1,000円カットが普及し、どこでも気軽に髪を整えられるようになりました。
ユーザーの一人としては、非常にありがたい話です。
しかし、本当に儲かる商売なのか?、彼ら彼女らの生活は大丈夫なのか?を、片隅で心配します。
そこで今回は、理容師のお給料はどこまで上げられるのか?を考えていきます。
お題:理容師になったとして、どこまでお給料をもらえるのか試算する
条件は次の通りです。
- 1,000円カット業態
- カット時間は10分
- 都心駅近立地
- 10坪以内の小規模店舗
- 3席稼働
- 営業時間は10時~20時
- とりあえず年末年始以外は無休前提
それでは、考えてみて下さい。
試算
これまで、居酒屋やコーヒー店を例に、事業計画を作ってみました。
今回も、事業計画ベースで考えてみます。
居酒屋とコーヒー店の例は次の記事を参照ください。
売上高の検証
売上高は如何に回転させるか?がポイントです。
営業日数、営業時間、席数、店舗稼働率、そして客単価のパラメータを設定すれば数字を作れます。
稼働率は75%位としました。
朝一や昼間、夕方は混みあって順番待ちの一方、それ以外の時間帯は空いている場合が多いので、1日全体としてはこれ位かな、という設定です。
フェルミ推定では、あっているかあっていないかは、さして問題ではなく、まずは前提を置いて考える方が重要なので、これで良いのです。
数字をあてはめて考えると、次のようになります。
人件費の検証
人件費は、想定される稼働状況から、必要な人数を逆算することで計算できます。
カット時間を10分とし、それを売上高検証から算出できる店舗総稼働時間を導き出し、そこから人の稼働率をあてはめて必要な人数を出していきます。
朝礼や資料作成などの雑務があるでしょうから、カットにあてられる時間としては稼働率90%。
その90%の内、実際にお客様が来店しカットする実稼働率は75%と起きました。
そして、人件費です。
人件費はざっくり1人あたり300,000円とします。
会社を経営していると、従業員の年金や保険料などを一部負担しなければならず、加えて諸々の管理費もかかるので、+15%を加算して考えます。
トータル、人件費は1人あたり345,000円/月となります。
人を雇うって、額面以上のお金がかかるんですよ。
これらのパラメータをあてはめて見ると、次のようになります。
賃借料、その他費用の検証
賃借料、つまり家賃ですね。
駅近のどこかのテナント立地を想定すると、30,000円/坪位かな、と思います。
10坪とすると、ざっくり300,000円/月ですね。
その他費用は考えるとキリがないので、その他費用比率を10%、本部費比率を15%とします。
チェーン展開していると、本部費がかかるんですよ。
会社を大きくしていくための必要経費ですね。
損益計算書
最後に、上記全ての情報を統合して損益計算書を作ってみます。
営業利益率が14%超と、大きい印象がありますが、効率的運営を考えると、これ位は目指したいものではあります。
賃借料やその他費用がもうちょっと大きい気はしますが、全体感としては、まあこんなもんなのかな、という印象ですね。
実際の数値感
実際の数字を見ようとQBハウスのIR資料を漁っていましたが、パッとはそれっぽい資料が出てきませんでした。
リサーチ会社が出している資料があったので、そちらを参考にします。
みていると、パラメータとしては下記のような比率になるようです。
- 人件費率:53.0%
- 賃借料:13.6%
- その他費用率:10.8%
- 本部比率:約14.6%
本部比率だけ「約」なのは、記載がなく、一方全体の営業利益率が約8%だったので、そこから逆算をしました。
こうしてみると、概ね一致していますが、賃借料は乖離があるようです。
日本不動産研究所が出している賃料指標をみると、都心立地でも坪単価30,000円位だったので、試算ベースでは大外れでは無かったようですが、少なくともQBハウスはもっと坪単価の高い好立地を使っているのか、それとも想定よりも面積が広い店舗にしているか、なのでしょう。
結論
さて、ここまで見てわかる通り、一月当たりの営業利益は50万円ちょっとです。
ここまで到達したとしても、実際には株主への配当や新規店舗への投資などにお金を回すのが企業経営です。
一人が望める給料向上額は、精々2万円~3万円程度でしょう。
上記の試算ですと、年収は360万円ほどで仮に望めたとしても、精々が400万円ほどです。
別資料の理容師の平均年収が300万円ほどなので、これでも優れている試算になります。
結論、好きでなければやり続けられる仕事ではない、と考えられます。
(現役の理容師の方々、好きでやっている方々を貶めようという意図は一切無いので留意ください。)
仮にやるとしたら、自分自身がオーナーとなって、店舗収益の配分をとるか(自分が株主となるわけなので)、複数店舗経営するか、になるでしょう。
別の観点で考えた時に、客単価をあげる、という選択肢も考えられます。
実際、QBハウスは1,000カットでは既に無くなっていますね。
その場合でも精々が1割2割の上昇幅なので、インパクトは小さいです。
理容師業界全体で、もっと客単価をあげても、自分で髪を切り出す人がではじめるので(アタッチメント付きのバリカンだと、髪型にこだわらなければ簡単に切れる)、限界があります。
やはり、しっかり儲けようと思うならば、自分自身が経営者になる、という選択肢しか無いのでしょう。
(参考)試算資料
試算に使用した資料はこちらになります。
ご興味のある方は、DLしてお使いください。
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