ベンチャー企業が資金調達前に用意しておきたい資料30選

経営企画

資金調達には多くの書類が必要です。
いざ銀行から借入、VCから投資をしてもらおうと考えても、必要な書類の用意に時間がかかり、クイックに対応できない場合や、多大な時間を経営者自身が費やさなければいけないこともあります。
ここでは、ベンチャー企業が資金調達のために事前に用意しておきたい資料を30列挙しています。

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用意しておきたい資料30選

用意しておきたい資料30は下記の通りです。
結構なボリュームですが、これらは要求される可能性が高い資料になりますし、いざ用意をしようとすると時間を要するものもあるので、事前に準備をしておいた方が良いでしょう。

  1. 会社案内(会社案内パンフレット、サービス説明資料、会社ホームページなど)
  2. 定款
  3. 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  4. 役員経歴書
  5. 事業計画説明資料(スライド形式のもの、成長可能性に関する説明資料を参考にするとよい)
  6. 事業計画表(PL予算、KPI予算、資金繰計画があるもの、銀行借入の場合は資金使途と返済計画を示せると良い)
  7. 月次試算表推移(BSとPLが月次単位で推移になっているもの)
  8. 総勘定元帳
  9. 主要な販売先、仕入先の一覧(相手先名称、概要、取引額、上位5社~10社程度)
  10. その他、会社毎に重要な勘定科目に関する分析・説明資料
  11. 銀行通帳全ての写し(銀行・支店名称、口座番号、最終月末の残高がわかるもの)
  12. 借入台帳
  13. 決算書類(税務申告書類一式:附属明細含む)
  14. 組織図
  15. 従業員一覧・給与台帳(過去3年分の入退職と所属部署が反映されたもの)
  16. 制定している規程類一式(特に就業規則類)
  17. 株主名簿
  18. 資本政策表(エクイティでの調達の場合は想定バリュエーションをプレとポストで示す)
  19. (発行している場合)新株予約権原簿
  20. (あるなら)株式引受契約書、株主間契約のドラフト
  21. 重要な契約書類
  22. 取締役会議事録
  23. 株主総会議事録
  24. (監査法人の選定が済んでいる場合)ショートレビュー報告書
  25. (監査法人の選定が済んでいる場合)監査契約書
  26. (監査法人の選定が済んでいる場合)マネジメントレター
  27. (監査法人の選定が済んでいる場合)監査法人指摘事項への対応状況
  28. (証券会社の選定が済んでいる場合)ビューコン資料
  29. (監査法人,証券会社どちらかの選定が済んでいる場合)IPO進捗状況
  30. IT統制資料(社内のネットワーク図や重要な基幹システムの状況、それらの統制について説明する資料)
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具体的な中身

基本的な注意点

資料は全てPDFや、Word、Excelといったデータで用意しておきます。

Wordの場合、「校正」データが残っている場合がありますので、修正履歴やコメントは削除して、最終版にしておきましょう。

Excelの場合は、余計な作業データが残らないように、不要なシートやセルは削除しておきます。
レイアウト・フォントも整えておくと、プロフェッショナルっぽく見えるので良いです。

会社案内

ホームページが無い会社は、最近は少ないでしょう。

何か会社案内やサービス説明資料のパンフレットがあるなら、それを流用します。

無い場合は、下記の「事業計画説明資料」に、会社概要を説明する項目を設けましょう。

定款,商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)

定款はそのまま、PDFデータとして収集しておきます。
改定を行っている場合、最新のものが何かわからなくなる場合がありますので、必ず編集履歴をとり、最新のものを間違いなく用意できるようにしましょう。
司法書士に依頼、管理しておいてもらうと楽です。

登記簿謄本は、一般的には「過去三ヶ月以内の最新の物」が求められます。
四半期毎に最低1部取得し、データ化しておくと良いでしょう。
何かしら求められる機会も多いので、無駄になり辛いです。

役員経歴書

これは単純に「履歴書」的なものだけでなく、役員個人がどこかの会社を所有していないか(株式を大量に保有していないか)、どこかの会社の重要役職(役員等)についていないか、の情報が必要です。
また、親族等で会社と取引がある場合にも補足情報として触れておく必要があります。

関連当事者取引という、IPO進行上、重要論点に引っかかるか否かの判定にも使いますし、証券東証の審査にも使いますので、早々に用意しておいた方が良いです。

以外に、親族に融通するような、ルーズなことをやる経営者の方は多いですが、要注意事項です。

事業計画説明資料

何かスライド形式のものを用意しておくと良いでしょう。

基本的には「成長可能性に関する説明資料」と呼ばれるものを参考にすると良いです(Google検索してください)。

他には、そもそもとして会社・事業を立ち上げた経緯・理念、
事業計画を実現するための各種戦略や具体的なオペレーション計画、
人事・採用計画、資金調達計画、出口戦略(IPOなのかM&A等なのか)、
他には想定されるリスク、特に法的なリスクがあるのか否か、あるのならばそれらをどうクリアしているのか、
などを丁寧に説明していく必要があります。

また、会社の経営が軌道に乗る前で、また経営者(創業者)自身にも実績が乏しい場合、どのようなメンバーが事業運営に携わっていくのか、を経歴付きで説明する必要があります。

事業計画説明資料は一番時間がかかるものですので、一度作成しつつ、定期的にアップデートを重ねていくようなイメージが良いでしょう。
しかも、一度作ると、色んな所で流用ができるので吉です。

事業計画表

Excelで作成した事業計画です。
時間がかかります。

PL予算、KPI予算、資金繰計画を示したものになります。
月次単位の推移資料で、過去分は3年分記載されていると良いです。

このデータは、事業運営上の予算管理シートにも流用できるものになります。
同じような資料を何度も別々に作り直すような手間が発生しないよう、考えておくと良いです。

なお、銀行借入の場合は、資金使途(どこに投資していくのか等)と返済計画を反映させたものにすると良いです。
別に、資金使途説明資料や返済計画資料を作成するのは面倒ですし、そこピンポイントでしか使えないので、それならばこの事業計画表に落とし込んで置く方が楽です。
銀行側でも、情報として盛り込まれているのならば、別だしを求めることは、あまり無いです。

月次試算表推移,総勘定元帳

これは会計のデータになります。
CSVデータになるでしょうね。
BSとPLを月次推移で過去3年分要求されるのが一般的です。
総勘定元帳を求められることもあります。

経理がいるのなら経理担当者に、どこかに委託しているのならば会計士or税理士の先生に依頼すれば、取得できるでしょう。

総勘定元帳は、会計の生データになりますので、仕訳を切る際に、見られて困るような情報が無いようには気をつけておいてください。

主要な販売先、仕入先の一覧

主要な販売先(売上)、仕入先(原価、販管費)の一覧をExcelで用意します。

相手先名称、住所や業種等の概要と取引金額が盛り込まれたもので、上位10社ほど提示できれば良いでしょう。
用意するのは過去3年分です。

その他、会社毎に重要な勘定科目に関する分析・説明資料

その他、会社毎に重要な勘定科目について、分析・説明した資料を用意しておくと良いです。
質問が来た時に、すぐに打ち返せます。

これは会社毎に全く異なるので、各々で考えて下さい。

銀行通帳全ての写し

シンプルに銀行通帳のコピーです。
銀行・支店名称、口座番号、最終月末の残高がわかるものをPDFデータとして用意しておくと良いでしょう。

通帳の無い契約の場合は、EBデータのハードコピー(画面コピーの画像データ)や、出力したCSV生データを用意すれば良いです。

会計データ上に記載されている預金残高と一致するかの照合に使われます。

借入台帳

銀行から借入を実行している場合に、Excelで作成しておきます。

借入を実行した際に、銀行から、償還明細表(返済予定表)が送付されるはずなので、これをExcelに起こしておくイメージです。
地味な作業が発生しますし、経理作業にも有用なので、借入を実行した都度、アップデートしておくと良いです。

決算書類(税務申告書類一式:附属明細含む)

これは、税理士に依頼するともらえるはずです。
PDFデータで、「一式」を過去3年分用意しておけば良いです。

たまにわかっていない税理士の方ですと、申告書部分だけを送付してくる場合があるので注意が必要です。

組織図,従業員一覧・給与台帳

会社組織がどのような構造になっているのかを示した、ツリータイプの組織図を何かしら用意しておきます。

また、従業員の過去3年分の入退職と所属部署が反映されたもの、そして給与台帳も求められることがあります。
これは、過去の採用計画の達成状況を確認するのに必要だからです。

制定している規程類一式(特に就業規則類)

会社経営をする以上、就業規則(給与規程等々)が必ずあるはずです。
労基署に届け出る必要があるからです。

これのPDFデータを、労基署の届出印が押されたもので用意しておきます。

その他、制定(取締役会等で承認されたもの)された規程類があれば、それも用意しておきます。

株主名簿,資本政策表,新株予約権原簿

株主名簿は、仮に創業者1名しか株主にいない場合でも必要なので、Excelで用意しておきます。

また、エクイティでの調達の場合は資本政策の用意も必須で、想定バリュエーションをプレとポストで示す必要があります。

バリュエーションのプレ・ポストについては、下記を参照ください。

SOを発行している場合は、新株予約権原簿も求められることが多いので、資本政策表に盛り込んでおくと楽です。

株式引受契約書,株主間契約のドラフト

過去にエクイティでの調達を実行している場合には、そのラウンドでの投資契約が締結されているはずです。

新規の調達時には、この契約書類と類似の投資契約が交わされるはずなので、ドラフトとしてPDFデータを用意しておくと良いでしょう。

重要な契約書類

その他、事業運営上、極めて重要な契約書類はPDFですぐに出せるようにしておくと良いです。

この点は会社毎に全く異なるので、各々で考えて下さい。

取締役会議事録,株主総会議事録

これを用意していない会社が、結構多く存在します。
過去分を作成するのは大変なので、真面目にコツコツ作成しておきましょう。

Wordデータで作成し、PDFデータに起こす、電子署名をしない場合は押印されたものをスキャンしPDFにしておく、という処置が必要です。

どの道必要なので、ただの手続き、と思わずコツコツやった方が絶対に良いです。
無いと、苦しむだけですので。

ショートレビュー報告書,監査契約書,マネジメントレター,監査法人指摘事項対応状況

これは、監査法人の選定が済んでいる場合になります。

ここで上げた資料がある場合には、用意をしておきましょう。
監査法人の指摘事項がある場合には、それへの対応状況を説明できる資料も用意しておきます。

なお、守秘義務の観点で、監査法人からの資料を、そのまま外部に提出することはできません。
監査法人毎に、必要な手続きがあるので、外部に提出する前に、事前に手続き内容を確認し、然るべき手順を踏むようにしましょう。

ビューコン資料

これは、証券会社の選定が済んでいる場合になります。

ビューコン資料があるはずなので、それをPDFデータで用意しておきます。

これも監査法人資料と同様、事前に証券会社に外部に提出する際の手続きを確認しておきましょう。
監査法人ほどは厳しくないです。

IPO進捗状況

ある程度ステージが進んだ会社になりますが、IPOの進捗状況について、説明できる資料を用意しておくと良いです。

監査法人や証券会社と、協議を重ね、課題と計画、そして進捗確認のワークシートを作成しているはずなので、それを流用するのが簡単でしょう。

IT統制資料

社内のネットワーク図や重要な基幹システムの状況、それらの統制について説明する資料を用意しておくと良いです。

無ければ無いで、口頭対応もできるものなので重要性は低いですが、IPO進行上、IT統制は必要なので、会社ステージにあわせて用意対応しておいた方が吉です。

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補足というかアドバイス

上記は、格納場所、保存場所がバラバラになっており、収集が手間であるのが一般的です。

調達の都度、収集するのがよくある光景だと思いますし、またCFOの方がジョインされた場合に、最初に整理する資料として良くあげられるものにもなります。
この点を別の観点で考えると、CFOという報酬単価の高い人材を、資料収集に使う形になり、非常にもったいないです。

会社のサイズが小さい内に管理体制を整えるのは限界はあるのですが、管理担当者を兼任でも設置できた段階で、順次揃えておくと、いざ資金調達を行う、という段階に限らず、CFOを迎えられた後の稼働立ち上がりを早くすることにつながります。

書類整理を雑用と捉えず、体制整備の一環だと捉えると良いでしょう。

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