、避難が遅れたらどうなるでしょうか?
結果論でしか語れない事ですが、場合によってはパニックを起こし、我先にと逃げ出した方が生存確率は高いかもしれません。
つまり正常性バイアスが非常時にはマイナスに働き、最悪な事態を招く場合もあるのです。
矜持の問題ですが、それでも私はパニックを起こしたいとは思いませんけどね。
さて、それではこの正常性バイアスと新型コロナウイルスについて、どのような言説が出ているでしょうか。
感染症と正常性バイアス
メディア報道や各種ブログ記事を見ていると、「日本人は正常性バイアスにとらわれている。新型コロナウイルスを軽視しすぎている。」という言説を多々見かけます。
この言説の内、「日本人は正常性バイアスのとらわれている。」という部分に関してはアグリーできます。
どういうことでしょうか。
感染症は指数的に拡大する
まず、そもそもとして感染症というものがどのように拡大していくかを考えます。
この図表は、月別のインフルエンザの死亡者数推移です。
この図表の通り、感染症というものは、指数的に拡大する性質をもっています。
そのため、日々の報道で「感染者数が最多」「爆発的に拡大」とされていますが、感染症というものは、そもそも論として報道されているような動きをするものなのです。
なお、インフルエンザの感染者数推移は次の通りで、100万人~200万人となります。
一方、新型コロナウイルスの患者数(感染者数では無いことに留意)は4月10日現在で約3,500名(死亡者数は88名)となっています。
拡大の推移を見ている限り、ちょうど爆発的に急拡大していく右肩あがりのふもと部分にいると考えられます。
そしてそれでも、まだ例年のインフルエンザの推移よりは脅威度が低いのです。
なお、インフルエンザは予防接種が普及しており、治療薬も確立していることを併せて言及します。
あくまでも私の感覚で述べるならば、人々は新型コロナウイルスに対して過剰に反応しており、ただの風邪やインフルエンザに対して正常性バイアスがかかっている、と感じるのです。
免責
誤解の無いように述べると、私は脅威度が低いから良い、もっとストレートに言うと人命を軽視したいわけではありません。
感染拡大が抑制できているのも、政府や医療関係者の多大なる努力の成果であることは認識しています。
また、意識が高まったことによる、人々の行動の変容の結果も、一定影響していることも推測しています。
私の主張としては、「新型コロナウイルスは全く怖くない」ではなく、「警戒の設定が過剰」「より怖がるべきものがある」です。
正常性バイアスにとらわれるな~ただの風邪やインフルエンザをもっと怖がれ~
上述の通り、インフルエンザの感染者数は100万人から200万人と、膨大な数にのぼります。
そして、こちらの記事でも書いている通り、肺炎による死者数は10万人と非常に大きな人数です。
繰り返し主張をすると、肺炎につながりうるただの風邪やインフルエンザを、人々はもっと怖がるべきなのです。
そして、私が見る限り、例年、このただの風邪やインフルエンザに対して、怖がっている人を目立って見かけません。
新型コロナウイルスの脅威をわかっているのであれば、普段日常から、ごくごく身近にある感染症により警戒をすべきなのです。
政府の初期行動に関しては言いたいことは諸々あるにせよ、アンコントローラブルな要素が大きいので脇に置きます。
個人で必要なことは決まっています。
- 外出後の手洗いうがい
- 公共施設や商業施設に設置されている消毒液の使用
- 感染症が拡大しやすい時期のマスクの着用と使用したマスクの廃棄
- 逆に感染症が拡大しづらい時期での感染症を気にしない生活(過度な衛生対応はかえって免疫力を低下させる)
- 免疫力向上のための適度な運動
- 免疫力向上のための栄養バランスのとれた食事
- (インフルエンザに限定して)予防接種
こういった当たり前の行動をどれだけの人がとっているのでしょうか?
身近な脅威に対して正常性バイアスが働いていませんか?
そして、正常性バイアスは感染症だけでなく、経営での現場でも起きています。
正常性バイアスは経営にも悪影響を及ぼす
事業を起こし、会社を経営している方は、非常に頭の良い方が多いです。
(もちろん、微妙な方も大勢いるのですが、相対的に賢く尊敬できる人が多いよね、ということ。)
そんな頭の良い方たちでも正常性バイアスにとらわれている場合を多々見受けられます。
クレームや事故を過小評価していないでしょうか。
1つのクレームを軽く扱った結果、SNS上で急拡散し、工場の一時閉鎖にまで陥った食品メーカーがありました。
作業環境が危ない状況を放置した結果、従業員が死亡する事故が発生し、廃業に追い込まれた事業所もありました。
社内で起きているハラスメントを放置していないでしょうか。
いわゆる「ブラック」という言葉が一般化し、企業内のハラスメントも急拡大するようになりました。
訴訟をうける企業や関連するニュースは珍しくない社会になりました。
先日も、とある有名企業の人事課長によるハラスメント問題がSNSを中心に急拡大していました。
災害や犯罪になんて早々巻き込まれない、コスト増になると思って、保険未加入という状況になっていないでしょうか。
個人情報を取り扱っているのに、漏洩保険に入らず、一回の個人情報流出事故で倒産になった企業がありました。
新設した社屋が火災に巻き込まれ、保険に入っておらず多大な損害をうけた企業がありました。
トータルコストを減らせるからと言って、固定費を増やしていないでしょうか。
固定費が増えれば売上が減少した時に、赤字のリスクが大幅に高まります。
今回の新型コロナウイルス騒動においても、固定費が高い、製造業や飲食業の多くが危機的状況に陥っています。
リスク管理や経営管理は、経営におけるディフェンスの性格が強いものになりますが、これを軽視することは正常性バイアスにとらわれている可能性があると理解するべきでしょう。
怖れるべきものを怖れる、怖れなくても良いものを怖れないようにするために、改めて今の状況を教訓に正常性バイアスについて再考をするのが良いでしょう。
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